アホヲタ元法学部生の日常

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PM未経験者のプロジェクトマネージャ試験(情報処理技術者試験)1ヶ月合格体験記


1.PM未経験者がほぼ一ヶ月の試験対策期間で2011年のPMに合格
2011年、6月26日、平成23年春季(?)情報処理技術者試験(特別試験)が行われた。4月に実施される予定が、今回の大震災で流れ、6月になった訳である。
 本日、8月15日、この特別試験のプロマネ*1の合格発表があり、プロジェクトマネージャーに合格した*2


 私は、一年前に情報セキュリティスペシャリストに合格している。
知識0からの情報セキュリティスペシャリスト3ヶ月合格法 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
このことから考えると、一応プロジェクト・マネージャの試験勉強を開始する以前からプロマネを含む各ジャンルにつきITSSITスキル標準)のレベル3(応用情報相当)には到達していたものと思われる。
私は、システム開発そのものに携わった経験はなく、もちろんプロジェクトマネージャーを担当したこともないものの、「法務」の観点からプロジェクトの「後始末」に関与させていただいた経験がある。*3


 このような私ですが、5月末に 同人誌を出すまではほとんどプロジェクトマネージャー試験の対策をしていなかったので、6月末の特別試験まで、実質1ヶ月の試験対策勉強期間で合格したことになる。


 私の経験が、いわゆる応用情報技術者試験合格レベルの方や、他の高度資格をお持ちの方が、「短期間の試験対策」で平成24年春(2012年春)のプロジェクトマネージャ試験に短期合格するための参考になればと思い、自分の勉強法と、本番でA評価をいただいた再現答案を公開させていただきたい。


ご参考まで、IT企業の法務部の仕事については、
IT企業法務部員の仕事〜おおまかなスケッチ - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
に簡単にまとめた。プロマネとの関係では、「不幸にしてプロジェクトが法務案件になる」局面で、プロマネの方のマネジメントを検証するお仕事(プロジェクトマネジメント義務違反の有無)がある。検証する「立場」を務めさせていただく以上、プロジェクトマネジメントについて体系的に学ばせていただこうというのがプロマネ試験受験の動機である。


2.勉強法の概要
 午前I免除だったため、午前IIから受けることになったた。過去問を解いて分かったのは、
・午前IIは、いわゆる高度共通午前Iとレベル的にはほとんど変わらない(ただ、PMPの知識が出題されるのが大きな違い。)
・午後Iは毎年のように同じ点が問題となる質問ばかりされる
・午後IIが論文なので対策がかなり難しい
 というところである。


(1)午前II、午後I対策
午前IIと午後I対策は、
具志堅融先生、葛西澄男先生の「 ポケットスタディ プロジェクトマネージャ (情報処理技術者試験) 」

ポケットスタディ プロジェクトマネージャ (情報処理技術者試験)

ポケットスタディ プロジェクトマネージャ (情報処理技術者試験)

を使った。
この本は、プロジェクトマネジメントの各分野をコンパクトに解説しているので、わずか1ヶ月の勉強時間で忘れていた知識を呼びおこし、ITSSレベル4に至るために欠けている知識を補充するという目的にはもってこいであった。
また、午前II対策としてチャンス問題を特集していた。要するに、「毎年出て答えも変わらない」問題である。これをやるだけで20点くらい違うことから、チャンス問題を確実にしておけば、突破率は大きく変わると思われる*4
 午後Iは、「過去に問われたことが聞かれる」ということで、過去の問題の回答パターンがまとまっていた。つまり、実際のプロジェクトでは、問題が発生した際の「正解」はいろいろあり得る*5が、テストでは回答が1つ*6に決まる必要があるので、そういう「試験でよく聞かれる状況に関するテスト向けの回答」を覚えておけば、合格率が上がるということである。特に、同書で「頻出」とされるところは、私が受験した平成23年春にも類題が出題され、実際に役に立った。
本書の様々な特長のうち、上記の2点は、かなりテクニックに走っているので賛否があり得るところだが、本書はテクニックだけの本ではなく、テクニックと基礎知識(プロジェクトマネジメント技術)の双方を対象としている。テクニックを使う前提としての基礎知識の必要性は本書も否定していないし、私も実感しているところである。ここは、「基礎知識を前提に、テクニックもつけることで、合格率が上がる」という趣旨と理解していただければありがたいところである。


