アホヲタ元法学部生の日常

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青少年の性に関する意識の不定性と法規制のあり方〜近親相姦&ロリコン&強姦&監禁のコンボを公然と擁護した裁判官

*今回のエントリは十八禁リンクを飛ばしてますので、その点をご注意願います

1.条例制定プロセスで検討されるべきであったこと
 先日極めて遺憾にも都条例(東京都青少年健全育成条例)が可決された。 遺憾というのは、プロセスとして検討すべき点の検討が十分になされたかという点である*1
 既に繰り返し論じられているので、ここではやや議論をはしょるが、(規制法の)「謙抑主義」と「思想信条の自由」という観点から、他の手段ではどうしても実現不能かという検討が不十分だったのではないか*2
 ここで、謙抑主義は、簡単に言えば法律・条例で義務を課し、刑罰の威嚇で守らせるということは、「最後の手段であるべき」という考え方で、刑法の教科書なら、どれでも冒頭に書いている内容である。啓蒙、自主規制、任意の指導等他の手段では目的を達成できない場合にはじめて規制立法が正当化される。
 「思想信条の自由」ないし内心の自由は、心の中で何を思っても自由という、憲法基本的人権の根源的考え方である。そして、その思想を「実行」するに至れば、他人の権利利益との衝突もあろうから、一定限度の規制はやむを得ないことがあるが、内心を「表現する」だけに留まれば、他人の権利利益を害する程度は一般に低い。しかも、自由な表現による自由な意見交換、問題提起は民主主義の根幹である。そして、曖昧な表現規制は、どこまでが問題なく、どこからが問題かが分からないために、過度に表現を抑圧する傾向が強い
 そのような観点から、規制の必要不可欠性の検討、他の手段による実現不能性の検討、規制内容の明確性の検討が行われるべきであったところ、それが不十分なまま、成立したように思われる。


 ここで、都条例については既に盛んに議論されているので、このエントリでは、「思想信条の自由」に関連して、「性、特に青少年の性に関する意識が人毎、そして時代毎に大きく変化する」という点に焦点を当てたい。
 この点は、一般には、「ヌード」についての意識の変化や、猥褻表現についての意識の変化*3が指摘されるが、ここでは、「青少年の性」そのものについてのエピソードを紹介したい。


2.近親相姦&ロリコン&強姦&監禁を擁護した裁判官
 都条例の言いたいことは青少年の性交渉を賛美擁護する表現青少年に悪影響を与えているということのようである。
 報道によれば、審議の際、少なくとも「 コミックエルオー(LO)」(2010年5月号、茜新社)、指定図書は尾崎晶氏の『人妻爆乳アナウンサー由里子さん』(10年2月、双葉社)の二冊が参考として議論されたそうである*4
どうも、都側はこれらの資料により、「子どもとの性行為を描いてこれを賛美する悪質な漫画が野放しになっている」と言いたいらしいところ、これらのうち、コミックエルオー(LO)は、表紙のセンスがよいことで有名なロリータ漫画月刊誌であるから、これが主に槍玉に挙げられたのだろう。
 内容は未確認であるが、茜新社の公式HPによれば、掲載漫画は以下の通りとのことである。

ヒヂリレイ
  …「ちさとおにいちゃま」
 上田裕
  …「お外で撮ろう」
 鬼束直
  …「アイワナビーPrincess's Pet.」
 スミヤお
  …「あなたの視界」
 いさわのーり
  …「今日のらぶらぶ。」
 オオカミうお
  …「眠り姫」
 嶺本八美
  …「来て!見て!イジって!」
 おおたたけし
  …「ナナのドキドキプレゼント 前編」
 鶴山ミト
  …「少女をお持ち帰りしてみた」
 Noise
  …「ママは小学30年生」
 浦井 民
  …「はるがきたから」
 MOLOKONOMI
  …「アカネちゃんと少年A」
 ねんど。
  …「シスタードリラー4」
 前島龍
  …「僕の妹がかわいすぎてやばい」
 あわじひめじ
  …「肉傘(ペニス)を挿す男」
 姫野蜜柑
  …「エレベーターアクション
 せいほうけい
  …「ロリコンを治すひとつの方法」
 うさくん
  …「マコちゃん絵日記」
 東山 翔
  …「ひがしやまんがの作り方」
http://www.akaneshinsha.co.jp/online/lo/lo-bn2010.htmより

タイトルから推測される内容は、近親相姦、ロリコン、強姦*5といった内容と思われる。
こういう内容について、「健全な常識人であればこれを擁護したり賛美することはあり得ないし、そのような表現は悪いものである」というのが立法者の考えであろう。しかし、このような考えは、「ある一定の時期のある限られた範囲*6思い込み」に過ぎず、人や時代によっては、違う考えは十分あり得る。その極北を例にとれば、健全な常識に基づいて判決を下す裁判官、しかも高裁の部総括にまでなった人が、これらを堂々と擁護したことさえあるのである。


 ここで、尊属殺違憲判決*7という有名な最高裁判決がある。これは、昭和48年まで、親等の尊属を殺すのは道徳に反するから普通の殺人より重くし、必ず実刑にするという規定があったが、やむを得ない事情*8で娘が父親に手を掛けたという事件が発生した。被告人*9を執行猶予にしてあげたいが、尊属殺人だと執行猶予にできず極めて不当な結果になる。控訴審は、刑法の尊属殺人罪をそのまま適用して実刑としたが、最高裁尊属殺人罪を違憲とし、控訴審判決を破棄して、被告人を執行猶予とした。これをきっかけに尊属殺人罪が刑法改正で削除されたというのがこの事件についての一般的理解である。
この理解は間違ってはいないが、実は重要な事を忘れている。東京高裁の裁判官*10が、この事案では実刑やむなしと判断したことである*11
 なぜ、そのように判断したのか。それは、東京高裁の裁判官が父親に同情したのである。

