アホヲタ元法学部生の日常

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江頭会社法の第7版と第6版の相違点からこの2年間の会社法の動きを探る(江頭差分)

株式会社法 第7版

株式会社法 第7版


これは
法務系 Advent Calendar 2017 - Adventar
の記事です。

1.本エントリの構成
 某記事でも少し書いたところであるが、


 統計的にいうと、第6版から第7版への変化が10頁増、つまり1%しか増えていないことから、買い替えは不要なのではないかという人もいるかもしれない。しかし、そうではないことを明らかにする、これが本エントリの重要な目的である*1


 この目的を達成するため、本エントリは、まず、江頭会社法がその「はしがき」で改訂の契機として述べる、民法改正及びコーポレートガバナンス改革について簡単にどの部分に影響しているかを要約したい。その上で、それ以外の重要判例や重要改訂点について説明したい。


 なお、文献の入れ替え等*2細かな改訂は多い。新規引用文献では「企業法の進路 -- 江頭憲治郎先生古稀記念」からの引用が比較的多く、同書掲載の論文のうち、江頭会社法で引用されているものとされていないものを比較すると面白いと思われる。その意味では、網羅的に改訂点を説明するというよりは、一個人がその独断と偏見により興味深いと思ったところをいくつかピックアップしたとご理解頂きたい。


2.民法改正
 民法が改正されることで、会社法にはいかなる変化がもたらされるのだろうか。
 会社法民法の特則の部分があるところ、「本則」たる民法が変わることは、会社法にどのような影響を与えるのだろうか*3


(1)時効関係
 まず、 江頭会社法「はしがき」は、「消滅時効に関する「債権者が権利を行使することができることを知った時」(民166条1項1号)とは、株主代表訴訟については、いつの時点なのだろうか。」(江頭憲治郎『株式会社法』(第7版、有斐閣、2017年)1頁)という問題を提起する。


改正民法166条1項は、

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。


と規定する。


 ここでいう「債権者が権利を行使することができることを知った時」というのは、取引に基づく代金支払請求権等であればその時期について争いはないものの、取締役の責任はどうだろうか、しかも、株主代表訴訟を考えると、誰の認識を基準とすべきだろうか。この点は読者の皆様も興味を持たれるのではないか。


 さわりだけ紹介すると、江頭会社法は481頁で「取締役の責任の消滅時効期間につき、「債権者が権利を行使することができることを知った時」(民166条1項1号)とは、原則として、会社の提訴権限を有する機関(会社349条4項、353条、364条、386条1項1号)が当該取締役に責任があることを認識した時と解すべきである。」という原則を示している。問題は、代表訴訟であるが、会社の提訴権限を有する機関が責任はない(権利を行使できない)と考えているからこそ提訴請求が来るものの、提訴請求を受け取った時点で会社の提訴権限を有する機関は認識したと見るべきと論じた上で、会社法853条1項の類推といった解釈論まで展開している(481頁注16)。


 このように、民法改正によって会社法に生じる影響について論じているところが、第6版から第7版への大きな改訂点であり、やはり第7版を購入すべきである。*4



(2)連帯債務
 連帯債務の免除については、改正民法441条が以下の通り定める。

改正民法441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、 債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したとき は、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。


これは、免除の相対効の原則を定めるものである。


ところで、責任限定契約(会社法427条1項)は、業務執行取締役等については結ぶことができないことから、関係する(責任がある)役員の間で「責任限定契約により免除を受けられる者」と「免除を受けられない者」に別れることになる。すると、免除を受けられない者が全額を支払った後、免除を受けられる者に対して求償をすることが可能となる可能性がある。この問題につき、江頭会社法は、長めの脚注で他の連帯債務者の免除を可能とする定款の定め、求償権放棄契約、事後的補償という3つの方策を検討している(480頁注18)*5


(3)債権者代位
 債権者代位権が行使される場合、債務者(代位行使対象債権の債権者)は、当該債権を処分できるのか。改正民法423条の5は以下の通り定める。

改正民法423条の5 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も 、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。


 つまり、民法の原則としては、債務者は処分ができるということになっている。では、代表訴訟につき、例えばまずいと思った会社は役員に対する損害賠償請求権を役員に対して責任追及の手を緩めることが記載される第三者に譲渡することができるのだろうか。


 ここで、大判昭和14年5月16日民集18巻557頁*6株主代表訴訟のような法定訴訟担当の対象債権の債務者による処分を禁じるのが原則としており、第6版487頁注3もそのような前提であった。しかし、民法改正を踏まえ、江頭会社法第7版では、民法423条の5により、処分は一般に禁じられるわけではないが責任追及回避目的の譲渡は会社法の責任免除の制限規定との関係で無効と論じる(496頁)。民法の原則が会社法では修正されるという議論は注目に値する*7


(4)債権譲渡
 改正民法466条2項、3項は以下の通り定める。

改正民法466条2項 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の 第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことがで き、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。


 つまり、債権譲渡の効力そのものは妨げられないのであって、譲渡制限を知り又は重過失により知らなかった場合でも、履行を拒んだりできるに留まる。江頭会社法第7版は、この点を捉え、金商法における公募と私募の区別等に転売制限の有無を利用しているが、これが問題になるのではないかと論じる(735頁注23)。

(5)その他
・指図証券の譲渡における債務者の抗弁の制限(民法520条の6、178頁)
・代表権の濫用について民法107条を本文で引いた上で(431頁)脚注(433頁注5)で、会社法356条1項3号との均衡を問題視している。
・詐害行為取消(445頁注4、918頁注2)
・錯誤が取消事由となる(755頁)
・免責的債務引受(民法472条)又は更改(民法514条1項)(949頁)
等々についてもそれぞれ言及がある。


3.コーポレートガバナンス
(1)コーポレートガバナンスコード

 本文で独立社外取締役の2名以上の選任等についてコンプライ・オア・エクスプレインが求められていること(388頁)を述べた上で、脚注では、コーポレートガバナンスコードの導入の経緯、内容面における特徴等を述べた上で、独立社外取締役等のコーポレートガバナンスコードの採用する手法が企業の持続的な成長という目的と合致したものであるかは、相当疑わしいと論じている(390頁注9)江頭節がなかなか良買った。なお、より詳しくは、江頭憲治郎「コーポレート・ガバナンスの目的と手法」早法92巻1号109頁を参照されたい。


(2)スチュワードシップコード
 スチュワードシップコード及び議決権行使助言会社等の存在により「経営者支配」に変化の兆しがあるとした上で(310頁)、スチュワードシップコードについて、国際比較を含むその概説がなされている(310頁注6)。


