- 作者: 乾昭三,二宮周平
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 1993/11
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
これに対し、「新民法講義5家族法」では、これが冒頭の10ページに書かれている。この議論は非常に分かりやすく、内田の行間を埋めるものとして、重宝した*1。
ここで、非常に興味深いのは、両性を含めた平等を基礎とする憲法14条下の新家族法である。この憲法下、当然平等が進行したと思う人も多いかもしれない。しかし、ご存知の通り、現在の家族法もまた差別的な規定が色濃く残る。それはなぜか?よく、改革が中途半端だったからと言われる。要するに、旧民法下の規定がたくさんあり、これらを全て改正するのが困難であり、改革が中途半端になったという議論である。しかし、この本を読むと、改革の中途半端さが問題なのはないことが分かる。
むしろ、バイアスがかかった立法者が、自己の考える「平等」に向かって突き進んでいたからだろう。
非常に興味深いのは、非嫡出子への差別である。簡単にいうと、民法900条によって、「法律上の妻以外の子ども」は「妻の子ども」の半分しか遺産を相続できないという規定があるという問題である*2。
この差別は、実はまさに新家族法の目的達成のためのものだったのである。
こうした(注:夫婦と、氏を同じくする子という単位)家族像が、夫婦の平等原則の下に理想のモデルとされたといってよいだろう。
この理想型を中心に、家族法は、家事・育児に従事する妻の生活の保障をすることを主な課題とした。例えば、夫婦には同居扶助協力義務があるから(752条)、妻が専業主婦の場合には、夫は妻の生活費をみなければならず、夫婦仲が冷えて、別居するようになっても、この義務はなくならない。(中略)
しかも、妻の地位それ自体が厚く保護された。たとえば、夫が不倫すれば、妻は相手方である女性に対して、夫の貞操義務違反に加担したとして、慰謝料を請求できる。もし子どもが生まれても、非嫡出子として、法的、社会的に差別される。さらに、夫がこの女性と暮らしたいと思い、妻に離婚を求めても、妻が納得して協議離婚に応じない限り離婚は成立しない。(中略)
社会の下で家族法に期待されたのは、夫が安心して仕事に没頭でき、夫に経済的に依存する妻の生活を保障する場を作ることだった。
乾等「新民法講義5家族法」p5〜
そう、夫婦の平等をうたいながら、性別役割分担を所与のものとしていた立法者は、「性別役割分担を前提として、いかに妻たる女性を守る(「平等*3」を守る)か」だけを考えて家族法を立法したのである。
だからこそ、こんな今の目から見ると「不平等」な規定が、普通に規定されていたのである。
まとめ
「男女平等」の新憲法の理念を実現しようとして家族法を起草した立法者には、性別役割分担というバイアスがかかっていた。その結果、不平等な規定が家族法におかれた。
このような「バイアス」なき立法過程の実現は実際には困難だろう。しかし、バイアスを指摘し、改善を促すことはできる。
この本の序論は、まさに、この役割を果たしている。