アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

ラブライブ!スーパースター!!3期から学ぶダイバーシティマネジメントの基本

ラブライブ!スーパースター!!3期から学ぶダイバーシティマネジメントの基本

 

 

 

 

*本エントリは、法務系アドベントカレンダー #LegalAC 2024年の参加作品であり、複数の書籍で「四大法務交流団体」と呼ばれる、「経営アニメ法友会」の中で、Ronnorが所属するラブライ部会の会務活動です!ラブライブ!スーパースター!!3期の概ね第8話位までのネタバレを含むので気をつけてください!

 

 

私は2020年の経営アニメ法友会設立以来、会務活動として、リーガルアドベントカレンダーへの投稿を続けており、今回で5回目である。

 

 

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 まず最初に申し上げると、私は決して、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンで一人一人が輝く会社(キラキラ)!」等と意識高く叫ぶタイプではない。しかし、例えば、「50代の上司が若い頃学んだ『昭和』的なやり方で20代の部下に接してしまい、部下が困る」「優秀で、日英に堪能で、専門性を有する外国人従業員に対し、日本人感覚でジョブローテーションをさせ、すぐに本人が『専門性を活かせない』と不満を持って早期退職する」等の事例を踏まえ、いかにそれぞれ「異なる」従業員がそれなりに気持ちよく仕事をできる環境を作るかについては常々考えてきたところである*1

 

このような前提の下、本年10月から放映中のラブライブ!スーパースター!!3期*2では、3年生で主人公の澁谷かのん(元々部長やっていたLiella!というグループを辞めた)が、1年生のオーストリアからの留学生、ウィーン・マルガレーテと、同じく1年生で癖の強い、鬼塚冬毬の2人と共に「トマカノーテ(冬毬・かのん・マルガレーテの名前から)」というスクールアイドルグループの管理職を務める姿が描かれる。

 

以下、ラブライブ!スーパースター!!3期のエピソードを元に、キラキラダイバーシティならぬ、泥臭いダイバーシティマネジメントの基本を学んでいきたい。

 

1 表面的な違いのみを見ず、本質を見抜く

ダイバーシティというのであるから、何らかの意味で多様性がある、つまり違っている人々がメンバーとなる。ここで、失敗するダイバーシティマネジメントの典型例として、表面的な非本質的違いに惑わされる、というものがある。

 

典型的な本質ではない違いとして「年齢(若いから、一年だから)」とか「国籍(外国人だから、オーストリア人だから)」というのがある。これらはもちろん一定の影響があるファクターであることは否定しないものの、全てを「今時の若者はこうだ」とか「外国人はこうだ」と言った雑な理由で整理をしてしまうと、「私がいうことを聞いてくれないのは今時の若者だから」「コミュニケーションを試みても外国人だから伝わらない」等という、一見わかったような感じだが、実は何も言っていない話でお茶を濁すことになり、同じ間違いを繰り返すことになる。

だからこそ、本質を見抜いていくしかない。例えば、マルガレーテは生徒会長の葉月恋にLiella!に誘われたが、これを断った。それは、単純に昨年の優勝グループであるLiella!に入ってスクールアイドルの全国大会で優勝して母国オーストリアに戻ることを希望しているのではなく、自分が昨年負けたLiella!に勝ち、これを乗り越えて母国に戻って来ること、ここにマルガレーテのトマカノーテに所属する意味があると考えているからである。ここが「本質」である。

また、冬毬はなぜこれまでマニーのみに執着していた姉が、突然マニーにならない*3スクールアイドルのために時間を浪費している。それはなぜなのか、これを見極めることを目的としてトマカノーテに所属しており、それもまた「本質」である。

 

渋谷かのんはそれらを見抜いた上で、ダイバーシティマネジメントを実践しているところに強みがある。

 

2 愛想・社交辞令を本気にしてはならない

実務上、ダイバーシティマネジメントの管理の対象者が、「愛想よくしよう」とか「社交辞令」として本当は思ってないことを言い、管理をする人がそれを本気にするという事態が容易に生じる。例えば「頑張ってくれてると思って安心していたら、実は不満が溜まっていて、ある日退職申し出があって驚く」といったものである。

 かのんにとって幸運だったのはマルガレーテと冬毬が、愛想が悪いことであろう。もちろんツンツンしていて感じが悪いのだが、逆に言えば、本音を踏まえて対策を講じやすい。

 

 ところが、会社に入ることができる人というのはつまり、面接における様々な「微妙な質問」をうまく乗りこえて、適切な回答ができる人である。このような人は愛想が良く、社交辞令がうまい。そこで、それが原因で、多くのダイバーシティマネジメントの失敗が発生してしまう。

 

 ただ、それを相手のせいにするのは筋違いだろう。要するに、表面上の愛想の良さに惑わされず、社交辞令を本気にしないことが求められているのである。

 

3 共通の目標を見つける

 ダイバースなチームの管理で一番難しいのは、目標がバラバラで、それぞれそれぞれのやりたい方向に動くということである。ある意味昭和な時代においては、上から共通目標が降ってきて、無理矢理にもその目標に合わさせられていたが、今はそのような時代ではない。

 そうすると、会社としての経営戦略や、それを踏まえて一応法務としての「目標」が決められたとしても、それが個人目標にどのように落とし込まれ、どのようにして、本人にその達成に向けたやる気を出させるのか、という部分を別途考えないといけない時代である。

 3話では、練習に来ない冬毬にブチ切れ、トマカノーテをやめろというマルガレーテを宥めるかのんの姿が描かれる。「色んな人がいるから私達だって輝ける場所がある」といいながら、冬毬と向き合うかのん。この発言だけを見るとかのんはキラキラダイバーシティ女子(棒)なのであるが、実際にはそうではない。

 かのんは、まさに、「ダイバーシティ」を実現することの意味を理解している。一体感のあるチームという意味では、マルガレーテと一緒となって、冬毬排除に向かうのが一番簡単である。ただ、そこであえてダイバーシティを実現するため、茨の道を行き、茨城県牛久市の冬毬の家に向かうのである。もちろん、実務において軽々にパースナルスペースに入ることも問題を生じさせる。そこで、アニメのように簡単ではないが、単なるお題目ではなく、冬毬の協力を得るため、どうすれば、共通目標を見つけて一緒にスクールアイドルを頑張れるかを考えるかのんの姿は、ダイバーシティの本質である、(共通目標を見出すための)「茨の道」を示している

 

