アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

面白判例百選〜面白判例検索の世界へご招待

民法判例百選1 総則・物権 第7版 (別冊ジュリストNo.223)

民法判例百選1 総則・物権 第7版 (別冊ジュリストNo.223)


 ゴールデンウィーク企画最終回ということで、独断と偏見で面白判例を100本選んでみました。カテゴリー毎に分けて10本ずつ選んでみました。



司法判例10選
 裁判、司法に関する判決を10個選びました。


判例1 裁判所が改名を認めたら、目が見えるようになる?

「改名すれば目が見えるようになる、チャンスは今だけ」との占いに従って改名を希望する婦人につき、改名を認める審判をしたら、後に目が見え始めたとの報告があった事案(名古屋家審審判年月日不明)*1

 本来、名を変えると健康になるとか、字画を良くしたいという「迷信」に基づく改名は認められない(長崎家審昭和35年3月10日家月12巻8号144頁、名古屋家半田支審昭和44年3月19日家月21巻9号104頁等)。裁判官が裁量をフルに働かせた結果、こんな世にも奇妙な結果が生じた。




判例2 警察官が取調べ中の被疑者を姦淫

警視庁の警察官が覚せい剤取締法違反の被疑者である若い女性の取調べ中に取調室で同女を強姦したという事案において、警察官は「女性の積極的な誘惑があった」と述べて争ったが、誘惑の事実はなかったと断じられた事案(東京地判平成23年5月19日)

 事案的には、既に警察官が刑事事件で特別公務員暴行陵虐罪で有罪(東京高判平成18年3月20日)とされ、その後東京都側が被害女性と和解し、和解金相当額を警官に求償したという事案です。極端な例ではありますが、警察官と二人きりで取調べというシチュエーションは、実は恐ろしいのですね。。。関連判例として東京高判平成15年1月29日判時1835号157頁参照。


判例3 法務博士は使えない?

採用した法科大学院卒業生である労働者の能力不足を指摘して一時待機を命じたことにつき、給与の支払いを正当化する労働提供不能ではなく、配置転換等も可能であった等として労働者を勝たせた事案(大阪地判平成24年4月26日)

 法科大学院修了の3年後(三振?)にキャバクラ等を全国展開している会社に就職したという原告は、裁判には勝ちました。しかし、裁判所は、「原告が作成した文書を見ると、法務の専門知識を期待される労働者のものとしては高い評価に値するものではないし、専門性以前に業務上の文書作成の基礎的能力にも欠ける面も窺われる」と判断しているので、原告は全然喜べない判決。いわば裁判に勝って勝負に負けた事案?
 なお、法務博士の法的知識関係については、「法学部卒業程度の法的知識を有していた」とする京都地裁平成21年9月25日も参照。



判例4 東京地裁が訴えられる?

東京地裁厚生部」と呼ばれた職員の互助団体が支払不能に陥り、業者が東京地裁(国)を訴えた事案。東京地裁は「厚生部はうちの一部門じゃない」と判断したが最高裁で逆転(最判昭和35年10月21日民集14巻12号2661頁)

 東京地方裁判所(正確には「国」)が東京地方裁判所に訴えられ、東京地方裁判所では勝った(東京地判昭和29年9月13日判タ46号74頁)が、最高裁で負けるという希有な事案。裁判所の内部部門のような外観を黙認してはいけません。
 なお、「東京高裁民事事件係長Y1又はその後任」を相手に、「1200円の収入印紙貼付し、4210円切手同封の平成16年6月30日付け訴状に同封の葉書に対象事件番号等を記載して送付」することを求めた事案も参照(東京地裁平成16年9月22日)。



判例5 裁判官が相手をゆすり屋呼ばり?

原告は、某裁判官の訴訟指揮が違法であると、当該裁判官を個人的に訴えた。当該裁判官は、答弁書において原告を「因縁をつけて金をせびる」等と中傷したところ、これが名誉毀損であるとして、原告1人あたり10万円の損害賠償を命じられた事案(前橋地判平成15年7月25日判時1840号33頁)

 このような裁判官がいる事自体が驚きであるが、東京高裁は逆転判決を下し、裁判官を免責している(東京高判平成16年2月25日判時1856号99頁)。
 

判例6 裁判官が酒酔いで勤務?

裁判官は、現場見分の日の払暁に飲酒し、そのため現場見分の際、酒のにおいが若干残つていたことが窺われるとし、極めて不謹慎な行為だが、同裁判官が飲酒のために正常な判断をする能力を欠いていたものとすることはできないとした事案(東京地判昭和61年7月12日判タ622号149頁)

 この裁判官、当事者に「バカか」と暴言を吐いているのですが、これも違法行為とまでは言えないとされてしまいました。



判例7 弁護士が酒酔い?

弁護人が、酒気を帯びたり酒臭を発しつつ弁護活動を行ったことが誠実義務を負う国選弁護人としての義務に違反したとされた事案(和歌山地判平成15年6月24日)

 うつ病及びアルコール依存症と診断され約7年間弁護士業務を休止した後再度弁護士業務を再開し、主に刑事訴訟における国選弁護人として活動していたが、不眠のためまたアルコールを飲み始め、日中においても酒気を帯びた状態となって酒臭を発するようになり、接見の際や公判廷において酒臭を発した状態で業務を行ったと認定されている。


判例8 判例雑誌への掲載は違法?

有名判例雑誌が、判決文を掲載する際に当事者名を実名で表示したことについて、裁判公開原則、知財訴訟であったこと、判例専門誌の性質等に鑑みプライバシー侵害による不法行為は成立しないとされた事例(さいたま地判平成23年1月26日判タ1346号185頁)

 自分の判決を実名入りで掲載するな!という訴えが否定された事案。性犯罪等内容が違えばまた異なる判断がされる可能性がある。類似事件として、長野地飯田支判平成1年2月8日判タ704号240頁がある。


判例9 受験予備校悪玉説

「司法試験予備校が編さんした教材を読んで、論点ごとの判例や学説の状況を記憶し、その後、過去問等を集めた問題集を読んで、解答例を記憶するという論点・解答例暗記型の勉強方法を採る受験者が増加」していると判示された事案(東京地判平成16年9月29日)

 司法試験の成績表等を開示するように求めた訴訟において、開示が及ぼす悪影響として予備校の問題点が縷々指摘されている。司法制度改革推進派が何を立法事実と捉えていたのかを推測させる重要な判例といえよう。


判例10 六法は武器です!

