ーLegal Library、Business Lawyer’s Library、Legal Scape及びLionBolt串刺レビューー
これは、法務系アドベントカレンダー2021年度の12月18日のエントリーです。ハードルを上げに上げた柿沼先生からバトンを頂戴しました*1!
なお、12月12日には「裏」で法務系アドベントカレンダーの記事を書いております。
- 第1 はじめに
- 第2 法務パーソンのための「リーガルリサーチ」のコツ
- 第3 リーガルリサーチツール3+1種比較!
- 第4 書籍出版の告知ー京野哲也先生の編著の下で『Q&A 若手弁護士からの相談374問』の続編を出版します!
第1 はじめに
1 お詫び
まずはお詫びから始めたい。つまり、長年の「伝統」である、江頭憲治郎『株式会社法』改訂箇所エントリを、第8版では断念する、ということである。その理由は、江頭「差分」と呼んでいたこの改訂箇所確認の目的が、「頭の中に索引を作り、実務上問題に行き当たったらすぐに該当箇所を引けるようにする」ということにあったからである。その観点からは、既にこの問題が解決してしまった(第3の5参照)以上、断念する他ないということである。
2 法務パーソンのための「リーガルリサーチ」のコツと、リーガルリサーチツール3+1種レビュー
そのような中で、以下では法務パーソンはどのようにリサーチを行うべきかという論点について、私見を総論(第2)と各論(第3)に分けて説明して行きたい。
第2では、「リーガルリサーチは超重課金ゲーム」を旨とするリーガルリサーチのコツに関し、私が約10年の法務経験で自分なりに考えてきたことを公開したい。これまで #リーガルリサーチ タグで呟いた内容を踏まえ、大幅に加筆してまとめた。
第3では、Legal Library、Business Lawyer’s Library、Legal Scape及びLionBoltを比較してみたい。
第2 法務パーソンのための「リーガルリサーチ」のコツ
1 ググればいいのか?
「Googleによって知識はコモディティ化した」という言説がある。しかし、①有料データベースや図書館等にしかない情報があること、②仮にある情報がネット上にあっても、漫然とGoogleで検索しただけでは探し出せないことの2点に留意が必要である。
Google自体はうまく利用すれば、確かにリサーチに活用できる。しかし、たくさん存在し、適切に組み合わせるべきリサーチ手段の1つに過ぎない。現代において、検索エンジンやデータベースを利用して、法律に関する的確な知識を引き出すリーガルリサーチ能力の重要性は、増大しこそすれ、減りはしない。
2 法務パーソンにとってのリーガルリサーチの重要性
法務パーソンの中には、リーガルリサーチを重視しない人もいるだろう。
・忙し過ぎてそんな暇はない
・リーガルリサーチをしても結論は変わらない
・もし必要なら顧問の先生にお願いすればいい
等、一見「もっともらしい」、やらない理由はいくらでもつけられる。
しかし、ネット上の情報でも書籍・論文の情報でも、なんなら弁護士先生との法律相談でも、「間違っている」情報が多い。ここではあえて、カッコ付きの「間違っている」としている。
例えば、「最高裁は特段の事実がない限りAの場合にはBだとした」としよう。その場合、普通は「AならB」なのであって、そのような説明はむしろ「正しい」。しかし、法務パーソンが「一般論」を知る必要があることはほとんどない*2。基本的には個別具体的な状況に応じた「Aなんだけど本当にBなのか」が問題となっており、例えばその状況によっては「Aだけど特段の事情があるのでBにならない」ということも十分にあり得る。そして、「本件」でどうかのみが事業部(社内クライアント)が知りたいことであり、本件の結論(リスクの程度が高い/低いとしか言いようがないことも多いだろうが)こそが重要である。その観点からすると、きちんと「本件」に適用するという意味において、その情報が「間違っている」情報ではないかの検証は、法務パーソンにとっての必要な能力であり、その検証はリーガルリサーチによって行う以上、リーガルリサーチは大変重要である。
このような「理想の法務パーソンが「特殊解を見つけることができる人」という話は、経文緯武先生のリーガルアドベントカレンダー記事にもあった。
3 3種類のコスト
