アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

#legalAC #裏legalAC 経営アニメ法友会ラブライ部会活動ー幻日のヨハネから学ぶ企業法務

#legalAC #裏legalAC 経営アニメ法友会ラブライ部会活動ー幻日のヨハネから学ぶ企業法務

 


この記事は #legalAC #裏legalAC 2023年リーガルアドベントカレンダーの第23日目の記事として投稿されたものです。

私は2020年の経営アニメ法友会設立以来、会務活動として、リーガルアドベントカレンダーへの投稿を続けており、今回で4回目である。

ronnor.hatenablog.com

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経営アニメ法友会は書籍においても四大法務交流団体の一角として名前が挙げられている*1法務交流団体である。しろたん部会等それぞれの部会で活動が行われているが、私はラブライ部会、つまりアニメ「ラブライブ!」から法務へ役立つ知見を抽出し、それを広める深い活動を行っている。

 

高校生が部活動やサークル活動としてアイドル活動を行い、日本一を決める「ラブライブ!」を目指すスクールアイドルも多数いる世界において、スクールアイドル達の成長が描かれる「ラブライブ!」。2020年から2022年までは毎年ラブライブ!作品のいわゆる「正統続編」が放映札づけていたが、2023年は「異世界スピンオフ」の放映の年であった。すなわち、ラブライブ!サンシャイン!!におけるスクールアイドル、Aqoursのメンバーである津島善子ヨハネ)が主人公となり、異世界において成長する物語である。同作品から法務に役立つ知見を10個抽出してみた。

 

【注意:以下は「幻日のヨハネ Sunshine in the Mirror」のネタバレを含みます。】

 

1 「どこ」ではなく「誰と何を」が大事(第1話)
 ヨハネはヌマヅから大都会へ行って歌手デビューを目指したものの母親と約束した期限内にデビューすることはできず、失意のうちにヌマヅへ戻ってくる。そこには飼い犬(オオカミ)のライラプスが待っている。ライラプスと森へ向かうヨハネは、昔よくステージとして歌を歌った大きな切り株へ戻ってくる。ここで歌うとなぜか楽しく歌えると感じるヨハネヨハネの母が「大事なのはどこにいるかじゃないわ。誰と何をするかよ。」と述べるように、ヌマヅで歌えば、ライラプスと幼なじみのハナマルが聞いてくれた。その二人がいれば楽しく歌える。ヨハネは、故郷に帰ってきたのだ。

ヨハネの母の言葉にあるように、「どこ」ではなく「誰と何を」が大事である、このことは法務でも役に立つ。法務は比較的転職しやすく、自分として「違うな」と思えば、いろいろな場所で働くことができる。しかし、本当に大事なのは、「どこ」ではない。自分は誰と何をしたいのか、これを考えておかないと、本当はライラプスとハナマルがいるところで歌うことこそが大事だったのに、大都会に行ったヨハネのようになってしまうかもしれない。

 


2 短略的に考えてライラプスを売り払わない(第2話)
 期限が満了して母親から大都会での生活の経済的支援を打ち切られたヨハネ、そこに動物学者のリコが登場する。リコはライラプスが珍しい動物であり、ヨハネライラプスの調査に協力してくれるなら、リコは多額の協力金を払う、と提案する。その提案に一瞬心が揺らぐヨハネ

 例えば、会社が苦しい時に買収提案が来る。この提案は非常に高い価格で会社を買うというものかもしれない。それに協力してDDを受けると、突然の仮差押え。実は、DDはお金の支払いが滞ったことに業を煮やした取引先が、架空の買収提案をでっち上げて、財産をリストアップするためのものだった。

 これはあくまでも仮想事例だが、全社的リスク管理を行う法務は、特に苦しい時に短絡的に考えて取れないリスクを取ろうとするビジネスに対し、「そのまま案件を進めるとビジネスはいいかもしれないが、会社全体としては大きなリスクを抱え込むことになる」と、会社全体の視点からリスク管理をしていかなければならない。それはビジネスを「止める」というよりは、そのビジネスの内容が合理的に取れるリスクに留まるようにする、ということである。

 ヨハネは最後はリコにライラプスを売り払うことを思い留まったが、もしライラプスを売っていれば、ヨハネは大きな後悔をしたことだろう。

 


