アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

法学ガール〜勘違い騎士道事件

以下は「数学ガール」のSSで法律を解説するものです。
コンセプトは
数学ガールから、法学ガールへ〜「文系にとっての最強の萌え」は?! - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
をご参照下さい。


1.テトラちゃん
1.1.勘違い騎士道事件

 ジンジンと照りつけるような、あの夏の日差しも影を潜め、図書館の窓を少し開けると秋を感じさせる風が吹き込んでくる。
 「勉強の秋」の空気を感じたのか、図書館の利用者も増えてきた。各席に置かれた判例六法が存在感を主張する。
 そんな図書館の中の、「定位置」に座る僕とテトラちゃん。


 「あのぉ。」
 と、テトラちゃんが遠慮気味に声を掛ける。刑法の判例集を開いているので、刑法の質問なのだろう。
誤想過剰防衛って、どう考えればいいか分からないんです。なんか学説も分かれているみたいですし…。」
 応用的な概念を勉強するのは良いことだ。でも、それを理解するためには、基礎的な概念を知っておかなければいけない。
 「テトラちゃん、まずは抽象的に考えないで、具体的な事例を考えてみようよ。有名な最高裁判例があったよね。」
 「はい。『勘違い騎士道』事件(最判平成62年3月26日刑集41巻2号182頁)です。」
「そうだね。この事案は、あるイギリス人の男性が被告人になっている事案なんだけど、最高裁はどういう事実を前提に判断したのかな。」
「えっと、被告人は夜、家に帰ろうとしたら、被害者の男性が酔っ払った女性と揉み合っており、酔っ払った女性が尻もちをついたのを見ました。そこで、被告人は、被害者の男性が女性に暴行を加えているのだと誤解して、女性を助けようと二人の間に割って入りました。そうしたら、被害者は、防御をしようと手を胸のあたりにあげたのですが、被告人はそれを自分に殴りかかってくるものだと考え、とっさに被害者の顔面付近に回し蹴りをしたところ、被害者が死亡したという事実です。」
「そうだね。最高裁は法律審だから、基本的には事実の問題には立ち入らない。そこで、原審(東京高判昭和59年11月22日)の事実認定を前提に判断しているね。イギリス人が『騎士道精神』で女性を助けてあげようと思ったら、実は女性は被害者の知り合いで、単に酔っ払いを介抱していただけで、助けてあげる必要は全くなく、むしろ自分が傷害致死罪で被告人になったという事案だね。ところで、今テトラちゃんが要約してくれた原審の事実認定は、大体あってるんだけど、1つ重要な事実を忘れているよ。」
「ふわわわわ!? 重要な事項ですか? 何を忘れちゃったのかなぁ…?」
 テトラちゃんの反応は、いつ見てもかわいい。


1.2 正当防衛
「まあ、この点は取りあえず置いておいて、基本的な事項を確認しようか。刑法36条の1項と2項の内容は。」

刑法36条1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2項  防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

「えっと、1項は正当防衛を規定して、2項は過剰防衛を規定します。」
「そうだね。それで、正当防衛はどうして『罰しない』んだっけ。」
「違法性がないからです。」
「違法性がなくなるのはどうしてかな。」
「えっと、教科書には、『法の自己保全*1って書いていました。」
 う〜ん。本当に分かってるのかな?
「法の自己保全って何?」
「え、えっと? 法律が自らを守る???」
 テトラちゃんの頭にはてなマークが飛び交った。
「法律を勉強する時に、教科書の説明を暗記するだけではつまらないし、真に法律を理解することにはならないよ。自分の言葉で説明できるようにしないといけない。例えば、法益の保護、つまり、みんなが大切にしている権利・利益の保護は国家の役目であって、本来私人は、例え法益を保護するためでも実力を行使してはいけない。でも、刑法36条は『急迫不正の侵害』の場合に例外的にこれを認めている。
これは、『不正の侵害』つまり、悪いことをする人がいて、それが『急迫』つまり、緊急事態で国家の助けを待っていられないという場合なんだよね。そのような場合には、例外的に私人が防衛行為を行っても違法とは言えないとしたんだ。
教科書に書かれている『法の自己保全』というのは、こういう緊急事態においても私人による実力行使を一切認めないとすると、『悪い奴』がのさばり、むしろ法制度や社会秩序が維持できないから、例外的に自力救済を適法と見ることで法制度・社会秩序を維持・保全するという感じのことを言いたいんじゃないかな。」
「そういうことだったんですね。未修の授業では、教科書を予習してくるようにと言われて広い範囲を指定されて、授業もものすごいスピードでした。刑法の全範囲を1年でこなすためなんだと思うんですけど…。だから、教科書の言葉の意味が分からなくても、そのままになっていました。学校の先生は、どうして先輩のように分かりやすい説明をしてくれないんでしょうか・・・。」
「きみと僕はいま、対話をしているよね。きみは疑問を抱いたらすぐに僕に聞く。僕はそれに答える。だからわかりやすいと感じるんじゃないかな。一歩一歩確かめながら進む感じがするんだね、きっと。
 教科書の言葉の意味が分からない時に、そのまま暗記して分かった気になっても、新司法試験で具体的な事例で問われたら、それを使えないよね。実務に出たら、未知の事例と取り組むことだってある。
だから、分からない言葉があれば、先生や友達にとことんまで聞いて、自分の言葉で説明できるようにしないといけないよ。それは、聞かれる先生や友達の力量によるけれどね。」
「はい、分かりました。」