(3)会社補償
 会社補償とは、取締役が職務執行に関して損害賠償請求、刑事訴追等を受けた場合に、取締役が要した争訟費用、損害賠償金等を会社が負担することを言う。コーポレートガバナンスコード策定等に伴いこの問題への関心が高まったことから、項目を立てて約2頁に渡ってこれを論じている(466〜467頁)。
 関連してD&O保険についても本文で取締役が会社に対して負う損害賠償部分の保険料を会社が負担することについて、平成28年以降保険実務の取り扱いは、社外取締役の承認等の一定の手続きを経た場合には可能として処理するとした上で(491頁)脚注で補足している(491頁注32)。


(4)その他
 監査等委員会設置会社に既に移行したか、移行する旨を表明した上場企業の数が平成28年6月までに700社であることについて、コーポレートガバナンスコードの2名以上の独立社外取締役設置の要求を満たしやすい、取締役会による業務執行の決定の委任が広く認められる等が理由だとされている旨の言及がある(582頁)。


4.その他
(1)最新判例

 新規収録裁判例は多いが、最高裁レベルだと
最判平成27年2月19日民集69巻1号25頁(122頁注3)
最判平成27年2月19日民集69巻1号51頁(771頁注3*8
・最決平成27年3月25日金判1467号34頁(19頁注8)
最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁(979頁注1)
最判平成28年3月4日民集70巻3号827頁(401頁注11)
・最決平成28年7月1日民集70巻6号1445頁(162頁)
最判平成29年2月21日判タ1436号102頁(318頁注5)
 の7判例が新規収録である。


 新規収録下級審裁判例で個人的に興味深いのは、
・属人的定めに関する東京地判平成27年9月7日判時2286号122頁及び東京地立川支判平成25年9月25日金判1518号54頁(169頁)
・取締役の実質解任について東京地判平成27年6月29日判時2274号113頁(393頁)
安全配慮義務違反による取締役の第三者責任についての東京地判平成26年11月4日判時2249号54頁(514頁注4)
監査役の任務懈怠責任が認められた大阪地判平成28年5月30日金判1495号23頁(546頁)
・新株発行差し止めが認められた山口地宇部支判平成26年12月4日金判1458号34頁(773頁注4)
・募集株式発行等の無効訴訟の提訴期間経過を会社が信義則上主張できないとされた名古屋地判平成28年9月30日金判1509号38頁(782頁注8)
MBOに失敗した事案につき会社にMBO費用相当額の損害を被らせたとした大阪高判平成27年10月29日判時2285号117頁(835頁注2)
 辺りだろうか。

(2)税制改正
 完全子会社化のための全部取得条項付き種類株式の利用が株式交換等の一種として税制の均一化が図られた(164頁)
 特定譲渡制限付株式というインセンティブ報酬に関する税制改正(455頁注7)
 スピンオフ税制の導入による適格株式分配(688頁注10)や適格分割型分割(900頁注6)。
 その他合併と税制の変更(859頁注7)
 交付金株式交換(937頁注3)
 等の部分に改正の影響があるので参考にされたい。

(3)その他
 少なくとも代表取締役の一人の住所を日本としなければ会社の設立登記申請を受理しない扱いにつき変更があったことをフォローしている(104頁)。
 特別支配株主に対する売渡株主の差し止め請求については、会社に対するものではないので個別株主通知が不要という点はそう言われればそうなのだが、明記してもらえるのはありがたい(282頁)。
 特別利害関係を有する取締役が加わってされた議決であっても当該取締役を除外してもなお議決に必要な多数が存するときは、その効力は否定されないという点を最判昭和54年2月23日民集33巻1号125頁を引いて論じている(421頁注15の末尾)。この判例は、第6版では持分払い戻しの際の価格算定の判例として同19頁注9で引くだけであったので、興味深い。
 ベイルイン(bail-in)債*9について新たに記載が追加されている(726頁)。
 公正な価格につきシナジー分配を織り込むべきではないという議論に対する反論が詳細化している(880頁注4)。


まとめ
 江頭会社法は、改訂前後の「差分」に着目することで、その期間における会社法のトレンドを理解できる、たいへん素晴らしい書物である。
 ただ、例えば第6版315頁注4で「今後、そのような新株予約権の発行を定款の定めにより株主総会の決議事項とした上で行う事例が増えるであろう」という記述を2005年の文献を引用して述べていたところが、第7版では文献のみが消えており、実際に増えたかどうかが明確にされない(318頁注4)等、疑問が残る部分があることは否めない。やはり第8版においてもより良い内容になる改訂を期待したい。


 なお、この企画、毎年やるのはものすごく大変なので、勝手なお願いではあるが、第8版の刊行はあと数年位待っていただけるとありがたい、と思ったところである。


なお、過去のものに

2014年
「江頭会社法第5版」でこの4年間で会社法の変わったところを総さらえ〜「修正履歴付江頭会社法」〜 - アホヲタ元法学部生の日常


2015年
Legal Advent Calendar 2015企画:江頭憲治郎『株式会社法』第6版改正点まとめ - アホヲタ元法学部生の日常

がある。

*1:要するに「ステマ」であるが、私は単なる1ファンとして本書を「布教」しているだけである。

*2:ただし、細かいかどうかは議論があるものもないではないかもしれない。個人的には第6版402頁注4の3段落の野村修也「内部統制への企業の対応と責任」企会58巻5号100頁が第7版407頁注4で削除されているところが気になったところである。

*3:関係する論文としては431頁で引用される青竹正一「民法改正の会社法への影響(上)(下)」判時2300号19頁以下がある。

*4:なお、自己監査の問題に関する言及の際も消滅時効期間は「10年」(第6版561頁注1)から「5年以上」へと変わっている(569頁注1)。

*5:ただしいずれの方法もとても優れた解決とは言えないだろう。

*6:会社関係の事件ではないようである。

*7:なお、特殊な状況につき687頁注9も参照。

*8:判例索引では「772頁」とされているが誤り。

*9:金融機関が発行する劣後債で実質破綻事由が生じた場合に元利金支払いを免除されるもの

はぐれた九官鳥を拾ったら誰の物になる? 90年前の大事件「九官鳥事件」を読み解く

われらの法 第3集 有閑法学 (穂積重遠法教育著作集)

われらの法 第3集 有閑法学 (穂積重遠法教育著作集)

本エントリはラブライブ!サンシャイン!!の2期アニメ第5話のネタバレになる可能性があります。


1.手に汗握る逆転事件
 九官鳥事件(大判昭和7年2月16日大審院民事判例集11巻138頁)、これは民法195条を勉強する法学部生は皆聞いたことがある事件である。しかし、この事件は、手に汗握る逆転事件であり、内容自体が面白い。