4 目標到達に合意する

 共通点を見出せたとしても、単に一方的に「この共通点に向けて頑張ってくれるだろう」と思い込むだけでは、実際に動くかは分からない。むしろ、それを一方的期待に留めた管理職のほうが悪い、といえる。

 

 やはりそこは、働きかけをして、その目標への到達を合意すべきである。そこでいう目標は、決して、上から降ってきた「法務でこういう方針になったから、よろしく」ではなく、「法務の方針にも合致し、かつ、本人も希望する方向性に合致するなもの」なのであるから、単なる形だけの合意したフリではなく、本気でやるつもりになる可能性が高まるだろう。

 7話では、3人が一致団結してLiella!に勝つ、という目標到達に合意した。もちろん、同床異夢・呉越同舟的なところはあり、冬毬の本当の目的は姉の本気度を試す、マルガレーテの本当の目的はLiella!へのリベンジではあるものの、どのような形であれ同じ目標達成に向けて頑張ることが合意できたことは重要である。

 

5 挫折しそうな出来事に負けず、フィードバックを掛ける

 せっかく合意して進めても、トラブルは相次ぐ。例えば、人間関係の問題で目標到達が難しい等である。実際、2話では、簡単にオンラインライブで1万いいねを集められると思っていたが、マルガレーテが過去に行った振る舞い(2期で発生したラブライブ!軽視発言)によって観客が離れていき、せっかくの歌声を届けることができず、フェスに参加する条件を満たせなかった、というトマカノーテ最大の挫折が描かれている。

 それでも、そこからフィードバックを掛けて対応していくしかない。ダイバーシティマネジメントというのは、「困難山積み」の中、地べたを這いつくばって頭を下げたり、のたうち回る現実の言い換えである。みんなが自分と同じように考えて同じように行動してくれれば、どんなに楽か。しかし、現実はそうではない。そうではない以上、困難に直面する度に、どうやって対応するか考え、その経験を踏まえて次よりよくなるように、(その困難によって遠のいた目標に、再度近づけるように)ひたすら歩みを進めるしかないのである。

 第8話で迎えた大団円、もちろんフィクションだから、という批判や「茶番」という指摘は十分あり得るものの、そこまでに至るかのんの苦労には、一定のリアリティが含まれているように感じた。

 

 

 

 これらは法務に直結せずもう少し広い内容であるが、ラブライブ!スーパースター!!3期は、ダイバーシティマネジメントその他の法務にも役立つ内容盛りだくさんである!是非多くの法務の皆様に視聴頂きたい!

 

 明日はマギー住職さんです!

*1:それはお前がダイバーシティ溢れる「問題社員」だからだろ、というツッコミは甘んじて受けよう。

*2:1期と2期をみなくても楽しめるが、見るともっと楽しめます!

*3:特に、自分のチャンネルにLiella!を出すことが禁止されている状態で

「法務解体」シナリオの批判的検討

 「法務解体」シナリオの批判的検討

 

 

*このエントリは、裏法務系アドベントカレンダー(裏LegalAC)の一環として執筆されたものです。法務系アドベントカレンダーは、毎年一部の方がハードルを上げてしまい、参加しにくい、書きにくいという状況が生じます。この度は12/1の裏の一番手(表の一番手が取りたかった(泣))として、ハードルをあえて下げに下げ、「このレベル以上ならどんなエントリでも参加していいんだ」という強烈な安心感を与えたいと考えておりますので、雑文ご容赦下さい。なお、本日dtk先生が表で素晴らしいものをあげられています!
 
なお、拙著『Q&A 若手弁護士からの相談199問』を元にした議論が含まれています。

1 はじめに

法務*1は、現時点で忙しい部門であるし、将来はもっと忙しくなりそうである。様々な法改正、判例変更、新たな実務対応が生じ、その対応に追われており、仕事は増えこそすれ、減らすためにはかなり「大鉈」を振るわないといけないだろう。このような状況に鑑みれば、、今は大変だし、今後も人が増えないと大変だが、長期的な将来を見据えれば、法務は徐々に大規模化することが見込めるし、必要な要員を確保するため、転職市場等における法務のスキルのある人のニーズも高まるだろう。法務の将来についてこのような理解をしている人も少なくはないのではないか。

しかし、これとは真逆の方向の考え方も示されている。このような法務機能を組織内でどの部門が担うべきかという議論は昔から行われており、今に始まったものではないが、例えば、昨年のリーガルアドベントカレンダーの酒井先生のエントリ(しかも私の担当回の一つ前)では、「日本版リーガルテック史〜2030年に向けて」として、以下の議論を行っている。

note.com


法務部門が法務機能を担うという当たり前を疑い、「自社に法務機能をどう実装するか」という点を考え、実行していくことが求められてくると考えます。

(中略)

時代の変化に伴い、企業成長を支えるリスクマネジメントという法務機能全般を一部門が担うことは難しくなっており、その限界を迎える日は近いと考えます。

(中略)

法務部門が主導して、営業部や開発部門などを巻き込み、リスクマネジメントプロセスを策定し、継続的改善を加える業務基盤を整える必要があります。

(中略)

法務は『部門』から『機能』へ」2030年に向けて。

これらの記載から、酒井先生はこれまで法務が行ってきたリスク管理業務を引き続き法務という一部門で行うことは難しいことから、各部門にリスク管理機能を担ってもらい、法務部門は司令塔的な役割に留まるという将来像をイメージしていることが推察される。

酒井先生ご自身はそこまで踏み込んではいないが、この考えを推し進めれば、「結局リスク管理という機能が社内に存在することそのものが重要であって、法務部門が存在することは必要はない」として、全ての部門に法務担当者(リスク管理担当者)は存在するが、法務部門はなくなるといった将来像(例えば現在すでに、事業部門、例えば営業部の営業支援セクションに契約担当者がいるといった会社が存在するところ、そのような事業部にいる法務担当者だけになる将来像)や、極端な話であるが、「法務担当者」や「リスク管理担当者」すらいなくなり、全てのビジネスパーソンが法律・契約の素養やリスク管理意識を持って業務にあたるのだ、という考えもあり得る。

これは、ある意味では「法務部門解体」に繋がりかねないところであって、警戒感を覚える方も多いだろう。以下、(法務部解体に反対する場合の)「説得力のない議論」について(2)、なぜ各部門に法務機能を分散させることにメリットがあるとされているのか(3)、それでも法務部門を維持強化すべき理由(4)について雑感を述べたい*2


