アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

ツイッター企業法務の可能性〜新時代の企業法務の姿を模索する

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

1.はじめに
 ツイッターは企業法務においては、これまでは、いわゆるSNS規程(名称は各社によって異なる)によっていかに従業員及び会社の公式アカウントが違法行為や会社の名誉・信用を毀損する行為を行うことを防止し、炎上を予防するかという観点から検討されてきたことが多いと言える。


 しかし、ツイッターと企業法務の関係はそれだけであろうか。ツイッターにまつわる企業法務についてSNS規程以外を若干検討してみたい。



2.反社条項との関係

事例1 契約後、先方の社長が反社会勢力の「組長」と相互フォローの関係にあり、親しげにリプライを交わしていることが発覚した。契約の反社条項に該当するか。


反社会勢力排除の社会運動が高まるにつれ、反社会勢力との関係は秘密のうちに行われるようになった。そこで、契約雛形においては「反社条項」が標準的に入っている。もっとも、契約時において反社会勢力やその関係者ではないことの表明・保証をさせるとしても、契約後、当該相手方当事者が本当に反社会勢力と関係を持ち続けていないことを確認することはそう容易ではないのが現状である。


ところが、ツイッターで公開アカウントを持っている反社会勢力関係者が少なからず存在し、万単位のフォロワーを有しているアカウントも存在すると仄聞する。すると、相手方当事者の役職員等がフォローをしていることもあり得るところである。そして、公開アカウントであれば、そのリプライの内容等を第三者が検証することができ、上記事例のような状況が生じ得る。問題は、このような状況が、反社条項に該当し、契約の解除事由になるかである。


まず、重要なことは反社条項の内容だろう。例えば、昔は、暴力団暴力団員・暴力団準構成員・暴力団関係企業・総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等とでないことを誓約させられることが多かったが、ここでいう「暴力団関係企業」というのは、いわゆるフロント企業であって、単に組長とツイッター上で親しく会話をする程度ではこれに該当しないだろう。


ところが、近年では、より実質的な関係を考える条項例が増えている。例えば、銀取には、以下のような定義がなされることが多い。

私または保証人は、現在、暴力団暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、 総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等、その 他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、および次の各号のいずれにも該当しないことを表明 し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約いたします。
1.暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有するこ と
2.暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
3.自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に暴力団員等を利 用していると認められる関係を有すること
4.暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するな どの関与をしていると認められる関係を有すること
5.役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
http://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news230602_1.pdf


基本的には1〜3号は単に組長をフォローするだけでは該当しないということになるだろう。問題は4号と5号である。


例えば、何万人というフォロワーのいる会社のアカウントが、組長のツイートをリツイートすることで、当該組織の知名度向上を助けたと言える場合、「便宜を供与」として、4号該当の可能性が出て来る。
また、役員等の経営者が、組長と儀礼的以上に仲の良いリプを送り合っている場合、それが「社会的に非難されるべき関係」として、5号該当の可能性が出て来る。


一般には、ツイッター上の行為が反社条項に該当する場合はあまり多くないとは思われるものの、特にそれが会社の公式アカウントや役員等の経営者のアカウントによる場合、実際の行為態様を当該反社条項の個別の規定の解釈にあてはめて判断する必要が出て来ることがあることから、社長のこれまでの会話のログを分析した上で、それを当該契約の反社条項にあてはめて検討する必要がある。


3.契約の成否

事例2 携帯電話の利用者が携帯電話会社の社長に対し「Aができるようにして下さい」とツイッター上で依頼したところ、社長から「やりましょう!」というリプが来た。


保証のような例外を除き、ほとんどの契約は不要式契約なので、理論的には口頭ですら成立し得る。そこで、ツイッター上におけるコミュニケーションだからといって契約が成立しないとは言えない。実務上、このような契約の成否の問題における要点は(1)権限の問題と(2)表示内容の解釈になるだろう。


まず、権限というのは、仮に先方の役職員が「承諾」をしたとしても、その人が権限を持っているのかである。権限を持っていなければ、無権代理表見代理の問題となる。代表取締役であれば権限の問題は少ない*1。しかし、従業員等であれば権限がない場合も十分あり得る。