1.3 過剰防衛
「さて、2項は過剰防衛だけど、過剰防衛はどういう場合かな。」
「相当性が欠ける場合です。」
「そうだね。刑法36条1項の文言では?」
「え、えっと…。」
テトラちゃんは条文に目を落とす。
「ああ、『やむを得ずにした』です。」
「そう。『急迫不正の侵害』に対して防衛が許されるといっても、防衛のために相当な範囲の行為しか正当化されない*2。それを超えた場合には、正当防衛にはならない。これが36条1項*3の『やむを得ずにした』の趣旨だね。条文の文言が解釈の起点なんだから、常に条文の文言に返ることが必要だよ。ところで、過剰防衛は違法な行為なのかな、適法な行為なのかな?」
「えっと、違法だと思います。」
「どうして?」
「それは、有罪だから。」
「そうだね。過剰防衛は刑を減軽・免除できるというだけで、有罪つまり、構成要件に該当し、違法で有責な行為なんだよね。じゃあ、どうして刑を減軽・免除できるのかな。」
「そこが、いろんな学説が分かれていて混乱するんです…。」
なるほど、テトラちゃんは、誤想過剰防衛が分からないのではなくて、過剰防衛のところで躓いていていたのか。分からないところが分かれば、もう8割方問題は解決したようなものだ。
「責任減少説といわれる考え方は、『過剰防衛は正当防衛の要件を満たさないのだから違法な行為だ』と考える。違法な行為だとすると、どうして刑を減軽・免除できるのかというと、緊急状態で行き過ぎがあっても、それは人としてやむを得ない部分があって、非難しにくいってことなんだよね。刑法でいうところの責任はざくっと言うと『非難』。これが減少するから刑の減免ができると言う説なんだ。
これに対し、違法性減少説といわれる考え方は、『過剰防衛は正当防衛似たようなもので、程度の差があるだけだ』という点から考える。イメージとしては、普通の犯罪が違法性が100、違法性が0なのが正当防衛。そうすると、過剰防衛は、『急迫不正の侵害』はあって、ただ『防衛の程度を超えた』だけなんだから、違法性は0にはならないにせよ、70とか50とか、減少しているよね、だから刑を減免してもいい。こう考える。」
「なるほど、考えの立脚点が違うんですね。」
「そう。こういうポイントを押さえると、理解し易いんじゃないかな。」
「はい、質問です!」
テトラちゃんが元気よく手を挙げた。目の前にいるんだから、わざわざ挙手なんかしなくてもいいのに。楽しい子だなぁ。
「今説明してもらった2つの説以外に、違法・責任減少説もあるって聞いたのですが。」
「この考え方は、中間的な考えだね。確かに、『急迫不正の侵害』がある状況での行為のだから違法性は多少減るだろう。でも、それだけではなくて、緊急事態で行き過ぎる行為は非難しにくくなるという点もあるね。こういう両説の言い分を併せた考えで、このような考えが今の通説的考え*4だね。」
「3つの説の関係が少しわかってきました*5。」