2 「説得力のない議論」について

ここで、上記1で述べた法務解体論に対しては以下のような反論があるかもしれない。

「法務部門が解体されてしまうと、頑張って獲得してきた法務部長等のポストがなくなってしまう。もし、各部門のジュニアレベルの支援担当者が(リーガルテックの支援を受けながら)リスク管理等を担当するようになれば、法務「機能」は会社に残っても、給料の安い、低いランクのポジションしかなくなってしまう。場合によっては全ての従業員が(リーガルテックの支援を受けながら)リスク管理等を行うとなると、そもそも法務系ポジションすらなくなり、本務として法務とは全く異なる営業等を新たに担当しなければならなくなる。そうすると、法務の専門性を有する我々として社内の昇進が難しくなったり、場合によっては社内で生き残るためには、法務の専門性を打ち捨てて、ゼロから他の部門の仕事を学ぶ必要が生じるかもしれない。そのようなことにならないよう、法務部門の解体は絶対反対である。」

しかし、この議論は法務の中の「内輪」の議論としては支持されるかもしれないものの、その議論で会社の他の部門や経営を説得することは困難と言わざるを得ない。むしろ、もし、上記のような議論しかできないのであれば、経営からは、「全ての従業員がリーガルテックの支援を受けることで法務が技術的に要らなくなるようなリーガルテックが出現し、その導入コストが法務の現在の予算を下回るなら、経営判断として法務を解体する」と言われてしまうだろう。

問題は、本当にこのような説得力のない議論しかできないのかであって、下記3及び4では、より説得的議論に向けて検討を行いたい。

 


3 なぜ各部門に法務機能を分散させることにメリットがあるとされているのか

やはり、説得的な議論をするためには、いわば「法務解体論」の根拠に遡るべきだろう。

なぜ法務部門がリスク管理を司るのではなく、各部門がリスク管理を行う方向が志向されるのだろうか。

この点は、先ほどの酒井先生のエントリが以下を述べることが参考になる。

時代の変化に伴い、企業成長を支えるリスクマネジメントという法務機能全般を一部門が担うことは難しくなっており、その限界を迎える日は近いと考えます。また、すでに現場のビジネスの最先端の事象は多岐に渡り、さらに高速で変化していく状況の下では、法務部門が適切な時期・内容で統制を及ぼすことの難易度は一層上がっていると考えます。


このような議論を正しく理解しているかは分からないが、私なりに、以下の二つの問題、すなわち、①専門性の問題と、②スピードの問題が課題として挙げられ、その解決策が各部門への法務機能の実装なのだと理解した。

一つは、①専門性の問題として、リスク管理の内容が多岐に渡り、適切な内容のリスク管理をするには様々な部門の専門性、いわばビジネスの専門性が必須であるところ、これまでのような法務が各部門とコミュニケーションしながらそのビジネスの専門性を補いリスク管理することに限界があるのではないか、という問題意識があるのだろう。

もう一つは、②スピードの問題として、状況が刻一刻と変化する中で、その変化に迅速に対応することが必要であるところ、そのような対応をビジネスがわざわざ法務部門に情報をあげて、そこでやり取りをして行うというのは時間がかかる。適時の対応のためには、まさに最先端の変化が生じている現場においてその場で対応できる必要がある、という問題意識もあるのだろう。

確かに、法務が遅いとか、ビジネスを分かってないといった声は従来から上がっていたところであり、もちろん法務なりに努力はしているものの、例えば法務の人手不足によって時間が掛かる等、やむを得ない事情で改善ができていないところもあったかもしれない。この点は、法務の立場からすると「必要なリソース(例えば転職者に提示する給料)を経営が法務に提供しないから」という見方もあるところではあるが、各部門として、そのような経営の問題を捨象して物事を考え、法務に対して不満を持っている可能性自体は否定できない。その結果として、

「法務はビジネスのことが分かってないし遅い、我々はこれまで法務が難しいため、自分たちでリスク管理をすることは諦めていた。しかし、テクノロジーにより、我々がリスク管理をできるようになったら、もはや法務は要らない、それが本来のあるべき姿だ」

このような考えを持つ人がいてもおかしくはないだろう*3



4 それでも法務部門を維持強化すべき理由

そうすると、法務として法務部門という部門を維持強化すべきことを説得的に説明したければ、このような考えを各部門が持っていてもおかしくないことを前提に、いかに「それでも法務が部門として残ることが必要」と説明するか、という点を考えなければならない。

この点は、私はこれまで、『Q&A 若手弁護士からの相談199問』等の中で、法務は単なるリスク管理を行っている訳ではないとして、「法務=リスク管理」という、世の一部において存在するように思われる、安易かつ表層的な考えに警鐘を鳴らしてきた

即ち、法務が行っているのは「全社的」リスク管理なのであり、この「全社」という部分に重点がある。この点の詳細は前掲書49頁以下を参照されたいが、要するに以下のような議論である。

- リスク管理は法務のみが行なっているのではなく、全部門全従業員が行っている。
- 例えば営業は、相手から契約の条件を提示された際に、その内容のリスクとメリットを天秤にかけて検討している
- そうすると、法務があえて(法的リスクを中心とした)リスク管理を営業に加えて行うことについては、何か「違う観点」から行うものではないと単なるリソースの無駄遣いである。
- ここで、例えば営業としてそのノルマ達成等のメリットに鑑みリスクを取れると判断したとしても、それはあくまでも営業の利害(特定の売上にコミットしていてそれを達成しなければならない等)があり、その中でのリスク管理に過ぎない。
- しかし、リスクを管理して、最終的には経営が経営判断原則で守られる範囲の意思決定をするためには、個々の部門の「部分最適」ではいけない。会社全体を見据えた「全体最適」でなければならない
- よって、ノルマ達成のため前のめりになって「この程度のリスクは取れる」等という営業に対して、会社全体の観点から、「ちょっと待った、この点とこの点とこの点は検討したのか?その観点から本当に取れるリスクなのか?」等という検討をする必要があり、それが全社的リスク管理である。



このように法務の役割が全社的リスク管理だと捉えることで、法務が独立した部門として存在することの意義を説明することができる。



例えば営業部門内にいる契約担当者や、営業担当者自身がこのような「全社」の観点での検討を行うことが容易でない。同じ部門内で、ある意味ではその部門の利害を超え、場合によってはその利害と相剋するような観点から、「全社的な観点で検討すべきリスクはないか、そのリスクは取れるか」を検討するためには、やはり、営業とは異なる部門において、すなわち、営業等の他の部門の「外」に、全社的リスク管理の専門部門たる法務部門を設置することが必要である。そのような法務部門が適切に全社的リスク管理をするためには、法務担当者の人事評価について他部門ではなく法務部門においてこそ行うべきである。また、法務の教育・研修については各部門に対するもの、及び、法務担当者に対するものの双方を法務部門が責任を持って行い、一見各部門の利害と異なるように見える法務部門独自の全社的リスク管理について法務担当者及び各部門の理解を増進すべきである。



そして、法務解体論の問題意識たる、(ビジネスの)専門性や迅速性については、より多くの予算等のリソースを法務に注ぎ込むことで、例えばスピードの遅さを人員を増やすこと等で解決すべきであり、それはまさに「法務部門の拡大」による解決となるだろう*4



5 おわりに

以上、単に法務系アドベントカレンダーに参加する人に「このレベルが最低ラインだ」ということを知って安心いただくというだけの目的で雑文を書かせて頂いた。本エントリは非常にお見苦しいもので、大変申し訳ないが、これから約25日のアドベントカレンダーの珠玉の作品の数々を拝読できることが心より楽しみである!

