「江頭会社法第5版」でこの4年間で会社法の変わったところを総さらえ〜「修正履歴付江頭会社法」〜
- 作者: 江頭憲治郎
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2014/07/31
- メディア: 単行本
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自己紹介
本エントリは、「アホヲタ元法学部生の日常」を運営する企業法務系ブロガーronnor(ツイッター:@ahowota)が法務系Advent Calender企画として新規に書き下ろしたものです。
法務系 Advent Calendar 2014 - Adventar
当ブログは、元々は「アニメを法律で分析する」をコンセプトに、
・「3月のライオン」を法律的に分析
・『楽園追放』を法律的に分析
等のオタクな記事(なお、上記2本はいずれも、本年12月に公開したもの)を作成して参りましたが、
光栄にも、企業法務マンサバイバル様に
元企業法務マンサバイバル : ビジネス法務の話題を効率良くインプットしたい方にお勧めなtwitterアカウント20選
元企業法務マンサバイバル : おすすめ企業法務系ブログ15+α選
等としてオススメ頂いたこともあり、今後は少しずつ企業法務色を強めていきたいと思っております。
そこで、今般 Legal Advent Calendarに申し込ませて頂きました。どうぞよろしくお願い致します。
なお、同様の趣旨もあって、もうすぐ発売のビジネス・ロー・ジャーナル2015年2月号の「特集 法務のためのブックガイド2015」の中で
「企業法務系ブロガーによる辛口法律書レビュー (2014年版)」
を寄稿させて頂いております*1。
2015.2月号(No.83)の目次|Business Law Journal - ビジネスロー・ジャーナル
まだまだ若輩者ですが、企業法務系ブロガーとして今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
1.江頭先生、ごめんなさい!
「江頭会社法」といえば、言わずと知れた、会社法界の最高峰の教科書である。特徴は理論に裏打ちされた記述を軸とする本文に、実務情報・裁判例・論文等の発展的情報に容易にアクセスできる脚注の情報量である。その*2総ページ数は既に1000ページを超える「重厚長大」っぷりであり、一部の法クラからは、「性質上の凶器」とすら称されている。
本年7月頃、法クラの間では、6月の改正に直ちに対応した第5版が出版された「江頭会社法」が話題になった。「これは、会社法改正本の決定版になるか?」そう思った多くの読者は、江頭会社法の「はじめに」を読んで度肝を抜かれた。
第186回国会において、平成26年法律第90号として「会社法の一部を改正する法律」が成立したので、今回の改訂を行った。
(略)
改正法の政省令が未成立であるが、その成立後、できるだけ早く補充したいと考えている。
多分、この一文で、買う事をやめた方も少なくないだろう。何しろ、自らもうすぐ第6版*4が出ますと言っているのだから。
もしかすると、「第5版を買わせた後で第6版を買わせて総発行部数を増やそうとしているのではないか?」という詮索をした人もいるかもしれない。
実は、第5版(以下「本書」という。)を購入した直後、ある業界関係者の方に、そういう見解についてどう考えるかをこそっと聞いてみたことがある。そうしたら、要旨以下のとおり、その方に私の不明を明確に正して頂いた。
第6版が出版された瞬間に、有斐閣の書庫にある本書は全て「無価値」となる。その意味では、第6版が刊行されるまでの短期間のうちに本書を売り切ることができるということを見越して政治的決断を行ったものと推測される。
しかし、そのような決断はハイリスクである。特に前書きのように「正直に」もうすぐ第6版が出るよと書いている。それを知った読者の買い控えが出てしまえば、有斐閣は膨大な不良在庫を抱え込む可能性さえあるのである。
そのようなリスクを負ってでも、早期の本書の発売を決断されたのは、ひとえに読者の便宜のためである。
このような説明を聞き、私としては、自分の不明を恥じ入るとともに、江頭先生のその崇高な理念と、それを実現された有斐閣の決断をおおいに賞賛するものである。
さて、御託はいいから内容に入れという読者の皆様からのお叱りの声がそろそろ聞こえてくるところであるが、本書は非常に良い本であり、まさに「買い」である。皆様には、ぜひ本書をご購入頂きたい。それはなぜかと言えば、「直接改正と関係ない部分について、改正の間接的な影響を受け、変わるのかどうか、変わるならどう変わるのか」が本書を読めば分かるからである。
ここで、本書のかなりの部分の記述は、まさに第4版と同じである。この意味は、本改正に深く携わった江頭先生ご自身が*5改正が当該事項について一切影響を及ぼさないということを確認して記述をそのままにされたということであって、これを確認できることは大変有益である。また、4年前の最後の改訂時からの学説・判例・実務の進化についても本書の改訂点を読めば総ざらえできる。
ここで、私は思った訳である。「もし、本書の『修正履歴付バージョン』があれば、各事項について何が変わって何が変わっていないかを総さらえできていいな。」
ないんなら、作ってみようじゃないの!
