アホヲタ元法学部生の日常

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外山恒一の選挙戦略は共産党が80年前に通り過ぎた道だった!

日本共産党の研究(一) (講談社文庫)

日本共産党の研究(一) (講談社文庫)

 外山恒一とは、今回の東京都知事選の立候補者であり、既に削除されたものの「政治犯として2年投獄」「もはや政府転覆しかない」「私には建設的な提案なんか一つもない!!」「スクラップ&スクラップ!!全てをぶち壊すことだ!!」「当選したら私もビビる」といった奇想天外な選挙演説で一躍有名になった。

 さて、外山恒一の選挙出馬は、当選が目的ではない。その目的は、革命(政府転覆)の闘士ここにあり!と世に知らしめることである*1



 これと全く同じことを非合法時代の日本共産党は既に80年前にやっていた!

1925年に治安維持法と抱き合わせの形で普通選挙が成立した。このため、25歳以上の一般成年男子が選挙権を持つようになった*2。そして1928年に、普通選挙が行われるようになった。
 この普通選挙共産党は打って出た治安維持法*3違反の非合法秘密結社であった共産党は、それまでは地下活動を行っていた。しかし、コミンテルンの指示により、大衆の前に姿を表し、党勢拡大を目指したのである。

 もちろん、公然と共産党を表に出して候補を立てるわけにはいかない。そこで、共産党のシンパが多数いる労働者政党*4の最左派「労働農民党」の候補として、11人の共産党員が立候補し、それらの候補を裏から共産党が支持するという形を取った。

 当選者を出すのではなく、選挙を通じて共産党の存在を知らしめ、宣伝をすることが目的とされていた。
 共産党がこの選挙で配ったビラにはこう書かれていた。

労働者農民諸君!
何故共産党は今回の総選挙戦に出動するのか!
いはずともしれたことだ。

議会を破壊するために


出動するのだ。
そして議会を破壊するのに決定的に重要なのは


労働者農民の暴力的行動だ


立花隆日本共産党の研究(一)」p175

しかも

ビラまきに出るときは武装せよ!』という指示があった
万一のときは”敵”を刺しても逃げのびろ、というわけ
立花隆日本共産党の研究(一)」p181

 武装して決死の覚悟で選挙運動を繰り広げていた。

まとめ
外山恒一の選挙戦略と全く同じことを戦前非合法共産党が80年前に行っていた。しかも、外山よりもずっと強い覚悟で武装までして必死に運動をしていた。
とはいえ、その結果は、同年3月15日の大量検挙(三・一五事件)であり、3400名が逮捕され、共産党組織が壊滅するという失敗に終わっている。
現在とかなり状況は違うとはいえ、外山恒一の選挙戦略は成功するのか、失敗に終わるのか。
外山恒一の「今後」に注目である。

*1:選挙ポスターの「今回の立候補は、むろん当選を目的としたものではなく、ただみなさんに「政府転覆」を呼びかけ、そのための同志を獲得する手段にすぎません」等参照

*2:立花隆日本共産党の研究(一)」p163以下参照

*3:1条は「国体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ10年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」として、資本主義を否定する結社(=共産党)に加入したら10年以下の懲役又は禁固としている

*4:無産者政党