では、ここで、東京高裁の裁判官が父親に同情したところの本件の事情をかいつまんで説明しよう*12

被告人は、満14才になって間もない中学2年生の昭和28年3月頃、父親(「殺人の被害者」)は妻の眼をぬすんで非道にも被告人を無理に姦淫しそれを契機としてその後も不倫行為を反覆した。被告人が約1年後、そのことを母に訴えてからも父親の行為はやまない。被告人は母親や親族の者の協力により再三父親の魔手からの脱出を図ったが、その都度失敗して幸雄に連れ戻され、依然不倫な関係を継続することを余儀なくされた。結局被告人は五人も父親の子を産まされ、一時は逃げ出すのを諦めた。
その後被告人の理解者が現れ、父親から離れて被告人と結婚しようとしたが、被告人は途中で父親に発見されて無理矢理に連れ戻されてしまい、その後は近所への日常の用事以外には被告人の外出、出勤をも許さず、自らも仕事を休んだりして、被告人の行動を監視することが多く、在宅中は連日のように昼間からでも飲酒しては結婚反対乃至妨害の脅迫的言辞を繰返して被告人をおどし、夜は疲労に苦しむ被告人に対し仮借なく性交を求め安眠を妨害した。
その中で被告人は、独り煩悶、懊悩し、食欲も減退し、それに睡眠不足なども加わって心身共に疲労するに至った。そして遂に父親をあやめてしまった。それが昭和43年9月25日、つまり最初に強姦された15年以上が経過した時点であった。

 
このように本件を要約してしまうと*13
「こんな、近親相姦&ロリコン&強姦&監禁のコンボの悪魔のような父親に東京高裁が同情したのではなく、単に法律が違憲とまでは言えないから、法律上実刑にするしかなかったと判断しただけなのではないか?」
と思う向きもあろう。

しかし、判決時の説諭(いわゆる「お言葉」である*14)の中で、東京高裁部総括の裁判長であった井波七郎裁判官はこう述べた。

被告人とお父さんの関係は、いわば『本卦がえり*15』である。大昔ならばあたりまえのことだった。ところで、被告人はお父さんの青春を考えたことがあるか。男が三十歳から四十歳にかけての働き盛になにもかも投げ打って被告人と一緒に暮した男の貴重な時間をだ。
津田岳宏「賭け麻雀はいくらから捕まるのか〜賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点*16」169頁


この記載を読んだ時、一瞬目が点になった*17が、これを冷静に受け止めるべきである。*18この裁判官は「父親が14歳の娘と性交渉をするのは昔はよくあったことで、(歪んではいるが)これは父親の愛なんだから、被告人はもう少し父親の気持ちを理解するよう努めるべきだった」と言おうとしたのだろう。少なくとも、立法に携わった方達が若かった昭和40年代は、「常識に従って裁く」裁判官はこんな考えを堂々と開陳していたのである。人によって、そして時代によって、青少年の性に関する意識は大きく変わり得るのであり、少なくとも「一つの考え方」を押し付け、それに反する表現を抑圧することはあってはならないだろう。

まとめ
このような人毎、そして時代毎に大きく変わる青少年の性に関する意識に関し、少なくとも「どう考え、どう表現すべきか」について、ある時代の一部の人が「正解」を決めて規制することは、殊に謙抑的であらねばならない。曖昧かつ広範な規制は、青少年の性の望ましいあり方を「議論」することについてすら不当な制約をはめることになる。
少なくとも、井波判事のエピソードや、同種の問題が、立法過程で議論されたとは聞かない。
今一度、思想信条の自由と謙抑主義の観点から、再考すべきだろう。


追記(1/27):一応、なぜ「当時の裁判官がこう考えたのか」についての仮説を説明しておきたい。

もちろん、本当のところは、本人しかわからないのだが、多分、高裁裁判官は年齢が高い人が多く、井波裁判官も戦前の「物の考え方」が体に染み込んでいたのだろう。戦前の家父長は、子供、娘に対して絶対的服従を強いていた。「子供達に対しては絶対の統制権がある(中略)家父長が家の全権の代表であり、子供は完全人格として認められない。*19」等と評される。
本当のところはわからないが、井波裁判官はこのような家父長の統制権的な考えによって、父親側に同情した可能性がある。
もし、そうだとすると、井波裁判官のパーソナリティの問題*20ではなく、考え方が時代の影響でこうまで変わり得るという例になろう。

*1:機会があれば内容も検討してみたいが、現時点では、残念ながら、内容を十分に検討するに至っていないので、内容についてはさて置く。

*2:なお、規制手法の問題や立法事実の問題等、他の問題も多いが、全て論じることはできないのでご了承いただきたい。

*3:チャタレイ婦人の恋人は今猥褻とはみられない等

*4:http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/story.html?q=cyzo_21Jan2011_20301。なお、同記事の提起する、これらの書籍が規制済みで新たに規制を設ける理由にならないという点は重要な問題であるが、本論との関係でひとまずおかせていただく。

*5:正確には眠らせた場合準強姦になる可能性が高いだろう

*6:例えば都議会多数派

*7:最判昭和48年4月4日

*8:具体的内容は後述

*9:娘さん

*10:合議体であるから裁判官三人

*11:そうじゃなければ、最高裁で逆転違憲にはならない。

*12:高裁判決の認定事実をかいつまんで要約しているので、やや表現が固い

*13:要約方法の問題ではない。高裁判決に準拠している。

*14:お言葉については、

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

)参照

*15:元に戻るという意味

*16:近代麻雀漫画生活様にて取り上げられていた本であるが、賭博論としても非常に面白い。機会があれば別途紹介したい。

*17:二次元ならともかく三次元で、目の前に「被害者」がいる訳ですからねぇ…

*18:この裁判官の考え方の当否はともかく、

*19:http://www1.tcue.ac.jp/home1/c-gakkai/kikanshi/ronbun8-4/shen.pdfより

*20:当時の人は誰もそんな風には考えていなかったが、井波裁判官だけがこのような(当時においても)異端な考えを持っていた

ハーレム契約を違法とした判例〜オタク判例百選第4事件

夜明け前より瑠璃色な 通常版

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1.はじめに
 いわゆる美少女ゲームにおいては、「ハーレム状態」、即ち1人の男性主人公と多くの女性キャラが同居し、性関係を取り結ぶ状態が頻繁に見られる。
 例えば、「夜明け前より瑠璃色な」においては、義妹の麻衣、姉のさやか、「ホームステイ」に来たフィーナ、その付き添い人のミアが朝霧家にて主人公の達哉と同居し、かつ攻略対象となっている*1
 かかるハーレム状態は、一部の男性陣にとっては夢や理想の状態と言えようが、現実は厳しい。高等裁判所は、ハーレム状態を設定する契約は公序良俗違反の違法な契約であり、無効としている。