まるで、アニメの原作になりそうなくらいである。


以下、穂積重遠『有閑法学』の第53話と第54話を題材に、九官鳥事件の解説をしたい。


2.事案の概要


さて、場所はある港町*1。話は、桜内某(仮名)の家に九官鳥が飛び込んできたことから始まる。


桜内某は、九官鳥をかわいがり、ノクターン(仮名)と名付けた。


それから、荒牧某(仮名)がやってきて、この九官鳥は荒牧が飼っていたアンコ(仮名)であるとして、九官鳥を持ち去ってしまった。


そこで、桜内は、荒牧に対し所有権に基づく九官鳥の返還を請求した。要するに、この九官鳥は自分の所有物であるから返せ、ということである。




3.所有権に基づく主張と占有権に基づく主張


 少し複雑だが、民法において「物を返せ」という主張には2種類のものがある。


 1つは所有権に基づく請求であり、自分の物、所有物については、それが第三者の下にあれば、所有権(自分のものだ!)を理由にその返還を請求できる。


 もう1つは占有権に基づく主張であり、ある物を自分が事実として持っていたことを理由に第三者に対して返還を請求できる。


 そして、桜内がノクターンの所有者で、かつ、占有者であれば、荒牧に対し、所有権に基づく返還を請求できるだけではなく、占有権に基づく返還請求もできる。


 このような2つの類似の請求が存在する理由は非常に分かりにくいが、簡単に言えば、裁判制度がある以上、どういう理由があっても、他人が現に占有しているものを裁判制度外で持っていくこと(自力救済)は許されないので、とりあえず事実上占有していることを根拠に(つまり所有者が誰かを問うことなく)、元々の占有状態への復帰を認めるという趣旨ということになる*2



4.所有権に関する訴訟ー民法195条を巡る戦い


 さて、桜内はノクターンが自分の物だ、つまり、自己の所有物だから返せという所有権に基づく訴訟を荒牧に対して起こした。



 このような主張の根拠として、桜内は、民法195条を使った。

民法195条 「家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。


要するに、桜内は九官鳥という「家畜以外の動物」を、他人(荒牧)のものとは知らずに1ヶ月以上飼っていたので、九官鳥の所有者になった、と主張したのである。


第一審と第二審では、この主張が認められ、桜内が勝訴した。


ここで重要なのは、第一審と第二審では、時系列として、


先に桜内のところに九官鳥(ノクターン)が舞い込んできて、その後で荒牧の九官鳥(アンコ)が逃げた


という時系列を認定していたことである。つまり、この2つの九官鳥が違う九官鳥である、というのが第一審と第二審の認定であって、当然に九官鳥は荒牧のものではないことになる。


ところが、最終審の大審院(今の最高裁判所)は、民法195条の解釈を理由に桜内を敗訴させた

「九官鳥は我国においては人に飼育されその支配に服して生活するを通常の状態となすことは一般に顕著な事実なれば、同条にいわゆる家畜以外の動物に該当せず。」(カタカナをひらがなにする等の所要の修正済み)

要するに日本において九官鳥は「家畜」なので、家畜以外の動物に関する民法195条は本件には適用されないから、桜内は所有権を同条に基づき手に入れることはできないとされてしまったのである。


確かに(上記第一審と第二審のいうように)荒牧は所有者ではないかもしれない。しかし、桜内が起こした訴えは「(桜内の)所有権」を根拠とする訴えである。そこで、桜内は自分の所有権の存在を基礎付けなければならない。その際に桜内は民法195条を根拠としていた。大審院の判断によると、民法195条が適用されない以上、桜内の所有権を理由とする返還請求は認められないことになった、というだけである。


5.占有権に関する紛争ー桜内の勝訴


このように、所有権に基づく訴えでは桜内は苦杯をなめたが、ノクターンへの思い入れの強い桜内は、抜かりなく別の請求もしていた。


つまり、桜内は、荒牧に対し「占有権」に基づく訴えを別の事件として起こしていたのである。


上記のとおり、この占有権による訴えは、それが所有権に基づくものではなくてもよく、あくまでも自分が元々占有していた物(ノクターン)の占有を奪われたということを主張すればよい


つまり、桜内がこれまで占有していたノクターンについて、荒牧がその占有を奪ったとさえ主張すれば、誰の所有物かに関係なく、その返還を求めることができるのである。


そして実際に桜内は占有の訴えに勝訴し、大審院での敗訴判決後にかかる勝訴判決の執行により九官鳥の返還を受けることに成功した



6.差戻し後の経緯


 とはいえ、これで全てが終わった訳ではない。占有の訴えによって暫定的に元の状態に回復はしたものの、最終的には所有権者が荒牧であることが決まれば、荒牧は桜内に対しアンコの返還を求めることができる


そして、所有権の帰属を争う事件は、大審院によって元の裁判所に差し戻された


桜内は、もう民法195条を根拠に、九官鳥が自分のものであるとは主張できないことから、違う理由で桜内の所有権を基礎付けようとした。


なんと、「実は津島某(仮名)が九官鳥(ライラプス)を逃がしており、桜内が拾ったのはこの九官鳥である。桜内はその後津島から九官鳥の譲渡を受けた。」と主張したのである。


これに対し、荒牧は反訴を起こして所有権等の確認を求めると共に、(上記のとおり占有の訴えで負けてアンコが桜内の下に移転したので)所有権に基づく引渡も求め、徹底抗戦の姿勢を取った


この際には、荒牧は「差戻し前の第一審と第二審での事実認定は誤りであり、荒牧が九官鳥(アンコ)を逃がした直後に桜内が九官鳥を飼い始めたのだ」と主張した。


このように、荒牧の主張と桜内の主張は真っ向から対立した。勝敗は裁判所の事実認定にかかっている。


裁判所は、荒牧に軍配を上げた。


裁判所は、津島の九官鳥(ライラプス)と、桜内の九官鳥(ノクターン)の同一性について、問題の九官鳥(ノクターン)は時折「バカヤロウ」といった下品な言葉を使って鳴くが、津島の九官鳥(ライラプス)はこのような下品な言葉を使うことはなかったとして、桜内が津島の九官鳥を譲り受けた事実を否定し、その上で、荒牧が九官鳥(アンコ)を逃がした直後に桜内が九官鳥を飼い始めたとして、桜内の九官鳥(ノクターン)は、荒牧の九官鳥(アンコ)であると認定したのであった。


こうして、九官鳥は荒牧のものであるとして、荒牧の勝利(荒牧に九官鳥の引渡を命じる判決)で裁判は終わりを迎えたのである。


まとめ
 九官鳥事件は九官鳥の所在が荒牧ー(逃げる)→桜内ー(奪う)→荒牧ー(占有権の訴えの執行)→桜内ー(所有権の訴えの執行)→荒牧とめまぐるしく移っていく、大逆転に次ぐ大逆転事件であった。


