アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

まどマギと税法〜「宇宙の会社からも税金が取れる法人税法を作るなんて、日本人は訳が分からないよ!?」

魔法少女まどか☆マギカ 3Dマウスパッド キュゥべえ

魔法少女まどか☆マギカ 3Dマウスパッド キュゥべえ

1.QBはぼろ儲け?
  いたいけな少女を騙くらかして、魔法少女にさせ、魔女に落とす際のエネルギーを得る*1
 QBは、様々なエネルギー発生源を調査し、その上で、第二次性徴期の少女の希望が絶望に相転移することが、最も効率よくエネルギーを生み出す方法だとの結論に至った。そして、世界中で魔法少女契約を結びまくっている。魔女図鑑に乗っている魔女は、その被害者の極一部に過ぎない。
  つまり、QBは、魔法少女契約によって、莫大な利益を上げている。財政難の日本政府は、QBに課税することで、一気に負債を帳消しできないか?


2.課税すべきは、QBではなくその裏にいる「一番悪い奴」!
 しかし、QBは、「僕らのエネルギー回収ノルマは、おおむね達成できたしね」 と言っているように、単なる営業マンに過ぎない。
 営業マン個人に対して課税できるのは、所得税であるが、その対象はQB個人の所得、つまり月給や、宇宙赴任手当*2、ノルマ達成ボーナスくらいである。この程度では、日本政府の負債を帳消しにすることはできない。
  やはり、QBにノルマを課して、エネルギーを吸い上げている主体が問題だろう。いってみれば、目的実現のためなら平気で人倫にもとるような行為をする電力会社が莫大な利益を上げているのであり、これを便宜的に宇宙電力株式会社(TEPCO*3と呼ぼう。


3.税法の基本的な考え方
 法人税法は、「益金」と「損金」と「所得」という3つの概念で税金を計算する。
 益金というのは別段の定めがなければ、会計上の収益である*4。収益は、魔法少女から得たエネルギー等であろう。
 損金は、別段の定めがない限り、原価、費用、損失である*5。奇跡を起こすのにかかったエネルギーや、ほむほむに殺されたQBへの*6補償が考えられる。
 そして、益金から損金を引いたものが所得とされる*7
 魔法少女からの莫大なエネルギーを日夜獲得している宇宙電力株式会社の所得は莫大だろう。
所得に税率を掛けたものが*8納めるべき税金ということになる。日本の法人の実効税率は約40パーセントと言われるので、QB達が得た莫大なエネルギー相当額の40パーセントは税金でもっていける。


 4.犯罪で得た収益でも良いか
 ここで、宇宙電力株式会社は、いたいけな少女を騙して魔女に落とすという犯罪行為でもって、収益を上げている。犯罪による収益も課税していいのか


この点、昭和17年頃の通達では違法収益には課税していなかったが、*9昭和23年の通達で方向転換し、違法収益にも課税するようになった*10現在は違法な利得も所得であることにほぼ異論はないとされる*11


 そう、思春期のいたいけな少女を食い物にして得た違法な収益も課税の対象である。


5.QBはPEである!
 ところで、宇宙電力株式会社は、宙の会である。こんな会社から法人税をぶんどれるのか?
 ここで、法人税法は、「内国法人」という概念を設ける。いわゆる日本の会社とイメージしてもらえば良いだろう。「国内に本店又は主たる事務所を有する法人」が内国法人である*12
 そして、法人税法2条1項4号は「内国法人以外の法人」を外国法人と定義する。そう、アメリカに本店がある会社はもちろん、宇宙に本店がある会社も、法人税法上は「外国法人」である。


 ここで、外国法人については、そもそも「国内源泉所得」つまり日本で得た収入しか日本は課税できない。二重課税を防ぐためである*13
 しかも、国内源泉所得のうち、事業所得、つまり、エネルギー収集等の事業によって得た所得の課税に関してはPE(恒久的施設)なくして課税なし*14という原則がある*15
 結構分かりにくいが、要するに、たまたま従業員が日本にやってきて契約を結んだだけで課税するのはひどいじゃないか、日本に支店等の恒久的施設(Permanent Establishment)がある場合にはじめて課税しようという原則である。