1.4 誤想防衛
「そうしたら、次が誤想防衛だね。」
「次は、誤想過剰防衛ではないんですか?」
「そんな一足飛びに進んではだめだよ。法律は1つ1つ基礎を積み重ねていかないといけない。」
「はい、分かりました。」
「誤想防衛について考える前に、法律の錯誤と事実の錯誤は分かる?*6
「えっと、『人だと思って撃ったら熊だった』とかですか?それがどうして誤想防衛と関係あるんですか、えっと、でしょうか?」
「今、テトラちゃんは、具体的事実の錯誤とか、抽象的事実の錯誤といった論点を思い出したんだね。こういう文脈で『事実の錯誤』が使われる場合は多いね。
ただ、『法律の錯誤か事実の錯誤か』という文脈では、多くの場合、『事実の錯誤』っていうのは、行為者が認識した事実に現実と齟齬がある場合、『法律の錯誤』は行為者が認識した事実には現実と齟齬はなく、行為者が自分の行為を『評価』した部分に齟齬がある場合だね。」
「先輩、ここでもう、あたし、アウトです。事実の錯誤に文脈によって二つの意味がある? どういうことでしょう。」
またテトラちゃんがはてなマークを飛ばした。
「この辺りは、用語法、言葉の使い方が悪いんだるね。『法律の錯誤』との比較の文脈では、要するに『法律の錯誤じゃないよ、だから故意はないんだ』という意味で『事k実の錯誤』という言葉が使われる。
例えば、Aさんは1万円札に似た商品券を発行しても問題ないと思っていた。でも、結果的にはその商品券は『模造通貨』として犯罪になった。
こんな場合、Aさんの認識した『今自分はこの商品券を使っている』という点自体は、現実と齟齬はなく、単にこれが『法律上禁止されているか』の点について齟齬がある。これは?」
「法律の錯誤、でしょうか?」
「それで、法律の錯誤があった場合、Aさんは原則として有罪、無罪?」
「たしか、有罪です。さっきの事例に似た事案で有罪となった判例があったはずです。」
「そうだね。例外的に無罪になる場合もあるけど、原則は法律の錯誤では故意は否定されない。この法律の錯誤と比較する文脈で『事実の錯誤』という場合は、故意が否定されるということを言おうとしてるんだ。『法律の錯誤説=故意肯定説』『事実の錯誤説=故意否定説』と考えると分かりやすい。」
「なるほど、それなら分かります。」
「それで、誤想防衛は、正当防衛とどう違うの?」
「誤想なので、誤解をしていた場合です。」
「何を誤解していたの?」
「えっと、防衛してもいいっていうことかなぁ?」
「まず一般的には誤想防衛は、『急迫不正の侵害』がないのにそれが『ある』と思った場合といわれている。」
「急迫不正の侵害の要件が欠ける訳ですね。」
「そう、客観的には急迫不正の侵害はない。ところで、事実の錯誤、この文脈では、(法定的符合説で)故意が否定される、『犬だと思って鉄砲で撃ったら甲さんだった』みたいな例がいいと思うんだけど、こういう話ってどういうレベルの錯誤かな」
「えっと、レベルってどういうことでしょう。」
「一般には、構成要件、つまり、殺人罪なら刑法199条に書いている『人を殺した』というレベルの錯誤なんだよね。甲さんと犬の違いって『人』なのか、犬(器物)なのかの違いだよね。ここでは、全然違法性だとか責任といった問題は考えてないでしょ。」
「確かに、条文の問題ですね。」
「ところが、誤想防衛の事案では、このような構成要件については、錯誤はないんだ。」
テトラちゃんは、ちょっと半信半疑のような表情をした。
「具体的に考えてみようか。判例の事案で被告人であるイギリス人は、『人を傷害しよう』という点について、勘違いしていた?」
「いいえ、人の顔に蹴りを入れることは認識していました。」
「じゃあ、何を勘違いしたの?」
「自分を攻撃しようとしているって。」
「そう、その錯誤、勘違いは、何条についての勘違いかな?刑法205条?」

刑法第205条  身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。

「いいえ、刑法35条です。」
「そう、正当防衛の『急迫不正の侵害』の部分の錯誤なんだよね。そして、『急迫不正の侵害』の錯誤っていうのは、構成要件の問題ではなく、『違法性』の問題である『正当防衛』に関する錯誤なんだ。」
正当防衛に関する錯誤で、構成要件の問題ではない、確かにそうですね。」
「そうすると、一部の学説は、『事実の錯誤っていうのは、構成要件レベルの問題であり、違法性のレベルの問題である誤想防衛は事実の錯誤でないから法律の錯誤だ』と言うわけだ。」
「ああ、これが法律の錯誤説なんですね。」
「そうそう。それで、判例はどう考えているの。」
判例は事実の錯誤と考えています。」
「そうだね。勘違い騎士道事件の控訴審判決はこう言っているね。」

急迫不正の侵害があるものと誤認して防衛行為を行つた場合に、右防衛行為が相当であつたときは、いわゆる誤想防衛として事実の錯誤により故意が阻却され、犯罪は成立しないものと解するのが相当である。
東京高判昭和59年11月22日*7

「どうして、事実の錯誤なんですか。」
「説明はいろいろある。一番単純なのは『結論として故意が否定されると考えているから』なんだけど、これではちょっとアレだから、比較的わかりやすい説明をしてみようか。例えば、事実の錯誤がどうして故意を否定する理由になるの。」
「規範に直面していないからです。」
「これも一つの説明だね。つまり、こう説明する訳かな。どうして故意があるとして『非難』されるか。それは、やってはいけないという『規範』があるのに、それを乗り越えてあえて犯罪行為をしたから*8。だから、例えば犬だと思っていれば『人を殺してはいけない』という規範には直面していないといえ、「それを乗り越え犯罪行為を行った」ことに対する非難をすることはできず、殺人罪の故意があるとはいえない。」
「そうですね。」
「この説明でポイントになるのはどこ。」
「えっと、やってはいけないという『規範』があるのに、kそれを乗り越えた。」
「そう、ここだね。じゃあ、誤想防衛は。」
急迫不正の侵害があると誤信し正当防衛ができると思っているから、やってはいけないこととは思っていない、つまり、規範に直面していないということですか。」
「そうだね。説明はいろいろあり得るけど、こういう風に正当防衛の要件となる事実についての錯誤もまた事実の錯誤だと考えると、判例の考えと同じになるね。」
「誤想防衛の問題が難しいのは、正当防衛の話だけではなく、故意とか錯誤の話をきちんと理解していないといけないからなんですね。」
「そうだね。法律の各条文は決しててんでバラバラに作られているのではない。立法者がある特定の意図を持って作り、これを学者が体系化させて一貫した理論付けを設けているんだ。だからこそ、一つの制度を勉強したらそれで終わりではなく、他の制度とも関連付けて勉強する必要がある。そしてその際には、文脈によって用語法が違わないかにもコンシャスになる必要がある。」
「はい。」


