アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本〜ただの単語集には興味がありません!?

『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本[上巻]

『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本[上巻]

1.ハルヒで英語を学びたい!

I'm not interested in ordinary people. Those of you who are extraterrestrials, future-men, otherworldly beings and psychics, come to me. Period.
ただの人間には興味がありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところにきなさい。以上
谷川流原作テキスト「涼宮ハルヒの憂鬱で英単語が面白いほど身につく本(上巻)32〜33頁

 涼宮ハルヒの憂鬱は、名台詞が多いラノベである。あの名台詞が、どう英訳されるか、これを考えるだけでワクワクする。ハルヒで英語を学んで、大学入試に受かるとすれば、これほど素晴らしいことはない!


 ところで、ハルヒの名台詞の一部が、

もえたん[新装版]

もえたん[新装版]

もえたんに掲載されているのは有名だが、従来は、ハルヒだけを使って受験本が作れるとは思われていなかった。 その理由は、大学受験レベルを凌駕した語彙と、文庫約300ページという分量である。
 語彙というのは、上の例を見てもらえれば意味がわかるだろう。「otherworldly」等の単語が大学受験に役立つ日がくるとは思えない。
 また、分量というのは、日本語だから300ページを普通に読めるのであって、外国語でこの分量はかなりキツイ。少なくとも多くの受験生には。


 この難しいハードルを乗り越えようと、工夫を重ねて涼宮ハルヒの憂鬱で英単語が面白いほど身につく本を出版した方がいる。SEB。「涼宮ハルヒ」で英語を勉強する団である。
今までにないチャレンジをする、その心意気やよし!
 レビューしてみた。


2.本書の構成
 本書は、見開きに「涼宮ハルヒの憂鬱」を対訳にしている。左が日本語、右が英語だ。
 重要単語は色がついていて、次の頁で解説がついている。
 涼宮ハルヒの憂鬱一冊を、若干カットして、二冊の単語帳に組んでいる。
 単語数は、本文中に出てくるのが約1700語(上巻1100語、下巻600語)、本文とは直接関係ない重要語をカテゴリで並べた「重要単語」コーナーで1000語、計2700語が学べるという算段である。
 単語については、音声ダウンロードサービスがついてくる*1が、本文そのものは対象外である。


3.使う人を選びそう
 以下は私見であるが、「使う人を選びそう」というのが感想である。
 本書は、キョンのモノローグ等のラノベの文章を、簡略化していないそのままの形で英訳する。
 これ自体は、原作愛好者にとっては良いのだが、結構難しいこと言ってるぞ、キョン。センターレベルの英語読解力では、日本語と英語を首っ引きで確認しても、かなり辛いのではないか。日本語を頼りに読んだとしても、最後まで読むには、時間が相当かかるのではないか。
  このようなレベルの高さに対応するため、巻末に構文解説がついているのはありがたい。ただ、「構文解説がないと読めない」というレベルの学生が、最後までやり通せるかは心配なところである。


 よって、現状では、

ハルヒの熱狂的ファンで、英語はわからないけど、ハルヒなんだから次はこういう意味だろうと予想しながら読める人。
・センターレベルの英語をサクサク読め、難関大入試英語の「物語文」の練習のため、難し目の英文を求めている人

 がオススメ読者層ではないか。


4.改善提案
 上記で述べたとおり、SEB団の心意気は素晴らしいものであり、ハルヒで英語を学べる本を作りたいという「志」には、全面的に賛同するところである。


 まず、当面、本書の内容を変えないでできる方法だが、日本語版と声質が似ている声優によって本文を読み上げてもらうのが、「最後まで読み通せない」という問題を解決するだろう。自動的に音声を流すだけでいいので、挫折率が下がるのだ。
 また、ヲタクは、声優の声質が日本語版と似ていれば、「この場面でこの声はこういうことだろう」ということで、英語を英語のまま理解することもできるだろう。
 

 次に、版を変えるとすれば、文章の難易度を下げ、量を減らすことをオススメする。上巻1100語、下巻600語というのはちょっとアンバランスである。下巻は本文中の見出し語が激減しているのが、パッと見からも分かる。やはり、一冊にまとめるのが良いだろう。
 本来谷川先生の原作に手を付けることは非常に恐れ多いことだが、あえて学習効果のために提言すると、ストーリー上必要不可欠なエピソードと、語学学習上必要なエピソードに限定することで、一冊にまとまるだろう。「憂鬱」を憂鬱ならしめるエピソードとして不可欠なのは、「自己紹介」→「ハルヒと話をするきっかけ」→「SOS団設立」→「みくる猥褻事件」→「三人の『告白』」→「朝倉急襲」→「みくる(大)」→「ハルヒの独白」→「ラスト」という当たりが「骨」になるだろう。
 これらのエピソードに、重要語句が多く含まれる部分を厳選して加えて一冊にすれば良いのではないか。
 そして、日本語と英文も、平易にして良いだろう。確かに、今回は「格好いい英文」を目指しているのが良く分かる。しかし、それが構文解説を必要とするレベルの高さにつながっている面は否めないだろう。見出し語は維持するとして、それ以外は、分かりやすい単語で言い換える、語順を変える、文章を分割する等で、構文解説がなくとも分かるようにすることが望ましい。
平易な英文で、一冊で完結し、読者が最後まで通して学習しやすい分量になれば、受験生全員が必ず使う「定番」になるのも夢ではない


 なお、こういう、文章で学ぶ単語帳はどうしても「漏れ」、つまり本文中出ないけれども受験上大事な単語というものが出るので、重要単語コーナーを設けること自体は止むを得ないだろう。しかし、重要単語コーナーに例文がない涼宮ハルヒを思い起こさせる様な例文をつけてくれるのであれば、満足度も上がるだろう。

まとめ
 本書を作ろうとしたSEB団の心掛けは素晴らしい。
 ただ、多分制作サイドの英語力が高いので、受験生の現実的レベルに鑑みた修正がのぞましいだろう。本文の音声ダウンロード、文章の平易化・少量化、そして、重要単語へのハルヒ例文。これが達成された時、伝説の一冊になるだろう。
 なお、この伝説の一冊を作るには、やはり、本書の売り上げがある程度必要である。そこで、「限界がある、相手を選ぶもの」とわかった上で、SEB団の志を応援するつもりで購入する人の輪が広がることを望むところである。