アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

初学者のための民法本案内

プレップ民法 (プレップシリーズ)

プレップ民法 (プレップシリーズ)

 プレップ民法は、民法の全貌をできるだけ深みにはまらず概観できる好著である。

勉強しはじめたばかりの人は(中略)とにかく先へ進み、民法全体のアウトラインをつかんだ後、第二ラウンドとしての、より詳しい勉強の過程で(中略)吟味されたい。どのような学問でもそうだと思うけれども、一歩一歩進み、何度も何度も(まだよくわからない、として)吟味を重ねて、時至ってついにわかるというものなのだ(中略)
民法の勉強についていうと、総則からはじめると、各論がわかりにくいから理解しにくいし、逆に各論を先に勉強すると、総則がわからないから、これまた理解しにくい。結局、どこからはじめてみても、全体を一応にもせよ終わらないと、なかなかしっくり腹にはいらないのだ。わかったところはここまで、わからないところはここだ、と区別をはっきりしておいた上で、先へ進み、やがて立ち戻ってきて再検討してみるより仕方がないのである。
引用元:米倉明著「プレップ民法」p52

 このことが示すように、民法を概観するというのは、非常に重要である。しかし、民法は如何せん量が多い。内田民法

民法 I [第3版] 総則・物権総論

民法 I [第3版] 総則・物権総論

は「わかりやすい*1」本だが、500ページの大部の本が4冊でやっと終わる。こんな量を読んでいると最初の所を忘れてしまい、何がなにやらわからなくなりかねない。

 この点、200ページの新書1冊を読むだけで、民法の全体像がわかるプレップ民法は非常に優れている。しかも、ページ数だけではない。まず最初に一番問題が少ない事例を持ってきて、一度契約締結から履行までを概観した後で、個別の問題について概説しているから、民法全体のアウトラインをつかみやすいのである。

 このblogを法律の初学者の方が読んでいるかわからないが、そういう方のために、「基本書だけで民法を勉強するための最短コース」を提案したい。私も、法律を勉強中であり、こういうことをするのはおこがましいだろうが、「学習者としての経験」から、どうすれば一番理解しやすいかという観点から選んでみた。なお、私は研究者になるための学習についてはよくわからないので、「(学部・司法・ロー)試験対策のため」の民法学習だと考えていただきたい*2

 まず、プレップ民法民法全体を1度概観する。200ページだが、法律の勉強をしたことがない方には、これでもかなり気が重いだろう。とはいえ、「20ページづつ10日」といった精読はお勧めしない。精読は後でいくらでもできる。まずは「民法の流れ」を理解することが目的だから、週末に時間をとって読みきる位の姿勢をお勧めしたい。

プレップ民法 (プレップシリーズ)

プレップ民法 (プレップシリーズ)

 次に、スタートライン債権法を読む。
スタートライン債権法

スタートライン債権法

 この最大の特徴は「わかりやすい」だけでなく、債権法(債権総則・契約総論・契約各論)の基本的な問題点がほぼ網羅されていることである。もちろん、応用論点等は少ないが、「債権法」の分野についてかなりの理解を深めることができる。記述も、具体例が豊富で、しかも、勉強の方法や、論文の書き方、そして、四季の進行にしたがっての池田先生の大学・法律に関する雑感が書かれている。この雑感が読後の清涼剤として非常によいのであり、個人的には、そこに掲載されている池田先生の短歌が非常に好きである*3。これだけ読めば、あとはどんな無味乾燥な債権法の本を読んでも「あ、この具体例の話だな」「あ、このことだな」と、具体例に結び付けて理解できるだろう。

 この2冊を読めば、民法の概観を知り、個別の論点についてもざっと理解を深めることができると思う。とはいえ、司法試験・ロー入試レベルの民法のためには、もう1つ、個別の論点についての判例・学説を理解するという勉強が必要である。この「個別の論点についての判例・学説を理解」するためには、多少厚く、量が多い本に頼らざるを得ない。ここでも、内田を挙げない。

民法案内 2 民法総則

民法案内 2 民法総則

民法案内が実は理想である(http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20051123参照)。網羅的でありながら、具体例が豊富で、しかも判例・通説で書いている。これぞまさに最強の本である。

 しかし、まだ全巻そろっていない。そこで、総則以外は次善の策ではあるが、ダットサン民法を使うしかないだろう。

民法 (1) 総則・物権法

民法 (1) 総則・物権法

これも、我妻先生の手によるもので、民法案内に比べればわかりやすさははるかに劣るが、スタートライン債権法・民法案内で、総則・債権法を押えているはずだから、その上で読むならそこまで大変ではないだろう。

 ここまで来れば、民法についてかなりわかっているはずである。後は、目的(択一か、論文か)にあわせて演習書等を読むべきである。
 なお、内田民法については、教科書指定されていない限り使用されないことをお勧めする。

民法 I [第3版] 総則・物権総論

民法 I [第3版] 総則・物権総論

もちろん、「学者になりたい」方、「内田先生に習っているので、内田民法を使うしかない」方は別である。私も、内田民法を買わされて使わされた一人である。
この特徴は一言でいうとわかりやすそうなところである。ここで「そう」を強調しておきたい。記述は具体例が豊富で、一見わかりやすく見えるが、そこで説かれている内田「説」はかなり難解であり、規範も覚えずらいことが多い。たとえば時効と登記については、判例は、4準則だけ暗記してれば事たるが、内田説であれば、さまざまな場合を想定し、それぞれの場合で利益考慮等をした上で規範を立てているので、理論的にはすばらしいかもしれないが、あてはめにくいこと至極である。これでは、論文*4を書くのが大変である。
 また、内田説が相当説得的なので、内田説が正しい(判例・通説)かのように錯覚しがちである。確かに、「申し訳程度」に判例・通説が載っているのだが、読後感としては「内田神!」であって、試験対策としては重要なはずの判例・通説は忘れてしまっていることが、私は多かった(まあ、理解力が相当高ければ大丈夫なのでしょうが)。
 このような理由から、原則として、試験対策という側面では、判例・通説を基本とする上記4冊(実際には、もう少しあるが)を使ってレベルを上げることを強くお勧めしたい。

まとめ
プレップ民法→スタートライン債権法→(民法案内)ダットサン
これぞまさに、試験対策としての民法学習の最短コースである!

*1:あくまでもカッコつきの意味で

*2:研究目的の場合にも、「一定のレベルに達する」という意味では、この方法は有益と思えるが、研究目的については、私はまだ何かを言える立場にない。

*3:「続けるか勉強するしかないですね」コーヒーカップを見つめたままで(スタートライン債権法p46)等

*4:論文式試験を想定