取り調べ中に検察官に対し、六法全書等三冊を胸部及び腹部に投げ付けて暴行を加え、事務官を手拳や鉄パイプ製椅子で殴打する等して公務執行妨害を理由として有罪とされた事案(大津地判昭和60年5月14日税務訴訟資料(1〜249号)148号696頁)

 六法全書を武器として利用した事例。確かに鈍器ですわな。。。



基本判例


基本書*2等に掲載されている基本判例をまとめました。


判例1 百円札模造事件

表は百円紙幣のデザイン、裏は広告というサービス券につき、警官から格別の注意も警告も受けず、かえって警官が配付してくれた等の事情があっても、通貨模造罪の違法性の意識欠缺についての相当の理由を否定した事案(百円札模造事件・最決昭和62年7月16日刑集41巻5号237頁)

 有り体に言えば、「警察官を信じてはいけない」ということですね。


判例2 麹町中学校内申書事件

麹町中全共闘を名乗り、機関紙『砦』を発行、学校文化祭の際、文化祭紛糾を叫んで他校生徒と共に校内に乱入し、ビラまきを行う、大学生ML派の集会に参加する等の内申書の記載は思想信条の自由を害さない(麹町中学校内申書事件・最判昭和63年7月15日判タ675号59頁)

 この原告の方が現在の世田谷区長というのは興味深いところです。代理人の方も有名な政治家ですね。


判例3 豆腐屋事件

わずか豆腐数丁の財産的利益を防衛するため人命を害するがごときは、仮に急迫不正の侵害に対する防衛行為であるとしても、その程度を超えたものであるとして、正当防衛(刑法36条1項)は成立しないとされた事例(豆腐屋事件・大判昭和3年6月9日新聞2891号14頁)(再掲)

 豆腐のために人を殺すのは全然男前ではないですね。


判例4 勘違い騎士道事件

空手有段者が、被害者の男性が女性と揉み合うのを目撃し、女性を守ろうと回し蹴りをしたところ、被害者は死亡し、しかも、被害者は酔った女性を介抱しているだけだったという事案において、誤想過剰防衛を認めた事例(勘違い騎士道事件・最判昭和*362年3月26日刑集41巻2号182頁)

 騎士道精神自体はいいのですが、きちんと女性の意思を確認しましょう。
法学ガール〜勘違い騎士道事件 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。


判例5 レック東京リーガルマインド事件

司法試験受験予備校役員につき退職後2年間の競業避止義務を定める特約について、元監査役の超有名講師との関係で競業避止の必要性の疎明なく合理的代償措もないので、公序良俗に反し無効等とした事案(レック東京リーガルマインド事件・東京地決平成7年10月16日判タ894号73頁)

 あの超有名な某先生の独立の経緯が重判にも掲載されています。


判例6 プラカード事件

デモで「国体はゴジされたぞ 朕はタラフク 食つてるぞ ナンジ人民 飢えて死ね ギョメイギョジ」というプラカードを掲げたことにつき、不敬罪旧刑法74条)として起訴されたが、大赦により免訴とされた事案(プラカード事件・最判昭和23年5月26日刑集2巻6号529頁)

 表現の自由との関係で言うと、最後まで実体判断がされなかったのがやや残念なところです。


判例7 隣人訴訟事件

好意で預った近所の幼児が溜池に落ちた事故で、幼児を預った近所の夫婦に損害賠償責任が認められた事案(津地判昭和58年2月25日判タ495号64頁)

 この判決が報道されると、世間から「近所付合いに冷や水を浴びせるな」と非難を浴びて訴えを取り下げざるを得なくなっている。日本人の法意識を推察させる事案。


判例8 放尿と器物損壊

 器物損壊とは単に物質的に器物その物の形体を変更又は滅尽させる場合だけでなく、事実上若しくは感情上その物を再び本来の目的の用に供することができない状態にさせる場合を含むとして、すき焼き鍋及びトックリに放尿したことは器物損壊であるとした事案(大判明治42年4月16日刑録15輯452頁)

 その後の「心理的瑕疵」の判例にもつながる興味深い判断。実はこの事案、強姦&器物損壊事件であったことはあまり知られていない。



判例9 塩を振りかける行為と暴行

塩に関する判例のリーディングケースである、人の頭、顔、胸および大腿部に食塩を数回ふりかけた行為が暴行にあたるとされた事例(福岡高判昭和46年10月11日速報集1117号)

会社側の被告人が、組合員の被害者を嫌悪して圧迫を加えた労働紛争であることは、あまり知られていない。



判例10 信玄公旗掛松事件

停車場に接近し線路からわずかに一間未満の地点に生立する松はなはだしく煤煙の害を被る位置にありかつその害を予防する方法がないわけではないから、その方法を施さないでその松を枯死させた行為に不法行為が成立するとした事案(大判大正8年3月3日民録25輯356頁)

実は松を鑑定した結果、年代的にその松に信玄公は旗を掛けていなかったことが判明したということはあまり知られていない。



ネットネタ判例10選


 ネットで話題になったネタに関する判例を10個選んでみました。


判例1 DQN判例

「DQN」が侮辱的表現であることは甲第17号証より明らかである。」と判示した事案(東京地裁平成15年9月17日判タ1152号276頁)

 別に裁判官がDQN判例ではない(裁判官がアレな判例は「司法判例」参照。)。弁護士に対して「DQN」等と侮辱的な表現を使って誹謗中傷したとして、発信者情報開示請求が認められた事案。
 本判決以外にも「『DQN会社(ドキュン会社と読むとのこと。)』とは,『ブラック会社』と同義で用いられるインターネットスラングであることが認められる」とした東京地判平成22年9月2日等がある。


判例2 パンツ何色判例

警察官が、刑事事件の被疑者の母親の事情聴取の際に、母親が警察官の追及を否定して沈黙が流れた際、何の前触れもなく「お母さん、パンツは何色ですか。僕は白です。」と申し向けたことについて違法として国家賠償法に基づく損害賠償を認めた事案(那覇地判平成19年5月28日)

 同じ日に、同じ警察官が、母親に対し、手をつなぐよう誘う趣旨の発言をしたこととあわせて沖縄県に対し慰謝料30万円、弁護士費用5万円の支払いが命じられた。
 ネット上では、パンツ何色判例として、東京高判平成22年12月17日東高刑時報61巻342頁を押す声もあるが、現役警察官の行動ということで私はこの那覇地判を押したい。



判例3 クリスマス中止判例

クリスマス・イルミネーションにより、観光客による飲食物等ごみの散乱・立ち小便、たばこの投捨てによる火災の危険等が生じるとして人格権等に基づき申し立てたクリスマス中止仮処分命令申立てが却下された事例(東京地決平成10年12月17日判タ1001号264頁)

 バレンタイン、ホワイトデー、そしてクリスマス。これらのイベントの度に、リア充対非リアの戦いが起こる。非リアはリア充爆発せよ!」と念じるのみならず、クリスマスの中止に向けて様々な努力をする。この方法として、裁判でクリスマスを中止できないかという声が上がることがあるが、何と15年前に既にクリスマス中止を試みた先人がいた
 決定本文を読む限り、あくまでもクリスマスイルミネーション設置点灯禁止を求めるだけであり、申立人が非リアであるかも定かではないが、この先人の努力もむなしく、裁判官によって「却下」とあいなった。


判例4 霊言は著作物判例

新興宗教による「霊言」と呼ばれる宗教行為の動画映像の著作権等が争われた事案につき、某宗教法人の代表役員が題名、主題、列席者及び文殊菩薩が同人に降霊したという設定等その映像全体の構成を決定したとして、その個性が表現されている映画の著作物とされた事案(東京地判平成24年9月28日)

 時流に合わせて「霊言」本を大量発行することで有名な某新興宗教であるが、ある裁判例において、裁判所によって、文殊菩薩が降臨したというのは代表役員が決定した設定であり、要するに、霊言はフィクションであると認定されてしまった。インハウスロイヤー等をどんどん登用して、次こそは裁判所に「霊言は本物」と認めてもらえるよう頑張って欲しい。


判例5 憲法無効論判例

憲法が旧憲法改正の限界を越えているため、全体として無効であることを主張しながら、憲法第三二条等に依拠して最高裁判所に対し申立をするのは不適法である(最決昭和40年7月6日裁判集民79号699頁)

