裁判官の爆笑お言葉集
- 作者: 長嶺超輝
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 新書
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この本は「司法のしゃべりすぎ」
- 作者: 井上薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/02
- メディア: 新書
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「お言葉集」の方には、裁判官がふと漏らした本音の言葉が集められている。
早く楽になりたい気持ちはわかるし、生き続けることは辛いかもしれないが、地獄をきちんと見て、罪の重さに苦しんでほしい。
殺人、現住建造物放火などの罪に問われた被告人につき、死刑の求刑をしりぞけ、無期懲役の判決を言い渡して。
「裁判官の爆笑お言葉集」p22
これは、被害女性の不倫相手である被告人が、被害女性に別れ話を切り出され逆上し、被害女性の家族3人を皆殺しにして放火したという事件について、「死刑で当然」という世論や「生きていても仕方がない」というなげやりな被告人に対し、無期懲役の意味を伝え、納得させるために、裁判官が話した言葉である。
二人して、どこを探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰をすえて真剣に気長に話し合うよう、離婚の請求を棄却する次第である。
「裁判官の爆笑お言葉集」p140
これは、離婚の請求を棄却した時に、裁判官が話した言葉である。
本当に謝るべきは、県民に対してではないですか。
贈賄、入札妨害の罪に問われた、土木建設業の役員だった被告人が「(現金を贈与した)県職員や警察の皆さんに迷惑をかけた」と述べたことに対して。
「裁判官の爆笑お言葉集」p76
これらの言葉は当事者及び被害者を納得させるための言葉といえよう。裁判は、上訴・再審ができるとはいえ、確定すれば、一事不再理効、既判力により、もう争えなくなる。しかし、それでも当事者や被害者が判決に納得できないという事態は当然生じる。判決に納得できなければ、真の「紛争の終局的解決」は図れず、また、納得して受刑してもらわなければ、再犯抑止効果も少ないだろう。だからこそ、請求を棄却されたり、有罪となったり、被害者の望むような刑にならなかったといった場合にお言葉が発せられるのである。
「司法のしゃべりすぎ」の著者からいえば、こんな蛇足を述べるのは厳禁となろう。「司法のしゃべりすぎ」の井上元判事の考えというのは、判決は「蛇足」があってはいけない。あくまでも「請求が認容されるか否か」「被告人の構成要件に該当し違法で有責な行為があったという事実が合理的疑いを容れない程度に立証されたか否か」だけを裁判所は判断できるのであり、それ以外の当事者を納得させる等の目的で書かれる部分は蛇足であり不要というものである。
まとめ
「裁判官の爆笑お言葉集」と「司法のしゃべりすぎ」は裁判官についての全く違った2つの考えを提示しているといえる。
裁判員制度等で裁判への市民参加が問題となっている今こそ、両方の本を読んで「どんどん当事者を説得するための言葉を述べるべきか」それとも「裁判官はしゃべりすぎてはいけないか」を、それぞれの人が考えることが重要なのではないだろうか。
個人的には「裁判官の爆笑お言葉集」の方を支持したいところだが。