次が表示内容の解釈である。ここで、企業法務実務においては、大きな傾向として、重要な契約であれば契約書という書面に押印するという慣行が見られることが多い(大島眞一「完全講義 民事裁判実務の基礎」529頁参照)*2。すると、契約書作成前の口頭や電子的なコミュニケーションは、あくまでもこのような契約書を作成したいとの意向や契約書の内容にそのような内容を盛り込みたいという意向の表明に過ぎず、正式な契約の「申込」や「承諾」ではないことが少なくない。特に、公開の場での契約合意というのは、少なくともこれまでの企業法務実務における限りにおいて、特段の事情がない限り普通は行われないだろう。仮にツイッター上で法的拘束力のある合意を行うのであれば、DM等の非公開の場で行うのではないかとも思われるところであり、ツイッターの公開アカウントでのリプライによって「申込」と「承諾」が一致し契約が成立するというのは、少なくとも企業法務実務ではあまり多くはないように思われる。


例えば、上記事例の「やりましょう」は、あくまでも、Aという内容を契約(約款)に盛り込む方向で社内調整を行いたいという意向に過ぎず、契約内容の変更合意とは解されないという場合が多いのではなかろうか。但し、今後ツイッターが企業法務実務で用いられることが増えて来れば、また新たな慣行が生まれ、上記と異なるべき解釈をすべき場合も出て来るだろう。


4.債権回収

事例3 お金がなくて払えないと言っている相手方の社長が別荘でクルーザーを乗り回している姿をツイッター上のアップした。

ツイッターから債務者の生活状況、財産等を伺うことができる。毎日高級レストランで食べている姿をアップしていれば、そのような生活をする資金がどこからか来ているということである。もちろん、直接財産のありかを示す場合は少ないが、財産調査の「端緒」となることは少なくない
上記の事例では、ツイッター上にジオタグ等で場所を表示している場合はもちろん、そうでない場合でも、他のツイッター内外の情報と結合する等の方法で別荘やクルーザーを特定し、登記・登録を元に財産を突止めることができる可能性がある*3


5.訴訟

事例4 当社製品について欠陥があって怪我をしたとして損害賠償請求をするクレーマーがツイッターで、同業他社から同種事故の示談金・和解金をせしめた旨を呟いた。

 ツイッターにおける相手方当事者の呟きの内容が訴訟における主張等において参考になることがあり得る。直接当社に言及する呟きは流石に自制することが多いが、それとは直接関係のない呟きに「宝」が埋まっていることも少なくない。そしてこれらの呟きから相手方の認識や意図を推測することができることがある
上記の事例であれば、仮に怪我について診断書等が一応あっても、このような呟きから、他の会社の製品の欠陥等、当社製品と無関係の怪我ではないか*4といった推測ができ、これを1つの間接事実として主張することができる場合もあるだろう。


 なお、このように訴訟でツイッターを用いる場合には、個別ツイートを表示させ、そのURLを含めて印刷することが望ましい*5

まとめ
 これまで、企業法務とツイッターといえば、その利用をSNS規程により制限し、会社に累が及ばないようにするという発想が多かったように思われる。
 しかし、ツイッターがいわばインフラとしてコミュニケーションで広く活用される現状においては、企業法務において、SNS規程以外にも色々とツイッターは問題となってくるのではなかろうか。これが、このブログ記事を書こうと考えたきっかけである。
 もちろん、上記はあくまでも「やっつけ」で考えた「私案」に過ぎず、間違いも多いと思われるが、逆に忌憚なきご批判を頂くことで、ツイッター企業法務をより精緻なものへと深化できればと期待している
なお、もし万が一、twitterを会社のパソコンからアクセス禁止にしてる会社があるとすれば、 このようなツイッターの企業法務における重要な意義に鑑み、法務部だけでもアクセス可能にすべきであろう。(えっ、当社のパソコンでツイッターにアクセスできるか? それはもちろん「禁則事項」ですっ!)

*1:もちろん、社内規程で一定の行為は取締役会の決議等が必要とされているだろうが、「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有」(会社法349条4項)し、こ「の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」(同5項)ことから、権限があると信じていれば救われることは多い

*2:もちろん、この慣行は業界や契約類型等によって異なっており、例えば、原稿の依頼について、事前に契約書が交わされることはむしろ少ないかもしれないのであり、この問題の検討は業界別や契約類型別に検討する必要がある。

*3:なお、契約の相手方が会社であり、別荘等が社長の個人財産である場合等には、債務者が誰かという問題等が別途生じ得る

*4:更には、各社に対して、当社と同様に「御社の製品のせいで怪我をした!」と言っているのではないか

*5:「インターネットのホームページを裁判の証拠として提出する場合には、欄外のURLがそのホームページの特定事項として重要な記載であることは訴訟実務関係者にとって常識的」とした知財高判平成22年6月29日参照