 最近喧しき改憲論。その極北を行くのが押し付け憲法無効論な訳ですが、何と、既に押し付け憲法無効論について判断した判例がありました。事案としては、不動産の競売に関する原決定に不満があった抗告人が「帝国憲法の根本原理は、天皇主権に在り、現行憲法主権在民に在るのであるが、帝国憲法に於ける天帝主権の規定は絶対改正を許されないものであつたから、現行憲法に於ける主権在民の宣言は帝国憲法改正の限界を越えたもので、無効たるを免れない。而して現行憲法に於ける、その根本原理が無効である以上、現行憲法規定は従つて無効である。従つて現行憲法の下に於ける裁判制度も無効たるを免れないから原審決定も無効であり、破毀を免れないものと思料する」と主張して最高裁に上訴したところ、最高裁からはつれない返事が。最高裁もあくまでも(新)憲法に基づく機関ですからね。


判例6 キラキラネーム判例

「悪魔」の命名命名権の濫用であって、市長が他の名にすることを示唆しても、命名者がこれに従わず、あくまでも受理を求めるときは、不適法として受理を拒否されてもやむを得ない(東京家八王子支審平成6年1月31日判タ844号75頁)

 キラキラネームというのはいつの世でも問題となっており、20年前に既に「悪魔」という名前を付けた事案についてこんな審判が出されている。
 なお、この事案は、本当はもう少し複雑で、本来受理を拒否すべき名前について誤って市長が受理してしまった後、市長が「名未定」と訂正した事案であった。裁判所は、一度受理した以上、戸籍法による訂正手続を取るべきで、職権で抹消できないと判示し、名前を元に戻すよう命じた。なお、その後で色々な反響を踏まえ、別の名前にしたとのことである。その元悪魔ちゃんは今年20歳(平成5年8月頃生まれ)になる。元気に暮らしているだろうか。。。


判例7 コスプレ判例

「被告のコスプレ活動やホームページの開設は何ら違法なものではなく、憲法によって保障される表現の自由や営業の自由に基づいて当然に許容されるべきもの」と判示した事案(東京地判平成19年10月10日)

 この事案の当該判示部分は、コスプレの自由が憲法で保護されているという興味深いものであるが、この事案はコスプレイヤーと結婚できると勘違いした原告が*4、「コスプレ活動の中止・撤退」等を約したと主張してその履行を求めたと言う事案であり、裁判所は仮にそのような約束をしていてもこれを禁止する約束は私人間においても公序良俗違反で無効としたものである。
 なお、国家試験会場でメイド姿で生徒への激励をした教員につき、服務規律違反が主張されたが、天使の羽を付けて応援する教師がいる等仮装をして激励することが許容される校風があり、学校における品位を汚し、服務規律に違反するものとまで認められないとされた事案(京都地判平成25年5月10日)もあるので、メイド服姿をブログで披露された某刑法学者の先生にとっては朗報であろう。


判例8 信教の自由vs公序良俗判例

秘仏の写真も人の性欲を刺激興奮せしめ通常人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反する以上猥褻物とした事案(東京高判昭和29年11月12日高刑集7巻12号1709頁)。 #エアリプ

 エロ漫画教を作れば信教の自由で対抗できるとか、児童ポルノの単純所持が規制されるなら児童ポルノを本尊にすればよいという人は、この先例を乗り越えないといけませんね。



判例9 おっぱい判例

「おっぱい」を「授乳」に改めるとした事案(札幌高決平成17年6月3日家月58巻4号84頁)

 原審を引用した上で、そのうち誤記等があれば改めるのが上訴審のスタイルですが、札幌高裁は「おっぱい」に反応した訳です。
 この事案は、子の監護者の指定に関する争いで、原審が「おっぱい、食事の世話、おむつ替えその他、ほとんどの世話を申立人がしてきた」等の事実を認定した事案です。



判例10 お年玉判例

幼少だった子ども(0〜2歳程度)に送られた祝い金やお年玉の受贈者は子ども自身ではなく、両親であるとも考えられるとした事案(東京地判平成24年12月7日)

 「お年玉はお母さんが預かっておくわね」というのが適法かについては、横領罪説等色々な主張がされていますが、そもそも社会的儀礼を合理的に解釈すると、(形式的に手渡されたのが子どもであっても)実質的には両親に贈られた可能性があるという可能性を示唆するこの判決は、新たなパラダイムを引き起こす可能性があるもので、注目です。




下ネタ判決10選


 男女関係や、強姦・強制わいせつ等の判例をまとめました。


判例1 オレオレ詐欺的強姦事件

深夜無差別に電話をかけて、「俺だけど」と言って、応答した女性が被告人を何人と誤解するかに応じて間違えられたその本人になりすまして女性を姦淫したとの事案につき、強姦罪の成立を認めた事案(名古屋地岡崎支判平成9年11月17日)

 オレオレ詐欺の技術をこちら方面に発展させた事案が現実にあります。電話口でお金を要求しない場合でも警戒してあたりましょう。


判例2 AV出演歴の告知義務?

婚姻時に、過去のアダルトビデオ出演歴を告知しなかった事実自体は不法行為とは認められないが、婚姻後に男優との性行為を内容とするビデオに出演することは貞操保持義務違反であるとした事案(東京地判平成24年1月25日)

 一度婚姻した後婚姻が取消された事案で結納金の返還を求めたという事案であるが、結婚の際にAV出演歴の告知義務はないという判示は興味深い。但し、「過去のアダルトビデオ出演歴は,その事実が将来に向かって婚姻関係を継続しがたい重大な事由に当たり,離婚事由となり得る場合がある」ともしており、留意が必要であろう。


判例3 男子の貞操喪失に対する賠償?

婚約後双方が童貞処女を喪失し、その後婚約が破棄された場合、慰謝料を請求し得るのは女子のみであつて、男子はこれを請求し得ない。それは女子の貞操の喪失、即ち其の純潔の喪失に対する社会的評価は男子と異なるからであるとした事案(東京地判昭和26年2月9日判タ12号71頁)。

 ある意味男女不平等な約65年前の事案だが、今もこの判示が生きているのでしょうか?


判例4 アダルトビデオ鑑賞は趣味の範囲 

夜中にアダルトビデオを見る等の夫の性的趣味に対する嫌悪感等から離婚に至ったものの、その「性的な趣味については個人の嗜好の範囲内に止まると解することも可能」等として慰謝料請求を否定した事案(東京地判平成15年6月10日)

 この事案では、原告(妻)が不倫をした一方、被告(夫)も露天風呂でのぞきをする等の経緯があり、「原告と被告の婚姻関係が破綻したのは,双方の物の考え方,価値観等に由来する部分が大きいといえ,被告のみの責めに帰すべき事由に基づくものとまではいうことができない」とされている。その一連の判断の中で、被告(夫)のアダルトビデオ趣味についてこのような判断がされている。なお、有名芸能人がテレビ番組等で公開していたAVマニアとの性的趣向と同一性を有する記事の大半につきプライバシー侵害を否定したが、ビデオ店の防犯カメラ映像の公表は、肖像権侵害と同時に,その人格的利益を侵害したといえるとした事案(東京地判平成18年3月31日判タ1209号60頁)も参照。


判例5 裏ビデオ公序良俗

芸能人のマネジメントを行う会社の、所属女優のノーカット版映像を配信する利益は「適法な利益として保護を受けることはできない」とされた事案(東京地判平成19年8月31日)

