アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

行政法の勉強法〜藤田「行政法入門」を読む

行政法入門

行政法入門

 行政法を勉強する時に、何から入っていくのがよいか。
 藤田宙靖行政法入門」は、入門書の中では、わかりやすく、内容が厚く、オススメである。


 まず、わかりやすいという方だが、具体例、例えが豊富である。
 例えば、普通の基本書には「行政庁とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定し、対外的にこれを表示する権限を法令上与えられている行政機関のことをいう」なんて書いている。こういう説明は、わかる人にはわかるのですが、わからない人にはさっぱり意味不明である。
 これに対し、「行政法入門」は、租税債務の具体例を使って説明してくれる。

私たちは、(中略)国に対して税金を納めなければならないこととされているわけですが、これを法律学的ないい方でいいかえてみると、結局、国が私たち国民に対して国税を(中略)徴収する権利を持っているということになるわけです。
ところで、この場合、この権利は誰の権利かというと、それは当然、法人格をもち、権利義務の主体であることを法律上認められている「行政主体」としての国だということになります。
ところが、実際の法律の上では、国民に対して現実に税金を(中略)強制的に徴収したりするのは、国そのものではなくて、単なるその一機関であるにすぎない税務署長の任務とされているのです。実際、課税処分や納税の督促などは「○○税務署長」という名前でなされています。この場合の税務署長の立場がまさに「行政庁」だ、ということになります。
藤田宙靖行政法入門」p25

 こういう具体例が多くわかりやすいことがこの「行政法入門」の特長である。


 次に、「内容が厚い」ということだが、普通の入門書に書いていないハイレベルのところまで「ちょこっと」触れられている。法律の留保についても、侵害留保・全部留保説はもちろんですが、本当にちょっとだけですが、権力留保・重要事項留保説についても書いているというのはすごい。


 行政法の問題は、イメージがわきにくいというところにあるだろう。「行政法入門」を使って勉強すれば、まずは行政法の各問題についてイメージを持てる。そこで、このイメージをつかんだ上で、基本書に入れば、より勉強が進む。


 前に書いた初学者のための民法本案内 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常が好評だったので、行政法について「独学」で「基本書中心」に学ぶ場合の方法を考えてみた。

まず、

行政法入門

行政法入門

行政法入門」で、おおまかなイメージをつかむ注意すべきは、あくまでもイメージさえつかめればいいのであり、これにより全部を理解しようと思わないことです。300ページ弱あるが、週末位で一気に読み進めるつもりで、行政法の各概念についてどういうイメージを持てばよいかを確認してください。

 それから、基本書に入る。これはオーソドックスに塩野を薦めておきます。

行政法〈1〉行政法総論

行政法〈1〉行政法総論

ただ、この塩野は比較的難しいので「全部を理解」しようとしてはいけません。ざっと理解しようという感じで読んだ方がいい。

 これ以外にも基本書として

行政法―現代行政過程論

行政法―現代行政過程論

大橋とか
行政の法システム〈上〉

行政の法システム〈上〉

阿部とかも面白いですが、こういう本に行く前に、お薦めするのが「争点」です。
行政法の争点 (法律学の争点シリーズ (9))

行政法の争点 (法律学の争点シリーズ (9))

各争点毎に学説の対立、判例等がうまく整理されていますので、藤田で「イメージ」をつかみ、塩野で「流れ」をつかみ、争点で「論点についての判例・学説を理解する」この3ステップで、勉強されるとよいだろう。

 まあ、このレベルは、ロー入試レベルでしょうが、これ以上ハイレベルに行く方法については、私はその知識も実力も持ち合わせていませんので、心有る方の補足を心の中で期待して、筆を置かせていただく。

まとめ
行政法の勉強の際には、藤田「行政法入門」で「イメージ」をつかみ、塩野「行政法」で「流れ」をつかみ、「行政法の争点」で「論点についての判例・学説を理解する」という3ステップで勉強すると効率がよい。