本エントリでは、大量の改訂点/改訂されていない点のうち、実務への影響に鑑みて、独断と偏見で各分野毎にポイントをまとめてみたい*6。
ただし、お恥ずかしながら、このエントリは実は7月から構想を練っていた約半年がかりのエントリであり、その間に政省令案が発表されてしまった。そこで、「何が変わって/何が変わらないか」はあくまでも本書執筆時点の情報に基づいており、政省令案による新たな改訂等はフォローできていないことをお詫びしたい。更にこの「差分」のまとめは、すべて手作業で行っており、見落としも多くあろうかと思う。特に最後の2日は徹夜で作っていたので、そのような「粗い」ものであることにつきお許しを頂きたい。
2.第一章 総論
本書1〜57頁、旧版1〜55頁
(1) 主な改正点
「親会社等(親会社に自然人である大株主等を含めた概念)」、「子会社等(子会社に会社の姉妹法人を含めた概念)」、「最終完全親会社等(株式会社の完全親会社等であって、自己の完全親会社等がないもの)」の概念が生まれ、定義される*7。
コーポレートガバナンス論として監査等委員会設置会社を設置し制度間競争を図ったことが明記されている*8
支配・従属会社の利害対立の問題は26年改正審議の1つの焦点だったが、事業報告・監査報告の充実に留まった*9
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
大阪地決平成25年1月31日判時2185号142頁(収益還元方式と配当還元方式を用いた取引相場のない株式等の評価)*10
最判平成23年9月13日民集65巻6号2511頁(狼狽売りによる市場価格の下落も虚偽記載と相当因果関係がある損害)*11
最判平成23年4月19日民集65巻3号1311頁(市場価格には客観的価値が投資家の評価を通じて反映される)*12
東京地判平成22年9月30日判時2097号77頁(国際的局面に法人格否認の法理を適用)*13
(イ) 理論
「上場株式の評価と効率的市場仮説」について江頭憲治郎「企業内容の継続開示」商取引法の基本問題340頁(有斐閣・2011)及び江頭憲治郎「裁判における株価の算定ー日米比較をまじえて」司法研修所論集122号36頁(2013)を踏まえた新規項目立てがされる*14。
得津晶「二つの残余権概念の相克」岩原紳作ほか編会社・金融・法(上巻)111頁(商事法務・2013)*15
野田博「CSRと会社法」体系27頁*16
江頭憲治郎「上場会社の株主」体系3頁*17
サイプト「ドイツのコーポレート・ガバナンスおよび共同決定」商事1936号34頁(2011)*18
江頭憲治郎「合同会社制度のメリットー締め出し防止策の側面」門口正人判事退官記念・新しい時代の民事司法241頁(商事法務・2011)、宍戸善一「合弁合同会社」前田重行く先生古稀記念・企業法・金融法の新潮流211頁(商事法務・2013)の議論を踏まえた、締め出し防止のための合同会社活用論*19
太田洋=森本大介「日産車体株主代表訴訟横浜地裁判決の検討」商事1977号16頁・1978号73頁(2012)*20
清水円香「グループ利益の追求と取締役の義務・責任」法政77巻3号・78巻1号(2010−2011)*21
(ウ) 実務
法人企業数の減少*22、個人企業数の減少*23、上場企業数の減少*24等も見られる。
座談会「合同会社等の実態と課題」商事1944号・1945号(2011)*25
合同会社は旧版の時点では10193社だったのが現時点では16824社*26。
棚橋元「新しい企業形態ー合同会社・有限責任事業組合・投資事業有限責任組合」体系617頁に投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合の現状が記載される*27
(3) 細かな注意点
公開会社である大会社が元々設置すべき機関は監査役会または監査委員会だが、監査等委員会の設置がオプションとして増える*28
少数株主権・単独株主権が増加したため、公開会社の義務や特則としての少数株主権・単独株主権行使要件に関する規定も増加(847条の3第6項、827条1項2号、846条の2第1項)*29。
完全親会社の条文番号の変更(会社法847条の2第1項へ))*30。
取締役等の行為の差止事由*31、監査役等の取締役等への報告事由(399条の4)が増加*32
(4) その他
旧版にあった、いわゆるゴードンモデルに関する「未来永劫成長するという仮定を適用できる会社は限られていよう」との批判が削除*33
経営者の監視について旧版では、経営者に対する監視能力が争点とまとめていた*34のに対しアメリカの議論が百花繚乱という記載に*35
持分会社の規定が基本的にすべて強行規定とは考えがたい*36
3.第二章 設立
本書59〜119頁、旧版57〜115頁
(1) 主な改正点
仮装払込規制(私法上の効果、責任等)*37
(2) 判例・理論・実務の進展
宍戸善一=福田宗孝=梅谷眞人・ジョイント・ベンチャー戦略大全(東洋経済新報社、2013年)*38
田中恒好「少数派株主の出資金回収に関する実務的考察」立命339=340号140頁(2011)*39
(3) 細かな注意点
発行可能株式総数四倍規制の条文として180条3項、814条1項が追加*40。
相対的記載事項の条文として205条2項、399条の13第6項が追加*41
監査等委員会設置会社の設立においては、設立時監査等委員とそれ以外を区別して選任(38条2項、88条2項)*42
設立時監査等委員を会社設立前に解任するためには議決権の3分の2以上の決定を要する(43条1項)*43
監査等委員会設置会社を設立する場合、設立時監査等委員は3名以上(39条3項)*44
監査等委員会設置会社の登記事項等*45
公告事項増加(172条3項、179条の4第2項、206条の2第2項、172条3項、179条の4第2項)*46
疑似発起人の責任として103条2項、3項の責任が追加*47
(4) その他
産活法の廃止及び産競法の制定に伴う現物出資等証明免除の条文変更*48
改正点ではないが、江頭先生がデューデリを「実地調査」と訳されている*49のには違和感がある。
平成17年改正後既に10年近く経っているのに、商号専用権につき未だに「今後登記実務は相当変わるものと思われる」*50という記載を残していることに違和感。
設立時の添付書類として「設立時取締役等の調査報告を記載した書面(会社46条・93条)」を含めていた旧版の記載が削除*51
代表者の一名の住所は日本でなければならない*52とあるが、この規制を撤廃すると報道されている*53。
4.第三章 株式
121頁〜302頁、旧版117頁〜286頁
(1) 主な改正点
特別支配株主の株式等売渡請求権*54
全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウト手続の整備*55
競業者による株主名簿閲覧請求を禁止する規定(旧125条3項3号)の削除*56
株式併合によるスクイーズアウト手続の整備*57
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
東京高判平成24年11月28日判タ1389号256頁(権利行使者の通知を欠く共有株式の権利行使につき会社が同意した場合に会社が負うべき責任等)*58
東京地決平成25年9月17日金判1427号54頁(取得価格決定申立)*59
東京地決平成25年11月6日金判1431号52頁(取得価格決定申立)*60
横浜地判平成24年11月7日判時2182号157頁(失念株主の請求による特別口座の開設)*61
最決平成24年3月28日民集66巻5号2344頁(反対株主の買取請求に係る個別株主通知)*62
