アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

環境法ガール12〜大波乱の夏合宿3 平成21年第1問

環境法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト206)

環境法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト206)


注:本作品は、環境法司法試験過去問を小説方式で解説するプロジェクトです。本作品に登場する人物は、実在の人物と全く関係ありません。


1.性犯罪対策は世を徹して?
旅館の宴会場で美味しい夕飯を四人で頂き、客室に帰ると、既に、女将さんの手により、布団が4つ敷かれていた。


「女性陣は奥の3つね。私がその一番手前の最終防衛ラインでディフェンスするわ。」と、僕のことを性犯罪者予備軍扱いする。


「ディフェンスって…。」と思わず漏らしてしまう。


「最近、特にほむら先生とさくらちゃんに対する目線が怪しいのよ。」まあ、二人は「着やせ」する方だから、身体のラインが出る浴衣姿に自然に目がいったのかもしれないが…。


あら、私は別にいいんですよ。」と言って顔を赤らめる、さくらちゃん。


「だ〜か〜ら〜、絶対だめです! やっぱり私が徹夜で見張らないといけないわ。」悲壮な決意をするかなめさん。


「徹夜はお肌に悪いわよ。シンデレラタイムには寝ていないとねっ。」と、微笑むほむら先生。


「もうっ、ほむら先生までっ。とにかく、四人で枕を並べて寝るってパターンだけはやっぱり絶対なしです!」最後まで抵抗する、かなめさん。


「そういえば、昔、不倫事件で被告が出した抗弁に、トランプをしていただけっていうのがあったという話を聞いた気がします。環境法ゼミのゼミ旅行なんですから、環境法の問題検討をしていただけっていうのはいかがでしょうか。」さくらちゃんが提案する。


「若い子は元気ねぇ。さくらさんも、あと10年経ったら、徹夜するとお化粧のノリがガタっと悪くなるってことに留意しておくといいわよ。」って、ほむら先生、裏から言えば加齢を自白してませんか。


「まあ、問題検討ってことなら、しょうがないわねっ。」かなめさんも渋々同意する。

環境負荷物質を大気中に排出することを抑制する手法について,以下の設問に答えなさい。
〔設問1〕
ばい煙と有害大気汚染物質についての対応の仕方を比較し,それぞれの考え方を説明するとと もに,なぜ対応の仕方にそのような相違があるかを論じなさい。解答に当たっては資料1も参照 すること。
【資料1】
○ 大気汚染防止法(昭和43年6月10日法律第97号)附則(抄)
1~8 (略)
(指定物質抑制基準)
9 環境大臣は,当分の間,有害大気汚染物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が 生ずることを防止するために必要があると認めるときは,有害大気汚染物質のうち人の健康 に係る被害を防止するためその排出又は飛散を早急に抑制しなければならないもので政令で 定めるもの(以下「指定物質」という。)を大気中に排出し,又は飛散させる施設(工場又は 事業場に設置されるものに限る。)で政令で定めるもの(以下「指定物質排出施設」という。) について,指定物質の種類及び指定物質排出施設の種類ごとに排出又は飛散の抑制に関する 基準(以下「指定物質抑制基準」という。)を定め,これを公表するものとする。
(勧告)

10 都道府県知事は,指定物質抑制基準が定められた場合において,当該都道府県の区域において指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止するために 必要があると認めるときは,指定物質排出施設を設置している者に対し,指定物質抑制基準 を勘案して,指定物質排出施設からの指定物質の排出又は飛散の抑制について必要な勧告を することができる。
(報告)

11 都道府県知事は,前項の勧告をするために必要な限度において,同項に規定する者に対し,指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができる。

