#杉原千畝プロジェクト 始めます
#杉原千畝プロジェクト 始めます〜パワハラ事務所からの解放を目指して〜
2021年に何をしたいか、と色々考えたが、やはり「ブラック事務所に就職した若手弁護士」に、「早く逃げろ!」と声を大にして訴えたい。パワハラ事務所は、ナチスドイツの強制収容所みたいな所であり、そこからの脱出を支援するプロジェクトという意味で「 #杉原千畝プロジェクト 」と名付けた。
参考:
旦那の転勤についていったというエピソードは、Cが退職した際に、EとFから事前にこのように説明しろと釘を刺されていたものだ。
— みのちき (@Alicandros) 2020年12月31日
そして、私は以前在籍した女性弁護士の存在を初めて知った。
アウシュヴィッツの囚人が先にガス送りにされた同胞のダイイングメッセージを見つけたような心境だった。
1.パワハラ事務所は未だに多数存在する!
「もう令和ですよ、パワハラなんて!?」と思っている方、大声で叫びたい。
「パワハラ事務所は未だに多数存在する!」
なぜか。私は主に3つの理由があると思う。
理由1:成功体験につながりやすい
マネージメント経験がほとんどないのに「ボス弁」になった人が、パワハラをすると成功体験を積めるのである。
例えば、「調子に乗っている」イソがいる場合、そのミスを利用して「ガツン」と言ってやる。そうしたら、イソがいいなりになったとしよう。
マネジメント経験が薄いボス弁にとってこれは重要な「成功体験」である。
理由2:パワハラの連鎖
意外と多いと思っているのがパワハラの連鎖であり、パワハラ事務所に入った元イソが、先輩となって、または独立して「パワハラボス」「パワハラ兄弁・姉弁」として再生産される。
このパワハラの連鎖はある意味では「パワハラをするマネジメントしか知らない」ことによる不幸だが、なかなか解決は困難である。
理由3:「社長」のパワハラであり、誰も牽制できない
企業であれば、例えば課長がパワハラしていると被害者が部長に申告することで、部長に怒られ、パワハラが止まるパターンもある。
しかし、ボス一人の事務所だと、誰も牽制できない、いわば「社長」のパワハラであり、誰も止められない。
2.パワハラ事務所に入らないための予防策
パワハラ事務所に入らないための予防策であるが、「情報収集」以外にない。
まず、Internet Archiveを使う。
Internet Archive: Digital Library of Free & Borrowable Books, Movies, Music & Wayback Machine
このWayback Machineに、検討している事務所の「弁護士紹介」のURLを入れる。過去誰が辞めたかが丸わかりである。
それ以外に、判例データベースでボスの名前で検索して、一緒に出てくる人をかたっぱしからググる。「都内法律事務所勤務」とプロフィールに書いていれば「ダウト」である*1。
辞めた人が何年くらい在籍したか、という情報自体が非常に貴重だし、学部、ロー、司法修習等の関係での辞めた人との「共通の知り合い」を探し、なんとか面談を取り付けて、「この事務所を考えている(一次通過した、内定もらった)がどうですか?」と聞いてみよう。
3.パワハラ事務所に入った場合の対応法
(1)「ミスした自分が悪い!?」
パワハラ事務所に入った場合の一番重要なことは、「あなたは必ずミスをする」のである。本当にミスをする。そして、ボスは、そのミスを目敏く見つけてあなたにパワハラをする。
しかし、実は、そのミスは「ボスが悪い」のである。
典型的には、「3日目の弁護士が、被告側の復代理で簡裁に行ったら期日で司法委員に強く言われて認諾して帰ってきた」みたいなミスであるが、これは、そもそも「3日目の弁護士を一人で裁判所に行かせるな」という話であり、事務所側が全面的に悪い。
また、ボスにパワハラをされると、仕事が遅く、かつ、ミスをするようになる。もちろん、鬱等の病気になってそのようになるというパターンもあるが、病気になっていなくても、「余計なことを考えてしまい仕事が進まない、怒られて練っていないものを渡してもっと怒られる」が連鎖し、ミスとパワハラが相互に増幅しあう。
パワハラをするボスというのは「お前がミスをしたり仕事が遅いからこうやってパワハラをされるんだ」と思い込ませようとする。確かに客観的な結果としてはミスをしている、ただ、その原因は実はボスのパワハラである。いわば「マッチポンプ」であることに早く気づくべきである。
(2)パワハラ事務所に入る可能性を想定した対策
本当であれば入所前に、パワハラ事務所に入る可能性を想定した対策として以下の対応をすべきである。
・条件を明確化する
おすすめは内定時に「お礼メール」を出すこと。
鬼舞辻綜合法律事務所
代表弁護士 鬼舞辻無惨先生
この度は、内定をいただき誠にありがとうございます。
・2021年1月5日出勤開始。土日及び祝日はカレンダー通りの休み。
・毎月40万円+年末ボーナス220万円の額面計700万円(給与所得)
・弁護士会費事務所負担
・個人事件自由(上納なし)
という条件と理解しました。
この内定を受諾させていただきます。よろしくお願いいたします。
司法修習生 竈門炭治郎
みたいにメールをしておく。この内容が「後でどう変わるか」は、ブラック事務所かどうかの「バロメーター」である。
*ボス弁の先生向けの注記:もしこの内容が「そのまま約束通り実現」すれば、労働条件だけを見ると、ホワイトな事務所だと思います。ただ、「いい条件を匂わせて」又は「後で変更する前提でいい条件を提示して」、その後でもう辞退できない時期に条件を悪化させる、というのは、ブラック事務所で結構よく見るパターンなので、その意味で「後でどう変わるか」は、ブラック事務所かどうかの「バロメーター」ということを理解してもらうための「変わる前」の姿として提示しています。「うちの労働条件、鬼舞辻綜合法律事務所より悪いけど(例えば地方で給料がもっと低い)、うちってブラックだった!?」みたいに心配して頂く必要はございません。なお、第2弾でも補足しております。
・バックアップを見つけておく
ダメだった場合のバックアップを見つけておく。オススメは修習の指導担当に「もし、内定先がパワハラ事務所だったら、先生のところに置いてくれますか?」と聞くこと。少なくとも、次の事務所見つけるまでのノキなら嫌だという人はまずいないだろう。
・自慢しない
嬉しい心理は理解できるが、「有名事務所」に入ったとか「待遇がいい」とかで、それを周りに自慢すると、その事務所がヤバイ事務所の場合、「今更頭を下げれない」気持ちになってしまいがちである。ボスが狂ってるが、ボスが大御所過ぎて、誰も注意できないパターンは普通にある*3。
・パワハラ事務所だった場合のバックアップとして企業を検討する
「バックアップ」でもいいので、企業という選択肢を持っておくことは大事。もちろん「ブラック企業」はあるが、既にインハウスがいる企業の状況を先輩や同期に在職者・OBを紹介してもらう等して情報収集し「いざ自分がパワハラ事務所に入った場合の逃げ出す先の選択肢」として持っておく。
(3)「典型的言い訳」に注意!