大阪地判平成24年2月8日金判1396号56頁(反対株主の買取請求に係る個別株主通知)*63
東京地決平成24年12月21日金判1408号52頁(公開買付勧誘の目的は株主の権利の確保・行使に関する調査の目的に該当)*64
東京高判平成24年11月28日資料版商事法務356号30頁(相続による準共有者の一部への売渡請求)*65
(イ) 理論
中川雅博「振替制度における『個別株主通知』の実務」阪法62巻3=4号1109頁(2012)*66
西村欣也「少数株主権等の行使と個別株主通知の実施時期」判タ1387号36頁(2013)*67
清水博之「所在不明株主の株式売却制度」商事1955号30頁(2012)*68
川畑正文「株主権の時効取得について(試論)」門口正人判事退官記念・新しい時代の民事司法303頁(商事法務・2011)*69
石田眞「『日本版ESOP』における議決権行使の問題点」西南45巻3=4号106頁(2013)*70
藤田友敬・コメ(4)19頁*71
(ウ) 実務
株式の譲渡益に関する課税実務の変更*72
日本版ESOPが「検討」段階から「登場」へ*73
(3) 細かな注意点
株式買取請求権の条文(182条の4)、代表訴訟提起権の条文(747条の2、747条の3)、書類閲覧請求権の条文(171条の2第2項、179条の5第2項、182条の2第2項)増加*74
優先株式の優先配当額等の定めの執行役等への委任の条文が追加(399条の13第5項、6項)*75
議決権制限株式の少数株主権行使の可否に関する条文の追加・変更(206条の2第4項の追加、426条5項から7項へ、796条4項から3項へ)*76
取得請求権付株式の交付される財産の数学・算定方法の執行役等への委任の条文が追加(399条の13第5項6項)*77
取得条項付株式に関する定めの執行役等への委任の条文が追加(399条の13第5項6項)*78
監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役および/またはそれ以外の取締役を種類総会で選任するという種類株式の設計が可能*79
株式取得者の単独請求による名義書換えとして特別支配株主が株式等売渡請求により取得した場合(179条1項)が増加*80
登録株式質権者が直接に給付を得られる範囲に関する条文が若干変更(152条から152条1項括弧書きへ)*81
物上代位的給付の目的物が金銭の場合に登録質権者は金銭を受領し又は供託を請求できる(154条)が追加*82
譲渡承認の委任を禁止する条文が追加(399条の13第5項1号6項)*83
指定買取人指定の委任を禁止する条文が追加(399条の13第5項1号6項)*84
自己株式取得につき監査等委員会設置会社に関する記載が追加(399条の13第5項2号6項等)*85
反対株主の買取請求権による自己株取得について、併合により端数が出る場合(会社法182条の4第1項)が追加*86
株式併合が発行株式総数に影響を及ぼさないとの記載が削除(282頁、旧版268頁)。
一単元の株式を減少させる又は単元株の定めを廃止する定款変更が執行役等への委任可能という文脈で、監査等委員会設置会社に関する条文が追加(399条の13第5項6項)*87
(4) その他
登録質権者が優先弁済が得られる「151条各号」の行為が「151条の行為」*88となったのは、同条2項が追加されたからであろう
自己の株式を対価とする公開買付につき、産競法制定による条文変更等*89
株式併合と減資を行う場合に関し、産活法制定による条文変更*90
譲渡制限株式の無償割当により既存の当該種類株主の持株比率が減少する場合には、原則として種類株主総会の決議を必要とすべきとする*91
5.第四章 機関
303頁〜585頁、旧版287頁〜540頁
(1) 主な改正点
監査等委員会設置会社制度の新設*92
委員会設置会社制度が指名委員会等設置会社制度へ*93
業務執行取締役*94と社外取締役*95
子会社からなる企業集団の業務適正を確保する為に必要な体制の法律レベルへの格上げ*96
特定責任追及*97
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
東京高判平成23年9月27日資料版商事法務333号39頁(議案を否決した決議の取消を求める訴えには原則として訴えの利益はないが、設立した決議と密接な関連性がある等の特段の事情のある株主提案の不当拒絶については決議取消の余地を認める)*98
東京高決平成24年5月3日資料版商事法務340号30頁(株主提案を参考書類に記載することを求める仮処分申請)*99
東京地決平成24年1月17日金判1389号60頁(議決権行使禁止の仮処分と債務者適格)*100
東京地判平成23年5月26日判タ1368号38頁(決議無効確認の訴えを濫用と認めた例)*101
東京地判平成23年1月26日判タ1361号218頁(不存在と認められる取締役解任決議が総会決議により追認されても解任は遡及的に有効にはならない)*102
横浜地判平成24年7月20日判時2165号141頁(解任の正当事由)*103
さいたま地判平成23年9月2日金判1376号54頁(重要な財産の処分)*104
東京高判平成23年9月14日金判1377号16頁(未公開株式の公募による会社の不法行為責任)*105
大阪高判平成24年4月6日労判1055号28頁(従業員の名誉感情の毀損と会社の不法行為責任)*106
最判平成23年9月13日民集65巻6号2511頁(虚偽記載と因果関係のある損害の額)*107
最判平成24年12月21日判時2177号51頁(民事再生申立てによる値下がりと虚偽記載と因果関係ある損害)*108
東京地判平成24年2月21日判時2161号129頁(法定の決議を欠く行為の効力)*109
知財高判平成22年5月26日判時2108号65頁(営業秘密の不正利用)*110
佐賀地判平成23年1月20日判タ1387号190頁(退職慰労金不支給)*111
東京地判平成25年2月28日金判1416号38頁(経営判断)*112
東京地判平成22年6月30日判時2097号144頁(経営判断)*113
福岡高判平成24年4月10日判タ1383号335頁(経営判断)*114
大阪地判平成25年1月25日判時2186号93頁(経営判断)*115
名古屋高判平成25年3月28日金判1418号38頁(経営判断)*116
仙台高判平成24年12月27日判時2195号130頁(詐害行為取消は代表訴訟ではできない)*117
東京地判平成24年9月11日金判1404号52頁(監査役の選任についての同意を欠く決議と取消事由)*118
名古屋高判平成23年8月25日判時2162号136頁(監査役の第三者責任)*119
(イ) 理論
飯田達矢「一般投資家に開かれた株式会社の運営」商事1941号35頁(2011)*120
白井正和「持合解消信託をめぐる会社法上の問題」法学76巻5号491頁(2012)及び 佐藤勤「現代の議決権信託とその実質的効果であるエンプティ・ボーティング規制」前田重行先生古稀記念・企業法・金融法の新潮流39頁(商事法務・2013)を引きながら、信託受益権売買等により議決権行使と自益権を分離させる等の事例への懸念を論じる*121
木村敢二「Web開示とWeb修正の実務対応」商事1959号42頁(2012)*122
清水幸明「コーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しの概要」商事1961号31頁(2012)*123
潘阿憲「取締役の任意解任制」前田重行先生古稀記念・企業法・金融法の新潮流111頁(商事法務・2013)*124