本当にリーガルリサーチをやりたくない根源的は何か。私はリーガルリサーチはコストがかかるからだ、と考える*3。
(1) 金銭的コスト
「リーガルリサーチは超重課金ゲーム」である。基本無料である程度面白い文献も読めるが、それでは絶対「課金勢」に勝てない。雑誌・書籍を買うか、データベースにお金を払うか、図書館等でコピー代を払わないと入手できない「レアアイテム」を読んで初めて文献調査が完成する。
しかも「ガチャ」制度も導入されており、Amazonで買った書籍が「お金の無駄」だったことは枚挙にいとまがないところである。最近はソシャゲでは「天井」、つまり一定の額を注ぎ込めば必ず欲しいアイテムがゲットできる制度が導入されてきているが、リーガルリサーチにはその制度がない*4。
(2) 時間的コスト
しかも、その調査は、基本的には自分の時間を削って行うことになる。もちろん、昔と異なり、(データベースの対価を払い、Kindle化された本をKindleで買えば)かなりのリサーチがオンライン上で実施できるようになってきた。
ただ、それだけではリサーチが完結しない。つまり、未だに紙の雑誌や紙の書籍を書店や図書館で入手する必要があり、それには時間がかかる。
加えて、後述のとおり、「芋づる式」に増える、例えば、Aという文献を読むとBという文献を調べる必要があることがわかり、Bという文献を読むとCという文献を調べる必要があることが分かる等として、どんどん戦線が拡大していくことも、時間がかかる理由である。
(3) 労力的コスト
上記の時間に関するが、労力という側面もバカにならない。特に、徒労や空振りに終わることも少なくないため、そのような心理的なハードルにも立ち向かわなければならない。
4 「調べ切る」ことの困難性
上記のようなコストが非常に負担に感じられる理由は、本当の意味で「調べ切った」といえることがあり得ないからである。極端な話「実は韓国のシンポジウムで重鎮先生がその問題についてスピーチをしており、韓国語の原稿がネット上からダウンロードできた」レベルを含めた「完全網羅」は事実上不可能である。
5 この不都合な事実を前提としてどうするべきか?
ここまで、概ね
①情報は誤っている
②でも、自分で検証しようとするとコストがかかる
③コストがかかるだけではなく、きちんと調べきって情報が誤りかどうか完璧に検証しきることはできない
という「不都合な真実」を示してきた。
では、どうすべきなのだろうか?
私は、むしろ「調べ切ることはできない」という現実を自覚した上で、いかに「合理的に調べるか」を考えるべきだと考える。
その観点からは、「石柱をまずは荒く削って人型を作り、その上で、案件に応じて顔が重要なら顔、手が重要なら手を重点的に整える」イメージでリサーチを行うのが適切だろう。「顔だけ頑張って整えたけど、結局『人魚』なのか『人』なのか分かりませんでした」では話にならないし、クライアント(社内クライアントも含む)のニーズは単に「今すぐ大きな方向性だけ教えて欲しい」というもののことも多い。その要請を忘れて削り込むのは単なる「趣味」であって「仕事」ではない。
そこで、「合理的コストでに合理的な結論を得る」ことを目的としたリサーチこそが、法務パーソン*5の目的とすべきリサーチだということになる。
もちろん、趣味で「推し論点」を調べること自体はあり得ると考えるが、そのような「調べることそのものを目的とするリーガルリサーチ」は以下では検討対象としないこととする。
6 正しいリサーチの始め方
(1) 「あたり」をつける
(a) 車輪の再発明を避ける
以上を踏まえた合理的コストでに合理的な結論を得るリーガルリサーチのためには、 最初に大きな輪郭を間違わないようにする、つまり、正しく「あたり」をつけることが重要である。
その際は、車輪の再発明を避けよう。誰も考えたことのない論点が、たまたま自分の目の前に来ているなんてあり得ない。単に自分が知らないだけだ。*6
そして、参考になる情報は、優秀な人がまとめたもの(だけ)である。「優秀な人ならこの問題をどのように分類するだろう?」と考え、どこに情報がありそうかを推測すべきである。
(b) 条文・判例・文献
基本的には条文・判例・文献を調べることになる。そこで、その案件における条文・判例・文献に正しく「あたり」をつけることになるだろう。