 宇宙電力株式会社は、QBがいるだけで、日本に支店はない。そこで、PEがないようにも思われる。
  しかし、法人税法は課税するために広い網を張っている。まず、QBが営業マン、つまり宇宙電力株式会社の従業員であれば、QBがまどかの家に泊まり込み、契約を勧誘するのは、まさに、アメリカの会社が日本のホテルに営業マンを泊まり込ませて営業をかけているのと同じである。所得税法基本通達164ー3は、アメリカの会社がホテルに営業マンを住みこませる場合のホテルは支店と同視できるとした*16
 鹿目家は、宇宙電力株式会社のPEだったのである!


 また、QBが、従業員ではなく、代理人として活動している場合も、PEに当たる。
 これを代理人PEというが、外国法人のために、その事業に関し契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する者は、PEにあたるのだ*17
 QB自身がPEになり得る!


 そして、PEがあれば、日本における事業所得は全て課税対象となる*18。外国で魔法少女から奪ったエネルギー分は課税対象にならないが、まあ、それは魔法少女の属する国が課税できるはずなので、やむを得ないだろう。
日本は現行法を正しく解釈適用することで、宇宙電力株式会社から、大量の税金をぶん取れるのである!

まとめ
法人税法は、宙の会社からも税金をぶんどれる素晴らしい法律である!
かわいそうな被害者である魔法少女の救済のためにも、日本の財政の立て直しにも、莫大な収益を上げている違法団体を野放しにする訳にはいかない。
まさに、魔法でも、奇跡でも、利益が出たら「税金」があるんだよ!

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Twitter@ahowotaでもまどマギ中心につぶやいております。

*1:いわば、奇跡を売ってエネルギーを代金としてもらう悪徳商法ですね。

*2:いい会社だと、結構な額の外地赴任手当が出たりしますが、最近は経費削減のしわ寄せが来ているようです。

*3:Taking Energy from the Pubescent COmpany, Inc.、直訳すれば「思春期の少女からエネルギーを取得する会社」

*4:法人税法22条2項

*5:法人税法22条3項

*6:労災?

*7:法人税法22条1項

*8:基本的には

*9:戦後の混乱期で税収が欲しいので、闇市等からでも税金をとりたかった

*10:行政法的には、「通達でいいんか?」という点が問題になるが。

*11:三木義一「よくわかる税法入門」70頁

*12:法人税法2条1項3号

*13:法人税法138条1項、141条

*14:法人税法141条4号

*15:三木義一「よくわかる国際税務入門」90頁

*16:法人税法施行令185条1項3号

*17:常習代理人法人税法施行令186条1号

*18:法人税法141条1号、3号イ

自己負担約5000円で数万円〜十数万円分多く義援金を送る方法〜ふるさと納税

  震災の被災者の方に心からお見舞い申し上げます。


地方税Q&A

地方税Q&A

注:本エントリは、ふるさと納税の上限額以上の募金をするべきではないというものではなく、また、ふるさと納税を唯一の募金方法としているのでもありません。あくまでも、せっかく納税するなら少しでも被災地の困っている自治体へという善意を実現する方法を紹介しているだけですので、ご理解頂きますようよろしくお願いします。

1.震災のため法律家ができることは?
  震災のために法律家*1が何ができるか。
 一つは、震災の後の法律問題に対する法律相談等であり、

阪神淡路大震災後の紛争処理は、多くの大阪弁護士会兵庫県弁護士会の会員がまじめに取り組みました。
ビジネス法務の部屋: 関西在住の弁護士の「つぶやき・・・・・」

と言われ、

Q&A災害時の法律実務ハンドブック

Q&A災害時の法律実務ハンドブック

等の本が出ている。


 ただ、それ以外に何か貢献はできないか? というのが、私の心にずっとあった。


あった!