和田宣喜「取締役の職務代行者が果たすべき権利・義務」商事1992号40頁(2013)*125
黒沼悦郎「有価証券報告書の虚偽記載と損害との間の因果関係」法の支配157号34頁(2010)や上記の最判等を引きながら、金賞法上の開示書類の虚偽記載によって投資家が被る損害の額について詳論*126
飯田秀聡「取締役の監視義務の損害賠償責任による動機付けの問題点」民商146巻1号33頁(2012)*127
釜田薫子「米国における社外取締役の独立性と構造的偏向」法雑58巻2号45頁(2011)*128
(ウ) 実務
機関投資家である株主の議決権行使の実態につき江頭憲治郎「上場会社の株主」体系3頁を参照とする*129
公開会社において、一人で50以上の議題を提案する例があり、数や提案理由によっては権利濫用になる*130
電子投票における株主の同一性の確認方法として使われるIDとパスワードの交付方法につき、中西敏和「株主総会」体系130頁を引きながら、パスワードを株主があらかじめ届け出るとしていた旧版の記述から、会社が各株主に通知するに変わる。*131
坂東照雄「議決権電子行使プラットフォームの現状と課題」商事1911号45頁(2010)を引きながら、議決権電子行使プラットフォームについて説明*132
平成26年改正以降も、独立役員の基準の方が社外取締役の基準よりも厳格である*133
阿部信一郎「総会検査役の任務と実務対応」商事1973号59頁(2012)*134
内部統制の実態調査として商事法務編集部「内部統制の実態(上)(下)」商事1870号31頁・1781号59頁(2009)を紹介*135
裁判所が法定の決議に関する調査義務を課すのは実際には金融機関に限られているとする*136
支配株主の会社への加害をどのように監視するかが問題であり、社外取締役・社外監査役・独立役員への期待が大きいとする*137
BIP信託の受益権の付与について内ヶ崎茂「株式報酬インセンティブ・プランの制度設計と法的考察」商事1985号35頁(2012)を引きながら言及*138
日本公認会計士協会=日本税理士連合会「会計参与の行動指針」が平成23年に最終改正*139
(3) 細かな注意点
改正法の社外取締役重視の姿勢も株主の業務執行者に対する有効な監視方法があるかという問題に関する1つの試みであるとする*140
総会招集を執行役等に委任できないという文脈で監査等委員会設置会社に対応(399条の13第5項4号6項)*141
少数株主権(479条2項1号、847条の3第1項)、簡易合併等の可否(179条1項、244条の2第5項)の条文の増加*142
出資の履行を仮装した株式は履行があるまでは「株主の権利を行使できない」とされるが、これを得票率の計算の際に分子・分母に入れず、株式未成立として取り扱うべきとする*143
ウェブ開示等への異議の主体として「監査役等」が異議を述べている場合に当該事項を参考書類に記載しなければならないと明記*144
利益供与の文脈における「株主の権利」には、適格旧株主、最終完全親会社等の株主の権利を含む*145
監査等委員会議事録には特別の法的効果が生じる(399条の10第5項)*146
普通決議定足数の定款の定めによる変更の例外として、支配株主の異動を伴う募集株式発行規制(244条の2第6項)に言及*147
特別決議事項の条文を追加(200条1項、205条2項)*148
書面決議と手続開始基準日について書面決議の提案があった日をその日とみなす規定が追加(171条の2第1項1号、182条の2第1項1号)*149
監査等委員会設置会社への取締役会設置強制(327条1項(3号))*150
取締役会設置会社以外の取締役の中にも「非業務執行取締役」として責任限定契約(427条)を締結できる者がいる*151
特別取締役による議決の定めがある場合には社外取締役が登記される(911条3項21号ハ)*152
親子会社間の責任追及と代表関係についての整理を追加(386条1項2号・3号)*153
取締役会の権限として特別支配株主の株式等売渡請求の承認(179条の3第3項、179条の6第2項)が増える*154
取締役の調査権行使について従来指名委員会等設置会社で議論されていたのが、監査等委員会設置会社についても議論を追加*155
親会社社員の子会社取締役会議事録等請求の根拠に、特定責任追及(847条の2、847条の3)が追記される*156
利益相反に関する監査報告を事業報告の内容とする*157
会社株主の利益保護を目的とする具体的規定の追加(199条)*158
本来会社の中立的な機関が積極的に訴訟活動をする事が望ましいとする場合の参照条文に847条の1第7項、847条の3第8項が追加*159
分配額超過額支払義務の条文に182条の4第1項が追加*160
出資の履行に瑕疵ある場合の責任に関する記載が追加*161
連帯責任の条文増加(213条4項、213条の3第2項、286条4項、286条の3第2項)*162
多重代表訴訟と責任免除*163
責任の一部免除の文脈における「特別責任」の条文増加(213条1項、213条の3第1項、286条1項、286条の3第1項)*164
一部免除及び責任限定契約が社外取締役かではなく業務執行取締役かが基準となる*165
訴訟上の和解と多重代表訴訟について整理*166
責任追及の訴えの提起権を持つ株主等が847条の4第2項で「株主、適格旧株主又は最終完全親会社等の株主をいう」と定義された*167
会社法に規定された取締役の責任の条文追加(213条の3第1項、286条1項、286条の3第1項)*168
代表訴訟の被告として出資の履行を仮装した募集株式の引受人等(102条の2、213条の2、286条の2)が追加*169
代表訴訟は財産権上の請求ではない請求にかかる訴えとみなされる根拠条文は847条の4第1項*170
株式交換と原告適格の喪失の有無について整理*171
募集株式差し止め請求等の条文の補充(171条の3、179条ん7、182条の3、784条の2、796条の2、805条の2)*172
取締役が情報を開示すべき事項の追加(171条の2第1項、179条の5第1項、182条の2第1項)*173
監査役とその登記*174
監査役の設置義務を負わない場合*175
監査役の終任事由として、会社が監査等委員会設置会社となることが追加(336条4項2号)*176
監査役の子会社業務調査の根拠、訴訟代理権限、免除同意権限等について多重代表訴訟制度の導入を反映*177
監査役・会計参与の責任免除が「非業務執行取締役」と同様と説明される*178
(4) その他
理論的に可能*179な機関構成の図(「沿革」欄の「H26」)が更新されているので参考のこと*180
「金融商品法適用会社」につき社外取締役の設置が強く勧奨されることとの関係で監査等委員会設置会社の形態の選択が新たに認められた*181との表現はミスリーディングであろう。普通の会社でも、「公募」等をすれば金融商品法は適用される。あくまでも、「有価証券報告制度」の適用の問題に過ぎない。
従前どおり「議案の提案者が提案理由等を説明した後に質疑応答がなされる形で進行するのが会議体の一般原則」とするが、新たに199条3項、327条の2、361条4項、795条2項(説明事項の法定)が引用される*182
上場会社の取締役会について旧版にあった「上場会社の取締役会は取締役の人数が多いため、、実質的意思決定の場とするに適さず、セレモニー化していることが少なくない」との記載が削除されているようだが*183、これは、江頭先生の目から見ると、この4年でセレモニー化という状況が解消したという趣旨だろうか、それとも、上場会社関係者から削除要請があったということだろうか?