 原告が、「原告所属女優の映像を一定の目的のために撮影するが、その映像は勝手に配信してはいけない」という約束に反して被告が海外配信をしたとして損害賠償を請求したが、裁判所は「原告が主張するノーカット版とは,モザイク処理などによる修正をしないわいせつな映像であり,日本国内においては,不特定又は多数人に販売することは禁止されており,そのような作品の頒布を目的として,ある業者が他の特定の業者に販売することも,民法上,公序良俗に違反すると解される。」等として原告の請求を棄却した。関連判例として、わいせつ物には未だ該当しない程度のSM写真につき、本件写真の内容に照らすと、未だそに著作物性が否定される程までは公序良俗に反するものとはいえないとした事案(SM写真集事件・東京地判昭和61年月20日判タ637号209頁) 参照。


判例6 2000万円以上つぎ込んだのに

出会い系サイトで「セレブな処女姫♪19歳C☆」等とやりとりをしたたが、すべてさくらで会う事ができなかった事案につき、サイト利用料及び弁護士費用を不法行為による損害賠償として認めた事案(東京高判平成25年6月19日判時2206号83頁)

 原告は2000万円以上(2031万3000円)つぎ込んでいるが、例えばそのセレブな処女姫は「祖父が裕福なため,話し相手になったり,会ってくれればお礼に数千万をあげる」というような話であり、よく過失相殺されなかったなぁと。。。
 なお、代理人の弁護士自身が実際に登録して試しているところが興味深い*5


判例7 おっとい嫁じょ

婚姻を申し込んだが断られたため、相手に暴行を加えて強姦したところ、弁護人が、この地方には婚姻に同意しない婦女を承諾させるためその婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」と呼ばれる慣習があり、被告人はこの慣習に従って本件行為に出たもので、違法性の認識を欠き故意がないと主張した事案(鹿児島地判昭和34年6月19日判時190号21頁)

 裁判所は「被告人の当公廷における供述同じく検察官に対する供述調書によれば、被告人が右の如き慣習が反社会性を帯びるものであることの認識を有していたことが明らか」として被告人を有罪としたが、こういういわば「略奪婚」の慣習が存在すること自体は前提となっていると思われる。
これ何てエロゲ? な判例〜オタク判例百選第1事件 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。


判例8 英語の勉強法?

英語教師である被告人が、英語レッスンに来た女子高生に、TOEFLの好成績を得るには下着を脱いで着替えることが必要と言葉巧みに説きわいせつ行為に及んだとして準強制わいせつ罪とした事案(東京高判平成15年9月29日東高判決時報54巻1〜12号67頁)

 食い物にされた女子高生は大変かわいそうですが、英語教師の発言が本当か嘘か、TOEFLの成績が上がらなくて悩んでいる方は試してみては?


判例9 盗撮ビデオ

入浴中にその裸体を盗撮され、その映像をビデオに録画されるに至ったところ、盗撮ビデオとされるものの中にも、実際にはいわゆる「やらせ」によるものがあり、自ら進んで裸体をさらしているのではないかという印象を与えかねず名誉毀損罪も成立するとした事案(東京地判平成14年3月14日)

 盗撮された被害者は、そのプライバシーが侵害されただけではなく、視聴者から「やらせの盗撮モノに出演しているのでは」と思われるので、名誉も毀損されるという判決です。裁判官、盗撮モノの実務に詳しいですね。なお、露天風呂はその構造からして、犯罪としての盗撮が行われやすい場所であることは経験則上明らかであるとした東京地判平成16年7月14日も参照。


判例10 近親婚

近親婚(叔父姪間)の事実を隠ぺいして婚姻するため、同様の事情をもつ女とその氏名を交換的に用いて婚姻届をした事案で、夫の死後の戸籍訂正請求が否定され、婚姻無効等の方法を取るべきとされた事案(名古屋高金沢支決昭和60年12月5日家月38巻4号101頁)

 近親婚はそもそも普通にしていれば婚姻届が受理されない訳ですが、こういう方法もあるんだなぁと、なかなか興味深い事案です。



名言判例


 裁判官や当事者の「名言」(or迷言)が含まれている判例を紹介します。


判例1 死刑合憲判決

一人の生命は、全地球より重い(最判昭和23年3月12日刑集2巻3号191頁)

死刑が合憲かどうか争いとなり、「一人の生命は、全地球より重い」ものの、死刑そのものは合憲とした事案。なお、「国家の文化が高度に発達して正義と秩序を基調とする平和的社会が実現し、公共の福祉のために死刑の威嚇による犯罪の防止を必要と感じない時代に達したならば、死刑もまた残虐な刑罰として国民感情により否定されるにちがいない。」という裁判官島保、藤田八郎、岩松三郎、河村又介の意見が付されている*6



判例2 教授ご乱心事件

法学の授業中の「こんな三流大学に入って,この先の人生は終わったようなものだ。」「一生懸命勉強してこの大学に入学した学生は,なおさら人間のカスである。」等との発言を認定した上で、教授の解雇を有効とした事案(東京地判平成25年2月14日)

 教授の発言として認定されたものとしては、
「Y大学に入学をするなんて,馬鹿な学生だ。」
「三流のY大学に入っても就職先はない。あったとしても,ろくな企業ではない。」
「a大学の学生とは比較にもならない。」
「こんな三流大学に入学したものは,人間のカスだ。」
「一生懸命勉強してこの大学に入学した学生は,なおさら人間のカスである。」
「こんな三流大学に入って,この先の人生は終わったようなものだ。」

 といったものがあり、これに憤慨した半数以上の学生が授業中に退席したと認定されている。


判例3 奴隷?

専任講師が別の教師に「今日から私は先生の奴隷になります。ポチと呼んで下さい。」と言ったが、冗談であり解雇理由にならないとされた事案(青森地弘前支判平成16年3月18日)

 最近でも、某大学非常勤講師と学生の間の事案が報道されていますね*7


判例4 自由競争?

「恋愛の自由市場における競争の結果に過ぎない」とうそぶき訴訟提起後も不貞を継続する不貞相手に対する慰謝料請求において、離婚へ向けて助言し、子を妊娠させ、マイホーム建築を頓挫させ、調査費用を支出させた事等として400万円の慰謝料を認めた事案(東京地判平成22年10月7日)

 そもそも、先に結婚されてしまった段階で、「恋愛の自由市場」で敗北したのではないかという疑問が。


判例5 司会者は免責

平均視聴率11.2%の番組でゴミ収集車の運転手の承諾なしにその容貌を生放送したことにつき、テレビ制作会社、放送会社に不法行為責任を認めたが、「映っちゃってるよ、もう十分」と発言した司会のキャスターの責任は否定された事案(東京地判平成21年4月14日判タ1305号183頁)

 有名司会者が誰か分かっても、あえて触れないようにしましょう。


判例6 中二病

好訴妄想を主症状とする精神病患者が、法の力によって入院先からの解放を図るほかないとして六法全書を購入して研究し、人身保護請求をなした事案で、患者の即時釈放を命じた事案(釧路地網走支判昭和45年8月18日民集25巻3号447頁)

 事案としては中二病っぽくて格好いいのですが、最判昭和46年5月25日同435頁で破棄されています。
 他に中二病っぽい事案として、伝説の鏡が出て来た、「八咫の鏡所有権確認等請求事件」(岡山地津山支判昭和40年1月19日判時400号8頁)も参照。

判例7 裁判官の愚痴事件

裁判官の「あなたの審理が終わらないので、私は上司から怒られているんだ。いつまで裁判をやっているんだ。私の左遷の話まで出ている。私の将来に影響するかもしれない。」との発言が違法とされた事案(長野地飯田支判平成26年1月30日訟月61巻1号51頁)