 しかも、第三者(津島)からの譲渡の話が大審院判決後に突然出て来る等、まるで「運命」とか「見えない力」が働いているようである。



 このようなストーリーであれば、アニメの原作になってもおかしくない



私は密かに、ラブライブ!サンシャイン!!2期アニメ第5話の原作は、九官鳥事件ではないかと思っているのだが、テレビ版ではクレジット表示がなかった。ブルーレイに「原作 大審院」という表示が出ることを期待したい


本当の関連記事

ronnor.hatenablog.com

*1:小樽市である。

*2:そこで、事実上の占有をしていたかだけを問う占有の訴えは簡易迅速に行うことが想定され、所有者が誰かと言った議論は無関係である(民法202条)。

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第12回「要領」良く仕事をするための「選択と集中」

怪談―小泉八雲怪奇短編集 (偕成社文庫)

怪談―小泉八雲怪奇短編集 (偕成社文庫)


1.はじめに


仕事の「要領」がいい人と悪い人っていますよね。


 私はどちらかというと要領が悪い方でして、色々とうまくいかないことも多かったのですが、●(「禁則事項」です!)年間頑張っていく中で少しずつ自分なりにコツのようなものがつかめてきました。要するに、上司等の「レビュアー」がレビューして評価する訳ですから、そのレビュアーの評価するポイントだけに資源を集中投下し、それ以外は節約モードに入る、ということです。


「仕事が終わらない」「頑張ったのに質が低いと怒られる」等という悩みを持っている方、特に1月から働き始めて既に辛い方や4月から仕事を始める方の参考になればと思います。



2.ストーリーパート
 珍しく井上先輩と二人で残業をすることになった。


 午後8時。全館一時消灯の時間。部屋は暗闇に包まれる。


 電気をつけて仕事を続けようと、スイッチの方に歩き出したら、井上先輩が袖を引っ張って僕を止める。



さあ、怪談の時間だ。


かすかな非常灯の明かりに照らされた井上先輩は、とても怖い顔をしていた。



「か、怪談ですか?」



「そう。怪談。その人は私の同期同クラス、真面目な修習生だった。頭は特にいい訳ではなく、要領も特にいい訳でもないが、毎日遅くまで真面目に予習復習をして、中の上の成績を取っていた。」


「あ、よくいますね、そういうタイプ。同期にもいました。」


「うまく東京の弁護士一人、秘書一人のこじんまりとした事務所に就職が決まり、修習が終わった1月から勤務を始めた。でも、同期の集まりとかになかなか顔を出さない。メッセージを送っても『忙しい』としか返ってこない。これはおかしいと思っていたが、半年位してやっと会えた時『自分は弁護士に向いてなかった』と『死にたい』ばかり言っていた。」


井上先輩の顔が怖い。


「どうしちゃったんですか?ブラック事務所に入ってしまったとか?」


「ある意味ではそうだし、ある意味ではそうではない。」


「なかなか微妙な回答ですね。」


「ボス弁の先生は、器用で要領がいいタイプで、サクサク仕事を進めて細かいことにも気にされる方だった。だいたいボス弁自身が4時間位でできる仕事を、新人だから8時間位かかるだろう、と、1日の仕事としてイソ弁に振って、できた成果物を手直しして裁判所等に提出していた。」


「2対1の割合がどうか、という話はありますが、あり得そうな話ですね。」


「同期は最初の仕事でつまずいたらしい。比較的平易な訴状起案だったのだが、早く終わらせようと焦ったのか、要件事実を1つ落としてしまった。」


「このまま陳述すると、相手が欠席でも、欠席判決で請求を認容してもらえない、ということですから、ミスはミスですね。」


「そのミスに対し、ボス弁から、『最近の修習生はやっぱりレベルが落ちてるのかな、あ、君は弁護士だったね。』と嫌味を言われて、かなり落ち込み、『もうミスは絶対できない』と思い込んだらしい」



「それはトラウマになりますね。」


「それで、慎重に慎重に対応するようになった。毎日遅くまで残って、調べて、考えて、疲労の限界で倒れそうになるまで検討を重ねて、成果物をボス弁に提出するようになった。」


「ボス弁から褒められるようになったんですか?」


その真逆だ。まず、仕事が遅くなった。ボス弁が当然できてると思う時期までに仕事ができていない。次に、深夜まで、そして気力と体力の限界まで作業しているから、ミスが出る。ボス弁は細かいからそういう細かいミスも含めて全部指摘して、『仕事が遅い上、質も低い」と批判する。」



気が狂いそうになりますね。」


「このような負のスパイラルは、他人事ではなく、特に真面目な人程陥り易い。」


自分も真面目だから、当てはまるかも、と思わず背筋が寒くなる。


「どうすればいいのですか?」


選択と集中だ。時間と労力を投下すべきところに集中して投下し、そうでないところへの投下を最小限に抑える。 特に最初に提出したものに低い評価が返って来たトラウマがある場合、慎重になり過ぎ、時間と労力をかけるべき所を間違った「遅く質が低い」人になりやすい。」


「理屈はそうなんでしょうが、問題はどこに時間と労力をかけるべきかが分からないことなんですよ。」


これは僕の実感である。


形式面のカオの部分(目立つところ)と実質面のキモの部分(当該事案の特性に応じた重要部分)にリソースを集中投下すればいい。」


「そういいますと?」


「まず、形式面の「カオ」の部分(目立つところ)としては、固有名詞(前株後株、異体字、肩書き等)、数字、条文、敬称等が重要だ。後は「1頁目」を綺麗に整える。これだけで、よい成果物っぽく見える。」


「なんか印象を操作してる気がするのですが、それ以外は形式を整えなくてもいいんですか?」


「どうやれば少ない労力で形式的に見栄えがするのか、という観点からの優先順位付けだ。もちろん、時間の許す範囲で2頁以降も形式面を綺麗にすべきだが、レビューする人は、最初の方で固有名詞や数字等目立つミスがあると、それだけで『この資料はしっかり作られてない』という印象を持ってしまう。そういう間違った印象を持たれることを防ぐための努力だな。」



人は見た目が9割」と言われるが、「成果物も見た目が9割」なのだろうな、と思う。



「 実質面の「キモ」は、業務の類型別の問題と事案毎の問題の2つがある。例えば契約書チェックであれば、売買契約なら売買契約等当該契約類型でよく問題となる条項(注文・支払方法、瑕疵担保等)がある。また、当該事案で「買主の資力が心配」等の事情があればそれに対応する。」


「どうやってその事案における『キモ』を判断するんですか?」


「類型別は、モノの本の記載を参考にして、後は経験をする中で蓄積していけばいい。事案毎はコミュニケーション。丁寧に事情を聞き取ればいい。その際には、その契約では何をしたいのか、その結果どこでいくらお金が動くかを基本的な手掛かりにすればいい。」