なお、

プロジェクトマネージャ完全教本 2015年版 (情報処理技術者試験)

プロジェクトマネージャ完全教本 2015年版 (情報処理技術者試験)

 は、比較的まとまっており、会場でもこれを持ってる人が多い定番の教科書である。ただ、分量が多く、また、知識の説明に加え問題集が含まれているので、*7まともに頭からやっていると時間がかかり、最初にやった内容を忘れる。一度「説明」だけ通読し、それから問題を解く中で「あれっ!?」と思ったことを戻って確認した。


 なお、今回の特別試験は午後Iで苦戦された方が多かったようである。部分点がかなりもらえる*8ので、部分点を拾ってもらうように要素を多く盛り込むこと、午後Iが悪くてもあきらめないで午後IIを頑張ることが合格のポイントと思われる。


(2)午後II
 次に最難関の午後IIについては、
三好隆宏先生の「プロジェクトマネージャ 午後II 最速の論文対策 」

 が最短合格のための最良の本であると、確信を持って言える。この本がなければ合格はあり得なかったスゴ本である。
この本は「モジュール」を作っておき、これを組み合わせることを励行している。具体例なモジュールを使った論文技法については、本書を購入して熟読していただきたい。ただ、その凄さを紹介するために、以下簡単にまとめさせていただきたい*9


  何も準備せず、いざ現場に行って問題をみるとしよう。三問のうち、自分の経験にバッチリヒットした問題があれば、2時間で論文を書いて合格できるかもしれない。
 しかし、そういう「運」に頼るのではなく、事前準備をして、自分が直接経験がない問題でも、「自分がPGやSEとして参加したプロジェクトにおいてPMがやっていた工夫」「社内報で紹介されていたプロジェクトマネジメントの実例」「他の人の論文例」等から、論文に「使える材料」を選び出してストック(保存)しておけば、どんな問題が出ても、「自分が経験したA社案件のシステムを使って、PMの工夫については社内報にあったB社の例、評価や課題については模範論文のあの内容を使おう」といった感じで回答できるようになり、確実に合格できるということである。


プロマネ試験の問題をみてみよう。3題から1つを選ぶが、それぞれ、設問アから設問ウという形で「書くべきテーマ」が指示されている。例えば、「システム概要」「人間関係の問題点」「解決のための工夫点」等を書けと指示されているので、そのようなテーマで回答用紙を埋める必要があることは、誰でも分かるだろう。しかし、この「テーマ」さえ同じであれば、良い評価が取れるのか?
「否」である。


 問題文をよく読むと、設問アから設問ウの前に、比較的長文の記載がされており、テーマに関する例示がされている。与られたテーマが「あなたはどうやって人間関係をマネジメントしたのか?」という問題であれば、問題文そのものに「例えば、要員のモチベーションを上げる」とかが例示されている。もちろん無意味に例示が存在する訳がない。例示がある理由は「こういう例を書いてね」という誘導であり、これを全て論文に盛り込む必要はないものの、例示を完全に無視すると「明後日の方向」の答案になりやすい*10
では、その問題文に例示にされている文言を回答にそのまま書けばいいのかというと、それだけでは足りない。先ほどの例でいうと、「要員のモチベーションを上げて人間関係をマネジメントした。」とだけでは、原稿用紙は埋まらないだろう。やはり、プロマネとしての知識・経験があることを示すため、何かのエピソードを使ってふくらませる必要がある。
特に、この膨らませる部分を現場で考えるのは大変であり、それはPMとしての経験が「ない」、ないしは、「少ない人」にとっては顕著である。そこで、事前に使えそうなエピソード等を「モジュール(部品)」として整理しておこう、そしてこれを組み合わせて、問題文の誘導に乗り、かつ、具体的で迫真的な論文にしよう。