12 環境大臣は,指定物質による大気の汚染により人の健康に係る被害が生ずることを防止 するため緊急の必要があると認めるときは,都道府県知事又は第31条第1項の政令で定める市の長に対し,第10項の規定による勧告に関し,必要な指示を行うことができる。
13 環境大臣は,前項の指示をするために必要な限度において,指定物質排出施設を設置し ている者に対し,指定物質排出施設の状況その他必要な事項に関し報告を求めることができる。
〔設問2〕
環境基本法第22条は,規制的手法とは異なった手法について規定している。この手法を国内 の二酸化炭素排出削減に用いることが有効であるとの議論がある。これについて,資料2を参照 しつつ,以下の小問に答えなさい。
(1) 前記議論について,その理由は何か。ばい煙と比較しつつ,二酸化炭素の特質に基づいて答 えなさい。
(2) 前記議論について,具体的にあり得る措置を複数挙げた上,それぞれの長所,短所を述べな さい。
【資料2】
○ 京都議定書目標達成計画(平成17年4月28日策定,平成18年7月11日一部改定,平成20年3月28日全部改定)(抄)

第1章 地球温暖化対策の推進に関する基本的方向
第2節 地球温暖化対策の基本的考え方
1.環境と経済の両立(略)
2.革新的技術の開発とそれを中核とする低炭素社会づくり 京都議定書の約束を達成するとともに,更に「低炭素社会」に向けて長期的・継続的な排出削減を進めるには,究極的には化石燃料への依存を減らすことが必要である。 環境と経済の両立を図りつつ,これらの目標を達成するため,既に効果を上げている対策 や既存技術の普及を加速することと併せて,省エネルギー,再生可能エネルギー,原子力等 の環境・エネルギー技術に磨きをかけ,創造的な技術革新を図り,効率的な機器や先進的な システムの普及を図るとともに,ライフスタイル,都市や交通の在り方など社会の仕組みを根本から変えていくことで,世界をリードする環境立国を目指す。
3.全ての主体の参加・連携の促進とそのための透明性の確保,情報の共有地球温暖化問題は,経済社会活動,地域社会,国民生活全般に深く関わることから,国, 地方公共団体,事業者,国民といった全ての主体が参加・連携して取り組むことが必要であ る。このため,地球温暖化対策の進捗状況に関する情報を積極的に提供・共有することを通じ て各主体の対策・施策への積極的な参加や各主体間の連携の強化を促進する。また,深刻さを増す地球温暖化問題に関する知見や,6%削減約束の達成のために格段の 努力を必要とする具体的な行動,及び一人一人が何をすべきかについての情報を,なるべく 目に見える形で伝わるよう,積極的に提供・共有し,広報普及活動を行い,家庭や企業にお ける意識の改革と行動の喚起につなげる。
4.多様な政策手段の活用 分野ごとの実情をきめ細かく踏まえて,削減余地を最大限発現し,あらゆる政策手段を総動員して,効果的かつ効率的な温室効果ガスの抑制等を図るため,各主体間の費用負担の公 平性に配慮しつつ,自主的手法,規制的手法,経済的手法,情報的手法など多様な政策手段 を,その特徴を活かしながら,有効に活用する。また,幅広い排出抑制効果を確保するため,コスト制約を克服する技術開発・対策導入を 誘導するような経済的手法を活用したインセンティブ付与型施策を重視する。
5.評価・見直しプロセス(PDCA)の重視(略)
6.地球温暖化対策の国際的連携の確保(略)


2.環境法の規制手法
「この問題を考える前提としては、環境法の規制のバラエティってのがあるわね。まず、どんなものがあるかしら。」


「はい、規制的手法、誘導的手法・合意的手法、総合的手法、そして事後的措置があります*1。」


「さくらさんの言うような整理をすることもできますが、1つ1つの手法の内容が豊富になり過ぎる懸念があります。より具体的な手法を書き出すと、強制手法、誘導手法、合意手法、啓発手法、事業手法、調整手法、計画手法、情報収集手法、義務違反に対するサンクション手法、市民参画手法、組織整備手法となります*2。」かなめさん、よく11個も覚えているなぁ。


