アホヲタ元法学部生の日常

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履歴書の書き方のポイント

あんまり多くないのですが、聞かれることが多い履歴書の書き方のポイントについて、5項目だけ独断と偏見で記載しました。

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1.ワープロでいいですか?
 明確に回答できる(Black Letter Rule)のは、「自筆の」とか「ワープロソフトにて必要事項記入、写真貼付」とか、指示があればその指示に従う必要があるということです。指示に従えないと、それだけで落ちます。「どちらでもかまわない」とする場合は、ワープロを理由に落ちることはありません*1


 難しいのは、特に指示がないところです。これは、「絶対という答えはない」とご理解下さい。
いくつかの判断要素としては、
・近年では、ワープロ履歴書への許容度合いが高まっている。
・年代が高い程ワープロ履歴書に抵抗がある先生が増える傾向(修習期から大体年齢が推測可能)
・字が下手な人は、「ワープロであることを理由に落とす事務所とは最初から縁がなかった」と割り切るのは1つの手
・字が綺麗な人は、その「美しい字であること」自体が好印象ポイントになり得る
という辺りですかね。


なお、手書きで書くことが求められる場合、「丁寧さ」が重要であり、「頑張って丁寧に書こうとしている」ことが伝わるかがポイントです*2


2.写真
インスタント証明写真機はやめましょう。その理由は、写真が「第一印象」を結構左右するからです。
別に美男美女でないと受からない*3
訳ではないのですが、「だらしない」「やる気がない」「根暗そう」という印象を与えたら終わりです。「清潔感のある」「真面目で」「前向きで」「明るそう」な印象を与える写真にしましょう。
写真館では、最近はメイク等を含めて、「自分を最大限よく見せる」就活写真を撮ってくれるサービスをしているところが増えています。高いですが、価値ある出費だと思います。
なお、フォトショして写真用紙に印刷というのは、倫理の問題がありそうですし、そこまですると、書類は通っても、面接で「あれ?」ってなる可能性があるので、あんまりオススメしません。


3.メールアドレス
 履歴書に書く欄があるかはともかく、メアドはほぼ必ずといっていいほど就活先の事務所に伝えることになります。実は、「キラキラメールアドレス」を理由にマイナス評価になる可能性があります。
 プライベートあれば、どんなメールアドレスでもいいですが、特に携帯のメールアドレスにつき、「えっ」と思われるようなものを事務所に教える方がいらっしゃるので、そういう場合はメールアドレスを変更する等の対応をされた方がよろしいでしょう。


4.「健康状態」欄
 そもそもそのような欄がないこともありますが、欄がある場合にどう書くかは難しいところです。参考になるのは、札幌高判平成18年5月11日労判938号68頁でして、視力障害がある労働者が健康状態として「良好」と記載された履歴書を提出しているという事案でした。

履歴書の健康状態の欄には、総合的な健康状態の善し悪しや労働能力に影響し得る持病がある場合に記載するのが通常である

として、これらに関係しない視力障害を申告しないことは経歴詐称に該当しないとされました。


5.賞罰
 最近ではフォーマットにこの欄を設けることがかなり減りましたし、特に「罰」について書かせることはプライバシー侵害だという議論もあります。



 そういう意味で、なかなか難しいのですが、裁判例からは、少年時代の非行歴は記載不要、前歴は記載不要、前科は説明が必要なことが多そう、公判継続中は有罪判決が下ったかが一応の基準という辺りの傾向が見られます。


まず、少年時代の非行歴については、福岡地判昭和49年8月15日労働判例208号31頁があります。

少年の保護処分等につき、少年法がそれが当該少年の将来の社会生活に不利益を及ぼすことのないよう極力配慮している趣旨に照らせば、採用時に少年時代の非行歴、保護処分歴の存在についてまで真実を述べることを義務づけることは公序良俗に反する

このように、少年時代の非行歴は含まないと解されます。


また前歴(つまり、有罪判決にならなかった場合)についても、仙台地判昭和60年9月19日労判459号40頁が

履歴書の賞罰欄にいう「罰」とは一般に確定した有罪判決(いわゆる「前科」)を意味するから、使用者から格別の言及がない限り同欄に起訴猶予事案等の犯罪歴(いわわゆる「前歴」)まで記載すべき義務はないと解される

としています。


前科については、調査の範囲が著しく不当又は明らかに不要と認められない限り、労働者は使用者から質問された範囲内の刑罰歴について真実を回答すべき義務があるとした判決*4や、最近でも、履歴書の賞罰欄に「なし」と記載した労働者を雇用したところ、実は、信用毀損罪で服役していたことから、前科の有無を偽り、また、服役期間に経営コンサルタントに従事していたと虚偽の申告をしていたことが発覚した事案において、勤務態度ともあわせて解雇が有効とされた事案*5があります。ただし、刑の消滅した前科及び前歴について、原告の業務内容がタクシーの運転に過ぎないこと等も重視して、履歴書の賞罰欄にそのような前科、前歴まで記載すべき信義則上の義務はなかつたというべきとした事案もあります*6


公判継続中については、無罪推定の原則から経歴詐称を否定したものがあります*7が、罰金7千円の判決の言渡を受けた後上訴して争っている場合、判決の確定前であつてもなお賞罰に関する人格評価の重要な経歴に属するとして、経歴詐称を認めた事案があることに留意が必要です*8

まとめ
履歴書について、独断と偏見に基づき、いろいろと書かせて頂きました。修習生に必要なのは「情報を疑う」というネットリテラシーですので、この記載も疑って、適切と思った情報のみを選別してご活用頂ければと思います。

*1:ただ、手書きの字がきれいな履歴書がプラス評価されることはあり得る。

*2:その上で美しい字であればプラスになり得る。なお、履歴書の記載事項 | 司法修習生・弁護士の就職活動マニュアル参照

*3:顔採用を噂される事務所は別

*4:名古屋地判昭和56年7月10日労判370号42頁。「入社希望者の採否に当って、その労働力の評価に誤りなきを期するため、全人格を調査の対象とし、これを認識するために必要な諸事項について調査することを常としており、刑罰歴も人格、性向等を知るためのものとして調査対象としていることが明らかであるところ、右調査の結果は、専ら使用者が労働者を採用するか否かを決するための資料とするものであるから、刑罰歴についていえば、如何なる種類の刑罰に関して調査するか、何年前までのものを調べるかなど調査の範囲は、使用者が自ら決すべきものであり、従って右調査の範囲が著しく不当又は明らかに不要と認められない限り、労働者は使用者から質問された範囲内の刑罰歴について真実を回答すべき義務がある」

*5:東京地判平成22年11月10日労判1019号13頁

*6:仙台地判昭和60年9月19日労判459号40頁

*7:佐賀地判昭和51年9月17日労判260号32頁。東京高判平成3年2月20日労判592号77頁も同旨。

*8:東京地決昭和30年10月22日労働関係民事裁判例集6巻6号788頁