アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

花咲くいろはに見るクレーマー対応の基本〜女将四十万スイに学ぶ三原則

注:本エントリは、アニメ第二話(コミック第一巻)までのネタバレを含んでおります。お気をつけください。

花咲くいろは(1) (ガンガンコミックスJOKER)

花咲くいろは(1) (ガンガンコミックスJOKER)

1.花咲くいろはとは
 普通の高校生だった松前緒花は、突然母親が「夜逃げ」をしなくちゃいけなくなったといって扶養を放棄したため*1、会ったこともない祖母が経営する石川の温泉旅館・喜翆荘に住み込み、仲居見習いとして働くことになる。喜翆荘の個性的な従業員やお客さんと触れ合いながら、少女は成長してく*2。そんな、少女たちの青春お仕事ストーリーが、「花咲くいろは」である。
 

2.喜翆荘にいるクレーマー
 第2話「復讐するは、まかないにあり」には、旅館・ホテル業界の辛い部分も出てくる。 特に辛いのが、「クレーマー」の存在である。
  クレーマーの定義は論者個人毎に差があるが、「正当な理由のない要求をする人」というのが最大公約数ではないだろうか。
 喜翆荘の「波の間」に連泊している作家風の客、次郎丸太朗。原稿用紙が散乱する部屋を、緒花は客がいないところで掃除してしまう。
 「直木賞を取れるはずの大切な原稿がなくなった!」
 

 このようなクレーマーにどう対応すれば良いのか?


3.クレーマーが多い旅館・ホテル業界
 旅館・ホテル業界にはクレーマーが多い。その理由は、顧客への上質のサービスを売りにしている部分があるだろう。サービスの質が高いことが期待され、また、旅館・ホテル自身も高いサービスを提供しようとする。そこに、「自分への特別サービスをせよ」という不合理な要求をする者、クレーマーを生む素地があると言われている。


4.クレーマー対応の三原則
  クレーマー対応には三原則があるとされる。

(1)冷静かつ丁寧に事情を聞き出す
  「そんなの嘘だろ!」というようなクレームもあるが、頭ごなしに否定せず、話をよく聞いて 事情を聞き出すのが大事と言われる*3。もちろん、媚びたり、不必要に全面的に非を認める必要はないが、「客」の主張する事情を冷静かつ詳細に聞き出す。
  この段階で対応が悪くて問題をこじらせたり、最悪の場合には、事実関係が分からないまま話が進んだせいで、相手の主張する事実を前提に対応を検討せざるを得なくなることもあり得る*4


(2)そのクレームは、正当か?
  クレーマーやクレームの定義は論者によって幅があるが、少なくとも、「正当な要求には応じなければいけないし、その要求が不当なら応じなくていい*5という点では一致をみていると言えるだろう。
 問題はその正当性の判断基準であるが、 究極的には法律上の請求が立つかどうかで判断されるだろう*6。もっとも、現場で法律判断をするのは現実的でない。第一次的な判断基準は「当方にどの範囲で非があり、どの範囲で非がないのか」をまず検討した上で、「(当方の客観的な落ち度の程度を前提に)普通の*7客が要求をする場合でも応じる内容なのか」という検討をすることになるだろう。この点は、相手ももっともらしい理屈をつけてくることも多いので、複数人で判断する等して、正当性を検討することになるだろう*8


(3)毅然とした対応
  相手の言い分に正当性 があるなら、その要求には従うべきことになる。これに対し相手の言い分が不当であれば、言葉を選んで丁寧に、要求に応じられないことを説明する。
  不当な要求をし続ける相手には、複数人で毅然としてNOという。場合によっては、「警察を呼ぶ」というニュアンスの発言をすることが効果的な場合もあるだろう*9


(4)流石です、女将さん
 この点は、流石歴戦の女将四十万スイである。元直木賞候補者とか、別の権威ある賞を取っていれば別論、「直木賞」を取ることができる原稿という時点で怪しい。そういう「自称作家」の未完成原稿が、仮に旅館側の責任で無くなったのだとしても、数ヶ月宿泊していれば、何十万円、何百万円にもなり得る宿代に見合うものになるとは到底思えない。つまり、女将が聞き出した事情に基づけば、次郎丸の主張には正当性がない

「警察を 呼びましょう」
P.A. WORKS原作 千田衛人花咲くいろは第1巻」153頁

 警察を呼ぶようにいう女将の対応は、まさにクレーマー対応術の基本を実践しているのである

まとめ
「 おしごと」には、楽しいこともあるが、辛いクレーマー対応もある花咲くいろはは、「青春おしごとストーリー」を実践しており、クレーマー対応の基礎も教えてくれる。
 ストーリーそのものはもちろん、クレーム対応という意味でも続きが気になるアニメ・漫画である。


参考:金沢の地番と「いろは」については、

*1:高校生も「児童虐待」の対象になり得る。平成18年度児童相談所における児童虐待相談対応件数等|厚生労働省厚労省の調査でも、虐待対象者の5パーセントは高校生。

*2:女将へと成長していく過程の少女は、なんと呼べば良いだろうか。「仲居」とかだと、第二次性徴期あんまり関係がない気がする・・・

*3:森山満「企業のためのクレーマーち悪質クレームへの対応」81頁

*4:森山満「企業のためのクレーマーや悪質クレームへの対応」81頁

*5:応じてはならない

*6:横山雅文「プロ法律家のクレーマー対応術」40頁

*7:叫んだり脅したりしない

*8:その場で判断できなければ、応急対応だけして、後日判断というのもあり得る。

*9:森山満「企業のためのクレーマーや悪質クレームへの対応」126頁