2.事案と判旨
 この裁判例は、東京高裁平成12年2月30日判決*2である。
 事案は以下の通りである。

Y女は大学一年生であった平成九年秋、アルバイト先でX1(男)と知り合い親密になった。当時、X1はX2(女)と同棲中であった。YはやがてX1らの同棲するアパートへ外泊するようになり、平成一〇年八月三日、ここでX1X2とともに男一人女二人の同棲生活を開始するに至った。この同居は、平成一一年三月一六日にYがアパートを出るまで継続した。そして、平成十一年三月にYが自宅に戻った後も、Yを連れ戻そうとのX1X2による働きかけは続いた*3。その後、X1X2は、「生活費として各自が一ケ月十六万円ずつを負担しX1に管理させる旨の合意が三人の間で平成一〇年八月五日に成立していた」として、立替えた生活費その他の費用の支払を求めて提訴した。

要するに、ハーレム生活をやめて出ていった女性に対し、男性とまだハーレム生活をしている女性とが、ハーレム契約に基づく支払を求めた事案と言えよう。

 この事案について、東京高裁は

X1X2が主張する生活費に関する取決めの性格につき、単なる共同生活における費用の負担ではなく、X1とX2・Yとの聞の性的交渉を前提とした男一人女二人による同棲生活を維持するための費用負担に関する合意と認定し、このような合意は善良な風俗に反し無効である

とした。


3.判決の理由について
 公序良俗違反(民法90条)というのはある契約等が社会の一般的秩序または道徳観念に反するとき、すなわち、その社会的妥当性を欠くときに、無効となる(90条)というものである*4

 上記高裁判決は一般論として、「婚姻や内縁といった男女間の共同生活は、本来、相互の愛情と信頼に基づき、相手の人格を尊重することにより形成されるべきものであり、それ故にこそ、その共同生活が人間社会を形づくる基礎的単位として尊重されるのである。法は、このような社会的評価に基づいて、この男女間の共同生活を尊重し擁護している。そして、このような人間相互の愛情と信頼及び人格の尊重は、その本質からして、複数の異性との問に同時に成立しうることはありえない」と述べ、一般論としてハーレム状態を否定した。

 その上で、本件につき、「X1X2とYの三者による同棲生活は、仮に各人が同意していたとしても、それは単に好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的で、刹那的、享楽的な生活であり、現に三人の共同生活では、相互の人間的葛藤から激しい対立関係が生じ、お互いに傷つけ合うに至っている。そして、このような共同生活によって、親族その他の第三者にも相当の被害を生じている。このように、X1X2とYの三名の男女による共同生活は、健全な性道徳に悖り、善良の風俗に反する反社会的な行為といわざるを得ず、社会的にも法的にも到底容認されるものではない。そして、それが本来の愛情と信頼に基づくものでないからこそ、生活費の分担を含めた前記のような取決めが必要となり、その取決めによって各人の自由を制限し、その収入を管理してまでも、異常な共同生活の維持継続を図り、かつ共同生活からの離脱を阻もうとすることとなるのである」として、公序良俗違反として無効とした*5


4.判例の射程を読む
 この判決は、一般論としてハーレム関係、即ち主人公が複数の女性に対し同時に愛情を育むことはあり得ないと判示し、その上で、具体的にハーレム契約(ハーレム関係をとりむすび、その費用等について分担する契約)が善良な風俗に反するとして無効としている。ハーレム関係に対して、非常に厳しい判決とも読める。

 もっとも、現在は性に対する社会の考え方は変化し、しかも多様化している。この中で、ハーレム関係だからといって、全てこれを否定することは困難であろう。本判決は、「性に関する社会の考え方が急激に変化し多様化している現在、あるべき男女関係の姿を提示して、それに反する行為を一律に反良俗的なものとすることには困難がつきまとう。そうであるからこそ、事実認定において「好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的で、刹那的、享楽的な生活」である点に言及し、当該同棲生活の反良俗性を強調したとも考えられる」と評されている*6
 このように本判決を読めば「好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的で、刹那的、享楽的な生活」でないハーレム関係はなお有効と解することも可能である。

 こう読めば、例えば、いわゆる鬼畜モノのハーレム関係は、いかに女性が同意していても無効であるが、上記けよりなのような関係であれば、なんとか有効と解することは可能であろう。

まとめ
 ハーレム関係を否定するような判例が出されているが、判例の射程を正しく捉えれば、一律にハーレム関係を否定しているとまでは読めない。むしろ、好奇心と性愛の赴くままに任せた場当たり的で、刹那的、享楽的でないハーレム関係は十分有効と読める。
 判例を読む際は、一面的な結論のみに左右されず、その理由付け、更にはその背景事情をとらえることで、正しく判例の射程を把握する必要があるのである。

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*1:他の攻略対象に鷹見沢菜月等がいるが、同居はしていない

*2:判タ一一〇七号二三二頁、「私法判例リマークス2004年上」6頁

*3:なお、Y、X1双方の親を交えた話合いにより、平成一〇年一〇月以降Yが支出した生活費の過払分およびX1による暴行の慰謝料等としてX1がYに二○万円を支払うことで示談が成立した。

*4:林良平編「注解判例民法」p285より

*5:このような取決めや合意を有効として、それに基づく請求を訴訟手続によって認めることは、社会的、法的に容認され得ない善良な風俗に反する行為を、裁判所が法の名の下に擁護し助長することにほかならず、許されるものではない。したがって、X1X2が本訴各請求の根拠とする生活費負担の取決めないし合意は、仮にその事実があったとしても、「善良な風俗に反するものとして無効というべきである」と判示

*6:上記「私法判例リマークス」

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それ何てエロゲ? な判例〜オタク判例百選第1事件 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常という記事を書いたところ、大変ありがたいことに、大量発生様に、東京地判昭和58年3月1日という判例を教えていただいた。事案は、

被告人は、路上で見かけた若い女性を言葉巧みに誘い、自己に霊感があるものと誤信させた上、『あなたは病気にかかっており、霊感のある自分にしか治せない』などと嘘をつき、病気を治すためには「霊感治療」として被告人とのセックスが必要と装って、その女性とセックスした*1