「この辺りは、整理の問題で、どちらかが『間違っている』ということはないわ。このうちの代表的なものは、規制的(強制)手法、誘導手法、合意手法の3つね。」


「規制的(強制)手法は一定行為の法的義務付けと遵守の強制を基本とするものです*3。誘導手法は、経済手法や情報手法を利用して、制度の対象者に自立的・自主的判断をさせ、その結果望ましい方向へと誘導するものです*4、合意手法は、協定等の形で、行政の個別的関与に対し規制を受ける側がこれを自発的に了承し履行することにより行われます*5。」僕も発言する。


「立法者は環境法制定の際にこれらの各手法のうちのどれをどこで使うか選択していく訳だけど、この各手法には、当然メリットとデメリットがあるわよね。」ほむら先生が水を向ける。


「強制手法は、規制対象が行政リソースの範囲内であれば、確実な実現というメリットがあります。しかし、行政コストが高い事、一律規制のため事業者の対応コストの差が無視され、非効率になること、一律の規制さえ達成すればそれ以上の対応をするインセンティブが働かないこと等がデメリットとして指摘されます。*6」一言でまとめるかなめさん。


「これは、教科書等でよく見かける記述なんですが、大体は分かるんですけど、ピンとこないんです。」さくらちゃんが質問する。


「強制手法を理解するには、伝統的な公害とかをイメージするといいわね。因果関係が明確な大口かつ少数の発生源がある場合、『一定以上の環境負荷物質を出すな!』と明確な規制をして、違反に対するサンクションを背景に規制を遵守させる。規制対象が少数だから、多少行政リソースの範囲内で対応できるでしょ。少なくとも、伝統的公害に対し強制手法は一定程度以上の効果を示して来たわ*7。でも、多数かつ因果関係が不明確な発生源が複合的に関与して環境リスクを形成している場合、まともに対応したら、行政コストが高くなりすぎる、何人公務員がいても足りなくなる訳。しかも、どうしても一律規制になってしまうから、その規制さえ達成したら、規制対象者としてそれ以上環境負荷を低減しようって気にはならないわよね。実際には、環境負荷を軽減しやすい効率が高い業者と低い業者がいるんだから、もしも政策目標が全国で排出される環境負荷物質の合計量を一定以下に抑えたいというなら、効率が高い業者に多く環境負荷を軽減させた方が、低コストでその政策目標が達成できるかもしれないのにね。大体こんなことを言っていると思えばいいわ。」ほむら先生が解説する。


「誘導手法や合意手法は、基本的にはその反対で、メリットとしては、自主性を尊重して創意工夫を引き出すことができ、比較的コストが低くて済むというものだけれども、本当にやってもらえるか、目標達成が不確実だという問題があるね。」ちょっと荒っぽいが簡単にまとめる。


「基本的にはそういうことになるけど、コストについては、例えば、誘導のために経済的手法を取るのであれば、虚偽申告をして経済的メリットだけ享受するプレイヤーがいないか検証するコストがかかるとか、誘導のため情報的手法を取るのであれば、情報収集や正確性の関しコストがかかるとか言われているから、本当に強制手法よりも『安上がり』なのか疑問視されていることにも留意が必要よ。」ほむら先生が補足してくれる。


2.ばい煙に対する規制
「それじゃあ、具体的にばい煙について見てみましょうか。」


「『ばい煙』は、硫黄酸化物、ばいじん、有害物質の3つを意味します(大気汚染防止法2条1項各号、3条2項参照)。これを排出する施設が『ばい煙発生施設』とされ、施行令で一定以上の規模のもののみを規制することとしています。」条文からきちんと説明するさくらちゃん。


「規制方式の特徴は、いわゆる規制基準の1つである排出基準を定め、この遵守を義務付けることにあります(大気汚染防止法13条1項)。排出基準には一般排出基準(3条2項)と、環境基準が達成されていない地域に新設されるばい煙発生施設に対する特別排出基準(3条3項)の2つがあり、条例での上乗せも可能です(4条1項)*8。」