なお、本エントリ作成にあたり、dtk先生に貴重なご意見を頂戴した。もし法務系アドベントカレンダーに投稿するのに必要な最低限のレベルを充足しているとすればそれはdtk先生のお陰である。ここに感謝の意を表する。

*1:一口に法務といっても業務内容は多岐に渡っており、例えば、後述のとおり、契約審査は基本的に事業部に契約担当者を置いてそこで行っているかもしれないし、機関法務は総務等と共管だったりする。その意味で、各社の様々なありようがあることを前提にあくまでも一般的抽象的な法務の将来像という観点での検討を行うに留まっていることにつきご容赦いただきたい。

*2:なお、酒井先生の議論はリーガルテック技術の発展により、テクノロジーの支援によって各部門が法務機能を実際可能になるという未来像を前提とされているようである。この辺りは私はサッパリわからないので、「きっと法律の素人である各部門の担当者も、テクノロジーの発展によって『この契約条項にはこんなリスクがあるからこう直してはどうか』という形で適時適切に必要なリスク管理のための情報を入手できるようになるのだろうな」という程度の理解に基づいているところ、技術的に何ができるかについて解像度を高める方向でこの問題を検討するアプローチも本エントリとは全く別方向のものとして存在し得るだろうと考えていることを付言しておこう。リーガルテックには何らかの限界がある可能性があり、そのような限界を法務部門ではなく、各事業部門の法務担当者や従業員一人一人がリーガルテックを利用する中で補えるのか、という問題意識は別途存在すると思われる。

*3:なお、最近の傾向として、法律以外の倫理等の要請に基づくリスク管理等があり、これは法律の専門性をもとに、法律を中心とするリスク管理を行ってきた法務にとって手に余るのではないかという問題意識も存在する。このような問題意識については本エントリの範疇を超えており、別の機会に更に検討したい。

*4:なお、かなり頑張れば、例えば「(小さな)法務部門が司令塔となり、各部門の契約担当者と連携しながら全社的リスク管理を行い、各部門の契約担当者の人事評価は法務部門が行うのであり、各部門の上司が行うのではない」等と設計することで、法務部門を縮小しながら全社的リスク管理を行うことはあり得るだろう。しかし、それは、形式的に法務部門に所属していないというだけで、その「各部門の契約担当者」を法務部門に所属させた場合と実質はあまり変わらない以上、そのような技巧的な対応をしてまでも法務部門の現状を大きく変化させる上では意味はないと考える。

「ラブライブ!The School Idol Movie」から学ぶ、法務部門と法務パーソンのあり方

ラブライブ!The School Idol Movie」から学ぶ、法務部門と法務パーソンのあり方

 

 

 


明日からまた新しい年度が始まる。年度の始まりに応じて、新しいことを始める人も多いだろう。そして、そのような新しいことが始まる時期だからこそ、あえて「温故知新」の観点から、経営アニメ法友会企画として、古い話を振り返りたい。

2024年3月に4DXで再公開されたこの作品は、元々は2015年公開の映画である。つまり約10年前の「古い」作品である。既にこの作品の法的分析については、このブログ上で行ったところである。

 

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しかし、その後、約10年に渡り法務経験を増加させた現時点で、四大法務交流会の一角を占める経営アニメ法友会の一会員として、この映画が、いかに企業法務に役に立つかを力説したい。

 

 

1 法務の「原点」を明確にする

 

法務は、忙しい。その理由は、依頼してくるビジネス(なお、人事労務経理、広報、総務等のバックオフィス部門からの依頼もあり、ここではそれらを含む概念として「ビジネス」と呼んでいる)として、「自分からの依頼にすぐに対応して欲しい」とリクエストすることが多いからである。これらのリクエストは、ビジネスにおけるそれぞれの担当者としては確かに合理的である。例えば、今月のノルマを達成するには、後⚫︎日で契約を締結しなければならない、やっと相手と基本合意に達したというのに、法務が「チェックに1週間かかるし、色々修正するので修正内容について相手と交渉が必要」と述べる場合、「法務がビジネスを止めている」と憤ることも心情的には理解できなくもない。とはいえ、法務リソースは有限であり、ビジネスに言われるがままに対応していると、すぐパンクし、残業等の大変なことになる。だからこそ、そのような「悩ましい」場合に立ち戻るべき原点が必要である。

本作品においては、周囲の期待(下記4参照)に応えてスクールアイドルを続けるべきかを悩む穂乃果に対し、(その心象風景又は将来像と思われる)女性シンガーが、自分もグループで歌っていたのがグループが終わると言うタイミングでいろいろなことを考えた等と述べ、それでどうしたのかと問う穂乃果に対し、以下の回答をする。

 

簡単だったよ

とても簡単だった

今まで自分たちがなぜ歌ってきたのか 

どうありたくて何が好きだったのか

それを考えたら、答えはとても簡単だったよ

ラブライブ!The School Idol Movie」より引用


このアドバイスを法務の文脈に引き直せば、立ち戻るべき原点がないからこそ、個別の対応についてフラフラしてしまう。その結果として、原点を確固たるものとしておけば簡単なことがなかなか決まらない。だからこそ、経営とすり合わせた上で、何について法務として優先対応し、何を相対的に劣後させるかという大方針を策定するべきである。この大方針は、法務の方針であるから法務において策定すべきではあるものの、これはまさに、営業のAさんも、開発のBさんも、総務のCさんも「早くしてくれ」と言う中、会社として真に優先すべきは何か、という話である以上、企業全体の戦略と整合的な「原点」を構築し、その内容どおりで優先順位をつけて進めることについて経営と握ることが重要である。

 