3 言い争っている暇はない危機管理(第3話)
 異変が起こっているヌマヅ。鹿等の動物が凶暴化して襲ってくる。それをチカ等のミリオンダラーとヌマヅ行政局執務長官のダイヤが倒そうとする危機管理を行う。しかし、ミリオンダラーとダイヤの間で言い争いが発生する。ヨハネは双方に対して言い争っている暇はないと言い渡し、冷静になって協力しあったミリオンダラーとダイヤは見事鹿を撃退する。

 危機管理は法務人生で一度も出会わないで済むのが一番良いだろう。しかし、1回、場合によって複数回、危機管理をしなければならないことがある。その場合、特に危機の原因を作った部門に対し、そのせいで危機管理のために例えば徹夜でお客様対応を余儀なくされる等している部門が強い不満を持って、険悪な関係になることもある。しかし、そのような言い争いをしても何のいいこともなく、単に危機管理がスムーズに進まないだけである。

 法務部門は時には、そのような各部門の対立の中で仲裁をしながら、お互いに1つの方向を見据えて手を取り合って危機に立ち向かうよう促す役割を果たさざるを得ないこともある。これはある意味「貧乏籤」的なものであるが、他の部門がやらなければ法務がするしかないだろう。


4 「どんな物も、必ず生まれ変わることができる」「いらない物はない」(第4話)
 カナンはリサイクルクイーンと呼ばれる。大きなブランコの修理を依頼され、メッセンジャーのヨウとヨハネらで一緒に修理をすることになる。一人では到底できないようなボロボロのブランコも力を合わせて修理を完了させる。

 カナンは「どんな物も、必ず生まれ変わることができる」「いらない物はない」と言う。これは、まさに人についても当てはまるだろう。現時点では燻っている人でも、要らない人はいない。必ず生まれ変わることができる。場所を変える(但し、「どこ」ではなく「誰と何を」が大事)とか、勉強をし直す等、いろいろな方法があるだろう。

 修理しながらブランコで遊ぶ子供達が見えるカナンとヨハネは、修理を完遂することができた。未来を見据えるビジョンを持って、諦めずに進んで行くことの重要性を教えてくれる。


5 「Know Who」(第5話)
 異変が起こっている理由を知りたいヨハネ。もしかするとワーシマー島にいる魔王に会うと魔王は異変の原因を知っているかもしれない。ヨハネはおっかなびっくりワーシマー島に行くと可愛らしい魔王、マリに出会う。マリはある理由で閉じこもっているが、人の心の声を聞き取ることができた。

 自分で全てを知っている必要はない。誰に相談すればいいか、それを知っていれば、適時にその人に相談することで、目的を実現することができる。会社でうまくやっていく上ではKnow WhatではなくむしろKnow Whoである。

 マリに出会ったヨハネは、怖がるマリを外の世界を連れ出すことができた。人々の関係性の中で、人が成長していくこともこの話では描かれている。

 
6 様々な人の知見を持ち寄って協力(第6話)
リコは、動物学者としての知見を持ち寄り、マリは人の心の声の知見を持ち寄り、お互いに異変解決に向けて情報を交換し合う。

Know Whoとも関係するが、いろいろな人がそれぞれの経験に基づき様々な知見を持ち合うことで、よりよく複雑な物事に対応できる。例えば、法務だけではなく、経理や人事やビジネス等の様々な知見をもとによりよくリスクに対応することができるかもしれない。

7 公式のやり取り以外の関係(第7話)
第7話ではヌマヅ女子会が開催され、9人のAqoursのメンバーが一堂に会することになる。
ダイヤは堅苦しく、いわば公式行事のように進めようとするが、そうではなく、気軽にできるのが女子会だ、として、最終的には全員が肩の力を抜いて交流することになる。

オンラインでのやり取りはともすると公式のやりとりだけになる。これに対し、リアル会議では会議前後に廊下等で挨拶をしたり、ちょっと言葉を交わして交流したりすることができる。そのような公式のやりとり以外の関係が信頼関係を作る部分はある。もちろん、オンラインでも、そのような関係を作る場を設ける工夫はあるが、いずれにせよ、公式のやりとり以外の関係も重要である。


