「もえたん的存在」という説明概念ー試論
- 出版社/メーカー: 三才ブックス
- 発売日: 2005/03/26
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この夏にアニメ化されるらしい「萌える英単語もえたん」は、pop氏の描く「虹原いんく」という萌えキャラをガイド役に、ヲタク心をくすぐる例文で受験単語を覚えることを目的とした英単語帳であり、「萌え」を使った実用書として有名である*1。
もっとも、もえたんは、史上初の萌える実用書ではない。もえたんは、*22003年11月に発売されたが、既に萌えるシリーズ コンピュータユーザのための著作権&法律ガイドが2002年9月に、萌えるシリーズ 萌え萌えうにっくす! UNIXネットワーク管理ガイド ? PC UNIXネットワーク管理日々の疑問に萌えの一手が2003年3月に発売されており、時期的に見て、先駆者(パイオニア)というには遅過ぎるであろう。
2.パイオニアより有名な「2番手」「3番手」
一番最初にその分野に切り込んだ、パイオニアの重要性は否定できない。しかし、現在は、パイオニアだけに注目していればいい時代ではなくなってきている。
例えば、「萌え4コマ」というジャンルにおいては、「あずまんが大王」が非常に有名である。しかし、この萌え4コマというジャンル自体の定義の問題はあっても、「ももいろシスターズ」や「先生のお時間」の方が時期的に新しく、パイオニアか否かという問題を突き詰めれば「あずまんが大王」はパイオニアではないといわざるをえない。とはいえ、パイオニアじゃないからといって、あずまんが大王の意義を軽視すべきではない。あずまんが大王のヒットにより、この分野が広く認知され、「萌え4コマは売れる!」となって、多くの雑誌が創刊されたことは、記憶に新しい*3。
問題は、このような存在をどう呼ぶかであろう。
3.もえたん的存在=パイオニアより有名になった「2番手」「3番手」
そして、このような「パイオニアではないが、その分野の存在を広くしらしめた存在」というものを「もえたん的存在」と呼んではどうだろうか*4。
2番手、3番手がパイオニアよりも知名度や質が低い場合においては、亜流、追随者、模倣者、エピゴーネン等という言葉が使われる。しかし、パイオニアよりも知名度が高くなった場合には、適切な言葉がない。そこで、「もえたん的存在」という言葉を使えば、的確な説明ができる。
blogで「Aの原点はBである!」という発言をすると、コメント等で、「実はBよりも古いCがある」と言われたりすることがある。このような批判を回避し、正確性を保った言論をするためには「BはAにおけるもえたん的存在である!」という概念を使えばよい。
4.応用編
例えば、「法律学」の分野で現在かなり増えてきたものに、複数法分野間の「対話」というものがある*5。
多分原点は
- 作者: 星野英一,田中成明
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だろう。しかし、この本は、発売当時、法律を学んでいた人はともかく、現在の法学部生の認知度は非常に低い。
これに対し、
- 作者: 佐伯仁志,道垣内弘人
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そして、この本が出た後位から、大量の「対話」系の本が出ている。
要件事実論と民法学との対話
対話で学ぶ行政法―行政法と隣接法分野との対話等々
そこで、「異分野間の対話ジャンルのもえたん的存在は「刑法と民法の対話」である!」と議論することが妥当であり、これにより、「刑法と民法の対話」の意義が明確になり、かつ正確性を保てるのである!
まとめ
「もえたん的存在」という説明概念を活用することで、パイオニアではないけど、「その分野を確立した」存在をうまく説明することができる。