1.5 空手三段
「さて、最後が誤想過剰防衛。誤想過剰防衛は、誤想防衛とどう違うの。」
「過剰なところですか。」
「何が過剰なのかな。」
「えっと…。」
多くの人がそうなのだろうが、テトラちゃんも、基本概念について突っ込んで検討してきていないようである。
「学者さんによっては、いろんな話を議論する人もいる*9けれども、一番中核となっている定義を説明するね。『急迫不正の侵害は実際にはないけど、それがあると誤信した』という部分では誤想防衛と全く同じなんだけど、それに対する『防衛行為』の程度が客観的に見て相当性があるのが誤想防衛、客観的に見て相当性を欠いた場合が誤想過剰防衛なんだ。」

  客観面 主観面 罪責
正当防衛 急迫不正、相当 急迫不正、相当 無罪・違法性阻却
過剰防衛 急迫不正、不相当 急迫不正、不相当 有罪・刑の減免
誤想防衛 急迫不正、相当 急迫不正、相当 無罪・故意阻却
誤想過剰防衛 急迫不正、相当 急迫不正、(不)相当 有罪/無罪

注:前田雅英刑法総論講義」443頁の図を参考にした


 さて、この辺りで伏線を回収せねば。
「ところで、さっき、判例の事案の要約が足りないって言ったよね。どうしてか分かる?」
「う〜ん。どうしてなんでしょうか。」
「じゃあ、ヒントだけど、第一審判決は読んだ?」
「読んでません。」
「全部の判例について一審から読むのは大変かもしれないけど、少なくとも結論を異にする場合には、その結論を分けた部分だけでも一審を読んだ方が、理解につながるよ。」

主   文
 被告人は無罪。

千葉地判昭和59年2月7日(第一審判決)

「え!? この事件、無罪になってたの? えっと、なっていたのですか?」
「そう、きちんと、一審から読むと、この事案の特徴が分かるよね。一審はいろいろ理由を挙げているけど、基本的な事実認識としては、凶器を使わず、素手というか、素足で対応している*10ことを前提に、顔の蹴りが当たった位置には傷跡がないこと等を根拠としてに、客観的にみて防衛手段として相当だとしたんだ。つまり、これは誤想過剰防衛ではなくて?」
誤想防衛、なんですね。」
「そう。これに対して検察官が控訴し、原審と最高裁は客観的に見て相当ではないと認定した。その理由はいろいろあるけれども、被告人は空手三段の腕前を有していて、その脚はいわば『凶器』と言ってもいいし、寸止めだってできたじゃないかという辺りだろう。高裁判決や、判例解説を良く読んでみると、その趣旨が明らかになると思うよ。」

空手三段の腕前を有する被告人が、防衛のため、得意技である左回し蹴りを加えて被害者の右顔面付近に命中させ、転倒させて死亡するに至らせたものであるが(中略)単に驚ろかせてひるませるのが目的であつたのであれば三段の腕前をもつてすれば、相手の顔面に蹴りを命中させることなく、その直前でこれを止めること等で十分に目的を達することが出来たものと考えられるのに、顔面付近をねらつて左回し蹴りを行つて命中させている
東京高判昭和59年11月22日(原判決)

要するに、本件では、被告人は本件回し蹴りを被害者の頭部・顔面等に命中させるべくこれを行ったものであり、被告人において多少力を加減したとしても、顔面等に打撃を受けた相手方が転倒する可能性のある危険な行為であるというほかなく、その意味では、棒のような兇器で殴打したのと攻撃の程度においてさして変わりがないといえる。
昭和62年判例解説106頁

「私の要約で足りなかったのは、こういう『空手三段の腕前』という部分ですね。」
「そうだね。一審の裁判官が空手三段すら無罪としているところからみると、素人が蹴った場合なら、『素足対素手*11』として、最高裁の判断を前提としても誤想防衛になる余地はあるんじゃないかな。新司法試験や実務では、どのような事実が認定されるかによって、同じ事件でも、異なる条文や、規定が適用されることになるから、事実に対しては意識的になる必要があるね。」