2.ふるさと納税で最小の自己負担の寄付を!
  すでに、義援金キャンペーンが張られ、自分の払える限界まで義援金を払ってしまった人も多いだろう。すでに寄付できる分だけ寄付してしまい、例えば追加で数万円寄付するのはもうできないという方も多いのではないか。ここで、


条件付きだが、わずか5000円の自己負担で追加で数万円〜最大十数万円寄付をできる


方法がある。これが、ふるさと納税である。
  ふるさと納税とは、ざくっと言えば、例えば被災地の*2自治体に寄付をすると、一定限度額までは、「寄付金−5000円」の税金が安くなるという制度である。
「ふるさと」といっても、自分の出身地でなくともよい。日本の自治体であれば、自分で選べる。最近ではクレジットカード払いを認めるところも出てきている。
  ふるさと納税の一例を挙げると

給与収入700万円、住民税所得割額30万円、所得税*3税率10%の人が、(例えば被災地の) 自治体に4万円を寄付すると、
住民税で約3万1500円控除され税金が安くなる
所得税でも、約3800円控除され税金が安くなる*4
要するに、約3万5000円税金が安くなる、差し引き約5000円で4万円の寄付ができてしまった
日本女性税理士連盟編「新版地方税Q&A」57ページ参照

 等である。
 このように、自己負担が少なくても多く寄付ができる理由は、実質的には国と自分の居住地の税収がその分減るからである。  ふるさと納税の仕組みは、自分の住んでいるところ以外の自治体に住民税を納めてもよいではないかという発想であり、上限はあるが、その範囲なら、5000円の自己負担で、いわば自分の住民税を被災地の自治体に払えるのである。
  このような、いわば税金の支払先の変更であるから、自分が住民税を納めている自治体が震災の影響が強い場合は、あまり効果がないだろう。  自分が住民税を納めている自治体が、幸いにも震災の影響が少ない場合には、*5より支援が必要な被災地の自治体に(一種の)納税できるという制度である。


3.ふるさと納税の手続
 ふるさと納税手続の詳細は地方自治体によっても異なり得るがざっくり言えば、
納付→納付済証明書送付→確定申告
である。

納付方法は銀行振込等いろいろあるが、
Yahoo!ふるさと納税 - インターネットでふるさとに寄付しよう!
でクレジットカードで払うのが一番簡単だろう。

多くの自治体ではまず自治体ホームページ等を通じて申込書に記載の上、自治体からの支払番号を取得し、それをyahoo公金支払いサイトに入力してクレジットカード払いをすることになる。
被災の中心地以外の自治体に寄付するなら今でも大丈夫だろうが、中心地に寄付するのであれば、支払番号発行事務ができる余裕ができた頃に行うのがよいだろう
納付が確認されると納付済証明書が送付される。その後、確定申告で控除を申告することになる。


  確定申告は大変とおっしゃる方もいるかもしれない。
  確定申告は極めて困難ではないが、確かに一定の手間はかかる。しかし、本エントリをご覧の方は既に地方自治体以外に寄付をした方も多いだろう。そのような方は確定申告をすれば、ふるさと納税でなくとも*6寄付金控除が適用される可能性がある。ざくっと言えば、寄付額−2000円に税率をかけた金額が所得税から控除される
例えば、日本赤十字社に100万2000円*7寄付した方の税率*8が10%なら、10万円分、20%なら20万円分税金が安くなる
 つまり、既に行った寄付について、確定申告をすることで、税金が控除されるのである。*9この金額は少なくない。確定申告するだけのメリットはあるだろう。
寄付金控除のために確定申告をするのであれば、普通の寄付金控除に加えふるさと納税の控除をしても手間はそう大きく変わらない
 しかも、例えば確定申告をして5000円分税金が安くなるなら、その5000円をふるさと納税に使うことで、例えば10万円分の寄付が追加でき、有効に被災地を支援できるのである*10


なお、寄付後、次の確定申告時(還付の場合は還付時)までは、控除分の金額も含め、キャッシュは自分の手元にはないことになるので、資金繰りがギリギリの方は「ご利用は計画的に」である。


4.上限額の試算
いくらまでであれば5000円の自己負担でふるさと納税ができるか。この 上限額の試算は簡単ではない。


まず、年収が変わらなければ給与明細記載の毎月の住民税額の120%がほぼ確実に上限内と言える*11


 次に、もう少し上の額でも上限内になる。具体的には、

・年間所得の30%以内
・(寄付額ー5000円)×(90%ー所得税率)<住民税所得割の10%
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/080430_2_kojin_bt9.html