 2 個人としても「原点回帰」をして決める

上記は、法務という部門全体の話だけではない。我々法務パーソンとしても、様々な迷いが生じることがある。

例えば、以下のようなものである。

 

・より良い法務となるためにどうすればいいか、法律の勉強をする、ビジネスを学ぶ等いろいろな方法があるが、全てをする時間はない

・プレイヤーとして専門性を磨くか、マネージャーとして昇進を目指すか

・今の会社に留まるべきか、それとも転職して新たなチャンスを掴むべきか

 

このような悩みに対しては、自分自身が常に立ち戻ることができる「原点」が何かを明確にすることが重要である。

μ'sは、単なるアイドルではなく、期間限定で、短い高校生の時期だけにおいて全力を尽くそうとするスクールアイドルであることで、最大の輝きを発揮した。これこそがμ'sの「原点」であり、穂乃果は、女性シンガーの助言により、そこに立ち戻ったことで、結論を導くことができた。

我々も、自分は何のために法務をやっているのか等、自分の人生の岐路で常に立ち戻れる根本的な価値観を明確にして進んでいくべきである。

 

3 組織として変化しながら包摂するNYのような組織であり続ける

ダイバーシティ&インクルージョンという言葉は人口に膾炙しているが、それが用いられる文脈によっては、ネガティブなニュアンスのこともみられる。しかし、これをポジティブに、より良い組織づくりに活かすべきである。

その例が劇中で「次々に新しく変化していく」「なんでも吸収してどんどん変わっていく」と評されるNYである。

組織は人が入っては出ていく。この3月で去る人、4月に来る人も多いだろう。その中で、組織は柔軟に変化してそれらの新しい人材が活躍できるよう広く受け入れる必要がある。そして、このような、なんでも吸収して次々に新しく変化していくNYのような組織こそが、常に活性化され続け、進化し続ける組織である。


4 周囲の期待との付き合い方

そもそも誰にも何も期待されてないという場合だってあるかもしれない。しかし、個人でも法務という組織でも、何らかの期待を受けることはあるだろう。例えば上司に「今期はこれをやってほしい」と期待されるとか、経営から法務が「こういう役割を果たしてほしい」と期待される等である。そして、その期待を前向きに使える場合もあるが、それに押しつぶされることもある。

μ'sに対しては、理事長等から引き続きアイドルを続けてほしいという期待が表明された。ただ、μ'sはそのような期待がされてるからと言うだけで、唯唯諾諾と、何も考えずに期待に応える存在ではない。つまり、プラスになる限りで役立てるがそれが絶対ではなく、期待があっても「原点」と異なればこれと違う選択をするのである。

我々も、期待と適切に付き合い、適切な範囲でそれをプラスに利用するが、マイナスにならないようにすることが重要である。


5 次世代への承継

 私が今回映画を再度鑑賞して、目に涙を浮かべたのは、μ'sが慣れない(海未が死ぬ思いをした)海外撮影などを行いながら、ドーム大会をなんとか実現させ、スクールアイドルという伝統を作り出そうと努力する姿である。10年後の「答え合わせ」を知っている私は、心の中で「大丈夫、Aqoursも、ニジガクも、Luella!も、蓮の空も、あるんだよ!」と大声で叫びながら涙した。

 

今の法務が「最盛期」で終わってはならない。仮に今の法務が良い組織であっても、例えば「名物法務部長」が去って、法務組織が崩壊したなら、それは最善の結果ではない。やはり、次世代にその想いを伝えていかなければならない。そのような方法の一つとして、法務として重要なことを言語化し、教育研修を通じて全員で共有し、次の世代に引き継ぐことがあり得る。もちろん、今の法務をコピーする必要はない。Aqoursは、偉大すぎる伝説のμ'sを意識はしながらも自分たちらしさ、自分たちなりの輝きを追求した。次世代が自分達なりの法務の姿を追求することは問題なく、むしろそのよりよい追求のための基礎を構築することこそ、我々の仕事である。

#legalAC #裏legalAC 経営アニメ法友会ラブライ部会活動ー幻日のヨハネから学ぶ企業法務

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この記事は #legalAC #裏legalAC 2023年リーガルアドベントカレンダーの第23日目の記事として投稿されたものです。

私は2020年の経営アニメ法友会設立以来、会務活動として、リーガルアドベントカレンダーへの投稿を続けており、今回で4回目である。

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経営アニメ法友会は書籍においても四大法務交流団体の一角として名前が挙げられている*1法務交流団体である。しろたん部会等それぞれの部会で活動が行われているが、私はラブライ部会、つまりアニメ「ラブライブ!」から法務へ役立つ知見を抽出し、それを広める深い活動を行っている。

 

高校生が部活動やサークル活動としてアイドル活動を行い、日本一を決める「ラブライブ!」を目指すスクールアイドルも多数いる世界において、スクールアイドル達の成長が描かれる「ラブライブ!」。2020年から2022年までは毎年ラブライブ!作品のいわゆる「正統続編」が放映札づけていたが、2023年は「異世界スピンオフ」の放映の年であった。すなわち、ラブライブ!サンシャイン!!におけるスクールアイドル、Aqoursのメンバーである津島善子ヨハネ)が主人公となり、異世界において成長する物語である。同作品から法務に役立つ知見を10個抽出してみた。

 

【注意:以下は「幻日のヨハネ Sunshine in the Mirror」のネタバレを含みます。】

 

1 「どこ」ではなく「誰と何を」が大事(第1話)
 ヨハネはヌマヅから大都会へ行って歌手デビューを目指したものの母親と約束した期限内にデビューすることはできず、失意のうちにヌマヅへ戻ってくる。そこには飼い犬(オオカミ)のライラプスが待っている。ライラプスと森へ向かうヨハネは、昔よくステージとして歌を歌った大きな切り株へ戻ってくる。ここで歌うとなぜか楽しく歌えると感じるヨハネヨハネの母が「大事なのはどこにいるかじゃないわ。誰と何をするかよ。」と述べるように、ヌマヅで歌えば、ライラプスと幼なじみのハナマルが聞いてくれた。その二人がいれば楽しく歌える。ヨハネは、故郷に帰ってきたのだ。

ヨハネの母の言葉にあるように、「どこ」ではなく「誰と何を」が大事である、このことは法務でも役に立つ。法務は比較的転職しやすく、自分として「違うな」と思えば、いろいろな場所で働くことができる。しかし、本当に大事なのは、「どこ」ではない。自分は誰と何をしたいのか、これを考えておかないと、本当はライラプスとハナマルがいるところで歌うことこそが大事だったのに、大都会に行ったヨハネのようになってしまうかもしれない。