電話会議方式による参加について、福岡地判平成23年8月9日裁判所HPが上げられていないのは理解に苦しむ*184。
アメリカは経営判断の原則が適用されれば陪審審理に付さない*185
「不作為による任務懈怠」自体について上告審では判断されていないが、福岡高判平成24年4月13日金判1399号24頁(不作為による任務懈怠)*186を挙げるのではなく、上告審の最判平成26年1月30日判タ1398号87頁を挙げて、一応高判が破棄されたことを示すべきと思われる。
利益相反取引について「直接取引の相手方である取締役」と「第三社のため会社と取引した取締役」が挙げられていた*187のが、これに加え、「間接取引において会社と利益が層反する取締役」が追加*188
重点講義の改訂に対応して2版を引くようになったのはいいが*189、5版出版直後に2版補正版が出てしまっている。
金商法の不実開示の条文を追加(金商24条の4、24条の7第4項、24条の5第5項、22条)*190
「委員会設置会社」*191は「指名委員会等設置会社」の誤記と思われる。
6.第五章 計算
587頁〜699頁、旧版541頁〜652頁
(1) 主な改正点
会計監査人の選解任方法について、監査役設置会社と指名委員会等設置会社の間の相違をなくす*192
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
大阪地判平成24年9月28日判時2169号104頁(貸倒引当金)*193
名古屋地決平成24年8月13日判時2176号65頁(会計帳簿閲覧権の対象)*194
(イ) 理論
野村昭文「監査基準の改訂および監査における不正リスク対応基準の設定の概要」商事1997号42頁(2013)*195
弥永真生・会計基準と法988頁(中央経済社・2013)*196
(ウ) 実務
IFRSについて、秋葉賢一「IFRSと会社法会計」体系341頁等を参考文献として掲げながら、2013年6月までの動きを説明*197
企業会計審議会「監査における不正リスク対応基準」(平成25年3月)*198
中小企業の会計に関する検討会「中小企業の会計に関する基本要領」(平成24年)*199
「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)(平成24年改正)*200
(3) 細かな注意点
計算書類の監査主体に監査等委員会が入ったことによる所要の改訂がされている*201
会計監査人への報酬について監査等委員会設置会社は監査等委員会の同意を得ることが必要*202
監査等委員会が選定した監査等委員も会計監査人に報告を求めることができる*203
会計監査人の責任として特定責任が追加*204
監査報告に監査等委員会設置会社の監査報告が追加*205
総会の承認が不要な場合につき監査等委員会設置に対応*206
定款による剰余金の処分の授権につき監査等委員会設置会社に対応*207
現物配当の配当財産の条文が763条12号ロから763条1項12号ロへ*208
(4) その他
金商法の監査証明をする監査法人と会計監査人が通常同一人であることについて東京証券取引所・有価証券上場規程438条を追加*209
一時会計監査人の登記の条文追加(911条3項20号、商業登記法55条)*210
平成14年10月改訂の監査基準委員会報告書11号「違法行為」が挙げられているが*211、旧版567頁注23では平成9年3月としか記載されておらず、本来本書の初版くらいの段階で平成14年の改訂版を引くべきだったのを5版ではじめて修正したものと理解される。
企業会計基準21号「企業結合に関する会計基準」は平成20年に改正された*212から平成20年に「制定」へ*213
剰余金の配当が例外的に分配可能額による制約を受けない場合には、利益準備金を積み立てる必要がない(792条、812条)*214
7.第六章 資金調達
701頁〜818頁、旧版653頁〜763頁
(1) 主な改正点
支配株主の異動を伴う募集株式の発行の規制*215
出資履行の仮装規制*216
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
東京高決平成24年7月12日金法1969号88頁(主要目的ルール)*217
最判平成24年4月24日民集66巻6号2908頁(総会決議等の瑕疵と無効事由、取締役会の新株予約権行使条件変更権)*218
最判平成25年11月21日金判1431号16頁(募集株式発行を無効とする判決と再審事由)*219
(イ) 理論
中東正文「募集株式の発行等」体系407頁を引いて、公募と第三者割当との金商法等における差異について詳論*220
徳島勝幸「社債の融資等に対する実質的な劣後リスクを考える」NBL987号8頁(2012)*221
清水幸明=豊田百合子「ライツ・オファリングに係る上場制度改正の概要」商事1963号18頁(2012)*222
用命保証条項違反を理由とする払込金額の返還請求の可否について篠原倫太郎=青山大樹「出資契約における前提条件と表明保証の理論的・実務的諸問題」金判1370号8頁・1371号8頁(2011)を引いて議論*223
宍戸善一「ベンチャー企業とベンチャー・キャピタル」体系107頁*224
棚橋元「新しい企業形態ー合同会社・有限責任事業組合・投資事業有限責任組合」体系617頁*225
宍戸善一=ベンチャー・ロー・フォーラム編・ベンチャー企業の法務・財務戦略231頁(商事法務・2010)*226
不実開示に基づく責任について野田耕志「証券開示規制における引受証券会社の責任」関俊彦先生古稀記念・変革期の企業法480頁(商事法務・2011)、黒沼悦郎「有価証券届出書に対する元引受証券会社の審査義務」岩原紳作ほか編会社・金融・法(下巻)335頁(商事法務・2013)、後藤元「発行開示における財務情報の虚偽記載と元引受証券会社のゲートキーパー責任」岩原紳作ほか編会社・金融・法(下巻)369頁(商事法務・2013)を引いて説明*227
オプション価格評価モデルが1つでないことについて岩間哲=新家寛「新株予約権の『公正なオプション額』とオプション評価モデルの選択」NBL988号46頁、989号71頁(2012)を引いて言及*228
大崎貞和「資金調達方法の多様化」体系442頁*229
尾坂北斗=阪田朋彦「事業再生の局面におかる社債の元本減免について」NBL999号4頁(2013)を引いて和解についての記載を追加*230
(ウ) 実務
藤本周ほか「敵対的買収防衛策の導入状況」商事1915号39頁(2010)や茂木美樹=谷野耕司「敵対的買収防衛策の導入状況」商事2012号49頁(2013)を引きながら買収防衛策の実務について説明*231
(3) 細かな注意点
株式の発行・自己株式の処分の条文増加*232*233
会社にとって資金調達にならない特殊な発行につき条文変更(272条4項から272条5項)*234