1.6 誤想過剰防衛の2つの類型
さて、事実認定の話はこれくらいにして、誤想過剰防衛に戻ろう。
「ところで、誤想過剰防衛なんだけど、主観面を見ると2つの場合があるっていうのはわかるかな。」
「2つですか?」
「つまり、誤想過剰防衛は、防衛行為が客観的には相当ではなかったという場合だよね。じゃあ主観的には?」
「えっと、誤想している、つまり客観的には不相当なのだから、主観的にも相当ではなかったという場合なのではないですか*12?」
「そういう場合は確かに多いと思うよ。例えば、判例のイギリス人は、そもそも空手3段で、回し蹴りをするとどうなるかは分かっていただろうし、実際被害者が倒れたのを見て驚きも介抱もせず、ただ警察を呼ぶように指示して立ち去っている。だから、被告人は、防衛行為が過剰、不相当であることを認識していたとされているね*13。」
「じゃあ、もう1つというのは?」
過剰であることを根拠づける事実を知らなかった場合だね。つまり、主観的には過剰じゃなかった場合。これは、『実例としては稀有のこと*14』と言われているけれども、下級審裁判例が1つある。3名で急迫不正の侵害があったと誤認して防衛行為を行った際に、1人が首根っこを捕まえて強く押さえつけるという相当性を欠く行為をして、その結果被害者は死んでしまった*15。しかし、残りの2人は単に体を押さえているとの認識だけで、相当性を欠くとの認識がなかったとして、故意を否定して無罪としたんだ*16。」
「へぇ、そんなものがあるんですか。」
真実は小説より奇なり、かな。過剰であることを根拠づける事実を知らなかった場合には、主観的には正当防衛そのものと認識していることになので、判例の立場からは、事実の錯誤として故意を阻却することになり、故意を阻却するという結論は学説上も広く支持を集めているね*17。」
「なるほど、確かにそうですね。」


1.7 誤想過剰防衛
「じゃあ、これからは、本件のような防衛行為が過剰、不相当であることは認識していた事案について考えようか。こういう場合の誤想過剰防衛の事案では、故意はどうなるの?」
「相当性がないことを認識していれば、主観的には、正当防衛でないことが分かっているはずなので、規範に直面していた、やはり故意はあります。」
「そうだね。そうすると、有罪、『以上』としちゃっていいのかな。」
 法律の試験では、最後に「以上」とつけることになっている*18
「いや、刑法36条2項の問題があります。」
「そうだね、刑法36条2項を適用*19できるかが問題になるね。」
「ここで、学説の対立があるみたいなのですが、よく分からないのですよ。」
「まずは、判例の立場はどう考えているの。」
「刑法36条2項を適用します。」
「そうだね。勘違い騎士道事件でもそういう判断がなされた。」

被告人の所為について傷害致死罪が成立し、いわゆる誤想過剰防衛に当たるとして刑法三六条二項により刑を減軽した原判断は、正当である
最判平成62年3月26日刑集41巻2号182頁(勘違い騎士道事件最高裁判決)

「これに対して、適用を否定する学説はどうして、これを否定するのかな。」
「えっと…。」
「この説は、過剰防衛つまり刑法36条2項について、どんな考えに立っているの?」
「えっと、分からないです。」
「今回、誤想過剰防衛に行きつく前に、過剰防衛に『寄り道』したのは、単なる寄り道ではなくて、きちんと基礎を積み上げる必要があるからなんだ。さっき、過剰防衛を違法性減少というところだけに根拠を置く考えもあるって言ったよね。」
「はい。」
「この考えからすると、過剰防衛と誤想過剰防衛には大きな違いがあるんだよ。分かるかな。」
「違い、ですか?」
「過剰防衛と誤想過剰防衛はどこが違うんだっけ?」
「客観的に急迫不正の侵害があるかないか?」
「そう、そこだよ。違法性減少説は、過剰防衛の場合に違法性は、0にはならないとはいえ、100ではなく70とか50とかになると言っている。それはどうして減るんだっけ?」
あ、急迫不正の侵害があるから。」
「そう、客観的に急迫不正の侵害があるからそれに対抗する行為の悪さの程度は減少し、それが相当な範囲であれば正当防衛として違法性、悪さは0になる。こういう急迫不正の侵害が客観的にある限り対抗行為が相当ではないため、違法性が0とはならないとしても、過剰防衛として刑が減免されると考えるんだ。」
「そうすると、客観的に急迫不正の侵害がない誤想過剰防衛は違法性が減少しない。」
「そう、それが、誤想過剰防衛の事案について刑法36条2項の適用を認めない学説の根拠だよね。判例は、刑法36条2項の適用を認めている訳だから、責任の減少の要素もあると考えているようだね*20。」
「なるほど、よく分かりました。あっ!
突然、テトラちゃんが席を立った。
「ありがとうございました〜。」
去っていくテトラちゃんを見送ろうとして立ち上がり、振り向こうとしたその瞬間、気付いた。