 というものである。その後、告訴をした被害者2人について準強姦罪で起訴された。

 この「治療と称してセックス」というパターンもまた、エロゲによくあるパターンである。例えば、「Dr.ペコ秘密の診療所」というゲームにおいては、

賑やかな繁華街から一本外れた閑静な道の、お世辞にも綺麗とは言えない雑居ビルの階段を登っていくと、そこにはとある診療所がある。
依頼人は大体が若い女性。患者が現れると、ペコは患者にカウンセリングという形式で話を聞きながらアソコの形状や臭いを変え、そして仕上げに彼女達自身にエッチな治療を施術することで悩みを解決していく。
http://www.vitamin-soft.com/peco/peco_sto.html
*18禁ですので、18歳未満の方はアクセスしないで下さい。

といったストーリーになっている。もっとも、ゲームの方は、実際に女性が悩んでいるのを解決してあげるのに対し、本件は、悩んでもいない女性に「あなたは病気だ!」といって困惑させた上で、「霊感療法」と称して行為に及んでいるのだから、女性の自由を害する程度は、本件の方がはるかに高い

 準強姦罪は刑法178条に規定がある。

178条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をし、又は姦淫した者は、前二条の例による(注:強姦罪、強制わいせつ罪と同じ処理になる)。

 この事案につき東京地裁は、被告人の行為は準強姦罪にあたらないとして、
自称霊媒師の被告人を無罪
 とした。


 これには有名な刑法学者である大谷實教授*2も驚いたらしく、「重要判例解説(昭和58年度)」p142以下の「刑法判例の動き」において

強姦罪に関連しては、東京地判昭和58年3月1日が参照に値する。被告人は、路上で女性を呼び止めて喫茶店へ誘った後、ラブホテルへ誘い込み、霊感による性器治療の名目で姦淫行為に及んだというものであるが、
抗拒不能ならしめる実質を有する行為として準強姦にあたるとしたものである。
ジュリスト「重要判例解説(昭和58年度)」p145

と、完全に判決の結論を勘違いして論評してしまっている。



 もっとも、この判決は学会上賛否両論があるのであり、別に総スカンを食らっている状態ではない。
 この判決は以下のように述べる。

「性行為について承諾がある」「場合には、一般に暴行・脅迫により相手方の自由意思を無視して行われる通常の姦淫の場合に比べ、性的自由に対する侵害の程度が際立って異なっており、」「準強姦罪の成立を認めるためには」「承諾があったにもかかわらずなお暴行・脅迫と同程度に相手方の自由意思を無視したものと認めざるを得ない特段の事情の存することが必要」であるところ「霊感療法にある種のリスクが伴うことを承知しながら、なお、」「試しにそのような治療を受けてみてもよいと自らの意思で決め、これに応じる選択をした」ものと認められる。すると「なお暴行・脅迫と同程度に相手方の自由意思を無視したものと認められざるを得ないような特段の事情については、本件の全経過に徴してもこれを認めることができないと言うべきである。」
東京地判昭和58年3月1日刑事裁判月報15・3・255

 この点を少し分かりやすくすると、本件では、被告人の嘘によって被害者が「抗拒不能*3」となったかが問題となった。
 この抗拒不能については、学説上どの程度抵抗が困難になれば準強姦罪が成立するかにつき争いがある*4
 この点*5、本判決は特定の相手と性行為をもつことを認識・認容しても準強姦罪が成立する余地があり、そのためには被害者の承諾があったにもかかわらずなお暴行・脅迫罪と同程度に相手方の自由意思を無視したと認めざるをえない特段の事情が存在する必要があるという立場にたっている。
 大コンメンタール刑法も「被害者が当該性的行為をそれとして認識し、これを承諾しないしは認容している場合に、なおかつ抗拒不能として本条の成立を認めるためには、被害者の置かれた状況、行為者が作出した状況等を総合して、当該被害者に当該行為を承諾し、あるいは認容する以外の行為を期待し得ないと認められることを要しよう。*6」として基本的に同じ見解にたっている。

 問題は、この見解を前提に、本件で特段の事情があるかである。特段の事情の判断については、

被害者に行為者との間で性的交渉を持つことについての何らかの程度における認識がある場合として判例に多く見られる事例は、医師ないし医師と称する行為者が正当な医療行為を行うものと誤信している被害者に対して姦淫ないしわいせつ行為をする事案である。この種の事案にあっては、被害者が医療に必要な行為と誤信しているため、通常の意味での性的行為を行うという認識に欠ける場合が多く、そのような場合には、本罪を適用するのに特段の支障はない。そうでない場合でも、病気とそのための治療の必要性の告知という状況上、心理的にも物理的にも性的行為を拒むことを期待することは著しく困難な状況であったとして本条の成立を認めるべき場合が多いであろう
 大塚仁等編「大コンメンタール刑法第9巻」p78

という記載が重要である。
 要するに「病気と治療の必要性を告知すれば、女性は心理的にも性行為を拒むのは困難になることが多く、こういう病気だから治療が必要だと言って、性行為を内容とする「治療」を承諾させたという場合には特段の事情が認められやすい」ということである。
 そこで、原田*7らは少なくとも本件被害者らは「性的行為」としての「性器結合」を承諾したとはいえないのではないか等として本件において特段の事情を認め、準強姦とすべきだったとして本判決を批判する。
 これに対し、曽根*8は「彼女らが一通りの教育を受けた成人女性であり、性行為について一応の知識を有していると考えられる」こと等から特段の事情を否定し、本件判決に賛同する。

 この点の判断においては、本件の昭和58年(1983年)当時のオカルトブームの時代背景を理解することが重要である。バーチャルネットアイドルちゆ12歳様によれば

日本では、80年代にソッチ系の女の子が大量発生したことがありました。当時のオカルト雑誌「ムー」のペンフレンド募集コーナーを見ると……。

 「前生アトランティスの戦士だった方、石の塔の戦いを覚えている方、最終戦士の方、エリア・ジェイ・マイナ・ライジャ・カルラの名を知っている方などと」
 「前世名が神夢、在月、星音という3人の男性を捜しています。早く目覚めて連絡を!!」
 「九燿、霊能者、超能力者、妖姫、闘竜、戦士の過去を持つみなさん! 歌巫女の私に連絡をください」
http://tiyu.to/title.html

 このようなオカルトにはまっている女性が多い時代背景からは、成人女性で一応性知識がある場合でも、霊感治療を信じて、自分は病気で、霊感治療によって治るんだ、だからこれは「治療行為」なんだと思って被告人の性交を受け入れてしまったという被害女性の思考経路は十分理解できるものであり、このような状況下では、まさに大コンメンタール刑法のいうところの心理的にも物理的にも性的行為を拒むことを期待することは著しく困難な状況」という他はないだろう*9