執行役等への株式募集に関する決定の委任が可能であることについての条文につき、監査等委員会設置会社に対応(399条の13第5項6項)*235
新株予約券無償割当を株主に対して通知する際の通知期間の短縮*236
一人が募集株式の総数を引き受ける場合の申込適用除外の条文変更(205条から205条1項)*237
現物出資について産活法が産競法に変わった事に伴う改訂*238
特殊の株式発行への差止権の追加に関する言及*239
法令違反の募集株式の発行の条文の追加(205条2項、206条の2第4項)*240
取締役・取締役会に募集株式の発行等の権限がある場合として205条2項が追加*241
不公正な払込金額で募集株式を引受けた者に対する特定責任追及訴訟が可能(847条〜847条の3)*242
全株式譲渡制限会社における新株予約権無償割当につき制度の不整合を指摘*243
取得条項付新株予約権の条項が293条1項1号2項−4項が「293条の1項1号の2.2項2号・3項・5項」へ*244
新株予約権証券の提出を求める公告は293条1項1号から293条1項1号の2へ*245
新株予約権の違法行使の効果について説明を追加*246
新株予約権の法令定款違反として244条3項、244条の2第5項を追加*247
特定認証紛争解決事業者等の確認が行われた償還金額の減額決議の認可について説明を追加*248
(4) その他
差止制度増加に伴い、特殊の株式と株主による差止について説明方法を変えている*249
公募と第三者割り当ての違いについて、公募では支配株主の異動を伴う形が事実上ありえないとする*250
関西国際空港株式会社法が廃止*251されたので、政府保証債の例として株式会社日本政策銀行法25条を挙げている*252
効率的資本市場仮説について20頁の議論を踏まえ、「特に有利な払込金額」でも言及*253
ポイズン・ピル型新株予約権は、資金調達には役立たないことについて言及*254
8.第七章 会社の基礎の変更
819頁〜962頁、旧版765頁〜901頁
(1) 主な改正点
重要な子会社株式等の譲渡*255
法令定款違反の組織再編の差止*256
濫用的会社分割*257
(2) 判例・理論・実務の進展
(ア) 判例
東京地判平成20年12月17日判タ1287号168頁(引渡後の検査と買取価格修正)*258
東京高判平成25年4月17日判時2190号96頁(MBOに際する構成な企業価値移転を図る義務)*259
東京地判平成24年1月27日判時2156号71頁(表明保証)*260
東京地判平成23年4月19日判時2129号82頁(表明保証)*261
大阪地判平成23年7月25日判時2137号79頁(表明保証)*262
なお、最決平成23年4月19日は民集の引用へ、 最決平成23年4月26日は判時の引用へと変更*263
大阪地判平成24年6月29日判タ1390号309頁(総会決議無効確認又は取消の訴え提起後の吸収合併)*264
最決平成24年2月29日民集66巻3号1784頁(合併条件の公正)*265
大阪地決平成24年4月13日金判1391号52頁(公正な価格)*266
大阪地決平成24年4月27日判時2172号122頁(公正な価格)*267
東京高決平成25年2月28日判タ1393号239頁(株式交換・移転における株式買取請求権)*268
最判平成23年7月8日判時2137号46頁(事業譲渡による承継対象が専ら契約により定まること)*269
(イ) 理論
佐川雄規「MBO等に関する適時開示内容の見直し等の概要」商事2006号76頁(2013)*270
石綿学ほか「MBOにおける特別委員会の検証と設計」金判1424号2頁・1425号2頁(2013)*271
中山龍太郎「表明保証条項のデフォルト・ルールに関する一考察」岩原紳作ほか編・会社・金融・法(下巻)1頁(商事法務・2013)*272
浜田宰「簡易組織再編の要件」商事1956号46頁(2012)*273
江頭憲治郎「合併契約の不履行」前田重行先生古稀記念・企業法・金融法の新潮流241頁(商事法務・2013)*274
飯田秀聡・株式買取請求権の構造と買取価格算定の考慮要素311頁(商事法務・2013)に対する反対論を展開*275
太田洋「スピン・オフとスプリット・オフ(上)」商事1945号20頁(2011)*276
郡谷大輔「詐害的な会社分割における債権者の保護」商事1982号18頁(2011)*277
相澤哲「会社分割における根抵当権の取扱いについて」門口正人判事退官記念・新しい時代の民事司法401頁注6(商事法務・2011)*278
岩原紳作「銀行持株会社による子会社管理に関する銀行法と会社法の交錯」門口正人判事退官記念・新しい時代の民事司法435頁(商事法務・2011)*279
(ウ) 実務
原田充浩=中山達也=安井桂大「MAC条項を巡る実務対応に関する一考察」金判1380号2頁・1381号2頁(2011−2012)を引きながらMAC条項について説明*280
実務では、市場価格がある合併でも、市場価格に反映していない内部情報の加味等を行って各当事者の株式の経済価値を決定している*281
(3) 細かな注意点
大口株主による買取請求権の濫用的行使の規制の為の制度改革も近時行われている*282
発行可能株式総数の増加に関する条文の追加(180条3項)*283
株式併合と買取請求権(182条の4第1項)*284
買取請求の行使要件につき182条の4第2項1号が追加*285
振替株式の買取請求に関する(特に買取口座に関する)改正*286
議決権を行使できない株主の買取請求権に関する条文(182条の4第2項2号)追加*287
買取価格決定前の支払が許容された*288
買取の効力発生時期を一律に効力発生日を基準とする改正*289
三角合併と責任追及の訴えについて496頁を参照せよとする*290
合併条件不公正自体は合併差し止めの要件にはあたらない*291
新設合併と発行可能株式総数(814条1項、37条3項)*292
簡易合併の存続会社の株主に株式買取請求はない*293
買い取りの効力*294
簡易合併と略式合併における株式買取請求権*295
差止制度が入った事による無効事由の変更*296
人的分割では利益準備金の計上を要しない(792条、812条)*297
分割計画の条文の変更(763条1号2号及び763条3号4号から763条1項1号2号、763条1項3号4号へ)*298
会社分割の反対株主の新株予約権買取請求権の条文の変更(763条10号イから763条1項10号イへ)*299
簡易分割・略式分割と株式買取請求権*300
監査等委員会設置会社の株式移転計画(399条の13第5項17号6項)*301
株式交換移転と買取請求権の適用除外*302
効力発生日までに原因事実が生じた完全子会社となる会社の役員等の責任追及に関する完全子会社の旧株主による責任追求等の訴えにつき496頁参照*303
株券提出期間中に提出されない株券等の効力に関する条文が219条2項から219条2項5号へと変更*304
簡易略式株式交換と買取請求権*305
