アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

ポイント国際私法ーヲタクが国際私法を苦手とする理由!?

ポイント国際私法 総論 第2版

ポイント国際私法 総論 第2版

 国際私法とは、どの国の法律をある特定の事件に適用するか(準拠法)を決定するためのルール*1を意味する。
 例えば日本人がフィリピン人と離婚する場合に、フィリピン法に従う*2べきか、日本法に従うべきかといった問題が国際私法の問題である。この問題は、法の適用に関する通則法により規定され、例えば日本人の方が日本に住んでいる場合には*327条により日本法に従う(準拠法が日本法)ことになる。
 このような国際私法は、民法、商法、訴訟法等の実質法*4と大きく異なる。この違いについて、道垣内教授は、「ポイント国際私法」の中で以下のように論じる。

二次元の平面世界をひたすら歩き回る蟻には空を見上げるという観念自体ない。そのような蟻には三次元の立体世界を飛び回る鳥の世界は決して理解できないのである。
(中略)
二次元世界とは実質法の世界であり、三次元世界とはそれに加えて準拠法決定のルールが存在する世界である。
(中略)
実質法がそれ自体無限の広がりを持つ1つの平面上で秩序を構築しているのに対し、国際私法は、鳥のように飛び回り、単位法関係ごとに準拠法を決定し、それらをつなぎ合わせて適用していくことによって国際的な私法秩序を構築するという役割を果たしているのである。
(中略)
準拠法決定ルールは、異なる平面である各法域の法律のいずれを適用するかを決定するという役割を担っている。この違いはまさに雲泥の差である。
道垣内正人「ポイント国際私法(総論)」p32以下より引用

 二次元世界を生きるアホヲタの私が国際私法を苦手とするのは当然のことなのだ!

まとめ
 国際私法を理解するには、二次元世界(それぞれの法域における実質法の世界)だけを見ているのでは不十分であり、三次元の新たな視点を加えて、それぞれの法律関係にどの実質法を適用するかを考える必要がある。このような新たな視点が必要であり、かつ実際の議論内容がほとんど「新たな視点のみ」*5である。これらが、国際私法がとっつきにくい理由であろう。
 「ポイント国際私法」はこのことを教えてくれる*6レベルが高いがエキサイティングな参考書*7である。

 

*1:狭い意味での国際私法

*2:http://www5b.biglobe.ne.jp/~v-o-t/philippin3.htm等参照

*3:常居所在地が日本の場合には

*4:権利関係について具体的に定めたり(実体法)、その実現に必要な手続について定め(手続法)ている法律のことを国際私法と対比して表現する言葉

*5:準拠法を決めれば公序違反等がない限りそれで終わり。実質法の内容はほとんど立ち入らない。

*6:かなり

*7:教科書で一応国際私法を学んだことを前提としている