QBの強制わいせつ〜僕たちのさやかちゃんを守れ！

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出版社/メーカー: エーシージー
発売日: 2011/05/29
メディア: おもちゃ＆ホビー
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１．さやかとの魔法少女契約
QBは、第５話で、「さあ、受け取るといい。それが君の運命だ・・・」と言って美樹さやかと魔法少女契約を取り結んでいるが、その際は、耳（？）をさやかの胸のところに伸ばしてまさぐり、ソウルジェムを取り出している。ダイレクトに胸というわいせつ部位を弄び、ついにはソウルジェムを放出させた*1のだから、これは猥褻行為以外の何者でもないだろう。
QBを強制わいせつ罪で裁けないか？

２．「強制」の要件
ところが、さやかは１３歳以上であるところ、１３歳以上の女子に対する*2強制わいせつ罪は、暴力又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合にのみ成立する。

刑法第176条　13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、６月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

ここで、強姦と異なり、強制わいせつであれば、暴行の程度は低くて良く、わいせつな行為自体が暴行になる場合もあるとされる*3。QBは、猥褻行為として、耳でさやかの胸を弄るという物理的接触をしており、これを「暴行」とみる考えもあろう。ただ、その程度が軽いことから、暴行と見ることができるか疑問が残る。

３．準強制わいせつ
そもそも、さやかはなぜ、QBのいいなりになって胸を弄られたのか。それは、QBとの魔法少女契約のプロセスの一つだと誤信したからである。

刑法第178条　人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

刑法第１７８条は、こんな場合に備え、準強制わいせつ罪を規定する。
この、抗拒不能 *4というのは、要するに抵抗ができなくするという意味である。
類似の事案としては、英語教師が、「下着を脱いで着替えると英語が上達する」と説明して三名の少女を着替えさせた強制わいせつ事案*5で、抗拒不能とは、具体的な事情の下において、抵抗することを著しく困難にさせることであり、欺くことで被害者を錯誤に陥れて抵抗することが著しく困難な心理状態にさせる行為も含まれるとして、準強制わいせつ罪を認めた東京高判平成１５年９月２９日*6がある。

さやかは、QBの巧みな言動により、契約のためのプロセスだと思ったからこそQBのされるがままになっているのであり、仮にQBが強制わいせつ罪の暴行まではしていないとしても、抗拒不能状態にさせてわいせつ行為を行った準強制わいせつになると言える。

４．QBにはわいせつな心理はあるのか。
ところが、（準）強制わいせつ罪は、単に客観的にわいせつな行為をしたというだけでは成立しない。　判例は強制わいせつ罪が成立するためには、犯人の性欲を刺激興奮させ、または満足させるという性的意図の下に行われることを要するとするが、その他の目的と性的意図が併存してもよいとされる*7。
なぜ、性的意図を必要とするか、それは、医者が性的部位を触ったりする場合に、性的意図がないとしてわいせつ罪を成立させない*8ためと言われる*9。

ここで、QBは、自己の感情について、こう説明している。

「僕たちの文明は、知的生命体の感情を、エネルギーに変換するテクノロジーを発明した」
「ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」
「そこで、この宇宙の様々な異種族を調査し、君たち人類を見出したんだ」
魔法少女まどか☆マギカ第９話そんなの、あたしが許さない

そこで、QBの弁護人はこう弁論するだろう。

君たち人間は、性的欲求とかそういう感情にこだわるけど、
感情のない僕にわいせつも何もあるはずがないだろ。
人間は何でそんな簡単なことも分からないのかなぁ？
訳が分からないよ！？

このような、否認を続ける被告人の内心はどのように認定するのか？

現在の裁判制度は、自白がなくとも証拠があれば被告人を有罪にできる。つまり、性的意図の有無*10を証拠から認定するのである。
刑事裁判では「犯罪の主観的要素が争われる場合も少なくない。そして、これらの事実を」「情況証拠のみによって認定しなければならない場合が多い」と言われている*11。

