- 作者: 藤田宙靖
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
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藤田宙靖「行政法入門」は、入門書の中では、わかりやすく、内容が厚く、オススメである。
まず、わかりやすいという方だが、具体例、例えが豊富である。
例えば、普通の基本書には「行政庁とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定し、対外的にこれを表示する権限を法令上与えられている行政機関のことをいう」なんて書いている。こういう説明は、わかる人にはわかるのですが、わからない人にはさっぱり意味不明である。
これに対し、「行政法入門」は、租税債務の具体例を使って説明してくれる。
私たちは、(中略)国に対して税金を納めなければならないこととされているわけですが、これを法律学的ないい方でいいかえてみると、結局、国が私たち国民に対して国税を(中略)徴収する権利を持っているということになるわけです。
ところで、この場合、この権利は誰の権利かというと、それは当然、法人格をもち、権利義務の主体であることを法律上認められている「行政主体」としての国だということになります。
ところが、実際の法律の上では、国民に対して現実に税金を(中略)強制的に徴収したりするのは、国そのものではなくて、単なるその一機関であるにすぎない税務署長の任務とされているのです。実際、課税処分や納税の督促などは「○○税務署長」という名前でなされています。この場合の税務署長の立場がまさに「行政庁」だ、ということになります。
藤田宙靖「行政法入門」p25
こういう具体例が多くわかりやすいことがこの「行政法入門」の特長である。
次に、「内容が厚い」ということだが、普通の入門書に書いていないハイレベルのところまで「ちょこっと」触れられている。法律の留保についても、侵害留保・全部留保説はもちろんですが、本当にちょっとだけですが、権力留保・重要事項留保説についても書いているというのはすごい。
行政法の問題は、イメージがわきにくいというところにあるだろう。「行政法入門」を使って勉強すれば、まずは行政法の各問題についてイメージを持てる。そこで、このイメージをつかんだ上で、基本書に入れば、より勉強が進む。
前に書いた初学者のための民法本案内 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常が好評だったので、行政法について「独学」で「基本書中心」に学ぶ場合の方法を考えてみた。
まず、
- 作者: 藤田宙靖
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- 発売日: 2005/03
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それから、基本書に入る。これはオーソドックスに塩野を薦めておきます。
- 作者: 塩野宏
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2005/03
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これ以外にも基本書として
- 作者: 大橋洋一
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2004/10
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- 作者: 阿部泰隆
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 1992/11
- メディア: 単行本
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- 作者: 芝池義一,小早川光郎,宇賀克也
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2004/09
- メディア: ムック
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まあ、このレベルは、ロー入試レベルでしょうが、これ以上ハイレベルに行く方法については、私はその知識も実力も持ち合わせていませんので、心有る方の補足を心の中で期待して、筆を置かせていただく。
まとめ
行政法の勉強の際には、藤田「行政法入門」で「イメージ」をつかみ、塩野「行政法」で「流れ」をつかみ、「行政法の争点」で「論点についての判例・学説を理解する」という3ステップで勉強すると効率がよい。