そのうち、多くの場合は、条文が起点となっていくだろう。ただ、条文は思いつかないが、こんな事案についての(こういうキーワードが出ている)判例があったかもしれない、というアプローチや、こういうタイトルやキーワードの文献があるかな、というアプローチもあり得る。
(c)何も思いつかない場合
その分野に全く知見がない場合、どういうキーワードで検索すればいいかすら思いつかないこともあるだろう。その場合にはまさに「異世界」にいるようなものである。
グーグル検索のみでリサーチが完結することはないが、基本的には、調べたいことを自然言語で入れると「それが世の中でどのような言葉で表現されているか」が分かり、その結果、より洗練された表現で調査をすることができるという「検索キーワード探し」が一番基本的な使い方である。
Googleで、事案に関連するいろいろな表現をとにかく入れてみて、(法律の話かどうかはとも角)どういう議論がされているのかをザッと理解するのが実は早いことが多い。Googleで出てきた(法律とは無関係なものも含む)記事を利用することで、その話題についてどういうキーワードがどういう表現で用いられているのかというのを理解することは、その次のステップの(条文・)判例・文献検索の事前準備となる。
なお、Googleで探したいキーワードに"pdf"を付けて検索するという技もあるが、それで出てくる、例えば紀要論文のPDF等が単なる「とっかかり」に過ぎず、到底網羅性がないことには十二分に留意が必要である。
実際の調査の役にはあまり立たないが、いわば異世界の「案内」はしてくれるのがGoogleである。
(2) 調査対象はどこにあるかを知る
正しく「あたり」をつけられても、調査対象がどこにあるかが分からないと、調査に入っていけない。
(a)条文
誰しも自分のお気に入りの六法を持ってそれを使っているだろう。
また、六法にない法令は、e-Gov法令検索の利用が標準的である。
elaws.e-gov.go.jp 但し、改正法の織り込み等は、一部は「沿革」を押すと対応しているが、不十分なところがある。
その場合は、①商用データベース(例えば第一法規の現行法規)を利用する、②各省庁が公開する「新旧対照表」を読む等の対応が必要である。
裁判所HPを使わざるを得ないこともあるが、網羅性が非常に低い。
そこで、通常は商用判例データベースを利用することになる。
中野文庫の旧法令や大審院判例等は多くの人が読むのに難儀する「旧仮名遣い」をしている。もちろん、慣れるとだいたい分かるが、慣れるまでは「韋駄天」*7を使って、まあなんとか読めるレベルの日本語にまで直してみよう。
旧法令は「中野文庫」が参考になる。昔はジオシティーズだったがジオシティーズが閉鎖したので移転した*8。旧法令を読む際は、中野文庫のデータを、韋駄天で現代語化するのが楽。ただし、国立国会図書館デジタルコレクション*9でしか探すことができない法令もある。
(d)文献
文献は、ci.nii
NDL
商用データベースの文献検索(第一法規の「法律判例文献情報」等)で検索することになるだろう。
なお、 商用データベースの文献検索はあまり使っていないが、例えば、ci.niiだと理系等全く無関係の論文が大量に出るような学際的分野について「法律系のみ集めたい」というニーズには合致している。
7 実務上のドリルダウンの方法
(1) はじめに
上記6で、正しい方向に調査を進める準備はできた。さあ、調査を開始したら、どうやって、「目標」に向けて調査を進めていくかを検討しよう。
(2)条文からのアプローチ
(a) 条文をリサーチの起点にする
条文がある場合、まずは条文をリサーチの起点とする。
法務実務では、最終的に特定の条文の解釈・適用に収斂することが多い。そうすると、「これって、何か関係する法令があるのではないか、その法令の関係する条文は?」という観点で探すことで、正しいリサーチの起点に早期に立つことができ、「明後日の方向に飛び立って、お金も時間も労力も失う」という悲しい結果を可及的に回避することができる。
基本的には、その条文の国語的意味を元に、まずは問題となっている事案をあてはめてみる。そうすると、①条文の文言が曖昧で解釈が必要になる部分や、②まだ確認・検討できていない事実関係が問題となるだろう。この①について調査をしていく訳であるが、同時に②についても事実確認が必要である。
(b)その条文でいいのか?
