アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

[法務]ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第11回コミュニケーションの基礎


1.はじめに
第2回において、法務ではコミュニケーションが大事だと書きました。
ストーリーで学ぶ企業法務一年目の教科書〜第2回依頼・相談を受ける際の対応 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
ところが、実際にコミュニケーションをするのは難しいのです。
特に私のようないわゆる「コミュ障」にカテゴライズされる人は毎日苦しんでいる訳です。
ただ、苦しいなりに工夫していることを言語化してみました。


2.ストーリーパート


「そういえば、この間は、どうしてメールか電話で謝らずに、直接会いに行って謝ったんですか?」


僕と井上先輩はランチをしていた。「この間」というのは、僕が井上先輩経由で頼まれた仕事の〆切を忘れていて、営業に謝りにいって〆切を伸ばしてもらった件のことである。


ストーリーで学ぶ法務1年目の教科書〜第10回ミスを最小限にし、犯してしまったミスの影響を最小限に抑える〜ミスの4大原因とは? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常



情報の伝え方の基本だ。まさか、そんなことも知らないのか?」


「す、すみません。」


井上先輩は、「本当にしょうがない奴だな」という顔をしながら、語り始めた。


「情報はその場面場面に応じて最適な伝達方法を選択して伝える。今では、SNS等色々な伝達方法があるが、基本はメール、電話、対面の3つだ。この3つの方法のメリットとデメリットを知ってを適切に選択しなければならない。メールのメリットは何だ?」


「えっと、メールだと、いつでも、相手がどこにいても送れること、ですかね?」


「確かに受信者側との時間調整が不要であることはメールのメリットだな。後は、録音等の追加の措置を講じることなく記録に残せること、資料を添付できることか。デメリットは、添付ファイル等は見てもらえないこともあるし、そもそもSPAM分類される等で受信者の目に届かないことさえある。そして、電話や対面と比較しかなり情報が抜け落ち、ニュアンスが十分に伝わらないことと受信者がいつリスポンスするか分からないこと等がある。この意味は分かるか?」


「えっと、どういうことでしょうか?」


ネガティブな事項、そして、相手に早期の決断を迫るべき事項を伝える場合には、一般にメールは向かないということだ。ニュアンスを正確に伝えられず、過度にネガティブないし過度にポジティブに受け取られる可能性があるし、いつ決断してもらえるか分からない。」


「なるほど、だから、謝罪の時にメールを使わなかったんですね。」


「そうだ。ネガティブでかつ、早期にリスケジュールの決断を迫る必要があったからな。次は電話だ。特に内線電話は未だに頻繁に使う企業が多いだろう。電話のメリットはその場で(声色を含む)反応が聞けて、反応を踏まえながらニュアンスを調整できることだ。電話のデメリットは、日程調整が必要なこと、相手の顔が見えないこと、お願いや謝罪の場合にニュアンスが十分に出ないことがあること、資料を見せづらいこと、記録したければ録音が必要なことだろう。」


「確かに、謝りに行けば、すみませんという謝罪の気持ちが伝わりやすいのに対し、電話で簡単に済ませたと思われると、こじれてしまうかもしれませんね。」


「そこで対面でのコミュニケーションだ。対面でのコミュニケーションは、顔色・声色といった反応を五感(多分味覚を除く)で感じられて、反応を踏まえながらニュアンスを調整できること、お願いや謝罪のニュアンスを出せること、その場で資料を見せられること等メリットは大きい。ただし、デメリットは、電話とほぼ同じ(ただし顔については除く)ものに加えて、相手と自分の間に物理的距離がある場合には移動が必要なことだ。」


「そうすると、対面でのコミュニケーションはメリットも大きいものの、移動等のコストも大きいので、うまく使い分けるということですか。」


「大分分かって来たじゃないか。概ね「順調であればメール、それ以外の場合には、電話と対面を使い分ける」というのが1つの重要な判断基準だ。なお、交渉(特にクレーマー対応等)の場合は録音という方法もあり得るが、通常の社内の電話や会話においては、録音をしないのが通常だ。そうすると、電話や対面での協議をした後、すぐにメールで電話や対面での協議内容の要約(こちらが残しておきたい部分、例えば相手にお願いしたことのリマインド及び期限等)を送付するということで、記録に残すといった複数の手法のハイブリッドも含め、柔軟に試みることだな。」


井上先輩の口から紡ぎ出されるコミュニケーションに関する自由自在なアイディアに、やはりコミュニケーションを重要な職務とする法務はすごい、と感じた。


3.解説のようなもの
 コミュニケーションの方法というのは人によって色々なものがあると思いますし、そのコツを細かくいうと色々になるのでしょうが、私が普段心がけているものを簡単にまとめました。


 これはあくまで「原則」であり、例外的な場合はこれと異なることも多いのですが、少しでも参考になれば幸いです。

まとめ
 いつものことながら、法務パーソンの先輩の皆様から、他にコミュニケーションで心がけられていること等ございましたらぜひご指摘頂ければ幸いです。