というのが、私なりに理解する「モジュール」による合格答案の作り方である。詳しくは本書をぜひ読んでいただきたい。


この本は、具体的な過去問に即してモジュールを使った論文技法を説明し、いろいろなアドバイスも散りばめている。特に、アドバイスのうち、組織要員管理は一番出やすいし応用が効くという記載は試験当日に効き、組織要員管理の論文を選択したところ、合格することができた。
本書は非常に薄いので、前日の一夜漬けでも効くことは効くだろう。しかし、できれば1ヶ月前ないしはもう少し前に一読して、「モジュールの整理」をしておく方が合格率が上がりそうである。


具体的なモジュールの整理方法であるが、実務経験をお持ちの方は「経験の棚卸し」をされるのがよろしいと思われる。それぞれのプロジェクトの概要や特徴をまとめたり、あのプロジェクトでPMの◯さんがこんな苦労をしていたな等の「試験で使えそうなエピソード」をピクアップする訳である。ただ、実務経験がないと、モジュールが出てこない。社内報等の情報源があればそれも良いが、「公開情報」から、モジュールを作る方法がある。それは、合格レベルにある答案例からモジュールを抽出し、これをストックして組み合わせるという方法である。
具体的には、私は、岡山 昌二先生の「プロジェクトマネージャ合格論文の書き方・事例集 (情報処理技術者試験対策書) 」

プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第4版 (論文事例集シリーズ)

プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第4版 (論文事例集シリーズ)

を参考にさせていただいた。同書は同じ問題に二つの回答が載っている問題もあり、いろいろな具体例が豊富に挙がっている。この中から試験で使えそうなのをモジュールとして簡潔に要約し、ストックした。具体例には、モジュールをまとめた10数ページのワードファイルを作成し、これを暇な時間に読み込んだ。


(3)勉強期間について
諸般の事情で1ヶ月しか勉強できなかったので、「1ヶ月でできる事だけに注力して全力を尽くす」という方法を採った。
結果的には辛うじて合格することができたが、プロジェクトマネージャ試験は1ヶ月で「余裕で」合格できるというものではないということを痛感した。
また、今回は幸いにして1ヶ月の間は、仕事中以外は勉強に集中できたが、「勉強しようと思ったらプロジェクトが火を吹いた、客先でトラブル発生」等のリスクが発生することもある。
「既に合格レベルで論文も書けるよ」という方を除けば、応用情報レベルの方であっても3ヶ月以上の勉強期間を設けた方が安心であろう。


3.息抜きがてらに
  息抜きにお勧めなのは司馬紅太郎先生の「空想プロジェクトマネジメント読本」である。

空想プロジェクトマネジメント読本

空想プロジェクトマネジメント読本

 午前IIは最近PMBOKが問われるところ、本書はPMBOK(古いバージョンですが)の勉強にも役立つ。面白さのあまり、魔法少女まどか☆マギカにからめたこんな馬鹿なエントリを書いてしまったぐらいである。
ほむほむのプロジェクト・マネジメント〜ぷろ☆マネ!? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
ちなみに、魔法少女まどか☆マギカ情報処理技術者試験といえば、定番は、
魔法少女まどか☆マギカに学ぶ,試験合格の7つのコツ
ですね。


 更にオススメは夏海公司先生の「なれる!SE 4 誰でもできる?プロジェクト管理」である。

プロジェクト・マネージャを目指される方なら、PM魂を揺さぶられるはずですので、ぜひ読んで欲しい本である。内容は結構デフォルメがあるものの、結構案件によっては近いものもあるので、ニヤニヤできるはず。ただ、いくら「実務」で使えるノウハウであっても、試験には「形式上のチェックしかしないPMOは屑」とか、「管理するメンバは◯と◯と◯に分かれる*11」とかは出ないので、息抜きがてらに。
正式契約結ぶ前なら、内定済のベンダを取り替えてもOK?〜なれる!SEと契約締結上の過失 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


