ラブライブ!スーパースター!!3期から学ぶダイバーシティマネジメントの基本
*本エントリは、法務系アドベントカレンダー #LegalAC 2024年の参加作品であり、複数の書籍で「四大法務交流団体」と呼ばれる、「経営アニメ法友会」の中で、Ronnorが所属するラブライ部会の会務活動です!ラブライブ!スーパースター!!3期の概ね第8話位までのネタバレを含むので気をつけてください!
私は2020年の経営アニメ法友会設立以来、会務活動として、リーガルアドベントカレンダーへの投稿を続けており、今回で5回目である。
まず最初に申し上げると、私は決して、「ダイバーシティ・アンド・インクルージョンで一人一人が輝く会社(キラキラ)!」等と意識高く叫ぶタイプではない。しかし、例えば、「50代の上司が若い頃学んだ『昭和』的なやり方で20代の部下に接してしまい、部下が困る」「優秀で、日英に堪能で、専門性を有する外国人従業員に対し、日本人感覚でジョブローテーションをさせ、すぐに本人が『専門性を活かせない』と不満を持って早期退職する」等の事例を踏まえ、いかにそれぞれ「異なる」従業員がそれなりに気持ちよく仕事をできる環境を作るかについては常々考えてきたところである*1。
このような前提の下、本年10月から放映中のラブライブ!スーパースター!!3期*2では、3年生で主人公の澁谷かのん(元々部長やっていたLiella!というグループを辞めた)が、1年生のオーストリアからの留学生、ウィーン・マルガレーテと、同じく1年生で癖の強い、鬼塚冬毬の2人と共に「トマカノーテ(冬毬・かのん・マルガレーテの名前から)」というスクールアイドルグループの管理職を務める姿が描かれる。
以下、ラブライブ!スーパースター!!3期のエピソードを元に、キラキラダイバーシティならぬ、泥臭いダイバーシティマネジメントの基本を学んでいきたい。
1 表面的な違いのみを見ず、本質を見抜く
ダイバーシティというのであるから、何らかの意味で多様性がある、つまり違っている人々がメンバーとなる。ここで、失敗するダイバーシティマネジメントの典型例として、表面的な非本質的違いに惑わされる、というものがある。
典型的な本質ではない違いとして「年齢(若いから、一年だから)」とか「国籍(外国人だから、オーストリア人だから)」というのがある。これらはもちろん一定の影響があるファクターであることは否定しないものの、全てを「今時の若者はこうだ」とか「外国人はこうだ」と言った雑な理由で整理をしてしまうと、「私がいうことを聞いてくれないのは今時の若者だから」「コミュニケーションを試みても外国人だから伝わらない」等という、一見わかったような感じだが、実は何も言っていない話でお茶を濁すことになり、同じ間違いを繰り返すことになる。
だからこそ、本質を見抜いていくしかない。例えば、マルガレーテは生徒会長の葉月恋にLiella!に誘われたが、これを断った。それは、単純に昨年の優勝グループであるLiella!に入ってスクールアイドルの全国大会で優勝して母国オーストリアに戻ることを希望しているのではなく、自分が昨年負けたLiella!に勝ち、これを乗り越えて母国に戻って来ること、ここにマルガレーテのトマカノーテに所属する意味があると考えているからである。ここが「本質」である。
また、冬毬はなぜこれまでマニーのみに執着していた姉が、突然マニーにならない*3スクールアイドルのために時間を浪費している。それはなぜなのか、これを見極めることを目的としてトマカノーテに所属しており、それもまた「本質」である。
渋谷かのんはそれらを見抜いた上で、ダイバーシティマネジメントを実践しているところに強みがある。
2 愛想・社交辞令を本気にしてはならない
実務上、ダイバーシティマネジメントの管理の対象者が、「愛想よくしよう」とか「社交辞令」として本当は思ってないことを言い、管理をする人がそれを本気にするという事態が容易に生じる。例えば「頑張ってくれてると思って安心していたら、実は不満が溜まっていて、ある日退職申し出があって驚く」といったものである。
かのんにとって幸運だったのはマルガレーテと冬毬が、愛想が悪いことであろう。もちろんツンツンしていて感じが悪いのだが、逆に言えば、本音を踏まえて対策を講じやすい。
ところが、会社に入ることができる人というのはつまり、面接における様々な「微妙な質問」をうまく乗りこえて、適切な回答ができる人である。このような人は愛想が良く、社交辞令がうまい。そこで、それが原因で、多くのダイバーシティマネジメントの失敗が発生してしまう。