の2つの条件を満たす額である。


 住民税は12等分して毎月の給料から差し引くから(特別徴収*12)住民税の所得割は給与明細の住民税の額の120%くらいと考えて大きな間違いはない*13
  そこで、例えば所得税率20%(所得695万円以下*14)の方が10万5000円をふるさと納税する場合、
10万円×70%*15である7万円が住民税所得割の10%を下回っていればよい*16
  給与明細の毎月の住民税の所得割額が6万円くらいであれば、上限内であり、5000円の自己負担で10万5000円を被災自治体に寄付できることになる*17。所得割の額がもう少しすくなければ、差額部分は全額税金が安くなるのではなく、30%分税金が安くなることになる*18
  所得によるが、数万円〜十数万円を5000円の自己負担で被災自治体に寄付できるのがふるさと納税なのだ。

ふるさと納税の注意点
・本エントリは税法の専門家によるものではありません。内容につき責任を負いかねますこと、あらかじめご了承下さい。なお、仮に誤りがあればすぐ直しますので、コメントいただきたく存じます。
・上記の額は目安であり、個々の事情によっては5000円以上の自己負担が発生する可能性もあります。
・自己負担以外の部分は実質的に「税金の納付自治体の変更」です。居住自治体への震災の影響が少ない場合には問題は少ないですが、居住自治体への震災の影響が甚大な場合は避けた方がよいでしょう。
・確定申告手続が必要ですが、既にした寄付についての寄付金控除と一緒に申告すれば申告の手間の差はそう大きくないでしょう。
・激震地ではまだふるさと納税の受付をできる状態ではないものと思われます。寄付の時期についても考慮しましょう。
・税金が還付され、ないし翌年の住民税が減額される形なので、寄付後キャッシュが返ってくるまでしばらくかかります。資金繰り的に無理ない範囲でふるさと納税をしましょう。

*1:の卵

*2:被災地でなくとも制度的には大丈夫ですが…

*3:限界

*4:具体的には翌年の住民税が減る

*5:支援の必要性が高くない居住自治体に変えて

*6:寄付先にもよるが

*7:2000円がついているのは、寄付金マイナス2000円に税率をかける計算式だから

*8:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

*9:税率と寄付額にもよるが

*10:なお、国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁のとおり、所得税の寄付金控除はふるさと納税とあわせて所得の40%までという制限があるので、この点に留意が必要である。

*11:バッファがあるので均等割の問題もほとんどないだろう

*12:同人の同人による同人のための「確定申告マニュアル」〜のうぜい! - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照

*13:均等割額が特別に多い自治体は均等割も考慮すべきでしょうが…

*14:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

*15:90ー20=70

*16:この場合、明らかに所得の30%以内

*17:可能性が高い

*18:所得税率20%が前提なので、所得税で20%寄付金控除、住民税で10%の控除となる。

同人の同人による同人のための「確定申告マニュアル」〜のうぜい!

のうぜい! ~同人作家のための確定申告ナビ~

のうぜい! ~同人作家のための確定申告ナビ~

1.確定申告の救世主
 今年も確定申告の季節がやってきた。
 同人活動をされている方は、思ったより儲かったけど、やっぱ申告しないとだめなんかなぁ?赤字サークルに確定申告は関係ないよね?申告の方法がわからない等、頭を悩まされているだろう。
 そんな時はまことじさんの「のうぜい!」である。
 本書は、同人作家で元税務署職員のまことじさんが、漫画で、確定申告のやり方や申告すべきかについてわかり易く解説してくれる。


