アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

環境法ガール20 誰を選ぶの!?クリスマスパーティーその1 平成18年第2問設問1

環境六法〈平成25年版〉

環境六法〈平成25年版〉



注:本作品は、環境法司法試験過去問を小説方式で解説するプロジェクトです。本作品に登場する人物は、実在の人物と全く関係ありません。



1.突然のクリスマスパーティー
「じゃあ、来週のゼミはクリスマスパーティーをやるから。」ゼミの終わりに突然宣言するほむら先生。


「ら、来週って、クリスマスイブじゃないですか! 私たちは予定があります。」そういって、僕の方を見るかなめさん。


「あれ、予定なんかあったっけ?」とつぶやくと、


クリスマスイブなのに、私を誘う予定がないなんて、言わせないんだから!」と顔を真っ赤にするかなめさん。


「あらあら、積極的なこと。でも、本人の意思を尊重すべきじゃないかしら。そもそも、毎回ゼミは延長して夜までやっているんだから、来週もゼミを延長して夜までやる、だけど場所は私の研究室ってことでいいわね! プレゼント交換するから一人一つプレゼントを持って来てね!」ほむら先生が押し切る。




そしてその一週間後、僕とかなめさんは、ほむら先生の研究室に来ていた。



「今日はクリスマスだから、サンタの衣装を4着用意したわ。」クリスマスツリーやリースがきれいに飾り付けられたほむら先生の研究室に入ると、サンタのコスプレをしたほむら先生が微笑んでいた。


「コスプレは先生だけで結構です。」と拒絶するかなめさん。


「まあ、こういうのはクリスマスらしい雰囲気作りの小道具だからね。一人だけ『日常』の格好じゃあ、『非日常』を楽しめないわよ。」なんか良くわからない論理で説得するほむら先生。


「あれ、4着って?」四人目は誰だろう?


「とりあえず、私たちは奥で着替えてくるから。」ほむら先生は、服を一着僕に渡すとかなめさんを連れて、奥に去って行った。


一応着替え終わって、ソファーに座ると、奥に続く扉が空いて、見覚えのある桜色の髪の毛が見える。


「あれ、さくらちゃん?」


「私だって、先輩とのクリスマスパーティーに出る資格があると思うんです!」胸のところを除いてちょっとぶかぶかのミニスカサンタ衣装を着るさくらちゃん。


「研究室でやる以上、『放課後のティータイム』に来たいといわれちゃあ、断る訳にはいかないわよね。」ほむら先生もやってくる。


「ど、どうしてこんなにスカートが短いんですか!!」奥から恥ずかしそうに出てくるかなめさん。


「人生において、サービス精神ってのも大事だと思わない?」良くわからない理由をいうほむら先生。


「先輩はこっちの方がお好きですよね。」こういいながら、隣の席に座ってわざとらしく脚を組むさくらちゃん。


「ちょっと、さくらさん、やり過ぎよ。ほら、目のやり場に困ってるじゃないですか。」かなめさんが注意する。


「今日の前半はゼミだから、やり過ぎないように注意してね。」後半ならいいのか


そんな心の中の突っ込みとは裏腹に、今日の検討課題が出される。


2.環境破壊を防ぐ訴訟?

Aは,B県C町にある自己所有の山林を造成して,ゴルフ場を開発する計画を立てた。Dらは,隣接するB県E市に居住する住民であり,古くから桜や紅葉の名所として名高い上記計画地域にハイキングに訪れ,森林浴を楽しんできた。また,上記計画地域には,絶滅が危ぐされている野生生物が生息している。Dらは何とかこの開発を阻止したいと考えている。この場合について,以下の設問に答えよ。
Dらは,Aに対してどのような訴訟を提起することが考えられるか。裁判例の動向とその理由を踏まえつつ論ぜよ。