 


2 短略的に考えてライラプスを売り払わない(第2話)
 期限が満了して母親から大都会での生活の経済的支援を打ち切られたヨハネ、そこに動物学者のリコが登場する。リコはライラプスが珍しい動物であり、ヨハネライラプスの調査に協力してくれるなら、リコは多額の協力金を払う、と提案する。その提案に一瞬心が揺らぐヨハネ

 例えば、会社が苦しい時に買収提案が来る。この提案は非常に高い価格で会社を買うというものかもしれない。それに協力してDDを受けると、突然の仮差押え。実は、DDはお金の支払いが滞ったことに業を煮やした取引先が、架空の買収提案をでっち上げて、財産をリストアップするためのものだった。

 これはあくまでも仮想事例だが、全社的リスク管理を行う法務は、特に苦しい時に短絡的に考えて取れないリスクを取ろうとするビジネスに対し、「そのまま案件を進めるとビジネスはいいかもしれないが、会社全体としては大きなリスクを抱え込むことになる」と、会社全体の視点からリスク管理をしていかなければならない。それはビジネスを「止める」というよりは、そのビジネスの内容が合理的に取れるリスクに留まるようにする、ということである。

 ヨハネは最後はリコにライラプスを売り払うことを思い留まったが、もしライラプスを売っていれば、ヨハネは大きな後悔をしたことだろう。

 


3 言い争っている暇はない危機管理(第3話)
 異変が起こっているヌマヅ。鹿等の動物が凶暴化して襲ってくる。それをチカ等のミリオンダラーとヌマヅ行政局執務長官のダイヤが倒そうとする危機管理を行う。しかし、ミリオンダラーとダイヤの間で言い争いが発生する。ヨハネは双方に対して言い争っている暇はないと言い渡し、冷静になって協力しあったミリオンダラーとダイヤは見事鹿を撃退する。

 危機管理は法務人生で一度も出会わないで済むのが一番良いだろう。しかし、1回、場合によって複数回、危機管理をしなければならないことがある。その場合、特に危機の原因を作った部門に対し、そのせいで危機管理のために例えば徹夜でお客様対応を余儀なくされる等している部門が強い不満を持って、険悪な関係になることもある。しかし、そのような言い争いをしても何のいいこともなく、単に危機管理がスムーズに進まないだけである。

 法務部門は時には、そのような各部門の対立の中で仲裁をしながら、お互いに1つの方向を見据えて手を取り合って危機に立ち向かうよう促す役割を果たさざるを得ないこともある。これはある意味「貧乏籤」的なものであるが、他の部門がやらなければ法務がするしかないだろう。


4 「どんな物も、必ず生まれ変わることができる」「いらない物はない」(第4話)
 カナンはリサイクルクイーンと呼ばれる。大きなブランコの修理を依頼され、メッセンジャーのヨウとヨハネらで一緒に修理をすることになる。一人では到底できないようなボロボロのブランコも力を合わせて修理を完了させる。

 カナンは「どんな物も、必ず生まれ変わることができる」「いらない物はない」と言う。これは、まさに人についても当てはまるだろう。現時点では燻っている人でも、要らない人はいない。必ず生まれ変わることができる。場所を変える(但し、「どこ」ではなく「誰と何を」が大事)とか、勉強をし直す等、いろいろな方法があるだろう。

 修理しながらブランコで遊ぶ子供達が見えるカナンとヨハネは、修理を完遂することができた。未来を見据えるビジョンを持って、諦めずに進んで行くことの重要性を教えてくれる。


5 「Know Who」(第5話)
 異変が起こっている理由を知りたいヨハネ。もしかするとワーシマー島にいる魔王に会うと魔王は異変の原因を知っているかもしれない。ヨハネはおっかなびっくりワーシマー島に行くと可愛らしい魔王、マリに出会う。マリはある理由で閉じこもっているが、人の心の声を聞き取ることができた。

 自分で全てを知っている必要はない。誰に相談すればいいか、それを知っていれば、適時にその人に相談することで、目的を実現することができる。会社でうまくやっていく上ではKnow WhatではなくむしろKnow Whoである。

 マリに出会ったヨハネは、怖がるマリを外の世界を連れ出すことができた。人々の関係性の中で、人が成長していくこともこの話では描かれている。

 
6 様々な人の知見を持ち寄って協力(第6話)
リコは、動物学者としての知見を持ち寄り、マリは人の心の声の知見を持ち寄り、お互いに異変解決に向けて情報を交換し合う。

Know Whoとも関係するが、いろいろな人がそれぞれの経験に基づき様々な知見を持ち合うことで、よりよく複雑な物事に対応できる。例えば、法務だけではなく、経理や人事やビジネス等の様々な知見をもとによりよくリスクに対応することができるかもしれない。

7 公式のやり取り以外の関係(第7話)
第7話ではヌマヅ女子会が開催され、9人のAqoursのメンバーが一堂に会することになる。
ダイヤは堅苦しく、いわば公式行事のように進めようとするが、そうではなく、気軽にできるのが女子会だ、として、最終的には全員が肩の力を抜いて交流することになる。

オンラインでのやり取りはともすると公式のやりとりだけになる。これに対し、リアル会議では会議前後に廊下等で挨拶をしたり、ちょっと言葉を交わして交流したりすることができる。そのような公式のやりとり以外の関係が信頼関係を作る部分はある。もちろん、オンラインでも、そのような関係を作る場を設ける工夫はあるが、いずれにせよ、公式のやりとり以外の関係も重要である。


8 バラバラだからいろんなことができる(第7話)
女子会の企画で何をしたいか質問をするヨハネ。実際にはバラバラなやりたいことが提案されてしまい、それをどう収集つけるか悩みに悩むヨハネ
その中で、多くの人の意見を汲み取り、様々な目的が実現できるような女子会が実現した。

やはり多様性があると、様々な意見が出てしまって、その結果収集がつかないという悩みも出やすい。
でも、最初から1つの「この方向性ありき」という進め方だと得られないものも多い。
つまり、多様性によってプロセスは大変となるが、その結果としてより良いものを得られる可能性がある。
だからこそ、多様性を前向きに捉えるべきである。

9 自分が気づくのを待つ(第9話)
ライラプスは全てを知っていた。しかし、それをヨハネに直接伝えるのではなく、ヨハネがヌマヅにいつでも戻ってこれて居場所があるようにした上で、幼なじみのハナマル等のヌマヅの仲間と交流する中でヨハネ自身が気付くのを待った。