ここで、パンデクテン体系の影響により、これだと思った条文の周囲だけではなく全然違うところに関連条文があるかもしれない。そこで、視野を広く持ち、色々な可能性を考えるべきである。
慣れていない場合には、関連条文が豊富な六法や法令データベースを活用することも考えられる。
(c) コンメンタール
問題となる条文がわかれば、実務では次にコンメンタール・逐条解説に行くのが手っ取り早いことが多い。その条文のその文言に関する判例と学説が要約されているので、問題の概要ないしは大枠を理解することができる。ただし、これはあくまでも調査の「始まり」に過ぎない。
一応私の代表作の一つに『大コンメンタール失火責任法』がある。
(3) (裁)判例からのアプローチ
(a)(裁)判例リサーチ
その条文の問題となる文言の解釈に関する判例があれば、その判例の解釈を踏まえなければ正しいリサーチをすることができない。
上記のとおりコンメンタールを見ると判例が出ていることが多いので、それを読むというのは1つの方法である。
そうでない場合における条文からの判例リサーチにおいて、データベースの提供する「条文番号検索」機能は有益であるが、全部を網羅していない。つまり、条文番号が条文番号として認識されていない裁判例が結構ある。そこで、例えば「X法」と「●条」を検索すると、条文番号検索よりも多く出て来ることが多い。
(b)キーワード検索
条文からリサーチできない場合においては、キーワード検索が一般的である。
まず思いついたキーワードで判例検索をし、その上で、出て来る数が多すぎればより絞り込む(キーワードを増やしてアンド検索等)、少なすぎればより上位の概念で検索する等の調整をし、トライ&エラーで探していくしかないだろう。
(c)調査官解説
最高裁判例があれば、その調査官解説を探すところまでがセットである。基本的には、
・法曹時報上に掲載
・書籍出版
という時系列なので、新しい最高裁判例であれば、ジュリストを調べることになるだろう。
(d) 複数データベースの利用
また、1つの判例DBで出てこなくても他のDBに搭載されていることもある。この点は、既に大嘘判例八百選に「判例検索クロスレビュー」を寄稿させていただいた。
なお、サイ太先生のエントリとして、以下のものも判例検索の技法として参考になる。
(4) 文献調査
(a) 「芋づる式」文献調査
条文がわかり、その法律に関するコンメンタールがあれば、そこで引用されている代表的な文献を収集して、これを読み込むことは王道であろう。
ただし、(たとえコンメンタールでも)1つの文献が引用している文献を読んで調査が終わることはない。実際には、その文献に引用されている文献を更に読んでという感じで「芋づる式」に読むべき文献が増大していくことが多い。
最近は博論についてウェブサイトで公開されることも増えているところ、「まともな」博論であれば、その前半にある学説のまとめ部分を読むと、コンメンタールよりも長めに学説をまとめており、参照すべき文献の網羅性も高いことから、有用性が高いことがある。
そのような最初に読む文献が想定されない場合には、上述のci.niiでキーワード検索をすることが有益である。
また、ある程度文献が豊富な分野であれば、商用論文データベースで串刺検索をすることも十分考えられる(但し論文データベースにある論文は網羅性がないことには十分に留意が必要である。)。
(b) site:go.jp
政府の資料が相対的に信用性が高い*10ことを利用した技法が、
「キーワード site:go.jp」
である。検索結果が多いキーワードであれば、
「キーワード pdf site:go.jp」
と、PDFを入れる方法もある。類似のものに
「site:core.ac.uk」
検索や、google scholar等もある。
(c) Internet Archives
Internet ArchiveのWayback Machineを利用すると、既に消えているものでも、探すことができる。
(d) 「著者買い」
複数冊の論文や本を読んで、良いこと(例えば、実務的文献なら「痒いところに手が届く記述」)を言っている著者であれば、「著者買い」もオススメしたい。特定の著者の書籍と論文を網羅的に入手すると、表題は違うように見えても実際には相互に関連し合う文献だったりする。
(5) 人に聞く
ここまでは、自分1人で調査をすることを前提としているが、そもそも自分1人だけで対応しなければならない訳ではない。
「他人に聞く」というのは有益であり、同僚、上司、先輩、友人、知人、そして、監督官庁等に対し、うまく聞くことで、新たな情報を知ることができるかもしれない。もちろん、忙しい人に対してはきちんと礼儀を持った正しい聞き方をすべきである*11。
(6)「信頼」できそうか?
