アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

自衛隊違憲論者はツンデレ

1.一般の人の考える「憲法
一般の人が「憲法改正の議論」と聞くと、まず考えてしまうのは、9条をどうするかである。
実は、それ以外に、現行憲法の依って立つ立憲主義とは何か、それを撤廃すべきかといった問題もあるのだが*1、こちらはあまり知られていない。


憲法改正の文脈では、「自衛隊違憲であり、憲法9条は断固改正すべきではない!」という派閥と、「いやいや、自衛隊は合憲であり、憲法9条を改正して自衛隊憲法上の位置づけを明確にしよう!」という派閥が血みどろの争いを繰り広げることも多い。


さて、憲法9条について、憲法学会の通説は「自衛隊違憲という考えである。これは、憲法9条の条文を素直に読むとこの考えにたどり着きやすいので、説得力があることは否定できない。


ところが、長谷部恭男教授をはじめとする有力説は、「自衛隊は合憲」と主張する。この有力説の立場の面白いのは、要するに、通説の自衛隊違憲論者はツンデレと、通説を批判していることである。


2.本当は自衛隊に存在してほしい!?自衛隊違憲論者
 有力説の中にもいろいろな見解はあるが、長谷部先生のご見解を見てみよう。


まず、長谷部先生は、

(自衛隊違憲!といって)非武装平和主義を唱える人たちも内心では自衛隊はあった方がいいと思っている
長谷部恭男「表立って言えない憲法解釈」法学教室301号(インタラクティブ憲法所収)

とぶち上げられる。


 これはどういうことか。

 長谷部説によると、自衛隊違憲! 国は一切の防衛システムを持たない(絶対平和主義)!」としてしまえば、もはや国が国民の生命・財産を保護することはできない。(立憲主義の考えを前提とすると、)そもそも国というのは、国民の生命・財産といった権利をよりよく保護するためのものなのだから、一切の防衛システムを持たないというのは背理である。


 さて、このように長谷部先生は、通説をぶった切るが、それだけでは、「ツンデレ」にはならない。その先があるのだ。


 通説の自衛隊違憲論を主張する学者の一人である渡辺康行教授の見解を前掲の長谷部論稿から引用しよう。

自衛隊保持が憲法9条に反するという見解がなお通説であることの「社会的インパクト」は小さくないのだから、むしろ、この通説たる地位を維持すべき議論をするのが「解釈者の責任」だ
長谷部恭男「表立って言えない憲法解釈」法学教室301号(インタラクティブ憲法所収)


 この渡辺説、特に「社会的インパクト」論は、何を言っているのだろうか。長谷部先生によれば、こう解釈される。そもそも、自衛隊違憲と叫んだところで、じゃあ自衛隊が廃止されるかといえば、そんな見込みもない。廃止されれば、日本政府は、国民の生命や財産を守れなくなる。それでもなお、自衛隊違憲論者は、「自衛隊を廃止すべき! 自衛隊違憲!」と声高に叫ぶことで、「社会的インパクト」を生じさせ、自衛隊の活動範囲・規模をできるだけ制限しようとしている。こういうことだそうだ。


だからこそ、長谷部先生は、

武装平和主義を唱える人たちも内心では自衛隊はあった方がいいと思っているんじゃないか
長谷部恭男「表立って言えない憲法解釈」法学教室301号(インタラクティブ憲法所収)


 と、自衛隊違憲論者の内心を推察される。


3.ツンデレ萌えで、国民的和解達成!
 長谷部説が、示唆するのは自衛隊違憲論者はツンデレだという事実である。

自衛隊なんて違憲なんだから! あんたなんてなくなっちゃえばいいのよ!
でも…いざとなったら…わたしを守ってくれないと駄目なんだから。

こう、自衛隊違憲論者は言っているのだ。


現在生じようとしている、憲法9条に関する国民的な対立、これが深刻化することは、あまり良いことではないだろう。
自衛隊合憲論者が「ツンデレ自衛隊違憲論者」に萌えてしまえば、お互いの見解の違いは萌えの力で乗り越えられる。そこに、国民的和解、ひいては日本の平和の鍵があるのではないか!?

まとめ
長谷部先生のご見解に従えば、自衛隊違憲論者はツンデレである。
ツンデレ自衛隊違憲論者に合憲論者も萌えて、国民的和解を達成しよう!

*1:立憲主義については、長谷部恭男「憲法と平和を問いなおす」がオススメですが、別ブログに芦部説ベースの簡単な解説を掲載しました。立憲主義 - ム4ネタ[ム4]