パワハラボスの典型的言い訳は以下のものがある。
・「お前がミスしたから」「お前の成長のためだ」
ミスをしたからパワハラをしていい、そんな話はない。パワハラをされれば萎縮して成長できる人もできなくなってしまう。
・「指導の範囲だ」「どの事務所でも最初はこんなものだ」
ホワイトな環境での「指導」は、「成果物」に対して行われ、「人」や「人格」に対しては行わない。そして、その成果物を「どう」直すべきか、「どうして」直すべきかが具体的に示される。それが「指導」であって、
・抽象的な指示
・場当たり的指示
・指導の名を借りた人格否定
等は、「指導」ではない。
・「コロナだから」
昨年は、予定より報酬を減らしたり、ボーナスを減らす言い訳に「コロナ」が使われることがよく見られた。コロナでむしろ増収増益*4の事務所もある訳であり、「コロナ」だといって、約束を容易に反故にするボスは、今後も何か言い訳を見つけて約束を反故にすると思ってもそう間違ってはいないだろう。
4.今パワハラ事務所で苦しんでる人へのメッセージ
(1) 「おかしい」ものは「おかしい」
・暴力を振るう
・人格を否定する発言をする
・私的な時間まで管理する(電話やLineが四六時中来る)
・重要な約束を破る
等は、「おかしい」のである。それを「自分で選んだ事務所だから」「もう少しスキルを身につけてから」「自分がミスするのが悪い」と考えて我慢するのは、まさにパワハラボスの「思う壺」である。
(2)「呪いの言葉」に負けない
辞めようかな、と思った時に、「置かれたところで咲きなさい」や「石の上にも三年」等の言葉が頭を過ぎるかもしれない。これらは典型的な
「呪いの言葉」
である。こういう言葉によって、本来はすぐにでも転職を検討すべき人が、それを思いとどまり、精神を病んでボロボロになる例を知っている。だから、声を大にして「呪いからの解放」を主張したい。
(3)「就職先を見つけてから辞める」か「今すぐ辞める」か
その場合、「就職先を見つけてから辞める」か「今すぐ辞める」かは難しいところである。ただ、
・物理的暴力を振るわれた
・物理的セクハラを受けた
・私的な時間まで管理されて転職活動をする時間がない
・死にたい
等という場合には、就職先を見つけるまで待つ余裕はないだろう。「体調不良で実家で療養するのでしばらく休職します」とでも言って休み、知り合いに相談して転職先を探すのが現実的ではないか。流石に「腹パンをされたので辞めました」等であれば「短期転職者」としてマイナスに扱われることはないと思われる。
それ以外の場合には、「こっそり転職活動をする」べきである。ここで、
ブラック→ブラック
という転職は残念ながらよく見かける。理由としては、
・最初に「洗脳」されて違和感に気づけなくなっている
・「早く抜け出さなきゃ」という焦りが正常な判断力を奪う
・「ブラック耐性あり」として、ブラック事務所に諸手を挙げて歓迎される
・自己肯定感が低下し、買い叩きを受け入れてしまう
等。
対策は上記2.の予防策を、ここでも行うしかない。
なお、「早く逃げ出したいが、ブラック→ブラックの転職はいやだ」という人もいるだろう。その場合の「いいとこ取り」の方法として、即独の同期に登録だけ置かせてもらい、じっくり転職活動するという方法がある。場合によっては「時間に余裕がある仕事あるから、就活と並行してやってみる?報酬は前払いするよ」と言ってもらえるかもしれない。
いずれにせよ、ブラック事務所に入った人へのアドバイスは「死ぬな。逃げろ!」である。パワハラ事務所で身も心もボロボロにして自殺等をする弁護士は後を絶たない。死なないこと、これが一番重要である。
以上、ブラック事務所対策として、できるだけ具体的なアドバイスをしてみた。何か質問等があれば、@ahowotaのツイッターにリプをください!
以下シリーズ化しております。ご参照ください。