2.「同人関係の所得税」のみの考察という潔い割り切り
 本書の特徴は潔い割り切りである。
 税法全てを漫画にすれば、何万頁にもなるだろう。確定申告ということで所得税に限定しても、「山林所得」「退職所得」等いろいろある所得の種類全てを漫画にし、「勤労学生控除」「雑損控除」等全ての所得控除を解説していたら、間違いなく「全十巻」等になるだろう。特に、税法は例外の多さを特徴としており、原則がたくさん出て来ると、その何倍にもなる例外の解説が必要になって、読者が混乱する可能性も高い。
 本書は、「同人関係の所得税」に限定し、よくあるパターンのみを考察の対象とすることで、比較的コンパクトな一冊にまとまっている*1
 このような割り切りの結果、記述は「同人収入のみ(学生等)パターン」と、「給与所得と同人収入(会社員等)パターン」に限定されており、記述は非常にわかりやすい。
 内容も、「そもそも申告しないとまずいのか」を収入別に解説し、「申告するとしてどう計算するか」や、「申告しなくともよい人でも、申告した方がよいのか」等が説明されている。
 同人をする場合によく問題になる、「自宅兼作業場」の家賃が経費になるのかや、「趣味と実益を兼ねる買い物」の扱い等が具体的に説明されており、「怖いから売上マイナス印刷代を所得にしちゃえ」としている人は、本書を読めばもっと税金が減るかもしれない
 また、仮に利益が出ておらず、申告義務がない場合でも、「同人の損で他の所得を減らす」ということができる場合もある*2。同じ申告しない人でも、こういうやり方を知った上で「税金が減る額と、申告の労力を比較して申告しない」のか「よくわからないけど申告しないでいいらしいから申告しない」のかは大きく違うだろう。
 本書は、このように、よくあるパターンの同人関係の所得税に限定したおかげで、「有益な情報をわかりやすく伝える」という目的をうまく達成している
 漫画は基本はギャグ漫画であり、先生役の「税野教子」が、生徒(ボケ)の「金森納」と、ツッコミの「同人美」 に解説するという筋立てである。名前の付け方がお役所にありそうなベタな付け方なのは、やはり作者が元税務署職員だからだろうか。
 オリジナルキャラ、オリジナルストーリーだが、昨今のアニメ漫画ネタも含まれているので、「分かる人には分かる」。
 個人的には、人美と納の二人で税金について検討したがうまくいかなかったという状況で登場した教子の「やっぱり 私がいないとダメねえ」という台詞は、顔の表情とあいまって面白かった*3
 また、なぜ「青色」申告なのか等、元税務署職員ならではのうんちくも面白い*4


3.一点心残りなこと
 このように、本書は良書であるが、一点心残りがある。
 同人活動をされている方の中には、このことを勤務先に伝えていない方もいるだろう。その理由も、「隠れヲタク」だったり、「会社が副業を禁止している」だったり様々であるが、重要なことは、確定申告をすると通常は所得額が変わるということである。増える場合もあれば減る場合もあるが、いずれにしても変わる*5
 そして、重要なのは所得が変わると住民税も変わるということである。住民税には所得割があり、所得が違えば、金額も変わる。
 そして、会社員は通常は勤務先が住民税も払うのである。給与明細を良く読むと、所得税だけではなく住民税とも書いているのではないか。これを特別徴収制度という。
  特別徴収制度は便利だが、住民税額を勤務先に把握される。そこで、勤務先が調べようと思えば、税額が違うことから同人活動その他の副業の疑いを発見することができる
  ここで、自治体が自宅まで請求書を送付し、納税者自身が支払手続きを行う形式(普通徴収)もあり、特別徴収を選ぶ義務はない。つまり、普通徴収を選ぶこともできるのである。
  そこで、ものの本等は「普通徴収で副業し放題」とするものもある。
  しかし、特別徴収をしないことに社員側のメリットは通常はないはずで、あるとすれば、「会社に副業を知られない」だけである。そこで、普通徴収は逆に怪しいという考えもあり得る*6
  この意味で、普通徴収にすべきか、特別徴収のままかは、同人活動で確定申告する際に重要かつ難しい問題であり、本書が「所得税」の本であったとしても、住民税の処理について指針を示していただければ、もっとよかったと思われる。

まとめ
 「のうぜい!」は、確定申告に悩む同人界の救世主になり得る、わかりやすい良書である。
 ただ、「隠れヲタクが住民税についてどうすべきか」について、所得税の枠を越えて解説してもらえればもっとよかった。

*1:フルカラーということも考えれば1500円は安いと思います。

*2:知り合いのイソ弁に、給与所得貰ってる人で「事業収入0、弁護士会費数十万で赤字なのでマイナスの所得」といって申告して税金を減らしている人がいる。収入ゼロの事業が事業といえる疑問がないでなないが、発想は同じ。

*3:本書61頁

*4:120頁。シャウプさんが関係していたとは!