 裁判官が何を気にしているのかよく分かる判決です。ただ、東京高判平成26年5月29日訟月61巻1号39頁で取り消され、賠償が必要ないとされています。


判例8 ラブホに入ったら終わり

不貞行為に対する請求に対する「ラブホテルに行ったがマッサージしかしていない」との抗弁が否定され、十数年に渡る婚姻が破壊され、心療内科に通院するような精神的苦痛を受けたことや養育すべき長女の存在等に鑑み、400万円の慰謝料を認めた事案(東京地判平成21年3月11日)

 トランプの抗弁ともいわれる有名な抗弁ですが、不貞の有無においては、ラブホテルに入ったら相当まずいようです。


判例9 裁判所も認める林原めぐみ御大

林原めぐみ御大が東京高等裁判所「声優として著名」と認定された事案(2ちゃんねる小学館事件・東京高判平成17年3月3日判タ1181号158頁)

 林原めぐみ閣下は、刑事弁護専門雑誌で少年法改正についても意見を述べています。
アナログ調査の効用ー刑事弁護専門書に声優インタビュー掲載 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


判例10 援助交際

推薦入試の面接で、受験生である女子高生に対し「まさか援助交際はしていないだろうな」との発言したこと等を理由に短大教師が解雇された事案(東京地決平成15年3月25日)

 これだけを取り出すと、解雇もしょうがないかとも思いますが、その発言は解雇の4年前の事情であり、解雇までの間何ら問題とされてこなかった等として解雇を無効としたところがポイントです。



言い訳判例百選


通った言い訳、通らない言い訳、色々あります。


判例1 精液を20リットル飲んだ?

尿から覚せい剤反応が出た原因は、覚せい剤常用者の精液を飲んだことによるという弁解に対し、尿から覚せい剤反応を検出するのには20リットルの精液が必要と認定してその弁解を排斥して有罪とした事案(東京高判平成11年12月24日速報集平成11年116頁)

世界の99.99%の人が無視する、マニアックな判例紹介サイト「ム4ネタ」(http://d.hatena.ne.jp/mu4neta/)の中ではてなブックマークの件数最多の「人気判例です。
「警視庁科学捜査研究所薬物研究員の丙の原審証言によると,尿から覚せい剤反応を検出するのには20リットルの精液が必要であって,現実には精液を飲んだことが原因で尿から覚せい剤反応が出ることはあり得ないというのであって,この説明に疑問とすべき点はないと認められるのであるから,以上の事情に照らすと,被告人の右供述を信用することはできないというべきである。」と判示されています。


判例2 コンドーム

口腔内に隠匿所持していたコンドーム表面に覚せい剤が付着し、その覚せい剤が経口摂取されていた可能性を一概に否定できない等として覚せい剤自己使用については無罪を言い渡した事案(金沢地判平成22年7月13日)

 そもそもなんでこの被告人がコンドームを携行したのかについては「警察官から覚せい剤の検査のため尿の任意提出を求められたり,強制採尿の執行を受ける場合にそなえて,コンドーム内に茶を入れたものを携行していた」と供述しています。
 なお、建設会社の残土置場から鉄板2枚を窃取した窃盗では有罪。


判例3 キムチ

キムチを摂取した場合に顕出されたとして報告されている覚せい剤は尿一〇〇グラム中に1マイクログラム未満に過ぎないのだから、被告人の尿から検出された覚せい剤は、キムチ摂取によるものではないとした事案(東京高判昭和59年10月9日東京高裁判決時報刑事35巻10〜12号81頁)

 とある法医学の教授が、「キムチを食べると覚せい剤が出る」と報告したことから、一時期「キムチを食べた」という弁解が大ブームに。裁判所がこの弁解を排斥したので、また落ち着きました。


判例4 奈良漬け

呼気からアルコールが検知されたのは手の甲くらいの大きさの量の『奈良漬け』を食べたからである」というの弁解が排斥された事案(甲府地裁平成21年3月13日)

「アルコールが運転に与える影響の調査研究」によれば50グラム食べても呼気からアルコールは検知されなかったとのこと。


判例5 鉄道ファン

スリ未遂が疑われる被告人の乗車履歴は確かに不自然だが、被告人が鉄道ファンであることを考慮するとあり得るとして無罪を言い渡した事案(東京地判平成24年4月19日)

 防犯カメラ等も無罪の理由となったが、「確かに,本件犯行の際,被告人は電車に乗って駅間を往復する行為を行っており,これが通常の利用形態と異なっていることは検察官指摘のとおりであるが,被告人が鉄道ファンとして日頃からひんぱんに電車を利用していることは他の証拠とも整合する上,本件当日の行動として被告人が供述する内容も明らかに不自然不合理と断じることはできない。また,被告人が,本件当日の行動や目的について逮捕当初供述しておらず,一部の内容に変遷があるとしても,そのことから,直ちにスリを目的とした電車の利用であると推認することにも飛躍がある。」として、鉄道ファンであることが無罪の理由の1つとされている。
オタクと刑法の話〜3つの事例から紐解くオタクと刑法の意外な関係 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。


判例6 エヴァンゲリオン

「友人とエヴァンゲリオンのビデオを見ていた」とするアリバイ主張が排斥できないとして無罪を言い渡した事案(東京地裁八王子支部平成12年4月13日判タ1053号284頁

この事案については
オタクと刑法の話その2〜裁判例から探るオタクと刑法の意外な関係 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。


判例7 ガンダムオタク

「被告人の趣味はガンダム(ロボット)などのアニメであることが明らか」として盗撮で起訴された被告人を無罪とした事案(東京高判平成22年1月26日)

「被告人は,幼稚でアニメキャラクターにのめりこみ,およそ女性への関心が薄いことが認められ,被告人が1週間に3,4回恒常的にエロビデオを見るような生活をしているということはあり得ないというのである。さらに,被告人がレンタルビデオ店において,アニメ等のDVDを借りていることはうかがえるものの,アダルトビデオ関係のDVD等を借りている状況は全くうかがえず,被告人の趣味はガンダム(ロボット)などのアニメであることが明らかである。」とされている。なんか、こんな判断が「判決書」として公開されるとすると、無罪もあまり喜べない気がしますが。。。


判例8 スカートかショートパンツか

強制わいせつ罪で起訴された被告人が「スカートをめくろうとしたら、スカートだと思っていたものはショートパンツだったのでその上から触った」等と否認し、犯人性に疑問ありとして無罪とされた事案(長崎地判平成23年9月2日)

多数の通り魔系強制わいせつを行っていた被告人が、確かに主張される日時頃にその場所で強制わいせつをしたが、被害者がキュロットスカートを履いていたというのであれば、自分が強制わいせつをした相手とは別人であり自分は犯人ではないと主張し、その主張が認められた事案。警察が「ついでに当地で発生した未解決強制わいせつ事件を全部こいつに押し付けよう!」と思って行動した疑いが。


判例9 ポッキーゲーム

ナンパし車に連込だ女性に対する強制猥褻事件で「ポッキーゲームをしようという冗談に笑ったので、接吻、胸部接触、口淫を持ちかけたらこれに応じた」との被告人主張のとおり、被害者がその強引さに押切られ任意に応じた可能性ありとし無罪とした事案(奈良地判平成21年4月30日)

