アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

ラブプラスと製造物責任法〜ヒロインビッチ問題の法的考察

ラブプラス

ラブプラス

本エントリは、ラブプラス及びラブプラス Nene Daysのネタバレを含んでおります。

1.ラブプラスとは
 これまでの*1恋愛ゲームは、「恋人になるまでの過程」を描くものだった。恋人になるという目的が達成されると、その後のエピソードがほとんど語られないままゲームが終了し、その後は「別のキャラクターと恋人になる」というルートで「やり込む」ことになる。
 ラブプラスは、単に恋人になるまでだけではなく、恋人になってからの過程を本格的に描くゲームとして、熱狂的ファン(紳士)を多く持つようになった。


2.ヒロインビッチ問題とは
 さて、近時大きな問題となったのは、いわゆるヒロインビッチ問題である。
 http://jin115.com/archives/51669328.html
 月刊ヤングマガジンで連載中のラブプラス Nene Daysは、コナミ公式のラブプラス漫画である。姉ヶ崎寧々との日々をオリジナルストーリーで描き出している。
 このラブプラス Nene Daysの中で、「寧々が実はビッチな性格であることを示唆するエピソード」が掲載されたことから、多くのファンが怒り狂っている
 一部のファンの発言を抜き出すとこんな感じである。

講談社関係者マジ出て来いよ。説明しろやゴラァ!」
「あーこりゃもう許さね。一揆。こりゃもー止められねえわ。あーあーしーらねー」
「この漫画描いてるやつ死ね。どうせ色々妄想できる言葉選んでるんだろ。イメージを壊すな」
「もう許さん。十字軍だ。限界いっぱいまで戦い抜く
「まままま待て落ち着け素数素数素数をうぉおおおおお
ラブプラスの寧々さんが公式でビッチ:ニュー速VIPブログ(`・ω・´)

ファンの中にはDS割ってくるという強者もいる*2
 このような怒り狂ったファンは、コナミに対してどのような落とし前を請求できるのか?


3.製造物責任法による責任追求
 この場合、民法による責任を追求する事も可能であるが、ややハードルが高い。それは、民法が対等な当事者間の法律関係を前提としており、巨大な企業と弱い消費者という現代的構造をあまり意識していないからである。
 例えば、不法行為民法709条)に基づく責任を追求するには、コナミ側に故意又は過失があったことを立証しなければならないが、コナミ側の事情を知らない消費者が、過失を立証するのは困難である*3
 このような社会的権力たる巨大企業から、弱い消費者を守るため、いろいろな特別法ができている。そのうち、製造物責任法(PL法)は、製造物に欠陥がある場合、消費者*4がそれにより生じた損害の賠償を求めることができるという法律である。

 俺の嫁として慕っていた寧々がビッチであることが発覚して精神的ショックを受けたファンは、コナミに対して製造物責任を追求できるだろうか?


4.製造物責任法
 製造物責任法は、製造者が、製造物に欠陥がある場合にはそれにより生じた損害を賠償しなければならないとする法律である。

製造物責任法第3条 製造業者等は、その製造*5した製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる
製造物責任法第2条第2項 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう

(1)製造物性
 まず、ラブプラスがソフトウェアであることから、そもそも「製造物」であるかが問題となる。
 ここで、製造物とは製造又は加工された動産をいう(製造物責任法2条1項)ところ、ソフトそのものは、無体物であり製造物ではない
 しかし、DSは、いわゆるROMカセット*6の中にソフトが入っている。つまり、単なるソフトウェアだけを販売しているのではなく、「ゲームソフト」というハードウェアの中にソフトウェアを収納して販売しているのである。
 このように、ソフトウェアと媒体が一体となり、不可分一体をなしている場合には、これは「製造物」に該当する*7


 そこで、マジコンを使ってソフトだけダウンロードしている場合には「製造物」性がなく、製造物責任を問えないが、普通にゲームソフトを購入していれば、製造物責任を問いうるのである。こういう時のためにも、きちんとマジコンではなく、正規のソフトを購入すべきだろう*8


(2)欠陥
 ここで難しいのは、欠陥の有無である。欠陥とは、通常有すべき安全性を欠いていること(製造物責任法2条2項)とされるが、いったいどういう場合が「通常有すべき安全性を欠いている」のかが必ずしも明らかではない。