井上先輩の言葉に、先輩がいつも定時に帰れる理由を垣間みた気がした。


3.解説
 さて、1月に仕事始めた方、4月から仕事を始められる方、皆様に申し上げたいことは「仕事よりも自分の人生の方がずっと大事」ということです。気難しい上司、優秀過ぎる上司等の下にいると、その要求に応えなきゃ、応えなきゃと思って精神的に追いつめられる人が多いのですが、精神的に気が詰まる位仕事をさせられる職場は、会社か上司個人のどちらか又は双方がおかしいのです。


 とはいえ、「嫌なら辞めればいいじゃないか」と簡単に申し上げるつもりもありません。やはりできるだけ業務を効率化して、短時間で高評価をもらえる成果をあげるよう努力すべきでしょう。その方法として、これまで私が試行錯誤と失敗を繰り返した結果、現時点でやっているのが上記の「選択と集中」ということです。


 これで全てがうまく行くかは分かりません。例えばお役所の対応をやっている場合、2頁目も詳細にチェックされる可能性もあります。ただ、一般論としてどこをレビュアーが重点的に見るかということですので、その観点を取入れて効率を上げる足しにして頂ければ幸いです。


 なお、上記の内容はツイッター(@ahowota)で呟かせて頂いたが、以下のとおり有益なコメントを頂き、これを取り入れさせて頂いきました。心より感謝させて頂きたい。

まとめ
 不器用な私が経験からまとめた「私見」も多い内容ですので、法務の諸先輩方のご意見をお待ちしております。

[法務]ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第11回コミュニケーションの基礎


1.はじめに
第2回において、法務ではコミュニケーションが大事だと書きました。
ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
ところが、実際にコミュニケーションをするのは難しいのです。
特に私のようないわゆる「コミュ障」にカテゴライズされる人は毎日苦しんでいる訳です。
ただ、苦しいなりに工夫していることを言語化してみました。


2.ストーリーパート


「そういえば、この間は、どうしてメールか電話で謝らずに、直接会いに行って謝ったんですか?」


僕と井上先輩はランチをしていた。「この間」というのは、僕が井上先輩経由で頼まれた仕事の〆切を忘れていて、営業に謝りにいって〆切を伸ばしてもらった件のことである。


ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第10回ミスを最小限にし、犯してしまったミスの影響を最小限に抑える〜ミスの4大原因とは? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常



情報の伝え方の基本だ。まさか、そんなことも知らないのか?」


「す、すみません。」


井上先輩は、「本当にしょうがない奴だな」という顔をしながら、語り始めた。


「情報はその場面場面に応じて最適な伝達方法を選択して伝える。今では、SNS等色々な伝達方法があるが、基本はメール、電話、対面の3つだ。この3つの方法のメリットとデメリットを知ってを適切に選択しなければならない。メールのメリットは何だ?」


「えっと、メールだと、いつでも、相手がどこにいても送れること、ですかね?」


「確かに受信者側との時間調整が不要であることはメールのメリットだな。後は、録音等の追加の措置を講じることなく記録に残せること、資料を添付できることか。デメリットは、添付ファイル等は見てもらえないこともあるし、そもそもSPAM分類される等で受信者の目に届かないことさえある。そして、電話や対面と比較しかなり情報が抜け落ち、ニュアンスが十分に伝わらないことと受信者がいつリスポンスするか分からないこと等がある。この意味は分かるか?」


「えっと、どういうことでしょうか?」


ネガティブな事項、そして、相手に早期の決断を迫るべき事項を伝える場合には、一般にメールは向かないということだ。ニュアンスを正確に伝えられず、過度にネガティブないし過度にポジティブに受け取られる可能性があるし、いつ決断してもらえるか分からない。」


「なるほど、だから、謝罪の時にメールを使わなかったんですね。」


「そうだ。ネガティブでかつ、早期にリスケジュールの決断を迫る必要があったからな。次は電話だ。特に内線電話は未だに頻繁に使う企業が多いだろう。電話のメリットはその場で(声色を含む)反応が聞けて、反応を踏まえながらニュアンスを調整できることだ。電話のデメリットは、日程調整が必要なこと、相手の顔が見えないこと、お願いや謝罪の場合にニュアンスが十分に出ないことがあること、資料を見せづらいこと、記録したければ録音が必要なことだろう。」


「確かに、謝りに行けば、すみませんという謝罪の気持ちが伝わりやすいのに対し、電話で簡単に済ませたと思われると、こじれてしまうかもしれませんね。」


「そこで対面でのコミュニケーションだ。対面でのコミュニケーションは、顔色・声色といった反応を五感(多分味覚を除く)で感じられて、反応を踏まえながらニュアンスを調整できること、お願いや謝罪のニュアンスを出せること、その場で資料を見せられること等メリットは大きい。ただし、デメリットは、電話とほぼ同じ(ただし顔については除く)ものに加えて、相手と自分の間に物理的距離がある場合には移動が必要なことだ。」


「そうすると、対面でのコミュニケーションはメリットも大きいものの、移動等のコストも大きいので、うまく使い分けるということですか。」


「大分分かって来たじゃないか。概ね「順調であればメール、それ以外の場合には、電話と対面を使い分ける」というのが1つの重要な判断基準だ。なお、交渉(特にクレーマー対応等)の場合は録音という方法もあり得るが、通常の社内の電話や会話においては、録音をしないのが通常だ。そうすると、電話や対面での協議をした後、すぐにメールで電話や対面での協議内容の要約(こちらが残しておきたい部分、例えば相手にお願いしたことのリマインド及び期限等)を送付するということで、記録に残すといった複数の手法のハイブリッドも含め、柔軟に試みることだな。」


井上先輩の口から紡ぎ出されるコミュニケーションに関する自由自在なアイディアに、やはりコミュニケーションを重要な職務とする法務はすごい、と感じた。


3.解説のようなもの
 コミュニケーションの方法というのは人によって色々なものがあると思いますし、そのコツを細かくいうと色々になるのでしょうが、私が普段心がけているものを簡単にまとめました。


 これはあくまで「原則」であり、例外的な場合はこれと異なることも多いのですが、少しでも参考になれば幸いです。

まとめ
 いつものことながら、法務パーソンの先輩の皆様から、他にコミュニケーションで心がけられていること等ございましたらぜひご指摘頂ければ幸いです。

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第10回ミスを最小限にし、犯してしまったミスの影響を最小限に抑える〜ミスの4大原因とは?

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

1.はじめに
 私はミスをしてしまう方ですが、皆様はいかがでしょうか?