ポッキーゲームからリア充はこういう発展をする可能性があることが前提になっているのだろうなぁと複雑な気持ちで読みました。


判例10 リア充だから無罪

地裁所長に対する強盗致傷事件の共犯とされる少年が、彼女にバレンタインとしてチョコクッキーをもらったアリバイを主張し、彼女の証言は大筋電子メールとも符合しているとしてその証言に信用性を認め被告人に無罪を言い渡した事案(大阪地判平成18年3月20日判タ1220号265頁)

リア充にはこうやってアリバイができて無罪になるという事が分かる判決です。



そこまでするか判例10選


 人は思い詰めるとそこまでするのかということを思わせる判例です。


判例1 組合対策は組長に依頼

学校法人の組合対策部長が、元暴力団組長に労働組合幹部の殺害を依頼したところ、元暴力団組長が誤って一般市民を銃撃し傷害を負わせた事案につき、学校法人の責任を認めた事案(福島地郡山支判平成16年10月12日判タ1211号188頁)

組合との対立が激しいと、なんとかしたいと思う使用者側の気持ちは分かります。だからといって、組長に組合幹部を殺してと頼むとは。。。


判例2 大学教授に漢検の勉強を命じる

ブログで大学を批判した組合副委員長である教授に対し、漢字検定準一級と日本語検定1級模擬試験に取り組めという業務命令を行い最終的に解雇した事案(名古屋地判平成26年9月18日)

幸いにも解雇は無効となっていますが、大学当局は恐ろしいなぁと。


判例3 不毛な争い

かつら製造や増毛、植毛を行う会社同士が訴訟後和解をし、一方が特定のかつらを製造販売せず、販売した場合には違約金を支払う旨約したところ、他方が客を装って当該かつらの製造を委託したことは、民法一三〇条の類推適用により、条件未成就とみなされるとした事案(最判平成6年5月31日民集48巻4号1029頁)

 違約金を請求するために、あえて客を装ってかつらの製造を委託するという不当な行為をしている以上、裁判所がそのような当事者を助けないのもある意味当然でしょう。



判例4 迷惑施設対策の奥の手?

個室付浴場業の開業を阻止することを主目的として、その附近に児童遊園を設置することを許可したことが、行政権の著しい濫用によるものとして国家賠償法1条1項にいう公権力の違法な行使にあたるとされた事例(余目町個室付浴場業事件・最判昭和53年5月26日民集32巻3号689頁)

児童遊園があると風俗を害する施設は立てられないのですが、開業阻止のためあえて児童遊園を作ってはいけないということですね。



判例5 生き埋め

担任教師らが体罰として、生徒を砂浜に首まで生き埋めにしたことについてこれを違法として国家賠償責任を認めた事案(福岡地判平成8年3月19日判時1605号97頁)

確かに生徒の方も、恐喝をする不良だったようで、いわば「愛の鞭」としてされた体罰だと主張されたのですが、


「とりわけ原告に与える屈辱感等の精神的苦痛は相当なものがあった」


とされており、違法とされています。



判例6 何度でも繰り返す

放電焼結装置の発明に関して被告と紛争が生じた原告が、敗訴しても何度でも何度でも訴訟を繰り返し、最近では不当な訴訟提起として逆に損害賠償が認められている事案(東京地判平成22年2月12日)

 「放電焼結装置」で判例データベースを検索すると原告の「執念」が分かります。



判例7 裁判所には従いません

被告八王子市の訴訟代理人らは、本件仮の義務付け事件における審尋期日で裁判所の仮の義務付け決定に従う意思はない旨明言し、その後本件仮の義務付け決定は確定したにもかかわらず、これに従った措置をしていないことは当裁判所に顕著である(東京地判平成25年2月26日)

八王子市が判決(仮処分命令)に従わなかったことが認められた事案。司法制度の存在意義が問われます。そういえば、議員定数違憲とかも。。。あれ? こんな夜遅くに誰かが来たようだ。。。



判例8 依頼者は誰?

共犯の一人が捕まったので、シャバにいる共犯が、弁護士に捕まった共犯の弁護人になるよう依頼し、弁護士が真の依頼者に捜査の手が及ばないよう、黙秘を指示し、自白したいという被疑者を脅迫したとして有罪とされた事案(宮崎地判平成21年4月28日)

 弁護士のアドバイスも時には信じていけないことが。。。


判例9 選挙に勝つためなら

新潟県岩船郡粟島浦村長が、自らが立候補する村長選で、戸籍抄本が添付されなければ立候補が受け付けられないのを利用して、対立候補の戸籍抄本発行をしないよう強く命じ、結果的に無投票当選を果たしたことにつき、選挙無効とされた事案(最判平成14年7月30日民集56巻6号1362頁)

 確か村長が戸籍抄本発行の最終責任者ですが、その権限を濫用してでも選挙に勝とうという執念はおそろしい。



判例10 究極のSMプレイ

風俗店勤務の被告人が、被虐趣味を有する被害者の依頼で殴打プレイをしていたところ、下腹部をナイフで刺すよう依頼され、究極のSMプレイとして被害者に対しナイフ刺突行為を行ったところ被害者が死亡した事案を嘱託殺人罪とした事案(大阪高判平成10年7月16日判タ1006号282頁)

 重度のアニオタですので、他人の趣味には何も言えない立場ですが、ここまで来ると流石に司法が介入するということで。



特徴的名称の判例10選


 判例には興味深い名前がついていることがあります。そんな判例を10個ご紹介。



判例1 ときめきメモリアル事件

メモリーカードを使用することで、パラメータをあり得ない数字とし、美少女ゲームのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されることは同一性保持権の侵害とした事案(最判平成13年2月13日民集55巻1号87頁)


こういうのを真面目に勉強できるので、新司の選択科目は知財がオススメです。



判例2 ロックマン事件

硬度の高い土質に適したロックマン工事に必要な機械の大部分を販売している者が機械販売を拒絶することが「単独の取引拒絶等」に該当するとした事案(勧告審決平成12年10月31日審決集47巻317頁)

ゲーム?と思ったら独占禁止法の事案。



判例3 光清撃つぞ事件

被害少年に対し「光清撃つぞ」といいつつ銃を発砲し、被害少年を失明された事案で、12歳2ヶ月に満たない加害少年が法律上の責任を弁識するに足る知能を有さないとして責任能力を否定したもの(大判大正6年4月30日民録23輯715頁)

光清君は被害者。加害者は秀麿君。当時は未成年者でも名前が事件名に採用されていた。類例に少年店員豊太郎事件(大判大正4年5月12日民録21輯692頁)。


判例4 残念事件

被害者が「残念残念」と叫びながら死亡したことは、慰謝料を請求する意思表示であるとして、慰謝料請求権を相続人に承継させた事件(大判昭和2年5月30日新聞2702号5頁)

そもそも元の判例は死者が慰謝料を請求する意思を表示していない限り、慰謝料請求権を相続できないとしていたので、かわいそうな相続人のために裁判所が色々と工夫をしていた。その後、「悔しい」ならオッケー、「助けて」ならダメといったカオスな判例が続出し、最終的には、最判昭和42年11月1日民集21巻9号2249頁でそもそも慰謝料を請求する意思を表示する必要はないとした。



判例5 踏んだり蹴ったり判決

離婚原因を作った夫(有責配偶者)の方から離婚を請求できるとすれば、妻は踏んだり蹴ったりであり、法は勝手気儘を許さないとして離婚を否定した(最判昭和27年2月29日民集6巻2号110頁)

