ついに発売!大島義則『行政法ガール』
- 作者: 大島義則
- 出版社/メーカー: 法律文化社
- 発売日: 2014/07/23
- メディア: 単行本
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1.待望の『憲法ガール』の続編
- 作者: 大島義則
- 出版社/メーカー: 法律文化社
- 発売日: 2013/05/29
- メディア: 単行本
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新時代の司法試験は、ライトノベルで対策完了? ー大島義則「憲法ガール」 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
同書の著者の大島先生の待望の新作が、『行政法ガール』である。
2.ここがすごい!
これまで、「行政法の演習書」は多く出版されているし、橋本博之『行政法解釈の基礎』を代表とするような「仕組み解釈」の本も存在した。しかし、これまで、網羅的な形で*1「仕組み解釈」をどのように具体的に司法試験の各過去問に適用して解いて行くのかを解説した本はなかったように思われる。その点において、『行政法ガール』は画期的な意味を持つ。
例えば、平成25年の問題で、賦課金の徴収の仕組みから処分性を検討する技法(17頁以下)、平成20年の介護保険法上の勧告の位置づけを読み解く技法(105頁以下)等、受験生の皆様が、『行政法ガール』を使って、きちんとおさえておけば必ず合格の助けになるだろう。
次に、小説のストーリーに沿って学べることである。ネタバレにならない程度に要約すれば、時間的には『憲法ガール』の後であり、「僕」が京都旅行をした際の新たな「出会い」と「冒険」がその内容になっている。『憲法ガール』を読んでおけば、*2より楽しめる一冊になるが、『憲法ガール』とは独立のストーリーであることから、『行政法ガール』だけを読んでも楽しめる*3。
更に、最近の新司法試験問題の傾向を踏まえた対策方法が論じられているところである。例えば、司法試験行政法過去問を検討すると、すぐに分かるのは「ヒント」の多さである。「もうそこに、ほとんど答えが書いているんじゃないか」というほどの強烈な誘導*4に、じゃあ、問題文を誘導に従って並べれば合格するのではないかという錯覚を覚える受験生もいるだろう。しかし、それは錯覚に過ぎないのであって、ヒントを踏まえてどのように合格答案を書くかは、『行政法ガール』201頁以下の「ラミ先生のワンポイントアドバイス」を参照されたい。
また、実務家として行政法に向き合っている方と受験生の違いとして、「各個別法の個別条文の趣旨」をどこまで重視するかがあるだろう。司法試験で問われるのは、訴訟要件論だけではなく、本案論、つまり、なぜその個別の行政処分が違法/適法なのかも問われる。しかし、その本案上をどう主張するのかについては、受験生はあまりよくわかっていない気がする。『行政法ガール』140頁以下の「ラミ先生のワンポイントアドバイス」では、処分根拠法規の趣旨目的に照らした本案論の書き方が説明されており、大変有益である。
3.まずはサンプルから
『行政法ガール』第一話の原型は、
行政法ガール 第1話「新たな出会い ~平成18年新司法試験その1~」 - インテグリティな日々
という形で、インターネット上に掲載されている。
また、「はしがき」
「はしがき」【pdf】
及び、「目次」
「目次」【pdf】
も公開されている。
『行政法ガール』に興味を持たれた方は、まずは、サンプルを読まれてはいかがだろうか。
4.広がる『行政法ガール』の世界
『行政法ガール』の出版を記念して、これまで、ほぼ日刊として、「法クラ流行語大賞」等を伝えてきた「法クラ新聞」(@inflorescencia)が、(隔)月刊法クラ新聞として発刊されていることは注目に値する。
(隔)月刊法クラ新聞【pdf】
個人的にはあの中村真先生が四コマを書かれているのが面白かった。
更に、超豪華景品がもらえると、一部業界で話題になっているのが、「行政法ガール吹き出しコンテスト」である。
『憲法ガール』のメインヒロインのトウコちゃんと、『行政法ガール』のメインヒロインのシエルさんが言い争いをしている絵の「吹き出し」に適切な言葉を入れるものであり、なんと、優秀賞は「著者と1日すごせる券」である。大島先生と1日京都旅行をして『行政法ガール』の「聖地」を巡る等の妄想が広がる大変素晴らしい企画と思われる。
さらに、『行政法ガール』出版記念の講演会も開催される。
京都産業大学 大学院 法科大学院/法科大学院 特別講演会「行政法ガールの著者司法試験を語る」開催
http://www.kambaikai.jp/member/index.html
まとめ
『行政法ガール』は、司法試験過去問をどのように仕組み解釈で解いて行くのかを小説形式で説明する、素晴らしい本である。『憲法ガール』ファンや司法試験受験生はもちろんであるが、行政事件で説得的な主張をどう組み立てればいいか悩まれている実務家の方、行政法好きの学部生の方にも読んで頂きたい。
そして、『行政法ガール』は、新聞に、吹き出しコンテストに、そして、講演会にと、更なる広がりを見せる。『行政法ガール』の世界がどこまで広がって行くのかについても同時に注目して行きたい。