後輩を指導する際に、「これが答えだ」と教えるということも1つの指導の方法である。
しかし、後輩自身に自分で気づかせるというのが場合によっては最善の指導かもしれない。
具体的な状況によるが、なかなか後輩指導がうまくいかないという人は、そのような「自分で気づいてもらう」よう忍耐強く待つという方法も1つ検討に値するだろう。

 

10 打つ手がなくても諦めず、自分の役割を果たす(第13話)
ヌマヅの異変が大きくなり、ダイヤは打つ手がないとパニックになりかけた。しかし、諦めず、ヌマヅ行政局執務長官としての役割を果たし続けた。

残念ながら、長い人生、打つ手がない、詰んだという状況になることはある。そして、そうであればパニックになるのも当然である。
しかし、そのような時でも諦めず、自分の役割を最後まで果たし続けると、状況が100%好転するものではないが、少なくとも自分が「可能性ゼロ」だと思っていたのが、ゼロではなかったとなることもある。諦めず、自分の役割を果たすことを検討すべきである。

 

 

 

*1:『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』 230頁

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本エントリは2023年裏リーガルアドベントカレンダー #裏legalAC のエントリです!


これまで、第1弾として『Q&A若手弁護士からの相談374問』を京野先生が、第2弾『Q&A若手弁護士からの相談203問』からRonnorが参加し、第3弾『Q&A若手弁護士からの相談199問』は京野先生、dtk先生そしてRonnorの三人共著となった。大変ありがたいことに、それぞれご好評頂いている。そのような中、まだタイトル・出版社は非公表であるが、第4弾の出版に向けて、鋭意執筆中である

 

 

第4弾は、リーガルリサーチを題材とする。第1弾や第2弾は若手弁護士や若手法務パーソン(法曹資格の有無を問わない)の実務上の悩みどころとなる法律問題を取り上げた。具体的な問題に対する回答を提供することは、もちろん読者の皆様に取って有益であるだろう。しかし、全ての実務で発生する問題を網羅的にリストアップして、回答を提供することは現実的ではない。

 


そのような観点からすると、一番良いのは「リーガルリサーチ」、つまり未見の問題に対して回答を導く能力を養うことであろう。これまで、OJTで丁寧にリーガルリサーチの方法を学ぶことができた人もいるのではないか。しかし、例えばデータベースのIDとパスワードを伝えられて終わり等、あまり丁寧には教えてもらっていない人もいるだろう。加えて、昔「紙を使ったリーガルリサーチ」を学んだ人も、法律書籍サブスク等の新しいリサーチツールをどのように利用してリーガルリサーチを効率的に実施するかについてリスキリングをすることが必要かもしれない。


そのような観点から、本書では、以下の内容について解説する予定である。


・適切な「問い」の立て方
・取っ掛かりの見つけ方
・条文からのリサーチ方法
・書籍や書籍サブスクを利用したリサーチ方法
・(裁)判例を利用したリサーチ方法
判例評釈・論文を利用したリサーチ方法
・インターネットその他を利用したリサーチ方法

 

例えば、インターネットの利用については、Google検索の利用について解説する予定である。Googleで検索する際、Googleは類義語を自動的に検索してくれる。これは「うろ覚え」の場合は良いが、例えば法律の条文の一部を入れて、条文に基づき議論するものをピックアップする場合等には不向きである。そこで、""で括ると完全一致検索になる。また、政府のサイトだけで検索する等特定のサイトで検索する場合はsite:とする。例えばsite:go.jpである。更に、pdfを読みたいならfiletype:pdfと付ける。このような技法を使うと、政府のサイトに掲載されている逐条解説PDFのみを検索できる。

 

"逐条解説" site:go.jp filetype:pdf

 

で検索してみると、様々な法令の所轄官庁による逐条解説を探すことができる。

これは本書で紹介する予定の技法のうちのごく一部に過ぎない。是非本書の刊行を楽しみにして頂きたい!

#若手弁護士からの相談 199問の重要設問27選【共著者による広告宣伝】

#PR 『 #若手弁護士からの相談 199問』から重要な問題を27個ピックアップ!

 

 

 2023年4月15日にじゃんく様( @jank_2525 )にTwitterスペースで本書を取りあげていただきました。ありがとうございます。

 

 

じゃんく様がその豊富な実務経験から最重要設問を27個選んでくださいました。質問だけですが、以下の通りです。

 

Q3 依頼者から是非弁護士の「適法意見」が欲しいと言われたが、調べれば調べるほど怪しい場合にどうすればいいでしょうか?

Q6 色々調べたものの、その問題が新しいことから、「答え」がない場合にどのように回答すればいいでしょうか?

Q7法律相談で依頼者の期待に応える上で、相談の場において、又は事前に気をつけるべきことはあるでしょうか?

Q13 依頼者が欲しいサービスを提供したいのですが、依頼者は何が「欲しい」のですか?

Q14 依頼者のビジネスプロセスというのは具体的に何を知るということですか?ビジネススキームの理解のことですか?

Q15 依頼者のビジネスプロセスは依頼者の担当法務パーソンが知っておくべきであり、顧問弁護士は知る必要がないのではないでしょうか?

Q16 頑張って成果物を出したのに、なぜ「それでは使えない!」と怒られるのですか?

Q17 依頼者のビジネス判断に委ねていいですか。

Q18 どうして依頼者は至急・緊急で要求をするのでしょうか?

Q19 どうして金曜に翌週月曜までの依頼が来るのですか?

Q20 納期を伸ばす方法はありますか?

Q38 どうやって「安全」にビジネスを前進させればいいでしょうか?

Q42 自社のビジネスで必要な法律知識を全部自分で持つ必要はないとのことですが、それでは何が必要ですか?

Q47 法務パーソンがビジネスを熟知すべきと言いますが、熟知すべき自社ビジネスの内容は具体的には何ですか?

Q53法務の行うコミュニケーション上の留意点にはどのようなものがありますか?

Q 54ビジネスから情報を引き出すコツは何でしょうか?

Q61 どうすることでそのようなキーパーソンとの良好な関係を形成することができるのでしょうか。

Q72具体的に、内外の橋渡しをどうするのですか?

Q 89上司から案件の依頼があったらどうすればいいですか。

Q 90上司に成果物を上げると「やり直し」をさせられます。

Q 91上司に「遅い」と怒られます。

Q 92上司に相談しても、「何も考えていない」と怒られます。

Q 93自分なりに考えていた点について「この点を考えていないのはおかしい」と怒られます。

Q 94上司に相談する際にメモをすべきですか?