自分にとって「勘所がわからない」分野で、例えば調べたい事項がずばりタイトルにある本を買ってみたら、それは「トンデモ本」だったということは十分にあり得る。
その信頼度を判断する重要なポイントは、「検証可能性」、つまり、本当なのかを検証できるかである。条文、判例、通達等、その議論の依拠するところを示していれば、そこから辿って検証することができる。
これに対し、信頼ができない文献の場合には、例えば「●大教授がそういった」等と権威を使ったりするが、実際にその発言を辿ることができるような検証可能性が欠けていることが多い。
いずれにせよ、自分で全く分からない分野であれば、上記(4)のとおり人に聞くのがいいだろう。
8 次のリサーチに備える
リサーチをしたら「論理」と「根拠」の2つを整理し、いつでも取り出せるように保存しておくべきである。「論理」が理解できていれば、次の似た事案で「射程」を意識しながら同じ結論か違う結論か判断できる。「根拠」を押さえていれば、その判例・文献等に戻ってリサーチを深められる。
9 「少しの差」を蓄積する!
最後に、上記のとおり、実務では、そもそも調べない人ないしは調べる時間がない人も多い(自戒を込めて)。その意味では、少し調べるだけで、他の人と少し差をつけられる。調査の習慣をつけ、「少しの差」を蓄積することで、何年後には「大きな差」になるはずである!
第3 リーガルリサーチツール3+1種比較!
1 はじめに
(1) 「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」のレビュー
リーガルリサーチツールとしては、判例リサーチツール(データベース)が代表的である。ただ、判例リサーチツール(データベース)の串刺しレビュー結果については、例えば上記の「大嘘判例800選」の寄稿記事をご参照頂きたい。
以下では、新型コロナウイルス蔓延に伴う在宅勤務の必須のツールとなった、「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」である。もちろん電子書籍そのものは広まっており、例えば10冊本があるテーマであれば体感2冊くらいはKindle化されている感覚である。ただ、例えば、会社に置いている本を家でどうしてもリサーチに使いたくなって、kindleでダウンロードすると2倍の費用になり、いくら「ホンゲル係数(エンゲル係数書籍版)の最大化」を目指していても流石に辛い。最終奥義「リボ払い」まで使ってやりくりしているが、そろそろ限界である。
そこで、「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」では、破産回避のための「救世主」として、個人的に注目している。よって、以下、比較的ポピュラーな三種の「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」と1種の異なる種類のツール(検索特化型)のレビューをしたい。
ただ、2点だけ、この「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」そのものについての感想を先行して述べたい。
(2) 複数社を組み合わせる!