「かなめさんの説明に補足すると、ばいじんと有害物質はおなじみの排出段階での濃度規制だけれども、硫黄酸化物についてはK値(Konstanz、定数*9)規制がされているわ。要するに、煙突を高くすればする程多くの硫黄酸化物を出せるというものよ。これは、煙突を高くして拡散させることしか有効な対処方法がなかった時代の、歴史的手法とも言われているわ*10。」


「工場等の集合する地域や排出基準による規制だけでは環境基準の達成が困難な地域(5条の2)である指定地域については、総量規制もされていますね。指定地域の総量削減計画に基づいて、工場単位で総量規制基準が定められ、これが一般排出基準に加えて適用される、ってことですね*11。」


「排出基準は瞬間値だけれども、総量規制基準は毎時単位だという違いがあるわね*12。」


「この規制の遵守を確保させるため、ばい煙発生施設につき届け出義務を課し(6条)、問題があれば変更命令を出せます(9条)。排出基準、総量規制基準については、遵守が義務付けられ(13条、13条の2)、直罰ですし(33条の2第1項1号)、改善命令が出せるので(14条)、改善命令に違反した場合にはもっと刑罰が重くなっています*13。」


「実は、毎時単位で計測される総量規制基準違反に直罰制を導入するのは技術的には無理*14だって批判されているんだけど、指定地域においてなんとしてでも、環境基準を達成するぞっていう政治的な意味はあるのかもしれないわね。」


3.有害大気汚染物質に対する規制
「次は、有害大気汚染物質への規制に行きましょうか。」ほむら先生の声に時計を見ると、既に時間は12時を回っている。大気汚染防止法12条は、「事業者の処理」だな。


有害大気汚染物質って何ですか? 確か、有害物質って、窒素酸化物(2条1項3号、施行令1条5号)とかじゃありませんでしたっけ?」さくらちゃんが質問するのも無理はない。ややマイナーな分野だ。



「有害物質と有害大気汚染物質は違う概念よ。アメリカの大気清浄法で189物質が対象とされているのに、大気汚染防止法においては7物質しか規制されていないから、規制対象を拡げて行く必要があることが指摘されていたわ*15。でも、今すぐに、その他の物質についても7物質と同じような規制をすることは難しいってのは、分かるかしら。」


「それは、どうしてですか?」


健康被害の確実性に対する知見の確実性の問題ですね*16。」かなめさんが指摘する。


「要するに、7物質については、充実した科学的知見があるから、それを前提に、被害が発生するのを未然に防ぐために規制をする*17という未然防止アプローチを取る事ができるけれども、それ以外の物質については、科学的不確実性があるから、未然防止アプローチで規制するのは難しい。でも、それじゃあだめだということで、有害大気汚染物質についても特殊な規制をすることになったんだ。」


「つまり、予防的アプローチですね!」さくらちゃんが叫ぶ。


「実は、大気汚染防止法18条の20によると、有害大気汚染物質への規制は『科学的知見の充実の下に、将来にわたつて人の健康に係る被害が未然に防止されるようにすることを旨として、実施されなければならない。』と書かれているんだけど、この点は、有害大気汚染物質規制を予防的アプローチと理解する上での支障にならない?」ほむら先生が微笑む。


「これは、環境基本法4条とほぼ同じですが、環境基本法4条は、問題が発生してから取り組むという事後的対応との決別を明確にしたもので、問題の性質に基づき予防的アプローチも未然防止的アプローチを使い分けて対応するという趣旨と解すべきです*18。そうであれば、大気汚染防止法18条の20の文言もまた予防的アプローチを認めていると解するのが正当です。」


「そうね。実際の規制を見ると予防的アプローチと見るべきね*19。細かく見ると仕組みは複雑だけど、主要なポイントは、低濃度での長期間曝露による健康影響が懸念される物質について、事業者に排出抑制についての努力義務を課し、国・公共団体が情報収集・提供をし、中でも早急な排出抑制対策を要する物質(指定物質)については、排出抑制基準を定め、都道府県知事が勧告を行うこととしているわ(附則9〜11項)。科学的知見が充実するまでは、予防的アプローチに基づき、附則に基づく勧告等で事業者の自主的取り組みを誘導し、科学的知見の充実がなされた後に、未然防止的アプローチに基づき法律本則における強制的手法を基調とした対応をするということが予定されているわ*20。」