Q 110緩急・メリハリのある対応とはどういう対応ですか。

Q160 インハウスとは何ですか?

Q 165インハウスが他の法務パーソンより難しいところはありますか?

 

もし、本書の購入を迷われている方がいらっしゃいましたら、是非書店等でこれらの重要設問の回答を立ち読み頂き、ご購入のご判断をして頂ければ幸いです。

 

 

 

 

#PR 刊行記念座談会企画〜『Q&A若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』が刊行されました!!

【広告記事】京野哲也=ronnor=dtk『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』出版記念ブログ上座談会 #PR

 

 

ronnorの3冊目の著作である、『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』が出版された。これは、『 Q&A若手弁護士からの相談 374問 Q&A若手弁護士からの相談 374問 』から始まるシリーズの第3弾であり、ronnorは既に第2弾の『Q&A若手弁護士からの相談203問 企業法務・自治体・民事編』に関与している。本エントリは『Q&A 若手弁護士からの相談199問』宣伝のため、共著者のdtk先生と本書について語る座談会企画である。

 

なお、本書出版までの経緯につき  

ronnor.hatenablog.com

 

 dtk1970.hatenablog.com

 

 

を、刊行後につき

dtk1970.hatenablog.com

も参照されたい。

 

1 はじめに

ronnor:dtk先生、ついに出版されました。おめでとうございます!

dtk:出版まで来ましたねえ...(遠い目)。

ronnor:約1年前の正月に突然原稿をお送りしてしまい申し訳ございませんでした。

dtk:最初の章の原稿(第2編第1章の草稿)を読みながら気づいたことがいくつかあったので、コメントを付して返信したあたりから話が始まったわけで...。


ronnor:正月のゆっくりされたいであろう時期に、連日本書1章分の原稿のレビューをして頂き、感謝しています。

 

dtk:熱のこもった原稿の最初の読者になれたのは楽しかったですし、大兄のリアクションもよかったので、やり取り自体が大変楽しかったです。そして、そこからさらに内容が進化して、最終的にこのような本という形になったわけですが、その一連のプロセスに参加させていただいたのは有意義でした。

ronnor:最初は2022年12月の法務系アドベントカレンダーの記事として、これまで「#新人法務パーソンへ 」というハッシュタグを使ってTwitter上で呟いていた内容をまとめようと思ったという程度でしたが、dtk先生のレビューを踏まえて大幅にブラッシュアップされたので、京野先生に出版社との交渉等の骨を折って頂き、出版にこぎつけました。

dtk:原稿を確定させる前には、こちらの益体もないブログを全部遡って読むという作業をされ、眩暈を禁じ得ないというか、頼むからやめてくれというか...(苦笑)。

ronnor:元々リアルタイムで拝読していたので「あったあった」という感じで思い出しながら取り込ませて頂きました。法務に役立つ知恵の塊ですので、共著にすることを認めて頂いたことを契機に、書籍にして共有すべき貴重なノウハウを反映させて頂きました。

【ここで「定番遣取」*1が発生しており、詳細は省略します。】

 


2 コンセプト

dtk:「若手弁護士からの相談」シリーズの第3弾となっていますが、ronnorさん関与前の第1弾及びronnorさんが最初に関与された第2弾とは大分毛色が違いますね。

ronnor:そうですかね? ここはシリーズを通じてどのようなメッセージを打ち出すか、ということを結構真剣に考えています。要するに「若手弁護士が何を必要とするか」というと、まずは一般民事に従事する(ことがある)弁護士の方が多い訳です。そこで、京野先生が、まずは一般民事の悩みを解決する第1弾を出版されました。そして、一般民事以外だとやはり企業法務が多いので、第2弾から私も入らせて頂き、企業法務の悩みを解決することにした訳です。

 

dtk:なるほど。特定分野の悩みには前の2冊で対応済という前提で、キャリア、仕事のノウハウやコミュニケーションという、特定の法分野に属しない悩みを第3弾で解決する、ということですか。


ronnor:ご明察の通りです。実務で解決すべき悩ましい法律問題への回答の指針は第1弾及び第2弾でかなり詳細に参照すべき対象を明示して示したつもりですので、今回の第3弾は「法律問題以外の悩み全て」というコンセプトにしています。

 

3 対象読者

dtk:企業内の法務担当者、企業外の弁護士さん双方に役に立ちそうな内容が多いですね。

ronnor:第2編は、新人法務パーソン向けのアドバイスとして呟いた内容の発展や、dtk先生のブログの内容を大幅に盛り込んで、法務パーソンがどうすればより良く業務を進めていくのか、という内容を入れていますので、是非広く法務パーソンの皆様にもお手にとって頂きたいですね。

dtk:第1編と第3編は企業法務に特化せず、様々な弁護士のキャリアを説明していますね。

ronnor:私自身は一般民事について、からきし知見がないので、京野先生にお助け頂きました。

dtk:共著であることの強みが出ているところですね。

4 読み方

dtk:この本の読み方としては、最初から通読するか、それとも、必要に応じてつまみ読みするか、どちらが良いでしょうかね。

ronnor:最初にdtk先生にお送りした際は頭から読むコンセプトでドラフトをしていましたが、「若手弁護士からの相談」シリーズの第3弾となることを踏まえて、Q&Aとし、それぞれのQ単位で読んでも違和感がないようにブラッシュアップしました。そこで、頭から読んで頂いても、問題意識に合わせてQ単位で読んでいただいても大丈夫です。

dtk:他のQへのクロスリファレンスが多いのもそういう意図を踏まえてのことですよね。

ronnor:出版社が違うのですが京野先生が『クロスリファレンス民事実務講義』を出されているので、京野先生と一緒にクロスリファレンスを頑張りました。


dtk:最初に自分が知りたいQから初めてそこからリファー先のQへと飛ぶ読み方もあり得ますね。

5 総括

dtk:アカウント名とはいえ、自分を示す名前がついた本を出すことができ、また、そこにこれまでのブログの内容も盛り込まれているということで、いまだに信じられない気がします。

ronnor:私にとっては3冊目ですが、是非4冊目、5冊目へとつなげていきたいですね!

dtk:本を書くのが好きだし、苦にならないということですね。


ronnor:まだ存在しない「私が読みたい本」を現実化させるプロセスは、今から楽しみです!

dtk:もし、こちらでお役に立てることがあれば遠慮なくどうぞ。

ronnor:ぜひよろしくお願いします!!

 

 

 

 

*1:お互いに相手のことを褒め合う現象について、経文緯武先生( @keibunibu )が名付けられたもの。