ここで、証拠のほとんどが、魔法少女まどか☆マギカの番組のキャプチャーになるので、テレビ番組を刑事訴訟に用いることができるかが問題となる。
この点、メディアの報道の自由の観点から、テレビ番組を刑事訴訟に用いることに謙抑的な学生も有力であるが、裁判所は、必要性があり、被告人の権利保護に支障がない限り、報道ビデオテープの証拠採用を可能とした*12。

では、証拠、つまり、「魔法少女まどか☆マギカ」のシーンから認定しよう。
まず、QBの「歩く位置」は、常にまどかのパンツがモロ見えな位置*13 である。QBがあのポジションを取らないといけない理由については、パンツを覗き見ること以外、合理的な説明ができない。

また、契約の相手が第二次性徴期の少女に限られているという時点で、性的目的を持っているという推認を働かせても差し支えないだろう。男女・年齢による差別は禁止されており（憲法１４条）、合理的な「区別」の理由としては、性的意図が推認できるだろう*14。

そして、重要なのは、第十話における暁美ほむらとの契約時には、胸を触らずにソウルジェムを取り出して契約をすることができていたということである。ほむほむには触らずに契約できるのに、さやかには触らないと契約できないはずがなく、さやかの場合には契約をするために必然性はないのに触ったということが強く推認できる。そのような合理的な理由がなく触ったのは、性的意図に基づくからとしか認定しようがないだろう*15。

以上より、少なくともQBがさやかの胸を触った行為に性的意図が含まれていたことは優に認定できる。

まとめ
QBがいくら否認しても、魔法少女まどか☆マギかの各シーンにキャプチャーされたQBの行動から、QBの強制わいせつ罪を認定できるのである。
無辜*16は絶対に罰してはならないが、同時に真犯人を逃すことも避けなければならない。否認をしても、犯罪の痕跡は証拠に残る。これが真犯人を有罪にするのだ。

謝辞：本エントリは、「契約時にさやかちゃんの胸をまさぐったQBって強制わいせつ罪じゃないの？」というpatRIOT様のアイディアに基づくものです。貴重なアイディアをありがとうございました。

〔魔法少女まどか☆マギカ関係エントリ一覧〕

*1:「らめぇぇ、ら、らめぇぇ、そ、ソウルジェムが、出ひゃう、出ひゃう、出ひゃうのぉおお〜」という感じになるまでまさぐった

*2:男子でも良いのですが・・・。なお、「女の子だと思ってわいせつ行為をしたら男の娘だった」という事案で強制わいせつ罪が認められた判例がある。これが東京地判平成１７年１１月２５日であり、女子１５名への強姦・強制わいせつをしたつもりが、一人は男子だったという事案である。「錯誤があったから無罪」にはならない

*3:川端博他著「裁判例コンメンタール刑法２巻」２９２頁

*4:「こうきょふのう」と読みます

*5:こんなのに三人もひっかかるというのが・・・

*6:東京高等裁判所判決時報刑事５４巻１〜１２号６７頁

*7:最判昭和４５年１月２９日刑集２４巻１号１頁等参照

*8:あ、もちろん、医者の中には麻酔で寝ている被害者を弄ぶ等の卑劣な輩も一部いますので、そういう例外的な場合には当然強制わいせつ罪は成立しますので、お間違いなく。

*9:神垣清水「実践捜査問答」１０４頁参照

*10:ここで、検察側は立証責任を負うのだから、性的意図があると立証されなければ無罪である。

*11:石井一正「刑事事実認定入門」１２０頁

*12:例えば、和歌山毒カレー事件に関する和歌山地決平成１４年３月２２日では、編集の正確性を担保させることで、被告人の権利保護を図ろうとした

*13:ほむほむがパンツを盗んでいたら、「はいてない」状態。なお、ほむほむが縞パンを履いていない？こんなの絶対おかしいよ！？〜まどかと盗品運搬罪 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。

*14:エネルギーの差があるというが、少年の感情エネルギーもまた大きいことは、「勇気・友情・努力」型の少年漫画から明らかであろう。