まとめ
 霊感療法と騙してセックスして無罪となった東京地判昭和58年3月1日刑事裁判月報15・3・255の裁判官が、当時の若い女性のオカルトブームという時代背景を理解していれば、十分に異なる判断になった可能性があるだろう。本判決は裁判官が時代の流れをきちんと把握していなければ誤判の恐れすらあるということを示すよい事例といえよう。

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謝辞:「大量発生」様には、本エントリで紹介した興味深い判例を教えていただきました。ありがとうございました。
    fuku-ji様には、その判例が「宗教判例百選」で紹介されていることを教えていただきました。ありがとうございました。

*1:大量発生様のコメント欄の事案のまとめが秀逸であったので、基本的に使用させていただいた。

*2:あんまり参考にならないが法学者を念能力で分類 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*3:抗拒不能心神喪失以外の事由で心理的又は物理的に抵抗が不可能ないし著しく困難な状態をいう、「大コンメンタール刑法9巻」p76

*4:学説のまとめは宗教判例百選(第2版)p226以下によった。紹介していただいたfuku-ji様に感謝いたします。

*5:A説はこれを緩く解する考えで、被害者が姦淫行為の意味について錯誤がある場合ばかりでなく、性行為に応じた動機あるいはその周辺事情に錯誤があるときにも「抗拒不能」とする説である。この説に対しては「このような錯誤があった場合に準強姦を認めると、売春代金を支払う振りをして情交した後踏み倒す行為も178条に該当することとなってしまう(前田雅英「刑法各論講義」p112)」といった批判がある。B説はこれを狭く解する考えであり、特定の相手方と性行為をすることを認識し、これを認容したならば、もはや準強姦罪は成立しないというものである。これに対しては、重大な錯誤に陥った結果暴行脅迫を受けた場合と同様に性的意思決定が害されて性行為に応じる場合もあるのだから錯誤があっても一切準強姦罪にならないという結論は不当といった批判がある。この中間の見解であるC説が本判決の見解

*6:p77

*7:原田保「霊感治療仮想による準強姦事件」『宗教判例の研究2』p241以下参照

*8:宗教判例百選p227参照

*9:そこで原田らの見解に賛同する。

本当にあった「逆転」裁判!〜オタク判例百選第2事件

逆転裁判4(通常版) 特典 オドロキヘッドフォン付き

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 本日、最新作「逆転裁判4」が発売される逆転裁判シリーズとは、弁護士である主人公、成歩堂龍一*1が、裁判のための情報・証拠品を集め、そこで得た証拠を嘘をついている証人に「異議あり!」と叫んでつきつけ、これを武器に依頼人である被告人の弁護を行う法廷バトルゲームシリーズである。

 この逆転裁判は、かなり現実の裁判と異なっていることについては、壇弁護士による「異議あり! 嘘です」: 壇弁護士の事務室をはじめとして多く指摘されているところである。
 客観証拠と矛盾する供述をしただけで、いちいち「異議あり!」なんて叫んでいたら、単なる「威嚇的な尋問(刑事訴訟規則199*2条の13)」であり、流石にそんな弁護士はいない*3



 ところが、逆転裁判とよく似た事例が実際に存在し、最高裁判決にまでなっている。


 逆転裁判(初代)」の第四話、第二法廷パートまでを要約すると以下のようになる。

主人公成歩堂龍一のライバルであり旧友でもある御剣怜侍が殺人容疑で逮捕される。
公判では、まず糸鋸刑事、大沢木ナツミが証言したものの、双方よく調べなおすようにと言うことで閉廷になる。
その後の法廷では、狩魔検事が三分での終了を予告し、管理人のおじさんの証言の後、強引に判決を言い渡させようとする。
一度は裁判長も納得し、御剣怜侍有罪判決が下される。
ところが、矢張政志が異議を唱え、この異議が認められ有罪判決が撤回される。
http://homepage1.nifty.com/PC-GAMER/games3/gyaku/gya_h3.htm参照


 これと同様の
   判決→異議→撤回→違う判決
 という事件が実際にあった。

最判昭51年11月4日刑集30巻10号1887頁の事案は、単純な窃盗事件であった。
第一審裁判所は被告人に対し判決の宣告をした際、一度懲役一年六月、五年間の保護観察付き刑の執行猶予とする旨の主文を朗読した。
それから、執行猶予期間は生活に気をつけるように等と説示し、控訴期間等の告知をしたところ、列席の裁判所書記官から、執行猶予にはできない趣旨の指摘をされた。
 驚いた裁判官は、被告人を在廷させたまま記録を検討し、約五分後に、「先に宣告した主文は間違いであつたので言い直す」と告げて改めて懲役一年六月の実刑を宣告したのであった。

 要するに、
執行猶予付き判決→書記官の「異議*4
→判決撤回→実刑判決

となったのである。

 ここで付言しておくと、執行猶予がつくか、実刑になるかは自白事件においては最大の関心といってもいい程重要なことである。執行猶予がつけば、期間満了まで犯罪を犯さなければ*5刑務所に行かなくてすむ。しかし、実刑判決が確定すれば、刑務所に行かなければならない。だからこそ、執行猶予がつくかは重大な問題であり、弁護人・検察官は自己の主張が通るような証拠を集めて意見を述べ、また裁判官は悩みに悩んで執行猶予をつけるかを判断することになる。

 さて、書記官がなぜ「執行猶予はできない」という趣旨の異議を述べたかといえば書記官の勘違いである。
 刑法25条2項は再度の執行猶予について定めている*6。この規定は分かりにくいので要約すると

①過去に禁固や懲役に処せられたが執行猶予がついた場合は、今回1年以下の懲役・禁固を言い渡すの場合にのみ執行猶予をつけられる。
②仮に今回1年以下の懲役・禁固を言い渡す場合でも、過去に言い渡された執行猶予付き禁固・懲役が保護観察*7付きで、今回の犯罪が保護観察期間内に再度犯した場合には執行猶予がつけられない

 という制度である。

 この事案においては、被告人は過去に保護観察付きの執行猶予判決を受けており、今回の犯罪は、その保護観察期間内に犯したものであった。そこで、書記官は本件では執行猶予はダメだと思い込んでおり、執行猶予をつけた裁判官に対して「異議あり!」としたわけである。