出版社として「サブスクに出す」と決めた本は、結構3社の「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」ならどれを使っても入っていることが多い。そこで、例えば2社を使っても書籍の数は2倍にはならない。
ただ、私の体感では3社を並行して使うと書籍の数は約2倍になる。これだけで到底全ての文献は網羅されないが、「まあまあ」の感じにまではなる*12。そこで、負担は3倍(一番安いところと比較するともっと)になるものの、是非3社を全て契約することを勧めたい。多分法務パーソンなら、1社分くらいは会社でサブスクに入って費用を負担してくれていると信じたいので、もしそうであれば、負担は3倍にならないで済む。
(3) むしろ保管場所問題への救世主
2点目としては、この「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」の多分一番のポイントは、「微妙な本」を買うかどうか迷わなくなるということである。もちろん、オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)には良い本も多数含まれており、例えば、我妻民法(LegalLibraryのみ)や注釈民法、会社法コンメンタール(LegalScapeのみ)等は紛れもなく「良い本」である。ただ、それは既に買っているし、オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)を導入したからといって売るかといえば売らないだろう。
とはいえ、そうではない「微妙な本」について、買わなくて良くなるというのが重要な役割である。
図書館派のリサーチであれば、そもそも図書館に行って関連書籍を全部調べるのだろうが、私のような購入派であれば、関連書籍を全部買って大変な出費を強いられる。「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」があれば、まずは関連書籍のうち、サブスクで読めるものが何かを知り、「良い本か微妙な本かのアタリがつけられる」のである。これは最強である。そうすれば、「良い本と、サブスクに出ていない本だけを買う」*13ことで、リサーチが完成するのである。微妙な本は、必要に応じてサブスクで読めば良い。このような、微妙な本に関する「本の保管場所と本代が浮く」というのは、サブスクの非常に大きなメリットである。
この点については、北先生のツイートが参考になるだろう。
法律書籍のサブスクモデルは書籍の代替ではなくて図書館という箱の代替だと思うという話を聞いていた。運営側の意見は違うのかもしれませんが私も基本は同意見ですね。
— 教皇ノースライム (@noooooooorth) 2021年12月16日
2 Legal Library
(1)はじめに
多分「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」で一番ポピュラーと思われる。
(2)いいところ
純粋な法務だけの前提であれば、書籍のセレクションが相対的に良い。特に、社長が弁護士で、我妻民法等、社長が好きな本を入れている姿勢は評価できる。
また、(BLと異なり)コピぺが可能である。そこで、調べた結果良い記述が発見できたら、コピペをするだけでOKである。文献情報もワンクリックである。
(3)ここは頑張ってほしい!
上記は本当に良いのだが、検索したキーワードが当該ページで出てきている部分がマークされないのは非常に痛い。つまり、例えば「認諾」で検索して、ある書籍のあるページが出てきたとして、そのページに「認諾」があること自体はわかるが、ではいったい「認諾」がどこにあるかは、「目視でくまなく調べないといけない」のである*14。ここはBLと比較してLegalLibraryのUIの差があるところであり、改善を期待したい。
なお、商事法務の書籍がないのは、永遠の課題かもしれないが、奮起を期待したい。
3 Business Lawyers Library(BL)
(1)はじめに
多分 「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」で2番目にポピュラーなのではないかと思われる。
(2)いいところ
先ほどのLegal Libraryの悩みである、検索したキーワードが当該ページで出てきている部分がマークされないという問題がない。むしろ、検索したキーワードが当該ページで出てきている部分が黄色でマークされる。この点は直感的であって、高く評価したい。
総務・人事を含めた「広め」のラインアップになっており、また、一部雑誌も入れている*15。
(3)ここは頑張ってほしい!
BLは書籍やタイトルをクリックしても直接書籍が開かず、一度書籍紹介のようなページに飛んで、そのページから「読む」を再度クリックしないといけないのが非直感的である。とりあえず検索結果のスニペット部分か書影をクリックすることで書籍が開くので、暫定的にこれで回避しているが、いかがなものか。
コピペができないのもいかがなものか。最低限ワンクリックで書籍情報をコピーさせてもらいたい。
なお、商事法務の書籍がないのは、永遠の課題かもしれないが、奮起を期待したい。
4 LegalScape
(1)はじめに
商事法務の書籍が入っている2021年12月現在唯一の 「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」である。
(2) いいところ
商事法務の書籍が入っている。
(コピーは一応できる。)
(3)ここは頑張ってほしい!