*5:プラマイゼロも理論的にはあり得るが、「行って来いでだいたい同じになり」ことはあっても、ピッタリゼロには通常はならないはずで、感覚的には半荘終了時点でプラマイゼロにするのと同程度の難易度ではないだろうか。

*6:なお、フォロワーさんから、資産運用クラスタにとっては、「どうせ確定申告するのだから、その時に自分でやります」という形で特別徴収を断ることには正当な理由があるとのコメントを頂いた。確かに資産運用クラスタの方であれば、そういう意味はあるかもしれないので、この点については、「資産運用クラスタ以外」という趣旨ということでご理解頂ければ幸いである。

タイトルに偽りのない税法入門といい意味でタイトルに偽りのある所得税法の教科書

よくわかる税法入門 第4版―税理士・春香のゼミナール (有斐閣選書)

よくわかる税法入門 第4版―税理士・春香のゼミナール (有斐閣選書)

 ゴールデンウィークに税法を勉強したくなった。金子宏先生の「租税法」をちょっと読んでみたが、30分で挫折した*1
そこで、税法の知識0の元法学部生が税法に入門する上で最適な本を、池袋のジュンク堂で捜索した*2

1.名前に偽りなしー「よくわかる税法入門」
 立命館の三木義一教授の「よくわかる税法入門」は、税法の入門書の中では一番わかりやすい。
税法ゼミの学生の市木君と仁木さんに、税理士の春香先生が質問をするという対話形式で税法の「基本」がわかる。
対話の後、「まとめ」として、ゼミの先生(三木先生)の解説が入る。
 市木君と仁木さんのレベルが、「普通の法学部生」なので、市木君と仁木さんのレベルにあわせた春香先生とゼミの先生の解説はわかりやすい。


 入門書であるが、現行制度について憲法上の問題点を指摘したり、外国の制度との比較をする等、内容はかなり深い。
「税法のリーガルマインド」という意味では、特に、「非課税であることが必ずしもすばらしいこととは限らない」という指摘*3は興味深かった。例えば、本を古本屋に売って得た収入は、非課税とされている(所得税法9条1項9号)。これは、「税金を払わなくてよい」という意味で、一見「納税者に有利」なように見える。しかし、非課税であるということは、逆に言えば、2000円の本を古本屋に500円で売った際の損失(1500円)を、他の所得からマイナスして税金を減らすことができないということになる(同法9条2項)。このように、「必ず制度の裏と表の両面をみなければならない」という、税法を学ぶ上で非常に重要な点が、わかりやすく解説されているのである。


「パートの人がなぜ年収を103万円以下にしようとするのか?」
「消費者は消費税を払う義務を負っているのか?」
「先生の原稿料は何所得?」
「違法な収入でも税金を払わないといけないのか?」
といった、興味深いテーマについて進められる対話を読み進むと、租税法の教科書が理解できるようになる*4
 30テーマ、約350頁と、入門書にしては量が若干多いことや、若干難しい内容を含んでいる*5ため、一冊を読み終わるまである程度の時間がかかるが、帰属所得等、「教科書の説明に必ず出てくるわかりにくい概念」について、対話形式で具体的に説明されているため、その後の教科書の理解が楽になる。

本書は、まさに「すごい税法の入門書」といえよう。


2.スタンダードではないけど面白い「スタンダード所得税法

スタンダード所得税法

スタンダード所得税法

 入門書の次の本をいろいろ探した結果、所得税法の領域で面白い本を見つけた。佐藤英明著「スタンダード所得税法」である。
 スタンダード所得税法の冒頭には、「私のような立場の研究者が書けば、まあ、だれが書いてもこういう中身と説明になるだろう、という意味で、『スタンダード』と名づけました。」という記載*6がある。
これはある意味正しいが、ある意味明らかに誤っている。