「私、失敗しないので」というキャラの人もいますが、実際には少数派でしょう。


 そうすると、大事なのは、致命的なミスをしない(ミスの数と大きさを最小限にする)ことと、その後のリカバリーで犯してしまったミスの影響を最小限に抑えるということだと思われます。

 なんと、行き当たりばったり連載もあっという間に10回目で、私自身が驚き、戸惑っているのですが、これも全て皆様のご支援のお陰です。ありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します。


2.ストーリーパート
「今日〆切のCDE社の件、進捗はどうだ?」


「あっ。。。」



僕は、言葉を失った。確か今日は朝からVWX社の件で「大至急」だと言われて営業から色々と電話で聞かれて、それに対応していたら、もう夕方になっていた。



「すみません、忘れてました。」


「営業に謝りに行くしかないな。明日まで〆切を延ばしてもらおう。」


二人で営業に謝まりにいき、無事〆切を伸ばしてもらった後、僕は素朴な疑問を聞いてみた。


先輩は失敗しないですよね。どうすればミスがなくなるんですか?


失敗くらい、人並みにしてるさ。ミスを最小限にし、犯してしまったミスの影響を最小限に抑えるための対応をする、それだけだ。


「へー、先輩もミスするんですか? でも、具体的にどうやってミスを最小限に抑えるんですか?」


「人は失敗する生き物だ。だから、自分と相手が必ずミスをすることを前提に行動する。知らない、誤解、忘れる、十分な時間が取れないがミスの四大原因だ。例えば知らない。多数の参加者がいる会議の日程を調整する際に先に誰の日程から調整するのかとか、色々な肩書きの人にメールを出す際に、誰を先にして誰を後にするか。こういうのは知らなければ正しく対応はできないだろう。」


確かに、似ている役職が並んでいる場合の序列は、「知っている」か「知らないか」だ。


誤解は、本当は知っているのにミスをする場合の2大原因の1つで、何かを誤解したり、何かを勘違いしてしまう。誤解は広い意味で、ミスコミュニケーション、例えば自分はAという意味で言ったつもりが、相手がBと捉えたという場合も含めている。」


確かにそういう場合はよく生じる。


忘れるは、さっきのキミだな。忙しかったりすると、ついうっかり忘れてしまう。」



すみません。。。


「最後は十分な時間が取れない。例えば、契約書チェックをものすごい短時間でやるとすると、いくら優秀でもミスが出る。この他にも、心身の調子が悪い等他の原因もあるが、とりあえずこの4つを考えてみよう。」


確かにこの4つは重要そうだ。


「こういう原因が分かれば、予防策もそれぞれに対応したものを講じることができる。」


「なるほど、原因毎に対策がある訳ですね。」


「知らないについては自分自身の場合は、知ったかぶりをしないで調べたり聞いたりすること、他人の場合には適切な人を選んだり教えることだ。質問しやすい雰囲気を作っておくと、こちらが当然知っているだろうと思って言わなかったことについて後で『知らなかった』というミスが出て来ることが減る。」


井上先輩は必ずしも質問しやすい雰囲気ではない気がするが。。。


「誤解と忘れるは似ている。どちらも、本来はできるはずなのに、何かの原因でその本来どおりにいかない。そのためには、フォローアップ・リマインドが重要だ。つまり、リマインダーツールの活用、他の人にリマインドを頼む、自分でリマインドする等を通じて、再確認によって誤解を解き、忘れないように思い出させる。後は自分の場合にはできるだけすぐにレスポンスをすることで、忘れる前にボールを他人に渡してしまってしまう、他人の場合には誤解がないように丁寧に説明するという辺りだなな。」


即レスでボールを持たないというのは、前に井上先輩が話してくれた。


ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第5回ボールを持たない - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


「最後の時間がないというのは、スケジューリングだ。自分と相手のスケジュールを把握した上で、途中で突発的に『何か』が起こることを想定して、それでも大丈夫なくらいに余裕をもったスケジュールにすること。逆に余裕がないスケジュールの場合には、きちんと営業等にそのことを話して、そのスケジュールを延ばせないかと交渉し、例えば『可能なら●日までにやるが、状況によってはその翌日になるかもしれない』といったバッファーをもらっておくこと。特に自分自身で全てやる訳ではなく、他の人と協力してやる場合には、何がボトルネックになるか分からないから、余裕をもらっておくことは必須だ。」


「確かに、余裕って大事ですよね。時間の余裕は気持ちの余裕にもつながります。」


「更にダブルチェックないしセルフチェックを日程に組み込んでおけば、例えば契約書の内容にミスがあっても、相手のミスなら自分のところでのダブルチェック、自分のミスでも例えば一晩寝かせてのセルフチェックをする過程でミスをなくせる。そういう意味では、自分や相手がミスをすることを想定して、チェック工程を組み込んでおくのは重要だ。」



「確かに、相手の進捗が遅ければ、チェック工程を組み替えて自分で仕事を全部ないし一部肩代わりといったこともできますから、チェック工程をバッファとして使えるようにスケジューリングをして、早め早めのフォローアップ・リマインドで状況を把握し、必要に応じて緊急事態対応を発動させるというのがいいですね。」



「そうやってできるだけ、失敗を避けるような打ち手を講じる訳だが、それでもミスはゼロにはならない。その場合、ミスしたらすぐ謝る、誤魔化さないというのが大事だ。ミスを誤摩化そうとするとミスにミスを重ねることになる。それが大きな失敗につながる。単なるミスなら、できるだけ早くそれを伝えればよい。例えば、契約書のチェックで重要な点を直すのを忘れていた場合、既に契約書を相手に送った後でも、「ごめんなさい、差し替えをお願いします」といって差し替えをお願いすればよい。営業には『困りますよ』とか嫌みを言われるかもしれないが、普通はそれだけで終わる。それに対し、何も言わずに契約が締結された後、実際にトラブルになって「この条項がおかしい、誰がチェックした!」となったら大事だ。まあ、普段からできるだけ謝りやすいよう信頼関係を作っておくべきだが、全ての人と信頼関係を作るのは簡単ではないので、信頼関係がなくてもとにかく謝るしかない場合もある。これも法務パーソンの辛いところだが。。。」



井上先輩も失敗するけれども、ミスの原因を把握した上で、ミスを最小限にし、犯してしまったミスの影響を最小限に抑えるための打ち手を講じているから「失敗しない人」のように見える。水上でスイスイ泳いでいるアヒルが水面下で水を掻いている姿を見るような、新鮮な驚きを感じると共に自分も明日からこれを取入れて行こうと思った。


3.解説のようなもの
 失敗の原因の類型化というのは、人によって色々なものがあると思いますし、細かく言い出すと10とか20とかにすぐなってしまうのですが、比較的わかりやすく、かつ対策を立てることにつながるという意味で4つに絞って説明してみました。

 ここでご紹介しているのは、大体私が「これをやらなきゃ」とは思いながら必ずしも完璧にできている訳ではないことです。

 少しでも参考になれば幸いです。

まとめ
 失敗の原因を類型化して対策を検討するといったかなり挑戦的な記事になりましたが、法務パーソンの先輩の皆様から、他の有効な対策方法等ございましたらぜひご指摘頂ければ幸いです。