「ミルカさん。」


2.ミルカさん
2.1 民法と刑法の比較
民法720条は何の条文?」
 民法720条は、正当防衛及び緊急避難の規定だ。緊急避難は民法でいうと、「他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合」に不法行為責任を免れる制度。今テトラちゃんがミルカさんを見て行ったような、「避難」とは関係はない。

民法720条1項 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2項 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。

僕は、心の中で(正当防衛と緊急避難)と答える。でも、声には出さない。
「わからない? 正当防衛と緊急避難でしょ」
ミルカさんは、さっきまでテトラちゃんが座っていた、僕の前の席に腰を下ろす。


「後輩に勉強を教えていたんだよ」、とひとりごとのように言う。
ミルカさんは「ふうん」と言って、僕の手からシャープペンを取り上げ、くるっと回す。そして、「ねえ、民法と刑法を比較しよう。」と言った。


民法上の正当防衛と刑法上の正当防衛の違いは*21?」
えっと、「対象」かな、とつぶやく。
「具体的には?」
民法は『やむを得ず加害行為をした』場合なら正当防衛として賠償責任が否定される。そこで、不法行為者に対してだけではなく、第三者に対して加害行為を加えても賠償責任が否定される」、僕は続ける。
「第三者への加害行為の具体例は?」
「殺人者に追いかけられて、隣の家の塀を壊して逃げた場合」、とかかな。
 ミルカさんは、いつも具体例を考えさせる。本当に分かっているかを確かめる、一番いい方法だから。


「賠償責任を否定しちゃったら、被害にあった第三者がかわいそうじゃない? 塀は壊されっぱなし?」
 これは知ってる。「民法720条1項但書で、被害者は、そもそもの防衛行為の原因を生んだ不法行為をした者に対する損害賠償の請求が可能。」と答える。
 現実には、殺人者は資力がなかったりするから、本当に救済になるのかという問題はあるが、民法720条1項但書の趣旨はここにある。
「そうね。今問題となった『対象』の相違以外にも、『不法行為者』に対する対抗なのか、『急迫不正の侵害』に対する対抗なのかが厳密に言えば違ってくるわ。でも、刑法において客観的違法論を採れば*22あまり大きな違いはないわね。後は刑法で、対物防衛の可否についてはどう考える訳?」
 自説は否定説だ。「対物防衛は、動物が襲いかかってきた場合にこれを殺すといった場合とか。動物の行為が「違法」とは考えられないので、対物防衛は否定されるけれど、管理者が十分に管理していないのであればそこに過失が認められ、こういう故意過失のある管理者の行為に対する防衛として動物を殺すことが正当防衛になる余地がある。」


「対物防衛否定説の標準的な説明ね*23。じゃあ、民法で、その管理者が不十分に管理をして犬が襲ってきたという場合には?」
えっと…。「民法では、『他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した』場合として、720条2項の緊急避難になる..」ってことかな。管理者がいるから「他人の物」だろう。
「うん。じゃあ、野犬から逃げるために他人の家の垣根を壊したら、刑法では?」
「垣根の持ち主という第三者に対する法益侵害なので、緊急避難(刑法37条)の問題になる。」ミルカさんの質問は、どこに向かっているのだろう。
「そうね。同じ行為は民法では正当防衛になる?」
「野犬だと、720条1項の『不法行為」にはならないから、正当防衛ではない。」これは確かだ。
「じゃあ、緊急避難になるの?」
「720条2項で損壊してもいいとされているのは『その物』だけだから、緊急避難にもならない。」民法の緊急避難は、急迫の危難を生じさせた、その物への攻撃しか正当化してくれない。
「そうすると、正当防衛でも緊急避難でもないということは、野犬に追いかけられてやむを得ず垣根を壊した人は、垣根の所有者に対して損害賠償責任を負う訳でしょ。やむを得ず壊したのに損害賠償、これはひどくない?」
 そうか、ミルカさんはここに連れていこうとしていたのか。えっと、それは…。
「一般には、刑法は刑罰法規に触れ、法益侵害が正当化できず、非難可能な行為を罰するわ。今回は、犬から逃げるためにやったこと、つまり、『悪いことではない』から、緊急避難(刑法37条)として法益侵害が正当化され、無罪になるわね。でも、民法って、考え方の根本が違うわよね。不法行為法の理念は?」
 「損害の公平な分担」。不法行為の基本原理。口を衝いて出る。
「そう、損害の負担を誰にさせるのが公平か、家の垣根を壊された人と壊した人、どちらに損害を負担させるべきかというところが民法の基本よね。やっぱり逃げるためとはいえ垣根を故意に壊された人に対しては『不幸でしたね』とは言えないだろうと言われているわ*24。」
なるほど。こういう深いところまでは考えられなかった。


2.2民法と誤想防衛
「じゃあ、民法上も誤想防衛は成立する? 誤想過剰防衛は?」
えっ…。一瞬言葉に詰まる。そんな問題意識で物事を考えたことはなかった。でも…。
 僕が悩んでいる間、手持ち無沙汰そうにしていた、ミルカさんは、開いたままの判例集に気づく。
「あら、この勘違い騎士道事件は民事ではどうなったの?」
民事? 考えたこともなかった。