「Aに対する訴訟としては、人格権ないし環境権に基づく差止訴訟が考えられます。」さくらちゃんが切り出す。



「人格権に基づく訴訟は認められそうなの?」ほむら先生が質問する。



「森林浴を楽しんでいたとか、野生動物の絶滅が危惧されているというだけで、これを人格権とはいいにくいから、無理なんじゃないかな。」


「平穏生活権等、人格権を拡大して、一般通常人を基準として不快感等の精神的苦痛を味わうだけではなく、平穏な生活を侵害していると評価される場合には、人格権の一種としての平穏生活権の侵害として差止が認められるという議論がありますが、開発が隣県に住むDの平穏な生活を侵害しているとはいえません。」かなめさんも同調する。


「そうすると、環境権ということになるんでしょうか。Dは環境を享受し、かつこれを支配する権利を持っていると主張し、これをAが侵害しているという構成です。」さくらちゃんがアイディアを出す。


「でも、そもそもの環境権は、自分の生命健康に影響する前に、生活環境や自然環境に影響する段階で差止を認めさせるという前倒しの効果を狙ったものではないかな*1。そうすると、自分の生命健康に影響しない隣県のDに環境権は認められないのではないかな。」突っ込んでみる。


「そこで、『自然享有権』が出てくる訳です。環境権は公害被害を受けた住民を救済する権利として構成されていたから、権利主体性があるとされる住民の範囲が限定的でした。でも、そういう地域限定的な環境権では限界があるということで、『誰もが持つ権利』として、将来世代からの信託に基づき、現代世代は自然を保護し継承する責務を有し、自然破壊を排除する権利を有するという考えがあります*2。」


「かなめさんのアイディアはいいけど、実務ではどうかしら。」


「確か、個人を基調とする司法システムの下で解釈論としてこういう権利を創出するのは難しく、その実現のためには立法措置が必要と解されている、ってことですよね*3。」


「あとは、景観利益はどうですか。」さくらちゃんがアイディアを出す。


「2つのハードルがあります。1つ目は、そもそも景観利益について、差止を否定したのではないかという問題です。国立市大学通りマンション事件判決*4差止を否定したと解すれば認められません*5。」かなめさんが否定する。


「確か、ここは、最高裁は否定したとはいえないという議論もあったはずだけど*6。」



「うふふ、この辺りは、判例の読み方が論者によって違っているから、注意が必要ね。また、法律上保護される利益による差止を認めるという立場に立った場合でも、権利による差止よりもハードルが高くなるという議論が一般的なことには留意が必要よ*7。」


「2つ目は、本件は、国立市大学通りマンション事件判決の基準からするとそもそも法的に保護される景観利益がDに認められない可能性が高いことです。同判決は、『良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者』としており、隣県に住んでおり、レクリエーションとしてA所有の山林に訪れるだけのDには、景観利益が認められません。」


「野生動物を訴訟の原告にするってのは、確か認められてなかったんですよね*8。」さくらちゃんもあきらめ気味だ。


「結論として請求が認められないというのは、初歩的な環境法の知識がある学生なら、すぐ推察できるところね*9。この問題は、むしろ、人格権で環境保護のための差止等ができる範囲の狭さから、どうやってこれを拡げようかという過去の環境訴訟実務家の苦労の痕跡をたどるという意味があって、司法試験最初の年にふさわしい問題だったわね。環境法を勉強する時は、結論だけを暗記するのではなくて、その過程とその背後にある事情を知ることが大事ね。結局、民事訴訟では難しい。じゃあどうすればいいか、これが大事な課題よ。それじゃあ、パーティーに移りましょう!」ほむら先生が元気に叫ぶ。

まとめ
やっと平成18年第2問にまで来ました。後編をお楽しみに!

*1:北村49頁参照

*2:北村53頁

*3:北村53頁

*4:最判平成18年3月30日判タ1209号87頁

*5:北村220頁

*6:Basic43頁

*7:Basic398頁参照

*8:北村247頁参照

*9:なお、「『請求は認容されるであろう』などと結論付けた答案がいくつか見られた」という試験委員のコメント参照。