簡易な事業全部の譲受・略式事業全部の譲受と株式買取請求権*306
組織変更条文が746条●号が746条1項●号へ*307
(4) その他
産競法制定に伴う、交付金合併・三角合併の説明の変更*308
買い取り請求にかかる株式は効力発生日に消滅会社の自己株式となって消滅すると説明していた(旧版811頁注4)が、「自己株式となって、消滅会社については〜割当ては行われない」との説明へ変わった*309
産競法制定に伴う、略式合併の説明の変更*310
産競法制定に伴う、交付金分割の説明の変更*311
会社分割における公告催告の効果について説明が若干変更*312
産競法制定に伴う、略式分割の説明の変更*313
産競法制定に伴う、略式株式交換の説明の変更*314
産競法制定に伴う、略式事業譲渡の説明の変更*315
「委員会設置会社」*316は誤記と思われる。
旧版では「会社法制定当初は、株式会社から合同会社への組織変更も、相当数行われるかもしれない」*317とあったが、実際には移行は進まなかったようで、この記載が削除されている*318
9.第八章 外国会社
963頁〜971頁、旧版903頁〜911頁
大阪地判平成22年12月17日判時2126号28頁(デラウェア州のLPを我が国の租税法上「法人」と認めた事案)*319
10.第九章 解散と清算
972頁〜994頁、旧版913頁〜933頁
(1) 主な改正点
なし
(2) 判例・理論・実務の進展
森江由美子「少数派株主保護の法理」関学62巻3号・4号63巻4号(2011−2013)*320
(3) 細かな注意点
監査等委員会は清算会社に置けない(477条7項)*321
監査等委員会設置会社の監査等委員は清算において監査役になる*322
清算会社が財産を換価する際、子会社持分譲渡の方法による場合には特別決議が必要*323
(4) その他
休眠会社のみなし解散*324に関し、平成26年11月17日(月)の時点で要件に該当する法人が平成27年1月19日(月)までに「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく役員変更等の登記も申請されなかった休眠会社又は休眠一般法人について平成27年1月20日(火)付けで解散したものとみなされる*325。
まとめ
江頭会社法の改正点を概観すると、監査委員会設置会社、社外取締役、多重代表訴訟、株式等売渡請求等の華々しく議論された改正点以外にも、実務的に影響を及ぼし得るマイナーな改正点があることが分かるとともに、改正が影響を及ぼさないと考えられる範囲も理解される。
法務関係の皆様は、ぜひ、第六版まで待つとは言わず、江頭会社法をご購入頂き、本書の「ご自身の業務に関係する部分」を、特に本エントリに記載した点にフォーカスを当ててお読み頂きたい。これが会社法改正がご自身の業務にどう影響し得るかを知る最短の勉強方法だと考える。
本エントリを掲載する機会を与えて下さったLegal Advent Calender主催者の柴田先生(@overbody_bizlaw)に心より感謝して本エントリを終えさせて頂きたい。
*1:実は、本エントリのように江頭会社法5版を4版と比較して、業務と関係ある部分で会社法がどう改正「された」のか「されていない」のかを確認すべきということを書いていますので、このエントリは、法律書レビューの補足記事という意味もございます。
*2:索引等をあわせた
*3:以下、ページ数のみは本書の頁を示す。
*4:第5版補訂版かもしれないが、本エントリの論旨からするとどちらでも関係ない。
*5:執筆時現在の政省令策定の見込みを反映すれば
*6:こういうことを考えた時には、それがどれだけ手間ひまがかかる作業か、全く想像がついていなかったのでした。。。
*7:9〜10頁
*8:49頁
*9:54頁注2
*10:15頁注2
*11:20頁
*12:21頁注11
*13:42頁注2
*14:19〜21頁
*15:24頁注3
*16:24頁注3
*17:50頁注4
*18:51頁
*19:52頁注2
*20:54頁注1
*21:54頁注2
*22:1頁
*23:3頁注1
*24:4頁注4
*25:3頁
*26:3頁注2、4頁
*27:12頁注2、注3
*28:7頁注9
*29:7頁注10
*30:8頁及び10頁)。 訴訟・非訟事件において取引相場のない株式等の評価方法が問題となるケースに関する条文が増加(179条の8第1項、182条の5第2項)((14頁
*31:299条の6第1項
*32:33頁
*33:15頁注2。旧版15頁注2も参照
*34:旧版47頁
*35:49頁
*36:56頁注1
*37:82頁、110頁以下
*38:63頁注2
*39:63頁注2
*40:70頁
*41:71頁
*42:84頁、99頁
*43:85頁注2
*44:86頁
*45:104頁、106頁注5
*46:104注3、105頁注4
*47:114頁
*48:89注6
*49:63頁
*50:69頁注3
*51:103頁注2。旧版100頁注2も参照
*52:103頁
*53:http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1520141202abas.html
*54:129頁、275頁以下
*55:158頁以下
*56:203頁
*57:282頁以下。なお、旧版128頁注6(本書132頁注6相当)の記載を参照のこと。
*58:122頁注3
*59:161頁
*60:161、162頁
*61:195頁
*62:200頁
*63:200頁
*64:203頁
*65:261頁
*66:199頁
*67:200頁
*68:210頁
*69:219頁
*70:245頁注5
*71:258頁注11
*72:いわゆるNISA等。217頁注1
*73:244頁注5
*74:128頁
*75:140頁
*76:147頁
*77:152頁注21
*78:156頁
*79:165頁
*80:208頁
*81:227頁注7
*82:227頁注8
*83:235頁
*84:238頁
*85:250頁、251頁
*86:263頁
*87:297頁注4
*88:227頁
*89:253頁注4
*90:283頁
*91:292頁
*92:379頁、408頁注4、508頁、509頁、555頁、571頁以下
*93:378頁、544頁以下
*94:377〜378頁
*96:399頁、400頁注3、406頁、409頁、411頁注8、523頁、527頁
*97:460頁注2、483頁、496頁以下(株式交換)、498頁以下(いわゆる多重代表訴訟)、535頁(監査役)、539頁(会計参与)、559頁、561頁及び同注6(いずれも監査委員会と特定責任追及訴訟)、569頁(執行役)
*98:326頁、367頁注6
*99:326頁
*100:347頁
*101:371頁
*102:393頁注6
*103:394頁注7
*104:407頁注2
*105:421頁注1
*106:421頁注1