千葉地判昭和61年10月14日判例タイムズ638号194頁

1 被告の行為は、民法七二〇条一項本文に規定された正当防衛に当たるものであった。その理由は次のとおりである。
(一)Aは、訴外B子(以下「B子」という。)及び被告に対して不法行為をした。
 すなわち、AとB子は、本件事故当時酒に酔っていた。Aは、手の付けられない状態になっていたB子に激こうし、B子の両腕をつかまえて、B子を激しく地面に投げ飛ばした。そのためB子は、事故現場付近に所在した倉庫のシャッターに頭部等を打ち付け、その場に転倒して、左右の肘と手首の間にあざができ、後頭部にこぶができた。
 被告は、その場に差しかかって、安年がB子を激しくシャッターに打ち付けたのを目撃したので、「やめなさい。女ですよ。」と言いながらB子のところに助けに行き、「大丈夫ですか。」と尋ねると、B子は、被告に対し、「ヘルプ、ヘルプ」と叫んで必死に助けを求めた。そのため被告がB子を助け起こそうとしたところ、安年は、被告に向かってファイティングポーズを取り、左手拳で被告の顔面を突いて来た。
(二)被告は、被告及びB子の権利を防衛するために左回し蹴りをした。

 すなわち、AがB子の生命・身体に対する侵害行為を継続し、かつ、左手拳で被告の顔面を突いて来たので、被告は、Aに対し、被告及びB子の生命・身体を防衛する意思をもって左回し蹴りをした。
 なお、被告は、キリスト教的隣人愛等に基づく人道精神ないし人間としての義務から、純粋な善意をもって介入したのであり、また、日本人の目撃者等が手をこまねいていたときに、自身の危険ないし不利益を省みずに介入した。
千葉地判昭和61年10月14日判例タイムズ638号194頁
注:被告の主張であり、判決の認定事実ではない

 まさに、この事例だった。
「刑事の頭でいると、民事事件には頭が至らないけど、実務家として依頼者の責任を考える場合には、民事と刑事の両方を考える必要ね。あとは行政。この事例では、死んだ被害者の奥さんがイギリス人を訴えたところ、民法720条が主張されたの。」
「その結果は?」僕が尋ねる。
「正当防衛にはならないとされたわ。民法720条は『不法行為』がある場合が正当防衛ができる場合と規定しているけど、今回は、被害者による『不法行為』はないってことね。」

AのB子及び被告に対する不法行為の存在について、これを認めるに足りる証拠がなく、したがって、AのB子及び被告に対する侵害の危険の存在、換言すればB子及び被告の権利の防衛の必要性についても、これを認めるに足りる証拠がないのであるから、後記8の防衛行為としての相当性の存否について検討するまでもなく、被告主張の正当防衛の抗弁は理由がなく、これを採用することはできないものというべきである。
千葉地判昭和61年10月14日判例タイムズ638号194頁

「これまでの判例も少なくとも、過剰防衛は『正当防衛』として不法行為責任を阻却しないと考えている*25わ。このイギリス人は過剰性の認識があるんだから、正当防衛にならないのはしょうがないわね。」
 そうすると、全額賠償になるのかな。それは、ちょっとかわいそうな気もする。
 つい、考えていることが言葉になっていたようだ。
「何を言っているの。民法722条2項でしょ」
 

民法第722条2項  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

ああ、過失相殺か。

Aとしては、目撃者の多い場所で女性の腕を押えたり、女性とからみ合ったりするようなことを避けるべきであったものということができる。
(中略)
Aは、B子に対しても被告に対しても何ら不正な行為をしていなかったのであるが、被告の純真なキリスト教的隣人愛ないし正義感に根差した真しな行為を誘発する状態を作り出したことにおいて不注意な点があったものというべきであり、被告が右のような行為に出たことについては、一概にこれを非難することができないものというべきである。
したがって、被告主張の過失相殺の抗弁は理由があるものというべきであるから、損害賠償の額を定めるに当たっては、被害者の過失を考慮すべきこととなる。
 そして、前記一及び二に認定した被告の加害行為の態様と比べると、被害者の過失の程度については、これを四割に当たるものと認めるのが相当である。
千葉地判昭和61年10月14日判例タイムズ638号194頁

「本件では、4割の過失相殺が認められているわ。誤想過剰防衛といった理屈を使わなくとも、普通は一般的な過失相殺で対応できるわね。」
 「でも、誤想過剰防衛であればともかく、本当に『誤想防衛』だった場合に、不法行為が過失相殺だけの問題なのは、なんか納得がいかないなぁ。」と、少しの悩みを漏らす。
「そこは、あまり議論がされてこなかったところ*26だけど、『過失によらずして正当防衛と誤診した』場合には民法的な過失すらないと考えるとか、権利濫用・信義則で切る方法もあり得るわね。」
なるほど。
「新司法試験に受かって、実務できみが判例を作ったらどう。実務法曹には判例を作れるという最高の特権があるのよ。」
ミルカさんは、僕をまっすぐ見すえて言った。


