実務で使える！？人生相談ラノベ／アニメ「人生」

人生 (ガガガ文庫)

注：本記事は、川岸殴魚『人生』を既に読まれている事を前提としています。まだ未読の方は、書店に急げ！

1．研修所では教えてくれないこと
要件事実、事実認定、そして、訴訟物（？？）...。
司法研修では、修習生が法曹となるために必要な授業をしてくれて、徹底的に勉強する機会を与えてくれるそうである。
しかし、実務家になってから必要になる技術／能力にもかかわらず、研修所では教えてくれないこともある。
例えば、顧客の獲得方法なんかはその典型であり、（弁護教官が自分の経験を語ってくれたりするものの）研修所を終了した日の翌日以降、どうすれば顧客が来るのかなんていうのは、研修所では教えてくれない。
また、例えば、契約書チェック業務や株主総会運営業務等の、裁判業務以外の業務については、配属先によっては弁護修習等実務修習で若干扱う可能性があるものの、基本的には研修所では扱わない。

そして、もう１つ、研修所で教えてくれないことといえば、人生相談の対応である。

２．法律相談と人生相談
　弁護士業務において意外と多く発生するのは、「法律相談」という名前の「人生相談」である。
　例えば、相続人の廃除（民法８９２条）の相談だと思いきや、実は、なかなか帰省せず、孫の顔を見せてくれない子供についての愚痴だったりする。それを、「民法８９２条における相続人の廃除の要件に該当しません」とだけ答えるのでは、依頼者の悩みに応えたことにはならないだろう。
　このような、名目だけが法律相談で内容が典型的な人生相談だという場合だけではなく、法律相談に隠れている「人生相談部分」を見抜くことが必要な場合もある。例えば、夫の不倫相手に慰謝料を請求したいという相談でも、相談者である妻の本当の願いは、夫に戻ってきてほしいというものだったりする。ところが、弁護士が、その背景にある人生相談部分を無視して不倫相手を訴えてみたところ、依頼者の夫が不倫相手と一緒になって応訴し、依頼者と夫との関係がどんどん悪くなって離婚に至るといったこともあり得る。これでは、依頼者の本当の希望を叶えたとは言えないだろう。その意味で、人生相談部分を見抜き、「より」を戻すためにはどうすればいいかを適切にアドバイスする必要があるだろう。
　このように重要な「人生相談」であるが、残念ながら、研修所ではほとんどといっていいほど人生相談の対応について教えてくれない。どうすればいいだろうか。

３．先例
　我々のような法学／アニメクラスタであれば、過去の先例を参照するだろう。例えば、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)

を教科書にすることにより、隠れオタクである自分の妹から、「人生相談がある」と称して、オタクであることをカミングアウトされた場合の対応を学ぶことができるだろう。

　う〜ん、それでも、同書で学習できる内容の射程は狭くないか？？

　そう、法学／アニメクラスタの弁護士にとって、人生相談についての勉強をする教材が不足しているのである。

４．人生
ここで教材の候補になるのが、川岸殴魚『人生』である。
同書は、第二新聞部の部員である主人公の赤松が、法律相談コーナー担当者として、理系代表の梨乃、文系代表ふみ、体育会系代表のいくみの３人とともに、周囲の人の様々な悩みに答えていくというものである。
この悩みには、人間関係（仲良くなる方法がわかりません、仲直りしたい、優しい人間だと思われたい）をはじめとする、法律家が、業務上で扱う悩みも多く含まれている。
更に、単なる主人公自身の「独自の見解」が提示されるのではなく、全く違う価値観、発想を持つ四人が「合議」を行って、その結果として新聞に掲載される「回答」が作成されるところ、まさにこの合議の経緯が具体的に記されているのである。
更に、聞き上手になるための「三大奥義」（５０頁）や、謝罪文のサンプル（１９５，１９９，２０２頁）等、弁護士業務における人生相談にも役に立つ内容も豊富である。

そう、『人生』を読むことで、法律相談に含まれる「人生相談」に強くなれる。

まとめ
研修所では教えてくれない人生相談の乗り方については、様々な相談に対し、複数の観点から合議を尽くした『人生』を読むことで、補うことができる。
人生相談アニメーション『人生』は、平成２６年７月６日、つまり、明日の夜２２時から東京MXテレビで放映開始である。法アニクラスタとしては、弁護士会で、研修としてアニメ版『人生』を放映する日が早く来ることを待ち望んでいるところである。

注：本記事は、川岸殴魚『人生』を既に読まれている事を前提とした「ネタ記事」ですので、未読の方が、本記事を読んで、人生相談の勉強を行うために川岸殴魚『人生』を購入され、又は、人生相談アニメーション「人生」を視聴した場合に発生した損害については、一切責任を負いません。