4.PM経験0のアホヲタ論文再現
平成23年春のプロジェクトマネージャ試験午後IIの第3問は以下のようなものであった。

問3 システム開発プロジェクトにおける組織要員管理について
 プロジェクトマネージャ(PM)には、プロジェクト目標の達成に向けてプロジェクトを円滑に運営できるチームを編成し、チームを構成する要員が個々の能力を十分に発揮できるように要員を管理することが求められる。
 要員のもつ能力には、専門知識や開発スキルなどの技術的側面や、精神力や人間関係への対応力などの人間的側面がある。プロジェクトの遂行中には、ともすれば技術的側面を重視しがちである。しかし、人間的側面に起因した問題(以下、人間的側面の問題という)を軽視すると、次のようなプロジェクト目標の達成を阻害するリスクを誘発することがある。
 ・意欲の低下による成果物の品質の低下
 ・健康を損なうことによる進捗の遅延
 ・要員間の対立がもたらす作業効率の低下によるコストの増加
 PMはプロジェクト遂行中に人間的側面の問題の発生を察知した場合、その問題によって誘発される、プロジェクト目標の達成を阻害するリスクを想定し、人間的側面の問題に対して原因を取り除いたり、影響を軽減したりするなどして、適切な対策を取る必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ

設問ア あなたが携わったシステム開発プロジェクトの目標、及びプロジェクトのチーム編成とその特徴について、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べたプロジェクト遂行中に察知した人間的側面の問題と、その問題によって誘発されると想定したプロジェクト目標の達成を阻害するリスク、および人間的側面の問題への対策について、800字以上1600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた対策の評価、認識した課題、今後の改善点について、600字以上1200字以内で具体的に述べよ

  以下は、PM経験0のアホヲタによる論文の再現である。冒頭の三行だけ大人の事情で変えていますが、それ以外は試験当日書き起こしたほぼ完全な再現である。なお、マズローの欲求五段階説だの、腕利きプログラマのトラブルだのは、

プロジェクトマネージャ合格論文の書き方・事例集 (情報処理技術者試験対策書)

プロジェクトマネージャ合格論文の書き方・事例集 (情報処理技術者試験対策書)

から、ほぼそのままモジュールとして利用させていただいている。


 答案を書く際に最優先事項として気を付けたのは、問題文の「誘導に乗る」ことである。要員の意欲の低下や、要員間の対立が問題文にあるので、自分のモジュールにある、意欲低下事例、要員間対立事例をピックアップした。後は問題文の聞いていることに従って、特徴&目標→問題→リスク→対策→まとめという順番にモジュールを置いていった
 お陰様で、A評価をいただき、合格することができた。


なお、この再現は合格最低ライン答案であり、模範答案ではないことにご留意いただきたい。模範答案は、三好先生の答案を参考にしていただきたい。

問3 システム開発プロジェクトにおける組織要員管理について


1.プロジェクトの目標と特徴
1.1 プロジェクトの目標

 私がプロジェクトマネージャ(PM)として従事したプロジェクトは、自動車部品メーカA社の生産管理システムのリプレースである。A社は、B自動車系列の自動車部品メーカーであり、B自動車からの厳しいJIT部品供給要求に的確に応えるため、昔ながらのオフコンで動いていた生産管理システムを、クライアント・サーバでリプレースすることになった。そこで、生産管理に強みを持つ中堅ベンダであるC社がこのプロジェクトを受託し、私がPMに任命された*12
  プロジェクトには2つの目標があった。
 一つ目が、納期厳守である。現行システムを来年4月以降も動かす場合、予定される制度改正への対応をする必要があり、A社はそれを嫌がった。そこで、来年4月から新システムを稼働させることが絶対的な目標であった*13
  二つ目がオンザジョブトレーニングであった。1.2で述べるとおり、C社の教育制度の関係で、3名を作業に従事させながら教育することが目標とされた。