その後最判昭和62年9月2日民集41巻6号1432頁で判例変更され、一定の要件の下、有責配偶者も離婚を請求できるようになりました。


判例6 そんなあほな事件

被告人の家から覚せい剤が見つかり、被告人が「そんなあほな」と言ったので警察官が被告人に暴力を振るった事案(最判平成8年10月29日民集9号683頁)

被告人は、覚せい剤を証拠として使ってはならないと主張したが、証拠収集後の違法行為なので覚せい剤は証拠として使えると判断した。暴力をふるわれた上に有罪になるとは、本当に「そんなあほな」という事件



判例7 やっぱりブスが好き事件

編集者が漫画家の絵柄、セリフ等を改変することは同一性保持権を侵害するが、判示の事情の下ではやむなく行ったと言え、そのような事情の下では漫画家の請求は権利濫用とした(東京地判平成8年2月23日知裁28巻1号54頁)

 編集者による改変としては懸賞論文を出版する際に送り仮名の付け方の変更等をしたことを違法とした事案がある(東京高判平成3年12月19日判時判例時報1422号123頁)。



判例8 50年訴訟

昭和7年に原告の仙台が訴訟を提起し、12年に原告が引き継いだ後、戦争への従事もあって約50年も訴訟が中断していたところ、長年被告を不安定な立場に置くことは許されない等として訴えを却下した原判決を是認した事案(最判昭和63年4月14日判タ683号62頁)。

 この訴訟を超えると目されているのが光華寮事件(最判平成19年3月27日民集61巻2号711頁)。昭和42年の提訴後約40年が経過しているが、後10年や20年で終わるとは思えない事案。


判例9 オデコ大陸棚事件

日本の大陸棚での掘削作業の対価への課税可否が争われ、大陸棚にも主権を行使できるので課税可能とされた事案(東京高判昭和59年3月14日行集30巻8号1472頁)

オデコはOcean Drilling and Exploration Companyの略であって顔の一部ではない。


判例10 ポルノランドディズニー事件

いわゆるアダルトショップが、「ポルノランドディズニー」等の名称およびミッキーマウス等の図柄を利用したことが、周知なディズニーの名称およびキャラクターの図柄と同一ないし類似するとして、不正競争防止法違反を認めた事案(東京地判昭和59年1月18日判タ515号210頁)

 関連判例として、ディズニーのキャラクターには、「中の人」がいることを当事者の主張摘示欄に明記してしまった東京地裁平成21年4月7日判タ1311号173頁とかもあります。



これは何のアニメですか判例10選


 アニメや漫画っぽい事件が実際に発生しています。



判例1 リアル笹の葉ラプソディ

ある中学校の卒業生が、中学校の校庭に机で「9」の字を描くため、同校に侵入した上、計画を実行するのに障害となる警備員を逮捕監禁し、机による文字を描いた事案。(「9」の字事件・東京地判昭和63年7月7日)

判決を7月7日に下すなんて、なんて粋なのでしょう。


判例2 30分間待ってやる

「着替えをするまで待ってほしい。」と言うので、約三〇分間、玄関前で待機する等の配慮をしたこと等から任意同行等が適法として、被疑者の国家賠償請求が棄却された事案(京都地判平成22年3月24日判時2078号77頁)

もし、待っている時間が3分間だったらどうなるのでしょうか。40秒で支度できるなら3分でも適法な気が。


判例3 どこの逆転裁判

判決に対し異議が述べられたため、裁判官が判決を撤回し、当初のものとは異なる判決を下した事案(横浜地判昭和50年4月16日刑集30巻10号1898頁)

 裁判官が執行猶予付判決を宣告した後、書記官が執行猶予にできないと勘違いして異議を述べたため、実刑判決を再度下したが、実は執行猶予にできたという事案である。最高裁は手続自体は適法とした上で*8量刑が重いとして執行猶予の温情判決を下した(最判昭51年11月4日刑集30巻10号1887頁)。



判例4 男?女?

日本人男性がフィリピンパブで知り合ったフィリピン人「女性」と結婚したところ、後で相手が男性だと判明したことから「同性婚は、男女間における婚姻的共同生活に入る意思、すなわち婚姻意思を欠く無効なもの」として戸籍の訂正を認めた事案(佐賀家審平成11年1月7日家裁月報51巻6号71頁)

 なんと同性婚が一度(誤って)受理された事案が。


 なお、いわゆる男の娘事件として、登校中の被害男児(当時13歳)を女子児童と誤認し、納屋に誘い込み胸付近を手でなで回し、同人の体操用長ズボン等を脱がせて陰部を露出させるなどした等として強制わいせつ罪で有罪とされた事案(神戸地判平成17年11月25日)参照。



判例5 みさくらなんこつ判決

『ラ』の音は、発音の際舌のさきではじくのと同時に起る破裂の度合によつて『ダ』と聞き違いやすい

(中略)

語頭に『ラ』の音がくると特に正確に発音しにくく『ラ』を『ダ』と発音してしまう(東京高判昭和49年9月12日判例工業所有権法)

裁判所も「らめぇ」と「だめ」の互換性を認めている



判例6 どこかで聞いた事が?

戸籍上「父を同じくする兄妹」として記載されている二人が事実上夫婦関係を営むところ当該戸籍記載の理由が父とされる者による事実と異なる認知行為によることが明白な場合には、認知行為は無効として戸籍法113条による戸籍訂正が許される(熊本家玉名支審昭和41年9月22日判時480号52頁)

 光る海に〜かすむ船は〜


判例7 どこかで聞いた事が? その2

審判の「蛇足」の中で戦時中、 多くの市民が戦争の犠牲になり、特に父親の死亡による戸籍届け出の困難があったことを力説した事案(名古屋家審昭和47年3月1日判例時報679号52頁)

昭和47年になってはじめて戸籍が出来る女児の戸籍作成を認めた事案。
コクリコ坂の時代背景を教えてくれる「蛇足」審判〜「判例史学」という新たな地平 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照。


判例8 ハーレムは違法!

性的交渉を前提とした男一人女二人による同棲生活を維持するための費用負担に関する合意は善良な風俗に反し無効である(東京高判平成12年11月30日判タ1107号232頁)

裁判所も認める通り、ハーレムは無効です! リア充は爆発すべきです!


判例9 ストックホルムなんとか?

パイロットを装い客室乗務員にならないか等の甘言で「カフェー」の女給をわいせつ目的で誘拐したが公訴提起後結婚したことで有罪判決を回避した事案(名古屋高金沢支判昭和32年3月12日判タ71号69頁)

 刑法229条により、誘拐した相手と結婚した場合、婚姻の無効又は取消しの裁判が確定するまで起訴条件を満たさず、起訴されても有罪にはできない


判例10 霊感療法なら準強姦も無罪

あなたは病気にかかっており、霊感のある自分にしか治せない等と言ってわいせつ行為に及んだ自称霊媒師が準強姦で起訴されたが、無罪とされた事案(東京地判昭和58年3月1日判時1096号145頁)

 性行為自体については承諾があったところ、その過程で暴行・脅迫と同程度に相手方の自由意思を無視したものと認めざるを得ないような事情がなかったので無罪ということのようである。



今昔判例10選


昔の常識は今の常識とは違うということがわかる判例です。


判例1 寿退社?

ところで一般に女子は結婚と前後して退職し、主婦として家事労働に従事するのが経験則上今なお通常と認めるのを相当とする(大阪地判昭和44年4月28日交民集2巻2号611頁、大阪地判昭和43年3月12日判時522号54頁)

 こういう時代もありましたが、隔世の感ですね。


判例2 特撮悪玉論?