8 バラバラだからいろんなことができる(第7話)
女子会の企画で何をしたいか質問をするヨハネ。実際にはバラバラなやりたいことが提案されてしまい、それをどう収集つけるか悩みに悩むヨハネ
その中で、多くの人の意見を汲み取り、様々な目的が実現できるような女子会が実現した。

やはり多様性があると、様々な意見が出てしまって、その結果収集がつかないという悩みも出やすい。
でも、最初から1つの「この方向性ありき」という進め方だと得られないものも多い。
つまり、多様性によってプロセスは大変となるが、その結果としてより良いものを得られる可能性がある。
だからこそ、多様性を前向きに捉えるべきである。

9 自分が気づくのを待つ(第9話)
ライラプスは全てを知っていた。しかし、それをヨハネに直接伝えるのではなく、ヨハネがヌマヅにいつでも戻ってこれて居場所があるようにした上で、幼なじみのハナマル等のヌマヅの仲間と交流する中でヨハネ自身が気付くのを待った。


後輩を指導する際に、「これが答えだ」と教えるということも1つの指導の方法である。
しかし、後輩自身に自分で気づかせるというのが場合によっては最善の指導かもしれない。
具体的な状況によるが、なかなか後輩指導がうまくいかないという人は、そのような「自分で気づいてもらう」よう忍耐強く待つという方法も1つ検討に値するだろう。

 

10 打つ手がなくても諦めず、自分の役割を果たす(第13話)
ヌマヅの異変が大きくなり、ダイヤは打つ手がないとパニックになりかけた。しかし、諦めず、ヌマヅ行政局執務長官としての役割を果たし続けた。

残念ながら、長い人生、打つ手がない、詰んだという状況になることはある。そして、そうであればパニックになるのも当然である。
しかし、そのような時でも諦めず、自分の役割を最後まで果たし続けると、状況が100%好転するものではないが、少なくとも自分が「可能性ゼロ」だと思っていたのが、ゼロではなかったとなることもある。諦めず、自分の役割を果たすことを検討すべきである。

 

 

 

*1:『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』 230頁

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本エントリは2023年裏リーガルアドベントカレンダー #裏legalAC のエントリです!


これまで、第1弾として『Q&A若手弁護士からの相談374問』を京野先生が、第2弾『Q&A若手弁護士からの相談203問』からRonnorが参加し、第3弾『Q&A若手弁護士からの相談199問』は京野先生、dtk先生そしてRonnorの三人共著となった。大変ありがたいことに、それぞれご好評頂いている。そのような中、まだタイトル・出版社は非公表であるが、第4弾の出版に向けて、鋭意執筆中である

 

 

第4弾は、リーガルリサーチを題材とする。第1弾や第2弾は若手弁護士や若手法務パーソン(法曹資格の有無を問わない)の実務上の悩みどころとなる法律問題を取り上げた。具体的な問題に対する回答を提供することは、もちろん読者の皆様に取って有益であるだろう。しかし、全ての実務で発生する問題を網羅的にリストアップして、回答を提供することは現実的ではない。

 


そのような観点からすると、一番良いのは「リーガルリサーチ」、つまり未見の問題に対して回答を導く能力を養うことであろう。これまで、OJTで丁寧にリーガルリサーチの方法を学ぶことができた人もいるのではないか。しかし、例えばデータベースのIDとパスワードを伝えられて終わり等、あまり丁寧には教えてもらっていない人もいるだろう。加えて、昔「紙を使ったリーガルリサーチ」を学んだ人も、法律書籍サブスク等の新しいリサーチツールをどのように利用してリーガルリサーチを効率的に実施するかについてリスキリングをすることが必要かもしれない。


そのような観点から、本書では、以下の内容について解説する予定である。


・適切な「問い」の立て方
・取っ掛かりの見つけ方
・条文からのリサーチ方法
・書籍や書籍サブスクを利用したリサーチ方法
・(裁)判例を利用したリサーチ方法
判例評釈・論文を利用したリサーチ方法
・インターネットその他を利用したリサーチ方法

 