 「扱う項目及び扱う深さ」という意味では、この説明は正しい。実務的な内容や、細かすぎる内容を切り落とし、すっきりと重要事項だけを説明して終わっている。入門書段階を終えた者が、次に学ぶべき内容を的確に示しているという意味では、そのとおりである。


 しかし、「説明方法や記述内容」という意味では、スタンダードであるとの説明は誤っている。
 まず、いい意味で、「教科書」であり、「学術書」ではない。そこで、参考文献を「ケースブック租税法」1冊に絞込み、それ以の参考文献をそぎ落としている。よく、「これが通説である(金子●●頁)」といった、他の基本書の引用も一切ない。このため、スムーズに読み進めることが可能になる。
 また、1つの項目を説明する際に、LectureとNext Stepという2つのまとまりを作り、基礎的で必ず学んでおくべき内容をLectureに、その上の先進的内容をNext Stepに記載している。そこで、時間がない人は、Lectureだけを一度読み、その後で両方読むといった効率的勉強ができるようになっている。これもすばらしい。
 さらに、著者の突っ込みもいい。例えば、友達に対する1000万円の金銭債権を800万円で他人に譲渡したという場合において、その譲渡損(200万円の損失)が必要経費等にならない(所得計算上、無視される)という説明をしたところで、

なお、付言すれば、友人に貸した金の債権を他人に売るのはオニの所業ではなかろうか。
佐藤英明「スタンダード所得税法」210頁

と突っ込む。
こういう突っ込みは、著者独自のものであろう。

 そして、事例に出てくる人名が「コナタ*7」「ハルヒ*8」「タイガ*9」「ヒソカ*10」…というのは、狙っているってことですね、佐藤先生!?

 まとめ
  三木先生の「よくわかる税法入門」は、タイトルそのままとてもわかりやすく的確な内容の税法の入門書である。
  佐藤先生の「スタンダード所得税法」は、スタンダードではないところが多々あるが、非常に面白い所得税法の教科書である。

*1:金子先生の「租税法」は、日本で一番権威ある租税法の本なのですが、凶器レベルの分厚さと、読者がすべてを理解していることを前提とした、凝縮した記述に、初学者がついていけないことは折り紙つきです。

*2:ついでにアニメイト本店に寄ったことは当然である。

*3:p86

*4:国際税務を除く。但し、国際税務については、別途よくわかる国際税務入門 (有斐閣選書)が出ている。

*5:仕分けの話等

*6:piv

*7:p263

*8:p291

*9:p270

*10:p291

「弁護士業務にまつわる税法の落とし穴」〜最強の税法入門・復習書

新版 弁護士業務にまつわる税法の落とし穴

新版 弁護士業務にまつわる税法の落とし穴

1.最強の税法入門
 税法を学ぶ際、金子「租税法」等の分厚い基本書から読み始める人も少なくないだろう。このような基本書は体系に従って網羅的に学習するのには適しているかもしれないが、記述が一般に単調で、眠気を催すという問題点がある。
 本書は民法を一応学んだ人にとっての最強の税法入門であるゆえんは、「民法という視点しか知らない」*1弁護士を対象に、租税法という視点を入れると事件はこんなにまで変わって見えるんだということを多くのインパクトのある実例をもとに伝えてくれていることにある。
 例えば、こんな事例が出てくる。

依頼者が土地の所有権移転登記請求の訴訟を提起しましたが、過去の売買契約の事実の立証等が難しいので、取得時効を主張したいと言い出しました。これを主張すれば、間違いなく勝てる場合、すぐに取得時効を援用してよいのでしょうか。(同書p2)

 民法(+民事訴訟法)の観点からいえば、売買であろうが時効であろうが、依頼者の所有権を基礎付けることは変わらないのだから、勝てる方を取るべしということで、取得時効を援用するべきという答えになるだろう。
 しかし、租税法の視点を入れると全く答えが変わる。取得時効を援用すると、その時点で所得*2が発生し、納税義務が生じてしまうのである。援用時時価が10億円だと、所得税地方税合計が2億5000万円であるから、相当の負担が生じてしまう。簡単には取得時効を援用すべきでないのである。

