アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

生き別れの双子の結婚を有効にする方法

ゾロアスターの神秘思想 (講談社現代新書)

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1.生き別れの双子事例
痛いニュース(ノ∀`) : 生き別れの双子がそうとは知らず結婚→国に結婚を取り消される - ライブドアブログによると、

英国で、生後間もなく異なる夫婦に養子に出されていた男女の双子が、そうとは知らずに結婚していたことが明らかになった。同国の上院議員が議会で明らかにした。同国高等法院は婚姻無効の判断を下し、結婚は取り消しとなった

そうである。

さて、私は英国婚姻法は知らないので、「日本法」に基づき、このような双子に有効に婚姻させることはできないかを検討してみる。


2.特別養子縁組でどうか?
 普通の兄弟はもちろん、双方が「普通養子」に出された場合にも、近親結婚は禁じられる。それは、「普通養子では、実の親族との関係が継続する」
からである(民法817条の9参照)。つまり、養親*1との親族関係と、実の親族関係の両方が存続し、兄弟姉妹関係が続いてしまうのである。

 ここで、考えられるのは、特別養子縁組である。これは、

民法817条の9 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。

とあり、実の親族の関係が終了する。そこで、近親結婚も可能となるように思える

しかし、そうは問屋が下ろさない。

民法734条 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。
第2項 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

民法734条2項は、特別養子縁組により親族関係が終了しても、婚姻できないとしているのである。

やはり、日本法では解決できない。

3.国籍を離脱してもらおう
 ここで、ゾロアスター教が近親婚に寛容的と言われる等、世界の中には、近親婚に対し寛容な国があるようである。ただ、具体的に、兄弟姉妹間の婚姻を法制度として認めている国があるかは、寡聞にして知らない。そこで、その国をX国として話を進めよう。

 X国の国籍を両名が取った後、X国で結婚して、X国に住むことも可能である。これが一番争いが少ない。

 しかし、日本で婚姻をして日本に住むとなると問題が生じる。その場合、婚姻の手続きは、婚姻地による(法適用通則法24条2項)。そこで、婚姻届を出すこととなる。
 とはいえ、両名が双子だとわかったら戸籍係は受理しないだろうし、受理しても、その後検察官により取り消し請求がされる可能性もある。

 この場合、訴訟で二人とも勝てるか?


4.「公序」違反か?
 まず、「外国の法律が適用されるのか、日本の法律が適用されるかよくわかんない」という場合の、法律の適用関係について簡単に述べる。

1.争いになっている法廷のある地(法廷地)の国際私法、つまり「この法廷で争われる事件について適用される法律はこれですよ!」と示してくれる法律を探す*2
2.法廷地の国際私法には「こんな種類の法律関係は、この国の法律で裁いてね」と書いている。
3.裁くべき法律が外国法に決まったとしても、その外国法の規定が公序良俗に反したら駄目(法適用通則法42条)*3

本件では、法廷地は日本であり、日本の国際私法、すなわち法適用通則法が適用される。
そして、法適用通則法25条は、婚姻の効力は夫婦の本国法が同一ならその法によるとしている。
そこで、夫婦がX国籍をもっていれば、X国法、すなわち、婚姻はOKとなる。
ところが、そうは、簡単にいかない。その婚姻が日本の公序良俗に反すると、X国法の適用が排除されてしまうのである(法適用通則法42条)。

ここで興味深いのが、
最判平成19年3月8日*4である。
この判決は、内縁関係にあったおじが死亡したとして、めいが遺族年金を求めて争った事件であり、

おじ・めいの内縁関係でも、生活期間の長さなどに照らして反倫理性、反公益性が著しく低ければ受給権は認められる

としたものである。
同判決は、本件と異なり、3親等と血縁関係が遠いこと、および42年間もの生活、2人の子を産んだという生活期間の長さを指摘しており、本判決から本件が素直に公序良俗に反しないとなるわけではない。

しかし、
「長期間に渡り実の兄妹と知らずに婚姻生活を続けていた」「このような事情を知らないことに帰責性がなかった(知らなくて当然であった)」といった事由があれば、「公序良俗違反とは言えない」との判断がなされる場合が一切ないとは言えないだろう。
 このような場合には、双子が有効に婚姻する余地がないとは言えないのである。

まとめ
 双子の婚姻を日本法に従って認めるためには、かなりの困難がある。しかし、絶対に認められないという訳でもなさそうである。
今後、代理母等生殖技術発達により、「本人が知らないうちに兄弟で結婚」という事態も起こりうる。これに備えた議論が必要であろう。

前記の記事は、三軒茶屋様のサイトに紹介されていたものです。また、この論考は、妹と結婚する方法についての私的まとめ(仮) - 三軒茶屋 別館という先行研究を参考にしております。どうもありがとうございました。
今後もよろしくお願いいたします。「”文学少女”の今日のおやつ」第11回『飛ぶ教室』も面白いですね。

*1:の親族

*2:実は、そもそもその法廷地に管轄があるんかという問題が別にあるわけですが、それは省略。

*3:反致は面白いのですが、省略。興味ある方は、法適用通則法41条をご参照ください。

*4:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070308164237.pdf