しかし、刑法27条は猶予期間経過により刑の言い渡しの効力が失われるとする*8。大雑把にいえば「猶予期間の3年とか5年が過ぎれば有罪判決はなかったことになる」のである。
だからこそ、「判決時までに既に(中略)執行猶予期間を経過したときは、ここにいう再度の執行猶予ではな」い*9とされており、この事案も判決時までに執行猶予期間を経過した事案であった。
 要するに本件では

①前の執行猶予・保護観察つき有罪判決
②今回の事件
③前の執行猶予期間満了→①の有罪判決がなかったことに
④今回の判決

という経過だったので、保護観察期間中の犯罪であるにもかかわらず例外的に執行猶予をつけていい事案だったのである。だからこそ、最初に執行猶予つき判決をした裁判官の判断は正しかったのである。
 ところが、この書記官の勘違いは裁判官にも波及してしまった。あわてた裁判官は執行猶予をやめて実刑判決にしてしまったのである。


 かわいそうなのは被告人である。せっかく執行猶予で外に出られると思ったのに、直後に「やっぱり実刑」といわれてしまったのである。
 「そんなのはおかしい!」と控訴をしたものの、その控訴も棄却されてしまった。


 もう、だめか...。


 しかし、この万事休すの状況でもあきらめなかった関弁護人*10は、上告して、この判決の不当性を訴えた。そして、団藤裁判長の最高裁第一小法廷は被告人を救ったのであった。
 第一審が一度宣告した判決を言い直したことは違法ではないとしながらも

第一審裁判所の量刑は、本件の諸般の事情、ことに第一審の裁判官がいつたん宣告した主文を変更するに至つた経過を考慮するときは、甚しく不当なものというべきであつて、同判決及びこれを是認した原判決を破棄しなければ著しく正義に反する

として、自ら執行猶予付き判決を下したのであった。

まとめ
 逆転裁判にあるような「判決→異議→撤回→別の判決」というのは実際に存在した。
 そして、この事案では、弁護人があきらめずに「異議あり!」といった(上告を申し立てた)ことにより、被告人に利益な執行猶予付判決が下っている。
 「逆転裁判」は実際の裁判実務とは違う点があるが、成歩堂弁護士の、どんな状況でもあきらめずにおかしなところはおかしいと申し立てる点は、現実の刑事弁護人も見習うべきであるといえよう。 

付記:最高裁は、結論的には被告人を救ったが、「一度宣告した判決を言い直したことは違法ではない」と判示した点は「このような『言直し』を認めることは、法的安定性を害し、裁判所に対する信頼を失わせることになる。はっきり違法というべきである。*11」等と批判されている。
 最高裁判決の評価をひとまずおくとしても、判決「言い直し」が裁判所への信頼を失わせることは間違いがない。多数の事件を抱えながら全てに適法かつ妥当な処理をしなければならない裁判官は大変であろうが、頑張っていただきたいものである*12

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参考:判決全文

            主    文
原判決及び第一審判決を破棄する。
被告人を懲役一年六月に処する。
但し、この裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予し、その期間中被告人を保護観察に付する。
         