仮面ライダーは、その形態が極めて低級俗悪で、年端も行かない幼児、学童にとつては甚だ非教育的でさえあり、良俗にも反するため、著作権はもとより意匠権、商標権等による保護も到底受けられない性質のものであるとの主張が排斥された事案(東京地判昭和51年4月28日無体集8巻1号144頁)

 仮面ライダーの模造玩具を作成しておきながら、仮面ライダーのことを公序良俗違反とまでのたまう被告の盗人猛々しさが光る事案だが、当時のアニメ悪玉論等の影響があったかもしれない。なお、仮面ライダーを「改造人間であるとされ、平時は人間の姿でいるが、いつたん有事の場合には、上半身が特にある種の昆虫を連想させるような姿に変身し、超人的能力を発揮しつつ縦横無尽に活躍する」と定義している。


判例3 クールビズで解雇?

「わが国の夏季のように高温と湿気に悩まされるところで、冷房装置なくしてネクタイの着用を強制することは無理なことである」(ノーネクタイ教諭解雇事件・東京地決昭和46年7月19日判タ266号210頁)

クールビズを40年前に励行したら解雇されたという恐ろしい事件ですが、裁判所は上記のように述べて教諭を救いました。



判例4 朝日新聞ナンバーワン時代

朝日新聞毎日新聞・読売新聞とを比較すれば、朝日新聞の方が発行部数が多いことは公知の事実である」(東京地判昭和43年11月25日判タ232号191頁)

 その後読売新聞が頑張ったということでしょう。



判例5 非モテも結婚できていた時代

(当時健康な28歳の独身男性であった被害者は)将来世帯主となることが推認される(大阪高判昭和46年5月27日下民集22巻5・6号656頁)

 お見合い等は批判もありますが、昔はそういう事を通じて非モテでも誰でも結婚できていたんですよね。。。(まあ、「俺の嫁」は暁美ほむらちゃんなので関係ない訳ですが。)


判例6 強姦犯を擁護した裁判官

実の娘である被告人を強姦した父親を殺したとして尊属殺人罪で起訴された被告人を有罪とするにあたって、裁判官が「被告人とお父さんの関係は、いわば「本卦がえり」である。大昔ならばあたりまえのことだった。ところで、被告人はお父さんの青春を考えたことがあるか。男が三十歳から四十歳にかけての働き盛になにもかも投げ打って被告人と一緒に暮した男の貴重な時間をだ。」と述べた事案(東京高判昭和45年5月12日判タ255号235頁)*9

 このような旧時代の遺物(子どもは親の物的な考え)は最判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁で否定され、尊属殺人罪が違憲無効となったことはよく知られています。


判例7 純潔

いかに男女間の交際関係が自由になつたとしてもその最後の一線である性的交渉そのものは、あくまで純潔を保つことを理想としなければならないと判示した事案(大阪高判昭和25年6月20日判時13号53頁)

 戦前と比べて交際が自由になっている事を認めながらも、純潔論を論じている65年前の判決です。


判例8 風俗

温泉地の享楽的雰囲気の中に、トルコ風呂等の形式による性的享楽を期待する気分のあることは否定できない(名古屋高金沢支判昭和41年2月22日下刑集8巻2号245頁)

 そもそも「トルコ」という言葉自体が死語ですね。なお、昭和50年10月末ころの状況として「全国のトルコ風呂営業のうち約一割以上に暴力団が関与しているうえ、女性従業員の多くには暴力団員の情夫がいる。」との事実を認定した新潟地判昭和58年12月26日判時1129号110頁も参照。


判例9 携帯二台持ちはダメ?

経験則上、個人の携帯電話の使用台数は、多くの場合一台であり、一個人が複数台所持・使用することは比較的少ないと考えられる(名古屋地判平成18年10月12日税資256号10526順号)

 平成18年なので、個人が携帯を持っていることそのものは当たり前になったものの、まだ二台持ちは少ないとされています。


判例10 今も残る村八分

集落構成員らの構成員らに対するごみ収集箱や集落内の施設の使用を禁止する行為,村の広報紙等を配布しない行為等について,人格権を侵害するものとして差止め及び慰謝料請求が認容された事案(村八分事件・新潟地新発田支判平成19年2月27日判タ1247号248頁)

村八分と聞くと過去の遺物のようですが、注目して欲しいのは判決年月日です。なんと、平成19年になってもまだこんなことをしていたのですね。。。

まとめ
 筆者は判例検索が好きである。判例を読むのは最高に面白いと思っている。
 しかし、判決は無味乾燥な悪文だと考え、判例を読むのを苦行だと思っている人も少なくないだろう。
 判例検索の面白さを示すため、私が知っている判例のうち、面白いものを100個選んで紹介してみた。興味のあるものがあれば、ぜひ自ら検索して、「面白判例検索」の世界へ足を踏み入れて欲しい。


追記:5月10日、特にサイ太(@uwaaaa)先生のコメントを参考に、修正を行いました。

*1:加藤新太郎「職業としての法律家」早稲田法学71巻4号141頁

*2:基本法の基本書とは言っていない

*3:サイ太先生に平成→昭和の修正をご指摘頂きました。ありがとうございました。

*4:完全に原告の勘違いなのかというと、被告側にも落ち度はあるようで、「被告の言動を原告に対する求婚であると受け止め,被告との婚姻を考えるようになった一方,被告には原告との婚姻意思はなかったものと認められる。そして,上記認定以外に婚姻に関して原告被告間における具体的な話し合いがされていたとは認められないことからすれば,被告がした結婚したいとか原告となら結婚してもよいとの趣旨の発言は,独身の被告が独身の原告に対して行ったもので,原告の心を惑乱させる不適切なものではあったが,これをもって直ちに被告の原告に対する婚姻申込みであるとまではいえない。したがって,原告の主張する本件結婚詐欺行為の前提となる被告の婚姻申込みや婚約が存在したとすることはできない。」と認定。

*5:控訴人代理人らは,本件訴訟係属中に「△△」に,地域及びハンドルネーム等を変えて女性名で3件の登録をしたところ,その3件のアドレス宛に数分後から大量のメールが届いた。そのメールは,3件とも「愛を知らない男(代表取締役)」など同一名の相手方からのものであり,その内容も財産の譲渡を示唆する全く同一の文言であった。控訴人代理人がそれらに返信をすると,次々とサイト運営会社への入金を促す個別のメールが繰り返された。これらのメールは,3件とも同一名で,同一時刻に送られることが多く,その内容も同一文であるが,登録地域に応じて待ち合わせ場所や送信者のプロフィール(出身地)などは変えられていた(甲53,87)。

*6:我々の国家の文化は発達したのでしょうか、それとも退化したのでしょうか?

*7:http://www.tais.ac.jp/other/news/latest_news/blog/2015/01/10-182032.html参照

*8:第一審裁判所の裁判官は、いつたん保護観察付き刑の執行猶予の判決を宣告した後、その内容を変更して実刑の判決を宣告したが、その変更は、判決宣告のための公判期日が終了する以前にこれを行つたことが明らかであるから、変更後の判決が第一審裁判所の終局的な判断であつて、その内容どおりの判決が効力を生じたものというべきであり、かつ、変更後の判決内容にそつた判決書が作成されているのであるから、第一審判決及びこれを是認した原判決にはなんら法令の違反はない。

*9:ただし、この説諭は判決文には記載されていない。津田岳宏「賭け麻雀はいくらから捕まるのか〜賭博罪から見えてくる法の考え方と問題点」169頁参照