アホヲタ元法学部生の日常

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これがロシアクオリティ??

ソビエト犯罪学史研究 (1985年)

ソビエト犯罪学史研究 (1985年)

近代法の鉄則の1つに、罪刑法定主義がある。罪刑法定主義とは

何が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が科されるかはあらかじめ法律で規定されていなければならない
松宮孝明刑法総論講義」p19

という大原則である。

この大原則は、自由主義と民主主義から導かれる。

そもそも、自由主義を基調とする近代国家においては、国民は、何をすることができ、何をすることができないかを事前に知らされていなければならない。後だしじゃんけんで、「あ、これ実は違法だったの! 死刑!」とされてはたまらないのである。

そこで、何が犯罪となるか、つまり「これをしてはだめ、これ以外は自由」というダメなことを、予め定めなければならないのである。

そして、この定め方は、民主主義からは、法律によらなければならない。「これをすることができない!」といってそれをした者に刑罰を与えるという国民の権利制限をする以上、何がしてはならないことかは国民自身が決めないといけない。まあ、国民が1億2千万人集まるわけにいかないので、代表者たる国会議員が決めることになる。

これが、罪刑法定主義である。

 ところが、

1926年のロシア刑法では「社会的に危険な行為とは、ソヴィエト体制に向けられ、または労働者=農民の権力が共産主義体制への移行期にあたって設定した法秩序に違反するすべての作為または不作為をいう」(6条)「なんらかの社会的に危険な行為がこの法典に直接に規定されていないときは、これに対する責任の根拠および範囲は、この法典の中で種類においてもっとも類似する罪を規定する条項にしたがって、定められる」(16条)と規定されていた。
団藤重光「刑法綱要総論」p40

 要するに、社会的に危険な行為はそれを禁止する規定があれば、その規定に従って罰せられるが、それを禁止する規定がなくとも、類似した規定によって罰せられるとし、社会的に危険な行為というだけで、それを禁止する規定がなくとも一律処罰するという罪刑法定主義無視をやっていたのである。

しかも、この規定は1960年になってやっと廃止された。

まとめ
 しばらく前に現政権を批判したロシア人が毒殺されるという事件が起こったが、罪刑法定主義が戦後しばらくするまで無視されているといった点に鑑みると、こういうこともロシアにはよくあることなのかなぁと思ってしまった。ロシアのいっそうの民主化・近代化が望まれる。

参考:ロシアの天気操作技術
関連:「撲殺天使ドクロちゃん」の世界における刑法 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常