            理    由
 (上告趣意に対する判断)
 弁護人関孝友の上告趣意のうち、憲法三一条違反をいう点は、実質は単なる法令違反の主張であり、その余の点は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の適法な上告理由にあたらない。
 (職権による判断)
 しかし、所論にかんがみ、職権により、次のとおり判断する。
 一 まず、第一審裁判所がいつたん宣告した判決の内容を主文を含めて変更し、あらためてこれを宣告したことは、違法ではなく、変更後の判決は、有効なものということができる。
 (一) 原判決の認定によると、第一審の単独裁判官は、昭和五〇年四月一六日の判決宣告期日において、併合審理していたA、B、Cの三名の共同被告人とともに、被告人に対し判決の宣告をした際、いつたん懲役一年六月、五年間の保護観察付き刑の執行猶予とする旨の主文を朗読した後、前刑の執行猶予期間が既に経過しているので保護観察付き刑の執行猶予にしたものであること及び執行猶予期間中は善持しなければならないことなどを説示し、控訴期間等の告知をしたところ、列席の裁判所書記官から、被告人の犯行が前刑の保護観察期間中のものである旨指摘されたこともあつて、他の共同被告人に対し判決の宣告を終つた旨を告げてこれを退廷させたうえ、被告人を在廷させたまま記録を検討し、約五分後に、先に宣告した主文は間違いであつたので言い直すと告げて改めて懲役一年六月の実刑を宣告した、というのである。
 記録によると、第一審の判決書には、右の変更後の判決の主文及びこれに応じた適用法条が記載されており、罪となるべき事実として、「被告人は、第一 C、A、Dと共謀のうえ、昭和四九年一月一七日午前一時ころ、神奈川県横浜市a区b町c番地先E駐車場において、株式会社E所有にかかる普通貨物自動車一台(時価五七万円相当)を窃取し、第二 C、B、Aと共謀のうえ、同年四月二九日午前〇時三〇分ころ、同県鎌倉市ab丁目c番d号先駐車場において、駐車中の普通乗用自動車内から、F管理にかかるカメラ一台および同人所有にかかるカメラ一台、サングラス一個、たばこ五個(合計時価四万三、九〇〇円相当)を窃取し、第三 同年九月九日ころ、同市ab丁目c番d号G方新築現場において、H所有にかかるトランジスターラジオ一台、電気ドリル一個、電気溝切機用一式(時価合計二方八、〇〇〇円相当)を窃取した」旨が認定されていること、被告人は、昭和四七年二月二九日静岡地方裁判所沼津支部において、窃盗罪、詐欺罪により、懲役一年六月、三年間の保護観察付き刑の執行猶予、未決勾留日数八四日算入の判決を宣告され、同年三月一五日に判決が確定し、本件各犯行は、いずれもこの保護観察付き刑の執行猶予の期間中に犯されたものであるが、第一審の判決宣告期日以前に右の執行猶予の期間が経過していることが、明らかである。 第一審判決に対し被告人から控訴があり、宣告により内部的にも外部的にも成立した判決の内容を変更したのは判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反であると主張されたが、原判決は、右の変更は適法であるとしてこれを斥け、控訴を棄却した。
 (二) 判決は、公判廷において宣告によりこれを告知し(刑訴法三四二条)、宣告によりその内容に対応した一定の効果が生ずるものと定められている(刑訴法三四二条ないし三四六条等)。そうして、判決の宣告は、必ずしもあらかじめ判決書を作成したうえこれに基づいて行うべきものとは定められていない(最高裁昭和二五年(れ)第四五六号同年一一月一七日第二小法廷判決・刑集四巻一一号二三二八頁、刑訴規則二一九条参照)。これらを考えあわせると、判決は、宣告により、宣告された内容どおりのものとして効力を生じ、たとい宣告された内容が判決書の内容と異なるときでも、上訴において、判決書の内容及び宣告された内容の双方を含む意味での判決の全体が法令違反として破棄されることがあるにとどまると解するのが、相当である。
 また、決定については一定の限度で原裁判所の再度の考案による更正が認められているのに対し(刑訴法四二三条二項)、判決については、上告裁判所の判決に限り、一定の限度でその内容の訂正が認められているだけであつて(刑訴法四一五条)、第一審及び控訴審の裁判所の判決にりいては、判決の訂正の制度が設けられていない。このことは、第一審及び控訴審の裁判所の判決は、その宣告により、もはや当の裁判所によつても内容そのものの変更が許されないものとなることを意味する。
 ところで、判決の宣告は、裁判長(一人制の裁判所の場合には、これを構成する裁判官)が判決の主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げることによつて行うものであるが(刑訴規則三五条)、裁判長がいつたんこれらの行為をすれば直ちに宣告手続が終了し、以後は宣告をし直すことが一切許されなくなるものと解すべきではない。判決の宣告は、全体として一個の手続であつて、宣告のための公判期日が終了するまでは、完了するものではない。また、判決は、事件に対する裁判所の最終的な判断であつて、宣告のための公判期日が終了するまでは、終局的なものとはならない。そうしてみると、判決は、宣告のための公判期日が終了して初めて当の裁判所によつても変更することができない状態となるものであり、それまでの間は、判決書又はその原稿の朗読を誤つた場合にこれを訂正することはもとより(最高裁昭和四五年(あ)第二二七四号同四七年六月一五日第一小法廷判決・刑集二六巻五号三四一頁参照)、本件のようにいつたん宣告した判決の内容を変更してあらためてこれを宣告することも、違法ではないと解するのが相当である。このように解することの妨げとなる法令の定めのないことはいうまでもなく、また、このように解することにより被告人その他の当事者に不当な不利益を与えたり、手続の明確性・安定性を害するものでもない。
 (三) 本件についてみると、第一審裁判所の裁判官は、いつたん保護観察付き刑の執行猶予の判決を宣告した後、その内容を変更して実刑の判決を宣告したが、その変更は、判決宣告のための公判期日が終了する以前にこれを行つたことが明らかであるから、変更後の判決が第一審裁判所の終局的な判断であつて、その内容どおりの判決が効力を生じたものというべきであり、かつ、変更後の判決内容にそつた判決書が作成されているのであるから、第一審判決及びこれを是認した原判決にはなんら法令の違反はない。
 二 しかしながら、第一審裁判所の量刑は、本件の諸般の事情、ことに第一審の裁判官がいつたん宣告した主文を変更するに至つた経過を考慮するときは、甚しく不当なものというべきであつて、同判決及びこれを是認した原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 すなわち、(一) 被告人には、前記のとおり、保護観察付き刑の執行猶予の懲役刑の前刑があつたが、第一審の判決宣告期日以前に執行猶予期間が経過し、刑の言渡しが効力を失つていたため、本件において被告人に対し刑の執行猶予を言い渡すことには法律上の支障はなかつた(最高裁昭和四八年(あ)第一三四九号同年一〇月二三日第三小法廷決定・刑集二七巻九号一四三五頁参照)。(二) 前記の経過に照らすと、第一審裁判官が保護観察付き刑の執行猶予を実刑に変更したのは、前者が実質的にみて妥当でないとの判断に基づくものではなく、前刑の保護観察中に犯した犯行であるため法律上執行猶予とすることが許されないとの誤解に基づくものと解するほかはない。(三) 被告人には、前刑の保護観察期間中に同種の犯行を繰り返したことなど責められるべき点があるが、他面、第一審判決において最も重いとされている同判決の判示第三の罪を含む犯行の手口が特に悪質なものではないこと、被害品はすべて被害者に返還されていること、兄が被告人の監督を誓つていることなどの情状もあり、これらと犯行の動機、被告人の年齢・生活歴性格、共犯者の量刑など諸般の事情をあわせて考慮するときは、第一審裁判官が当初被告人に対して宣告した保護観察付き刑の執行猶予が必ずしも不当なものであるとはいいがたい。(四) 被告人は、原裁判所においては量刑不当の主張をしなかつたため量刑についての判断を受ける機会を失したが、上述した事件の経過からすると、右の主張をしなかつたことについて被告人を責めるのは妥当ではない。これらの諸点を総合して考察するときは、第一審裁判官が当初に宣告した刑をもつて被告人に臨むのが正義にかなうものというべきであり、第一審判決及び原判決はいずれも破棄を免れない。
 (結論)
 よつて、刑訴法四一一条二号により原判決及び第一審判決を破棄し、同法四一三条但書により直ちに判決をする。
 第一審判決の掲げる証拠によると、前記犯罪事実を認めることができるので、同判決の掲げる法令のほか、刑法二五条一項、二五条の二第一項前段を適用して、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官大堀誠一 公判出席
  昭和五一年一一月四日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/F4C278EB735DD97C49256A850030AAE3.pdfより

*1:なお、4では主人公が変更される

*2:193条の13と書いていましたが、誤りです。亜留間次郎様訂正いただき、ありがとうございました。5/17

*3:と思われる。

*4:異議あり!」とまでは言っていないですが。

*5:もう少し正確にいうと保護観察の条件違反等の場合もありますが。刑法26条の2第2項等

*6:「(前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。」

*7:あまり参考にならないが専門書に見るスール制度研究 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照

*8:「刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。」

*9:大塚仁他「大コンメンタール刑法1巻」p515

*10:この態度は成歩道弁護士とも相通じるところがありますね。

*11:白取祐司「刑事訴訟法」p371

*12:なお、最近もhttp://d.hatena.ne.jp/Raz/20070308/1173318605といった事例が新聞沙汰になっている

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ttp://www.pix-trust.com/product/sizuku/index.html参照
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 このような「振られる」→「レイプ」→「同居生活*1」というパターンは、鬼畜ゲーのパターンとして、「よくある」ものと言えるだろう。
 