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第9回契約書チェックのポイントその4

株主提案と委任状勧誘〔第2版〕

株主提案と委任状勧誘〔第2版〕

1.はじめに


 本当は契約書回は前回で終わりのはずだったのですが「大人の事情」でまだ続きます。2017年3月6日のある会社での出来事。。。



2.ストーリーパート


「今日は代理権・代表権について解説する!」


月曜日の朝、朝一で井上先輩に呼び出され、会議室に連れ込まれた。何かと思ったら、契約書の話の続きのようだ。井上先輩は先週の金曜日に午後一杯休暇を取っていたけれども、それと関係があるのかどうかは分からない



「会社の場合、誰か個人が会社を代表または代理して契約を締結することになる。いわゆる『サイナー』『署名者』だ。さて、会社を代表または代理できるのは誰かな?」


この程度なら、ロースクールで勉強した。


代表取締役です。会社法349条4項は『代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。』と定めていますから。」


「ということは、代表取締役以外の事業部長とか部長とかは会社を代表または代理できないということか。」


「えっと、そうだ、委任状です。代表取締役の発行した委任状があれば、事業部長でも部長でも会社を代理できます!」



「確かに有効に作成され、変造・偽造されていない委任状があれば、当該代理人に行為能力がある限りは有効に会社に効果を帰属させることができる。でも、契約実務で、社内の人間が判子を押す時、委任状を取っているか?」


「取ってません。。。」


「すると、契約は無効と?」


「いや、そうではないと思いますが。。。」


会社は代表取締役以外の使用人、日常語だと『従業員』ないしは『役職員』に対し、契約締結権限その他の権限を与えることができる会社法14条1項*1はその表れだ。そうすると、社内で契約締結権限が与えられていれば、例えば部長や事業部長でもよい。特に相手が大企業で、しかも新規取引先ではなく、既存取引先の場合には、部長クラス以上で、かつ、当該部門に関係する契約であればその人をサイナーとして認めることが実務では多い*2。」


「なるほど、そうすると、契約締結権限を持っている人と契約すれば安心、ということですね。」



「そこまで即断はできない。例えば、部長がサイナーだが、事業部長の決裁がないと契約が締結できないとか、事業部長がサイナーだが、社長の決裁がないと契約が締結できないという場合がある*3決裁等権限に対する制約・制限が存在することは稀ではない。」


「確か、ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人の代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できない会社法14条2項)のではないですか? 取引の相手方がその制限を知らなければ、大丈夫なのではないでしょうか。」


「いい発想だ。ただ、大企業なら決裁制度があることは普通だろうし、決裁について相手から告げられることもある。その意味では、決裁が下りていることを確認するがよいだろう。実務ではそもそも決裁の有無を確認しないこともあるが、『決裁下りましたか?』と聞いて『下りました。』と回答してもらう程度はやるべきだと思う*4。」


「なるほど、代理権・代表権についてはあまり意識しないできましたが、実はとても重要だということが分かりました。誰に代理してもらうのか、そのような権限の付与が適正な手続で行われた真意に基づくものなのかといった点は決しておろそかにしては行けませんね。


「そうだな。特に法律を仕事にしている人にとって、これをおろそかにすることは自殺行為に近い。」


井上先輩は、一見目の前にいる僕の方を見ているようで、実は別のところをはっきりと見据えているような気がした



3.解説のようなもの


実務ではあまり「このサイナーに代表権・代理権があるのか」がギリギリ問われる事案は多くないと思われます。当事者がお互いにある程度地位の高い人をサイナーとして指定し、その肩書き上普通は当該事項について契約締結権限がある位の地位にあれば、それ以上に「委任状を出せ」「権限規程を出せ」等とは言わないのが普通と思われます*5


このような実務の背景としては、会社法14条1項、会社法14条2項があるので、「ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」といえるくらいの地位を与えられている人と契約すれば保護される可能性が高いこと、及び特に決裁が済んでいれば、会社としての法律行為を行う効果意思は存在し、後はそれを表示した人が「使者」に過ぎなくとも契約は成立したと考えられること(特にその後会社がその履行に向けて行為した場合には「承諾の意思表示と認めるべき事実」(民法526条)と言える場合も多いだろう)等が考えられます*6


 これに対し、新規取引先等の場合には、代表権・代理権の有無は大変重要な問題です(この確認をおろそかにすると有名な会社を騙った取り込み詐欺的な被害にあったりしかねません)。まあ、この調査をどこまでやるかは1つの問題ですが、登記を取ったり、調査会社を利用するのは、(後者の場合、信用・債務履行能力の側面が強いと思われますが)このような点の確認という面もあるでしょう。


 いずれにせよ、代理・代表というのは、実務では頻繁に行われ、あまり深く考えられないことも多いのですが、このような点は決しておろそかにしてはいけない基本だなぁ、と思うところです。

まとめ
 以上で契約書関係の4回の連載は終わり、来週からは別のテーマに移行します!
 なお、特に上記の実務の背景たる法律論については、まだ十分に詰められておりませんので、皆様のご意見をお待ちしております。

*1:事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

*2:職務権限規程を出して下さいというと実務では変な人だと思われるでしょう。

*3:場合によっては代表取締役社長がサイナーだが、取締役の決議がないと契約が締結できないという場合があるが、今回は割愛します

*4:「決裁権限規程と稟議書を出して下さい」とかいうと、実務ではおかしな人だと思われるだろう。

*5:怪しい場合にはこちらの地位を上げて「こちらの都合で申し訳ないのですが、もう少し格が高い方をお願いします」等という感じでしょうか。ご参考

*6:この辺りは詰めて考えていないので、詳しい方はぜひ教えて下さい。なお、最悪の場合使用者責任民法715条)を追及することになるでしょう。

ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第8回契約書チェックのポイントその3

ITビジネスの契約実務

ITビジネスの契約実務

1.はじめに
 契約書チェックのポイント第三回で最終回のつもりです。契約書チェックは多くの法務パーソンの皆様が日常的にされていると思いますので、重要性が高く、その結果、大分量が多くなりました。もちろん、実質面に入れば無限に続きそうな位ありますが、この連載の目的とは外れるので、この辺で一区切りとさせて頂きたく存じます。



2.ストーリーパート
「世間ではプレミアムフライデーとかいうものが始まったらしいですが、弊社はどうなんでしょう?」


ある月末の金曜日の昼休み、僕は井上先輩と昼ご飯を一緒に食べていた。


「うちは有給休暇の半日単位取得が可能。今日の午後半日有給を申請すればいい。」


即答する井上先輩。


実質は同じなのだろうが、「有給休暇の半日単位取得」と呼んだ瞬間に、プレミアム感が激減するのはなぜだろうか。


「あ、今日は契約書のレビューをしないといけないので、午後は休めないです。うちの雛形をいじるのは慣れてきましたが、相手のドラフトにコメントを入れながら直すのは大変ですね。」