1.2プロジェクトのチーム編成と特徴
 私の下に、オンライン処理チームと、バッチ処理チームの2つのチームを置いた。各チームにはリーダ1人と、それをサポートするサブリーダ2人を置いた。
 今回のチーム編成の特徴は2つである。
 まず、納期厳守の目標を達成するため、3人のベテラン技術者に参画してもらった。クライアント・サーバ形式の生産管理システムの経験豊富なベテランをクリティカルパスに張り付けることで、納期が約1年と、規模の割には比較的短いこのプロジェクトの目標達成を確実なものとしようとしたのである*14
 次に、C社では、2〜3年下流工程を経験したプログラマに、上流工程をOJTで経験させることとしている。このプロジェクトには3名の3〜5年目の要員が参加し、ほぼ初めての要件定義や外部設計に参加することとなった*15


2.人間的側面の問題
2.1. OJTについて
2.1.1 人的側面の問題

 要件定義は、C社の要員が A社の担当者から要件をヒアリングし、これをドキュメントにまとめて共同レビューを行い、指摘点を修正するという過程を経る。
 3名がほとんど上流工程の経験がないので、私はリーダらに、三人を「フォローしてくれ」と依頼した。
 最初は三人がやる気を見せているようであり、日報 からもその様子が伺われ、また、顔を合わせた時も生き生きとしていた。ところが、要件定義が始まって2〜3週間が経過した時点で、日報の記載が雑になり、浮かない顔をするようになった。
三人に何か問題が生じているのではと考え、本音を言いやすいよう、三人と個別面談をした*16。すると、リーダらが、三人のまとめた資料について、A社担当者もいる共同レビューの場でことこまかに指摘をするため、三人がやる気を失っていたことが分かった*17


2.1.2リスク
 意欲を失うと、効率性が落ち、また、品質低下にもつながる。更に、意欲の低下による失敗を咎められ、更に意欲がなくなるという負のスパイラルが発生する可能性もある。
 そこで、このまま放置すればOJTの目的が達成できないばかりか、要件定義の質や進捗にも悪影響を及ぼし納期にも影響を及ぼしかねなかった*18


2.1.3対策
 まず、三人に対してやる気を回復させようとした。マズローの五段階欲求説に則り、三人は認められたいと考えているとの仮説に基づき、三人が正しいことをしたら褒めるようにし、メンバにも励行させた。
 また、リーダらを集めて、三人に対して、細かいところは思い切って任せるよう指摘した。任せることで、責任感が生まれ、より意欲が沸くはずである。また、メンバに指摘をする時は、出来るだけA社担当者がいないところで指摘をするよう指示した。


2.2.ベテランについて
2.1.1 人的側面の問題

 ベテランに関し、設計過程で問題が起こった。それまで、時折雑談をしながら作業をしていたのが、雑談がなくなったことから、私は、その原因を探ろうと、タバコ部屋に出入りし、フランクに声をかけた。すると、ベテランが開発標準と異なる我流の設計をしようとしており、開発標準を守ろうとした他のメンバとの間に軋轢が生じていたことが分かった*19


2.1.2リスク
 ベテランが、自分が効率的なやり方を取りたがる気持ちは分かるが、人間関係が悪化すると、プロジェクトの効率性が悪化する。特に、ベテランはクリティカルパスに張っているから、ベテランが開発標準に違反し、手戻りが生じると、納期に与える影響は莫大なものになる。


2.1.3対策
 そこで、私は、ベテランを呼び、開発標準に従い、人間関係を改善するよう求めることにした。もっとも、ベテランにもプライドがあるので、可及的にこれを傷つけないように工夫した。
 まず、自分もプログラマ時代には開発標準よりも自分流のやり方の方が効率がよいと思っていたことや、それが結果的には個別最適になり、全体最適にはならなかったこと、今後の開発標準作成の際には ベテランの意見を取り入れるつもりであること等を伝え、開発標準に従うよう、丁寧にお願いした。
 その上で、インフォーマルコミュニケーションとして、ベテランと私で飲み会を行い、プログラマ時代のデスマーチの話等で盛り上がった*20。このようにして、一体感を形成した上で、若い人にアドバイスする等、良い関係を作るようお願いした。