それ以外については、テキストをベースにしたUIが使いにくい。
Kindleのリフロー型のような形で、それぞれのデバイスに適した形で情報を示す(例えば、スマホ用アプリ、タブレット用アプリを出す)なら、テキストベースは良いのだろう。しかし、特にそういう意味がないのであれば、LegalLibraryのように、固定レイアウトにした上で、コピペはできるようにする方が使いやすいと思われる。
5 LionBolt
上記3種と異なるのが、「検索」だけに特化したLionBoltである。基本的には数百〜1000冊レベルの上記3種だと、例えば「江頭株式会社法等の必須の本がない(なお、一部は前の版しかない)」という状態になり、3つを組み合わせても「まあまあ」のレベルである。これでは、リサーチの網羅性が不安である。
その中で、「3000冊の串刺し検索」を可能とするLionboltは、調査の網羅性の観点から極めて魅力的である。ステマっぽいけどステマではない記事を公表し、現在も利用を継続している。
もちろん、Lionboltが上記の「オンライン書籍閲覧ツール(サブスク型)」と異なるのは、検索ができるだけで実際には書籍を購入しないといけないという点である。この点はもちろん限界があるが、「この本のこのページに答えがある」というのが分かるのは最強である!!
また、例えば、本棚の設定をすると「江頭株式会社法の何頁にあるか」が一瞬で分かる! つまり、もはや江頭差分は不要になったのである(伏線回収)!
このように素晴らしいLionBoltだが、「この検索結果ページは表示制限中です」となることがある*16。また、 横書き表示の場合にUI上見にくいのも改善していただきたい。
第4 書籍出版の告知ー京野哲也先生の編著の下で『Q&A 若手弁護士からの相談374問』の続編を出版します!
来年早々に、上記の第2のリーガルリサーチ技法及び第3の各種リーガルリサーチツールを使って作成した成果物として、書籍が発売されます!! RONNOR名義では、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』に続く2冊目の商業出版です!
現時点(2021年12月18日時点)で公表できることとしましては、京野哲也先生が編著者を務められる『Q&A 若手弁護士からの相談374問』の続編だ、というだけですが、乞うご期待!!!
*1:博論レベルを書かないとアドベントカレンダー書けないなんていうのはハードルとして高過ぎです!!
*2:資格試験を受ける場合位ではないか?事業部が「一般論として」と言ってきたら、むしろ何か隠していることが疑われる位である。
*3:オブラートに包まず言えば、「リーガルリサーチが面倒くさいから」である。
*5:場合によっては弁護士であっても同様だろう。
*6:これに対し「最初から正解を探す姿勢だと、正解がない問題に対応できないのでは?」という疑問があるだろう。まあ「100%同じ問題」はないだろう。それでも、普通の法務パーソンは90%とか95%は他の人が検討済みの問題を検討しているはずである。だから、90%とか95%のところまでの先人の検討結果を早めに取得し、残り5~10%は自分の頭で考えるクセをつければ良い。
*7:http://www.kl.i.is.nagoya-u.ac.jp/idaten/
*8:https://geolog.mydns.jp/www.geocities.jp/nakanolib/mokuji.html
*10:統計が捏造されていた等というツッコミは、ここで入れないでください。
*11:特に監督官庁対応では、礼儀以外にも、聞き方を誤ると大きな問題が起こることもある。
*12:要するに、江頭、中山(旧版のみサブスク対象)、菅野等の最新版は自分で買って持っている前提であれば、それ以外の本がある程度掘れる、というイメージで良いだろうか。
*13:私は、本当に良い本なら、サブスクにあっても紙で買います。
*14:確かにスニペットが出てきてキーワードがマークされているが、そのスニペットの数行が、どこに相当するかは不明である。
*15:但し雑誌のバックナンバーについては、きちんと古い号も入れて頂かないと、あまり意味がない
*16:多分何度も同じ本の同じ辺りを検索することによって、その本を購入しないで済むことになる事態の可能性を避けようとしているのだろうが、大量のリサーチをすると必然的に良い本の同じ辺りが出てくるので、表示制限は困る。。。