「今回は二人でレビューするだけだが、大きなプロジェクトでは、法務3人が弁護士先生と営業のコメント・修正を踏まえながら一条一条検討していくという、カオスな状態が出現する。」


「ひえーっ、ワードの修正履歴*1が超複雑になりそうです。」


「ワードの個人情報削除機能で保存時に自動的に同じ色にする方法を取る人もいるが、これだと消されたものが元々どちらが書いたものだったのかが分からなくなる等混乱が発生するので、基本的には、最後に修正履歴をまとめるしかない。ワードの文書の『比較』機能*2を利用して、元のバージョンと最終版と比較するのがよいだろう。その時は、比較元のバージョンをクリーンにすることが前提となるので、『貴社の修正をクリーンにさせて頂きました。』等と説明をするのがよいだろう。」


「確かに、その方法は分かり易いですね。」


「ただ、いくら綺麗なものができても、それで安心はできない。」


「ど、どうしてですか?」


「例えば、コメントには、営業だけに読んで欲しい『内部注』と、先方に見せる『相手方用コメント』の二種類がある。これを1つのファイルに書き込んで営業に送った場合、どういうリスクがある?」


「う〜ん、どういうリスクでしょう?」


営業が内部注を削除せず、そのまま先方に送ってしまう。」


「え!? そんな恐ろしいことが起こるんですか!?


「営業は忙しいから、法務のチェックを単なる『儀式』としか思っていないこともある。その場合、中を見てその中に内部注と相手方用コメントの二種類があることを認識して、内部注を削除するといった手間をかけると思うか?」


「思いません。。。」



「だからこそ、営業がミスをするリスクを十分理解しなければいけない。時間と手間が掛かるので概ね人を見て決めるべきだが、『営業用ドラフト』と『相手方用ドラフト』の2つのバージョンを作成するのが1つの手だな。」


「それはまた面倒ですね。」


「事案によっては、内部注としても読めるし、そのまま相手方に送られても問題がない表現を使うこともできる。


【本契約の趣旨からは、本条は相互的にすることが合理的と思われます。】
【本件のような取引で通例的な表現に修正させて頂きました。】
【事前に包括的に同意するのではなく、個別に承認を申請して頂き、合理的理由がある場合には同意するという対応が原則かと存じます。】



こんな感じの表現であれば、きちんと読む営業は「なるほど、フムフム」と読んで場合によってはフィードバックをもらえる。これに対し、読まない営業はそのまま相手方に投げるが、それでも害はない。」


「そんなテクニックもあったのですね。」


「コメントの内容によってはやはりそういう表現による対応ではうまくいかないこともある。その場合にはメール本文に『なお、添付のコメントは〜を前提としております。』等と書いたりすることもできるが、営業がメール本文を含めて丸ごと相手方に転送することもあるので、安心はできない。」



「恐ろしいですね。。。」



「営業の意見を聞かなくとも一義的に修正できる場合にはこういう中立的コメントで対応できるが、やはり営業の意見によって修正内容が変わる場合には、内線とか会議等によって知りたい情報を入手して、その上で修正するというのが本筋だろう。結局、自分と相手がミスをすることを前提に対応する必要がある、ということだな。」


ミスを前提に対応する、一見簡単そうに見えて実は難しそうな話に、一流法務パーソンへの道の険しさの一端を垣間見た気がした。



3.解説のようなもの
 修正履歴については、特に自社の複数人で修正を入れる場合、自社の修正か先方の修正かがごちゃごちゃにならないように整理する必要がありますが、手作業は面倒です。ここで、最初の修正はとりあえず内部では普通に修正履歴で対応した後、送信時に一度クリーンにして、ワードの比較機能を利用するのがよいでしょう*3。なお、二回目以降では、相手の修正をクリーンにしなければこの手はつかえません*4


 加えて、直接法務同士でやり取りする場合ではなく、営業等事業部門を通じてやり取りをする場合には、「営業がどう対応するか」が問題となることがあります。典型的には、「ここは最後はしょうがないと思いますが、今回は押し戻しましょう」といった内部注が入ったバージョンを何の躊躇もなく相手方に送るというミスがあります。


 これに対する対応としては、営業用と先方送付用の2バージョンを作成するといった方法もありますが、手間がかかります。1つの方法としては、
【本契約の趣旨からは、本条は相互的にすることが合理的と思われます。】
【本件のような取引で通例的な表現に修正させて頂きました。】
【事前に包括的に同意するのではなく、個別に承認を申請して頂き、合理的理由がある場合には同意するという対応が原則かと存じます。】

というように、「営業へのコメントにもなるが、これをそのまま転送しても問題がない、当たり障りのない表現を使う」というものがあり、これで対応できる範囲であれば、2つのバージョンを作る労力を削減できるのですが、修正内容によってはなかなかそういう当たり障りのない表現が使えない場合もない訳ではないので、どう対応するか悩ましいところです*5


 なお、このようなことをする営業の場合、法務の送ったメールそのものを先方に転送していることがありますので、メール本文に書いたコメントが転送される可能性にも留意が必要でしょう。

まとめ
これ以外にも、「重要!」とコメントすることの是非*6や、コメントを書く場合にワードのコメント機能(吹き出し)を使うか、本文に打ち込むか*7等様々な論点がありますし、合意後の製本等*8の問題もありますが、問題提起としてお読み頂ければ幸いです。
なお、この続きとして次回は、「同僚への配慮」をテーマにしようか、と少し考えております。

*1:なお、「最終版」で作業をしていると、クリーンなのか履歴付きなのか分からなくなる。「もらったドラフトが何か重いなと思って良く見たら別の案件の契約書に履歴付きで修正したものだった」とか、実際あります。

*2:バージョンによるが校閲→比較で出て来るはず。

*3:プライバシー機能で全部の修正を同じ色にするという方法がありますが、色が同じになるだけなので、複数人が削除等をしあうと混乱するのと、送られた相手は結局プライバシー機能を解除しなければならないということで、あまりお勧めしません。

*4:その場合「貴社の修正をクリーンにさせて頂きました。」とコメントすしましょう。なお、クリーンにすることで、どこが先方の提案で、どこが既に合意した部分かが分かりにくくなるというデメリットもあるので、万能ではありません。

*5:営業と事前に内線で協議する等が考えられます。

*6:相手がまともなら「重要!」と書いた部分は尊重してもらえるが、それ以外は全部戻して来てもおかしくない、だからといって全部「重要」と書いていたら書く意味はなくなる等。

*7:個人的には本文派だが、コメント機能派も根強い

*8:多分少し端に寄せてホチキスで止めてマスキングテープという「簡易製本」がポピュラーと思われますが、これは人毎にノウハウがあり、「同人作家」の「コピー本作成術」が生かせるところでもあります。