 ここで、通常有すべき安全性を欠くというのは、単に品質が悪いことから財産に損害を生じるというだけではダメであると解されている。例えば、冷蔵庫の冷蔵能力が不十分であったためにその肉が腐敗して、その価値を失っても、これは、冷蔵庫の品質の問題であり、製造物責任の問題ではないのである*9製造物責任は、直接の契約関係にない製造者に対する責任を追求させる根拠である以上、通常、このような場合であれば、人の生命や身体を侵害する危険があるといえること必要である*10


 難しいのは、通常「登場人物が恋愛経験豊富というだけで、生命や身体は侵害されない」ということである。これをどう克服するか。
 無難な方法は、ラブプラス指示・警告上の欠陥があるという議論であろう。例えば、ジュースにそっくりなパッケージのお酒*11について「これはお酒です」という警告がなかった場合を考えよう。このお酒は「中身は普通の酒」であり、大人が飲む分には何も生命身体への危険はない*12が、警告がないために、子どもがジュースだと思って飲んで体を壊す危険がある。これが、指示・警告上の欠陥である。本件でも、ビッチが登場するなら、最初からそう言ってくれれば、紳士はスルーしたのであって、それを、清純のように装って「実は」というのはおかしいという議論は十分に考えられる。


 もっとも、私は、あえて、ストレートに設計上の瑕疵を主張したい。つまり、このようなキャラ設計自体に生命や身体の危険があるという議論である。
 そもそも、「欠陥」を考える場合には、当該商品の対象者を基準に考えるべきである。例えば、上記のように「家庭用」の冷蔵庫であれば、冷却能力が多少悪くてもせいぜい肉が腐るくらいだろうが、ワクチン等を保管する「医療用」の冷蔵庫であれば、冷却能力が悪いと医薬品が変質して身体生命に多大な悪影響を生じさせる
 本件でも、ラブプラスの対象たる、「紳士」の多くが、いわゆる処女厨であることは公知の事実である。
 下級生2柴門たまきが非処女であったため、ゲームソフトを割った紳士がいた例や、かんなぎの中古騒動等からも明らかなように、恋愛感情を持ったキャラクターがビッチであることにより、発狂する層。これが、全国のラブプラス紳士なのである。


 すると、ラブプラスという商品の対象者の視点に立てば、公式にビッチ設定がついた時点で、そのこと自体が、ファンをうつ病ないしPTSD等に追い込む可能性のある危険なことであることは客観的に明らかといえよう。そのような設計(設定)がなされたこと自体が、ラブプラスの設計上の欠陥なのである。


(3)結論
 製造物責任法により、欠陥のあるラブプラスを製造したコナミは、ビッチであることにより精神的打撃を受けた紳士に対して、慰謝料、その他の損害*13を賠償しなければならない。

まとめ
 ビッチ問題で精神的打撃を受けた寧々の「彼氏」は、製造物責任法に基づき、慰謝料等の損害の賠償を求めることができると解される。コナミの中の人は、「紳士」の精神構造に関する調査が甘かったと思われる*14
 もちろん、このような結論になったのは、私怨ではなく、法律の規定による客観的結論です。ほ、本当に私怨じゃないですからねっ!! *15

*1:多くの

*2:本当に割ったかは不明

*3:故意の立証はもっと困難である。なお、現在検討されている証拠開示の拡充についての民事訴訟法改正により、やや原告側に有利に働く可能性があるが、それでも故意・過失が要件である限り、その立証の困難性はいつまでもつきまとうだろう

*4:一応消費者に限られない。ただし、PL法に基づき大企業が下請けに対して責任を追求することについては謙抑的議論があることに注意。

*5:中略

*6:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88参照

*7:例えば、升田純編「現代裁判法体系8製造物責任」59頁

*8:そもそも、本当の紳士なら、愛する彼女を違法ダウンロードするなんてことはできないはずだ!

*9:遠藤浩編「基本法コンメンタール債権各論II第4版」155頁

*10:同上

*11:子供が飲むと身体に害が生じる危険がある程度のアルコール度数のもの

*12:大人として分別をわきまえて飲めばということです

*13:慰謝料がPL法上の損害にあたることは、経済企画庁消費者行政第1課「逐条解説製造物責任法」103頁参照

*14:これが「過失」に該当するかを考えるまでもなく「欠陥」があれば、責任が認められるというのが、製造物責任法のすごいところ。

*15:もちろん、実際の訴訟の結果については一切保証するものではございません。