4.二酸化炭素削減に関する規制
「最後は二酸化炭素ね。もちろん、環境基本法22条の手法が何かは分かるわよね?」

(環境の保全上の支障を防止するための経済的措置)
第二十二条  国は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動(以下この条において「負荷活動」という。)を行う者がその負荷活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることを助長することにより環境の保全上の支障を防止するため、その負荷活動を行う者にその者の経済的な状況等を勘案しつつ必要かつ適正な経済的な助成を行うために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2  国は、負荷活動を行う者に対し適正かつ公平な経済的な負担を課すことによりその者が自らその負荷活動に係る環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導することを目的とする施策が、環境の保全上の支障を防止するための有効性を期待され、国際的にも推奨されていることにかんがみ、その施策に関し、これに係る措置を講じた場合における環境の保全上の支障の防止に係る効果、我が国の経済に与える影響等を適切に調査し及び研究するとともに、その措置を講ずる必要がある場合には、その措置に係る施策を活用して環境の保全上の支障を防止することについて国民の理解と協力を得るように努めるものとする。この場合において、その措置が地球環境保全のための施策に係るものであるときは、その効果が適切に確保されるようにするため、国際的な連携に配慮するものとする。


「経済的手法です!でも、特に第2項は読みにくいです。」


「第1項は助成措置、第2項は賦課措置を意味しているんだけど、炭素税を導入したかった環境省とそれに反対する経済官庁の綱引きの結果こういう様々な条件が付けられたんだ。霞ヶ関文学の粋』と皮肉られているね*21。」


「今回の問題は、助成措置と賦課措置に限らず、広く経済的手法全体について問うているみたいよ。どうして、二酸化炭素排出抑制に経済的手法が有効なのかしら。」


二酸化炭素は、国民の日常生活からも相当量が排出され、発生源を特定しにくいことから、強制的手法がなじみにくい事が指摘できます。」夜更けにも元気なさくらちゃん。


二酸化炭素の場合、一定地域の濃度が高くて被害が発生しているという話ではなく、全世界の総排出量を削減しないと、徐々に地球の温暖化が進んで困るという問題です。そこで、効率の良い所から二酸化炭素削減をして行くことが望ましく、一律規制が原則の強制手法よりも、経済手法に軍配が上がります。」

「後は、削除には莫大なコストがかかるから、コストを下げるためには経済的手法に軍配が上がるというのがあるかもね。」


「三人とも、それぞれ経済的手法がなぜ二酸化炭素排出削減に適しているのかについて、よく説明できているわね。それに加え、二酸化炭素削減のためには、更なる技術革新が必要であって、各事業者の創意工夫を促進する仕組みが望ましいというのもあるわね。」


「そうすると、その手法の比較ということですが、京都議定書について、日本は1990年比6%減という目標を達成しそうというニュースを聞きました*22。」


「そうね、京都議定書の話は、話し始めると長くなるんだけれど、要するに、二酸化炭素を含む温室効果ガスについて、先進国全体で2008年から2013年の間に少なくとも1990年比5%を削減することとし、EUは8%、日本は6%等の削減が合意されたの。その後、マラケシュ合意で運用細目が合意され、2005年に発効したんだけど、先ほどさくらちゃんのいった、どこで削減してもいいから、全体量を削減したい、だから、効率的に減らせるところで減らすインセンティブを与えるという発想が、京都メカニズムの発想ね。大きく分けて3つの方法があるんだけど、共同実施は、先進国間で他国に投資することで、排出削減を実現し、その削減量の一部が投資国に移転するという仕組み、排出枠取引は、目標を達成できそうな国が、他国に割当量の一部を譲渡する仕組み、クリーン開発メカニズムは、先進国が途上国に投資して排出量削減をすると、その削減量の一部が投資国に移転する仕組みよ*23。」