3.プロジェクトを終えて
3.1 評価

 結果的に、プロジェクトは細かなトラブルはあったものの、なんとか納期に間に合わせることができた。
 OJTという意味では、対策をとった後、三人が生き生きと責任感を持って活動するようになり、曖昧性が少ない要件定義の作成に貢献した。三人は、「今まで下流をやっていて、なぜそんな仕様なのか分からないことがあったが、仕様の確定の過程が分かって良かった」と、上流工程の理解を深めており、OJTは成功と評価している。
 また、ベテランについても、あの後は、一体感をもってプロジェクトに協力するようになり、開発標準に準拠して、後輩に的確なアドバイスを送りながら
クリティカルパスの工程を遅れなく終わらせてくれた。これが、納期厳守という目標達成にもつながっており、この点も評価できる。


3.2認識した課題
 今回のプロジェクトを通じて認識した課題は以下の2つである。
 まず、抽象的な指示は、PMが予想をしない解釈を招くということである。リーダらは、「フォロー」というのを、ことこまかに指摘するという意味と捉えてしまい、意欲を削ぐ結果になった。
  次に、ベテランは、うまく人間関係が回ると普通の人の何倍もの生産性を出してくれるものの、こだわりがあるので、注意しないと人間関係を悪化させ、生産性を悪くしてしまうということである。


3.3改善点
 今回の反省を踏まえ、以下の2点を改善していきたい。
 まずは、指示は具体的にするということである。もし、リーダに対して、
最初から「細かいところは任せながらも、聞き取りのポイントや、顧客との調整の方法等は戸惑う可能性があるから相談に乗ってあげてくれ」と具体的に指示していれば、このようにはならなかったと考える。
 次に、ベテランとの人間関係に細心の注意を払うということであり、例えば開発標準策定に関与させる等、ベテランのこだわりを尊重し、ベテランとその周りの人のいずれもが気持ちよく働ける環境づくりが重要と考えている。
     以上

 上記の答案にAがついたことから考えると、A評価の最低ラインは、「ありそうな具体例」を使って「聞かれていることに素直に答える」答案であろう。
 三好先生の「プロジェクトマネージャ 午後II 最速の論文対策 」の方法論は本当に「使える」方法論であり、強くお勧めしたい。

まとめ
いろいろとITについてブログやTwitterを通じて皆様に教えていただきながらここまで来ることができたのは、大いなる喜びである。
 今後ともIT関係に携ろうと考えておりますので、どうぞ、よろしくお願いします。

*1:情報セキュリティスペシャリスト等、高度の別の資格の発表もありました。

*2:午前Iは免除、午前IIが84点、午後Iが74点

*3:受験者も若い人多いので、多くの方はチームリーダークラスのご経験で受けていらっしゃいます。その意味ではあまりハンデはないのです。

*4:午後Iとかもありますから、チャンス問題だけ覚えれば最終合格できる訳ではないですが。

*5:そのユーザーそのユーザー毎に特殊な「正解」があったりする。

*6:別解があることもありますが、10個も20個も別解があっては困る

*7:問題が含まれていること自体は良いことなのだが

*8:私もIPA発表の答えと1字1句違わない問題は1つもなかった。ただ、多くの問題で部分点をもらえたので74点であった。

*9:私なりの解釈なので、三宅先生の意図と異なっていたら申し訳ない。

*10:もちろん、例示にないけどもっと適切な事案を経験しているという方であれば、それでも合格できると思います。あくまでも、「誘導に乗ると合格しやすいよ」というだけです

*11:本書をぜひお読み下さい

*12:経験と「知識」で書くので、こういう書き方をすることには何ら問題ありません。私の場合知識100パーセントですが。

*13:納期厳守は、いろんな前振りに使えます。

*14:こっちを納期厳守とからめる予定です。

*15:こっちがOJTです。

*16:本音を言えるよう個別面談は午後Iの定番の一つです。

*17:叱るなら個別に。これが基本です。

*18:ちょっと納期の話ともからませてみました。

*19:ベテランが個別最適に走るというのは、よくありそうです。使いやすいモジュールです。

*20:飲ミニケーションも書きやすいモジュールです。