ただ、それを相手のせいにするのは筋違いだろう。要するに、表面上の愛想の良さに惑わされず、社交辞令を本気にしないことが求められているのである。
3 共通の目標を見つける
ダイバースなチームの管理で一番難しいのは、目標がバラバラで、それぞれそれぞれのやりたい方向に動くということである。ある意味昭和な時代においては、上から共通目標が降ってきて、無理矢理にもその目標に合わさせられていたが、今はそのような時代ではない。
そうすると、会社としての経営戦略や、それを踏まえて一応法務としての「目標」が決められたとしても、それが個人目標にどのように落とし込まれ、どのようにして、本人にその達成に向けたやる気を出させるのか、という部分を別途考えないといけない時代である。
3話では、練習に来ない冬毬にブチ切れ、トマカノーテをやめろというマルガレーテを宥めるかのんの姿が描かれる。「色んな人がいるから私達だって輝ける場所がある」といいながら、冬毬と向き合うかのん。この発言だけを見るとかのんはキラキラダイバーシティ女子(棒)なのであるが、実際にはそうではない。
かのんは、まさに、「ダイバーシティ」を実現することの意味を理解している。一体感のあるチームという意味では、マルガレーテと一緒となって、冬毬排除に向かうのが一番簡単である。ただ、そこであえてダイバーシティを実現するため、茨の道を行き、茨城県牛久市の冬毬の家に向かうのである。もちろん、実務において軽々にパースナルスペースに入ることも問題を生じさせる。そこで、アニメのように簡単ではないが、単なるお題目ではなく、冬毬の協力を得るため、どうすれば、共通目標を見つけて一緒にスクールアイドルを頑張れるかを考えるかのんの姿は、ダイバーシティの本質である、(共通目標を見出すための)「茨の道」を示している。
4 目標到達に合意する
共通点を見出せたとしても、単に一方的に「この共通点に向けて頑張ってくれるだろう」と思い込むだけでは、実際に動くかは分からない。むしろ、それを一方的期待に留めた管理職のほうが悪い、といえる。
やはりそこは、働きかけをして、その目標への到達を合意すべきである。そこでいう目標は、決して、上から降ってきた「法務でこういう方針になったから、よろしく」ではなく、「法務の方針にも合致し、かつ、本人も希望する方向性に合致するなもの」なのであるから、単なる形だけの合意したフリではなく、本気でやるつもりになる可能性が高まるだろう。
7話では、3人が一致団結してLiella!に勝つ、という目標到達に合意した。もちろん、同床異夢・呉越同舟的なところはあり、冬毬の本当の目的は姉の本気度を試す、マルガレーテの本当の目的はLiella!へのリベンジではあるものの、どのような形であれ同じ目標達成に向けて頑張ることが合意できたことは重要である。
5 挫折しそうな出来事に負けず、フィードバックを掛ける
せっかく合意して進めても、トラブルは相次ぐ。例えば、人間関係の問題で目標到達が難しい等である。実際、2話では、簡単にオンラインライブで1万いいねを集められると思っていたが、マルガレーテが過去に行った振る舞い(2期で発生したラブライブ!軽視発言)によって観客が離れていき、せっかくの歌声を届けることができず、フェスに参加する条件を満たせなかった、というトマカノーテ最大の挫折が描かれている。
それでも、そこからフィードバックを掛けて対応していくしかない。ダイバーシティマネジメントというのは、「困難山積み」の中、地べたを這いつくばって頭を下げたり、のたうち回る現実の言い換えである。みんなが自分と同じように考えて同じように行動してくれれば、どんなに楽か。しかし、現実はそうではない。そうではない以上、困難に直面する度に、どうやって対応するか考え、その経験を踏まえて次よりよくなるように、(その困難によって遠のいた目標に、再度近づけるように)ひたすら歩みを進めるしかないのである。
第8話で迎えた大団円、もちろんフィクションだから、という批判や「茶番」という指摘は十分あり得るものの、そこまでに至るかのんの苦労には、一定のリアリティが含まれているように感じた。
これらは法務に直結せずもう少し広い内容であるが、ラブライブ!スーパースター!!3期は、ダイバーシティマネジメントその他の法務にも役立つ内容盛りだくさんである!是非多くの法務の皆様に視聴頂きたい!
明日はマギー住職さんです!