「質問です!共同実施もクリーン開発メカニズムも、優れた技術と資金を持った投資国が、排出量削減の余地がより大きな国でプロジェクトを行って排出量削減を行い、それによって、投資国の削減目標達成に貢献するという点で共通していると思うのですが、この2つを分けて考えるのはどうしてですか?」


京都議定書では、先進国と途上国で差があって、途上国については、数値目標等の新たな義務が導入されていないから、先進国間のプロジェクトである共同実施と、先進国と途上国の間のプロジェクトであるクリーン開発メカニズムは分けて考えないといけません。」そう言いながら、眠そうなかなめさんが口元を押さえる。


「そうね、途上国との格差は、アメリカが京都議定書を脱退した重要な理由の1つだわ。ところで、この排出枠の手法のメリットはどこにあるのかしら。」目をこする、ほむら先生


排出総量が管理できるっていうところにあるってことかな。排出枠取引をした場合でも、結局総排出枠は同じで、その中で個別の国の割当量が変わるだけだから*24」。」


「でも、排出枠取引には、モニタリングの困難性の問題がありますし、日本だけが削減して、アメリカが削減しないとすると、国際競争力も落ちるという問題があります。」


「二人ともよくメリット、デメリットを理解しているわね。あとは、炭素リーケージといって、排出削減が不要だったり規制が緩い外国に工場や生産拠点が移転して、その結果、一見排出量は削減されたように見えるが、実は世界全体での排出量削減にはつながっていないといった問題もあるわね*25。」


「排出枠取引以外に、経済的手法はあるんですか?」さくらちゃんはまだまだ元気そう。


「税や賦課金制度があります。炭素税なんかは典型で、税金を安くしたければ、技術革新をして二酸化炭素を排出しなさいということで、企業の創意工夫や技術革新を促進させます。でも、税率等によっては、『減らすのは大変だから、お金払おう』となる可能性もあり、どこまで排出量が削減されるかは疑問があります。*26


「そうね、環境対策のための歳入増加につながることも指摘できるわね。」


「後は、補助金があるかな。頑張ればお金をあげるよというわかりやすい『にんじん』のぶら下げ方なので、即効性のあるやり方だから、過渡期には効果を発揮する*27けれど、財源の問題や汚染者負担原則(PPP)に反する可能性、補助金目当てに新規参入が増えてかえって環境負荷が増える可能性等のデメリットも指摘できるね。」僕もそろそろ眠くなってきた。


「そうなんですか、私もっと、環境法について教えてもらいたいです!」元気なさくらちゃん。


議論は、結局、朝まで続いた。結局二日目の目的地、富士山に向かうバスの中で、四人で枕を並べて寝たのはまた別の話である。

まとめ
全年齢向けって書くのが難しいですね(挨拶)
冗談はさておき、合宿編が長くなっているのですが、次回で合宿は終わりますので、もう一回だけお付き合い頂ければ幸いです。

*1:Basic58頁

*2:北村112頁

*3:北村112頁

*4:北村113頁参照

*5:北村115頁

*6:北村118頁参照

*7:以上につき北村111頁参照

*8:なお、硫黄酸化物のK値規制について上乗せ条例は認められない、北村388頁参照

*9:北村385頁参照

*10:北村387頁

*11:北村391頁、Basic151頁

*12:北村400頁

*13:33条と33条の2を比較

*14:北村400頁

*15:Basic154頁

*16:北村397頁

*17:つまり、従前の事後対応的アプローチを避けるということ

*18:北村72頁、なお、基本権保護義務を通して読む事により予防原則の立場を採用したと解されることになるとする行政法の新構想I397頁(桑原勇進)も参照。

*19:北村397頁、Basic153頁

*20:北村397頁参照

*21:北村290頁

*22:環境省_国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)及び京都議定書第9回締約国会合(COP/MOP9)について(結果概要) (お知らせ)

*23:Basic350頁、351頁の図解参照

*24:Basic71頁

*25:Basic71頁

*26:Basic71頁参照

*27:Basic71頁