 著名な判例雑誌である判例時報190号21頁には、鹿児島地判昭和34年6月19日という判決が紹介されている。

本件は鹿児島のある地方の青年が婦女に結婚を申し込んで拒絶され、これを承諾させるためその婦女を連れ出し強いて姦淫したという事案である。
判例時報190号p21

 こんな、「振られる」→「強姦」→「結婚」というエロゲのような計画を実行に移した青年は、結局、婚姻を承諾してもらえず、強姦魔(強姦致傷*2)として逮捕された。
 被告人に惚れられたばかりにひどいめにあった被害者がかわいそうではあるが、ここまでの事案の存在ならば、まだ想像できなくもない。しかし、その後の展開がすごい



       弁護人が無罪を主張したのである。
なぜ、無罪か。


 弁護人は、この地方には婚姻に同意しない婦女を承諾させるためその婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」と呼ばれる慣習があり、被告人はこの慣習に従って本件行為に出たもので、違法性の認識を欠き故意がないと主張したのである。


 裁判所は当然のようにこの驚愕すべき主張を退けた。

少なくとも本件の如き自然犯にあっては違法性の認識は故意の成立要件ではないと解せられるのみならず被告人の当公判廷における供述同じく検察官に対する供述調書によれば、被告人が右の如き慣習が反社会性を帯びるものであることの認識を有していたことが明らかであるから被告人は違法性の認識を有していたものと認むべきであり、弁護人の右主張は採用しがたい
判例時報190号p22

と判示して、被告人を有罪とし、結局この青年は、懲役3年の実刑を受けることになった

まとめ
 事実は小説よりも奇なりと言うが、判例を探すとそれなんてエロゲ?」な事例がかなり出てくる。
 しかし、本件についてよく考えてみると、強姦致傷といっても、傷害結果は処女膜破裂という限りなく単純強姦に近い事案であり、被告人に累犯前科がない*3ことから、相当額を払って謝罪・示談をし、被害者に許してもらうことで、執行猶予もありえないわけではない*4事案であり*5弁護人がアホな無罪主張をしたせいで実刑が決まったという弁護過誤の事案とも言えるだろう。

参考:http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/950254.html三軒茶屋 別館様より)
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追記:当サイトは4月3日に30万アクセスとなりました。どうもありがとうございました。

参考:判決全文

判決
本籍 鹿児島県肝属郡(以下略)
住居 略
農業 甲野太郎
昭和12年5月27日生
右被告人に対する強姦致傷被告事件につき、当裁判所は検察官某出席のうえ審理を遂げ、左のとおり判決する。
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中30日を右本刑に算入する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和34年1月15日頃、その義兄である丙から早く婚姻するように勧められたので、被告人もその気になって丙に年頃の娘の紹介を依頼したところ、丙の計らいで同月19日鹿児島県肝属郡(以下略)乙野次郎方において、同人の長女A子(当20年)と会う機会を得たが、被告人は忽ち同女に思いを寄せるに居たり、その場で同女に婚姻の申し込みをなしその後二回にわたって同じ申込みを繰り返したが、同月30日には同女の兄B男を通じて右申込を拒絶された。然し、被告人はどうしても同女との婚姻を断念できないので、同女を強いて姦淫したうえ同女をして止むなく婚姻に同意させようと考え、同年2月5日丙方において丙、ならびに丁こと戊と相談の末、翌6日同女が鹿屋市所在鹿屋職業安定所に行くのでその帰途を3名で待ち伏せて無理にでもハイヤーに乗せてどこかへ連れて行き、更に婚姻の同意を求め、それでも応じないときは夜になってどこか知人の家に連行し、被告人において同女を強いて姦淫することに計画を決め、翌6日午後0時過ぎ頃、被告人等3名は前記安定所付近において同女を待伏せ、同女を付近の食堂に連れ込んだうえ、再び婚姻に同意するよう説得したが、同女に拒絶されたので、ここに、被告人等3名は前記計画を実行に移すべく意思を通じ、同日午後3時頃同市×先路上において被告人は前方より同女の手を引き、丙、戊等は後方より同女を押す等して同女を無理に前もって被告人が誘導して来ていたタクシーに乗せた上囎唹郡×町方面に連行し、同町所在の食堂において時間をつぶした後、同女をその自宅につれて帰ると欺いて再び同女をタクシーに乗せ、途中下車させてくれと懇願するにもかかわらず、タクシーの戸を押さえて脱出を不能ならしめたうえ同日午後6時過ぎ頃、同女を肝属郡×町×番地己方に連れ込み同日午後10時頃、被告人は前記連行により極度に畏怖している右A子を同所四畳半の間において仰向けに押倒し右手で同女の両手を同女の頭の上方に押えつけ、足で同女の股を蹴る等の暴行を加えて完全に同女の反抗を抑圧したうえ二回にわたり強いて同女を姦淫したがその際同女に対し治療5日間を要する処女膜裂傷を負わせたものである。
(証拠の標目)

(法令の適用)

(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は「被告人の住居地である×町地方には婚姻に同意しない婦女を承諾させるためその婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」と呼ばれる慣習があり、右姦淫行為は一般に適法視されている。被告人も右慣習の存在により本件姦淫行為を適法行為と確信し、その違法性の認識を欠いていたから本件行為はその故意を欠くものである。」旨主張するが、少なくとも本件の如き自然犯にあっては違法性の認識は故意の成立要件ではないと解せられるのみならず被告人の当公判廷における供述同じく検察官に対する供述調書によれば、被告人が右の如き慣習が反社会性を帯びるものであることの認識を有していたことが明らかであるから被告人は違法性の認識を有していたものと認むべきであり、弁護人の右主張は採用しがたい。
よって主文のとおり判決する。
昭和34年6月19日
鹿児島地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 某
裁判官 某
裁判官 某

*1:実質的には監禁が多いだろう

*2:被害者が処女だったので、処女膜破裂の傷害を負わせた

*3:前科前歴については明らかではないが、法令の適用において累犯規定の適用がないことから少なくとも累犯前科がないことは明らか

*4:強姦致傷で執行猶予は難しく、示談をしてもなお2年や2年6月の実刑ということもある。ただ、軽微な傷害結果の場合、数百万円の慰謝料で示談をして懲役3年、4年間執行猶予の事案等もあるので、絶対に猶予がありえないわけではない。

*5:なお、訴訟費用を負担させていることから被告人にはある程度資力があることも分かる