 本書は、このようなインパクトある実例を出しながら、民法の規定とからませて所得税法人税相続税等についての基礎知識を解説してくれるので、民法*3
 本書は実務的には税法のどんな規定が問題となっているのかという具体的な問題点を提示して、それに対してどのように考えるべきかという考え方を示すのみならず、税務署はどのように動くだろうか、税務訴訟になったらどうなるだろうか等も*4示してくれている。
 体系に従った税法知識を本書で具体的・実務的問題にぶつけてみることで、税法知識を再構成することができる。この意味で本書は最強の税法復習書である。

3.税務訴訟に対するあきらめ
 本書では「税務上のトラブルは民事訴訟で解決し、民事訴訟のトラブルは税務処理で解決する」という非常に興味深い考え方が示されている*5
 例えば、財産分与として夫が妻に不動産を渡したら、2億円の税金が夫にかかってきたので、(元)夫が(元)妻に対し、財産分与につき錯誤による無効を主張したところ、これが認められたという判例がある*6。「妻の方に税金がかかると思っていたから、これは錯誤で無効だから課税処分をやめてくれ」といっても、課税処分からは逃げられないし、税務訴訟で主張しても勝てない。しかし、私法契約自体が錯誤で無効だということを判決で確定させ、その上で更生の請求をすれば税務署としても認めざるを得なくなる*7。そこで、税務上のトラブルは民事訴訟で解決せよということである。

 また、上で挙げた例でいえば、税金分を和解金として相手に払う代わりに過去の売買契約を確認させれば、依頼者の方は余分な税金をとられなくですむ上、相手も相当額の和解金が得られるので、当事者双方が喜ぶ解決になるだろう*8

 このようなテクニックは、実務家になるには必ず知っておくべきことである。しかし、この裏には、「税務訴訟への不信」がある。税務訴訟の全面勝訴率が5%程度*9で、「税務訴訟を起してもどうせ負けるよ」という不信感があるからこそ、税務上のトラブルは民事訴訟で解決する方向に動いているのだろう。そもそも、このような税務訴訟の運用でいいのかという問題は、実務界が学者、*10実務家、そして今後の法曹界の担い手たる学習者に対して問いかけている重大問題だろう。

まとめ
 本書は、民法を一応学んだ人にとっては、民法知識を利用しながら、インパクトのある実例によって実務でよく問題となる税法の知識を習得することができる、非常によい税法入門である。
 また、税法を一応学んだ人にとっても、実務的な具体例を通じて、実務の具体的場面においてはどのように理論が適用されているのかが分かる、非常によい復習書である。
 本書は、実務家の視点から、「税務訴訟への不信」が問題提起されている。この点は、学者・実務家、そして学習者が考えるべき重要な問題だろう。

*1:そこまでいうといい過ぎかもしれないですが

*2:一時所得

*3:第5章だけは破産法もそうですが)を一応学習した人にとっては、興味を持って税法のアウトラインを学ぶことができる。この意味で本書は最強の税法入門書である。 2.最強の税法復習書  税法を体系に従って一通り学んでも、多くの場合は実務でどういう問題が起こり、どう解決するかという実務的観点が不足する場合が多い。  例えば、一時所得ならこういう処理、事業所得ならこういう処理、雑所得ならこういう処理、給与所得ならこういう処理...という規定と効果は学んでいても、じゃあ、ある人が書いた原稿の原稿料はどれにあたるの?と聞かれて即答できる人はどれだけいるだろうか((作家等であれば、指揮命令に基づいて原稿を書いているのではなく、独立して働いており、自己の責任で書いている原稿の報酬なので事業所得、学者が書く原稿は生計の中心は給与なので雑所得になることが多いが、相対的・総合的判断による、本書p25参照

*4:全ての問題点についてではないにせよ

*5:本書p417等

*6:最判平成元年9月14日判時1336号93頁

*7:同書p417参照

*8:同書p80

*9:同書p79

*10:特に裁判