3.帰宅後
 テトラちゃんが、ミルカさんとのことを気にしていないかなと、気をもんでいたら、その日の夕方、テトラちゃんからメールが届いた。
「今日はありがとうございました。分からない言葉を『先生や友達』に聞いて自分のものにするというのは、これからぜひやっていきたいと思います。1つお聞きするのを忘れたんですけど、分からない言葉とかを質問させていただく『先生や友達』の中に、先輩も入れさせてもらってもよろしいでしょうか。」
と。


「もちろんです。どんどん聞いて下さい。」
窓の外には綺麗な夕焼け。明日も秋晴れだろう。

まとめ
 ある方から、「法学ガール楽しみにしています。」とのうれしいお言葉をいただいた。楽しみにして下さっている方がいらっしゃるのなら、ということで、刑法の有名判決を例にとってテトラちゃんで初級編、ミルカさんで中級編を作ってみた*27。私は小説を書くのが本業ではないし、また、刑法学も十分に修めていないので、いたらぬところが多々あるであろうが、皆様のご批判を仰ぎたい。
なお、刑の免除の可否については、山口「新判例から見た刑法」57頁以下、昭和62年調査官解説111頁以下を参照下さい。


【参考】
数学ガールから、法学ガールへ〜「文系にとっての最強の萌え」は?! - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
法学ガール〜刑事補償と「冤罪被害者のその後」 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
法学ガールアイディアメモ集 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

*1:団藤「刑法要綱総論」232頁

*2:後は「必要性」もありますね。

*3:皆さんは、37条の『やむを得ず』との違いは、大丈夫ですよね??

*4:山口「刑法総論」121頁以下、団藤「刑法要綱総論」241頁、前田「刑法総論講義395頁」

*5:なお、過剰防衛は、その過剰性について認識があるかによって2つに分けられる。これを論者によっては、故意の過剰防衛と過失の過剰防衛と呼ぶ。あまり意識をしないで議論する場合には、当然に故意の過剰防衛のことを考えていると思われる(上記の議論も過剰性について認識がある場合を前提としている)が、発展学習としては過失の過剰防衛もあることを頭に入れておくとよりよいだろう。山口「新判例から見た刑法」56頁以下参照

*6:以下@uwaaaa先生にご指摘いただいた内容をもとに修正させていただいたが、趣旨をきちんと反映させていただけているかは不明である。

*7:最判昭和41年7月7日刑集20巻6号554頁を引いている。この判決本文自体は明確ではないが、船田調査官の判例解説(41年度判例解説105頁)と併せて読むと基本的にはこの立場に立っていると見ることも可能である(62年度判例解説109頁)。

*8:この程度でやめておいた方がまだ一般性を維持できそうです。「それが行為者の反規範的人格態度の現れであり、ここに故意非難の本質がある」、とまで言い切ると、学説を選びますね。

*9:前田「刑法総論講義」443頁以下参照

*10:昭和62年判例解説107頁も「過剰性が肯定された事案は、兇器を用いた場合が多」いとしている。

*11:被害者の行為がファイティングポーズを取って今にも掴みかかるところと誤解したことを前提に

*12:こういうのを山口「新判例から見た刑法」57頁は「故意の誤想過剰防衛」と呼ぶ。

*13:昭和62年判例解説111頁参照

*14:昭和62年判例解説110頁参照

*15:傷害致死が成立するが誤想過剰防衛により減刑が認められることになる

*16:東京地判平成14年11月21日判時1823号156頁。なお、この判決は「誤想防衛」という用語を使っているが、昭和62年調査官解説は誤想過剰防衛の一種であることを前提としているようである。

*17:なお、過失犯の余地があることは、山口「新判例から見た刑法」57頁以下参照。いわゆる「過失の誤想過剰防衛」の問題である。

*18:つけないと特定答案として0点になると言われているが、実際に0点になったとは聞いたことはない

*19:調査官解説111頁は「適用ないし準用」というが、「準用」が正しいという指摘もある(団藤『刑法要綱総論』242頁)ので、留意されたい

*20:昭和62年判例解説111頁参照

*21:佐伯・道垣内「刑法と民法の対話」255頁

*22:つまり、責任無能力者に対する正当防衛を認める

*23:前田「刑法総論講義」374頁参照

*24:佐伯・道垣内「刑法と民法の対話」256頁

*25:大判昭和11年12月11日判決全集4輯1号27頁、最近ものとしては東京地判平成3年12月25日判時1441号103頁等

*26:幾代通「正当防衛・正当行為など(上)」ジュリスト901号90頁も、疑問を呈した上で本判決を紹介するに留まる

*27:上級編など、恐れ多くて書けません。