*107:421頁注2
*108:423頁注2
*109:425頁注4
*110:436頁注8
*111:458頁注28
*112:463頁注3
*113:464頁注3
*114:464頁注3
*115:464頁注3
*116:464頁注3
*117:485頁注2
*118:517頁注1
*119:536頁
*120:306頁注5
*121:336頁注3
*122:343頁注13
*123:385頁注8
*124:394頁
*125:398頁注3
*126:421頁注2
*127:465頁
*128:547頁
*129:306頁注5
*130:326頁
*131:345頁注17、旧版328頁注17
*132:346頁注18
*133:385頁注8
*134:352頁注5
*135:400頁注4
*136:425頁注4
*137:443頁
*138:445頁
*139:538頁
*140:306頁
*141:317頁
*142:331頁
*143:331頁
*144:343頁注13
*145:347頁、467頁
*146:353頁
*147:354頁
*148:356頁注2
*149:358頁注6
*150:375頁
*151:378頁注5
*152:390頁
*153:403頁注6、424頁注3
*154:406頁、549頁注1
*155:410頁注7
*156:419頁
*157:443頁注9
*158:461頁
*159:461頁注2
*160:468頁注8
*161:470頁、553頁、569頁
*162:470頁
*163:471頁及び同注14、473頁、474頁、475頁、477頁、479頁
*164:472頁注16
*165:473頁、478頁、479頁及び同注28
*166:480頁
*167:公告・通知の文脈で481頁注31
*168:484頁注2
*169:485頁注2
*170:486頁
*171:489頁注8
*172:494頁
*173:507頁注9
*174:511頁注3、518頁
*175:511頁、512頁
*176:518頁
*177:524頁、525頁
*178:535頁、540頁
*179:実務的に勧められるものはもっと限られてくる
*180:308頁
*181:311頁
*182:351頁
*183:376頁、旧版358頁
*184:413頁
*185:464頁注3
*186:465頁
*187:旧版441頁
*188:466頁
*189:491頁
*190:507頁
*191:511頁
*192:608頁〜610頁、改正の経緯は608頁注18参照。
*193:645頁注21
*194:696頁
*195:615頁注28
*196:625頁
*197:590頁注4
*198:615頁注28
*199:627頁注6
*200:652頁注3
*201:595頁注1、598頁注2、599頁、600〜601頁、602頁、604頁、617頁
*202:607頁
*203:612頁
*204:613頁
*205:617頁
*206:622頁及び同注6
*207:668頁
*208:676頁注10、旧版629頁注10参照
*209:606頁
*210:610頁
*211:613頁注23
*212:旧版595頁注14
*213:641頁注14
*214:659頁注12
*215:707頁、724頁、750頁以下、766頁、788頁、798頁
*216:740頁、754頁以下、768頁、772頁、773頁、789頁、794頁、799頁
*217:761頁
*218:766頁、779頁、796頁
*219:771頁
*220:709頁注7
*221:715頁注14
*222:738頁注11
*223:745頁注1
*224:748頁注5
*225:748頁
*226:748頁
*227:773頁
*228:777頁注1
*229:780頁
*230:809、812,813頁
*231:785頁注14
*232:213条の2、213条の3
*233:703頁
*234:704頁注2
*235:731頁、732頁、735頁
*236:736頁注8
*237:738頁
*238:741頁、754頁
*239:758頁
*240:758頁
*241:768頁
*242:772頁
*243:787頁注16
*244:793頁、旧版739頁も参照
*245:794頁注4、旧版739頁注4も参照
*246:796頁注6
*247:797頁注1
*248:814頁注7
*249:705頁注2
*250:708頁
*251:関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律(平成23年法律第54号)附則第19条
*252:714頁
*253:759頁注3
*254:762頁
*255:819頁、824頁、942頁、946頁、948頁
*256:824頁、877頁以下、915頁以下、940頁以下
*257:899頁注3、903頁
*258:820頁
*259:821頁注2
*260:822頁注4
*261:822頁注4
*262:822頁注4
*263:834頁注9
*264:839頁
*265:851頁注2
*266:867頁注4
*267:867頁注4
*268:932頁
*269:943頁
*270:821頁注2
*271:821頁注2
*272:822頁注4
*273:842頁注4
*274:849頁注1、926頁注2
*275:867頁注4
*276:888頁
*277:904頁注2
*278:912頁注7
*279:952頁注1
*280:820頁、822頁注5
*281:860頁
*282:824頁、829頁注1、なお、835頁注12等のことを差していると思われる。
*283:825頁注2
*284:828頁
*285:829頁
*286:830頁、831頁注6、833頁
*287:830頁
*288:835頁注12
*289:836頁注13
*290:844頁
*291:851頁注2
*292:854頁注15
*293:866頁注3
*294:868頁
*295:875頁
*296:880頁、916頁、941頁
*297:885頁
*298:894頁、旧版836頁も参照
*299:901頁、旧版843頁も参照
*300:915頁
*301:925頁
*302:932頁注1
*303:936頁
*304:936頁、旧版876頁注3参照
*305:939頁
*306:949頁注3、950頁
*307:958頁〜959頁。旧版898頁〜899頁参照。
*308:838頁注3
*309:868頁注5
*310:875頁注6
*311:884頁注4
*313:914頁注1
*314:939頁注1
*315:948頁注11
*316:950頁
*317:旧版893頁
*318:953頁
*319:964頁
*320:977頁
*321:982頁
*322:983頁、987頁
*323:989頁
*324:978頁