例えば、インターネットの利用については、Google検索の利用について解説する予定である。Googleで検索する際、Googleは類義語を自動的に検索してくれる。これは「うろ覚え」の場合は良いが、例えば法律の条文の一部を入れて、条文に基づき議論するものをピックアップする場合等には不向きである。そこで、""で括ると完全一致検索になる。また、政府のサイトだけで検索する等特定のサイトで検索する場合はsite:とする。例えばsite:go.jpである。更に、pdfを読みたいならfiletype:pdfと付ける。このような技法を使うと、政府のサイトに掲載されている逐条解説PDFのみを検索できる。

 

"逐条解説" site:go.jp filetype:pdf

 

で検索してみると、様々な法令の所轄官庁による逐条解説を探すことができる。

これは本書で紹介する予定の技法のうちのごく一部に過ぎない。是非本書の刊行を楽しみにして頂きたい!

#若手弁護士からの相談 199問の重要設問27選【共著者による広告宣伝】

#PR 『 #若手弁護士からの相談 199問』から重要な問題を27個ピックアップ!

 

 

 2023年4月15日にじゃんく様( @jank_2525 )にTwitterスペースで本書を取りあげていただきました。ありがとうございます。

 

 

じゃんく様がその豊富な実務経験から最重要設問を27個選んでくださいました。質問だけですが、以下の通りです。

 

Q3 依頼者から是非弁護士の「適法意見」が欲しいと言われたが、調べれば調べるほど怪しい場合にどうすればいいでしょうか?

Q6 色々調べたものの、その問題が新しいことから、「答え」がない場合にどのように回答すればいいでしょうか?

Q7法律相談で依頼者の期待に応える上で、相談の場において、又は事前に気をつけるべきことはあるでしょうか?

Q13 依頼者が欲しいサービスを提供したいのですが、依頼者は何が「欲しい」のですか?

Q14 依頼者のビジネスプロセスというのは具体的に何を知るということですか?ビジネススキームの理解のことですか?

Q15 依頼者のビジネスプロセスは依頼者の担当法務パーソンが知っておくべきであり、顧問弁護士は知る必要がないのではないでしょうか?

Q16 頑張って成果物を出したのに、なぜ「それでは使えない!」と怒られるのですか?

Q17 依頼者のビジネス判断に委ねていいですか。

Q18 どうして依頼者は至急・緊急で要求をするのでしょうか?

Q19 どうして金曜に翌週月曜までの依頼が来るのですか?

Q20 納期を伸ばす方法はありますか?

Q38 どうやって「安全」にビジネスを前進させればいいでしょうか?

Q42 自社のビジネスで必要な法律知識を全部自分で持つ必要はないとのことですが、それでは何が必要ですか?

Q47 法務パーソンがビジネスを熟知すべきと言いますが、熟知すべき自社ビジネスの内容は具体的には何ですか?

Q53法務の行うコミュニケーション上の留意点にはどのようなものがありますか?

Q 54ビジネスから情報を引き出すコツは何でしょうか?

Q61 どうすることでそのようなキーパーソンとの良好な関係を形成することができるのでしょうか。

Q72具体的に、内外の橋渡しをどうするのですか?

Q 89上司から案件の依頼があったらどうすればいいですか。

Q 90上司に成果物を上げると「やり直し」をさせられます。

Q 91上司に「遅い」と怒られます。

Q 92上司に相談しても、「何も考えていない」と怒られます。

Q 93自分なりに考えていた点について「この点を考えていないのはおかしい」と怒られます。

Q 94上司に相談する際にメモをすべきですか?

Q 110緩急・メリハリのある対応とはどういう対応ですか。

Q160 インハウスとは何ですか?

Q 165インハウスが他の法務パーソンより難しいところはありますか?

 

もし、本書の購入を迷われている方がいらっしゃいましたら、是非書店等でこれらの重要設問の回答を立ち読み頂き、ご購入のご判断をして頂ければ幸いです。

 

 

 

 

#PR 刊行記念座談会企画〜『Q&A若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』が刊行されました!!

【広告記事】京野哲也=ronnor=dtk『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』出版記念ブログ上座談会 #PR

 

 

ronnorの3冊目の著作である、『Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン』が出版された。これは、『 Q&A若手弁護士からの相談 374問 Q&A若手弁護士からの相談 374問 』から始まるシリーズの第3弾であり、ronnorは既に第2弾の『Q&A若手弁護士からの相談203問 企業法務・自治体・民事編』に関与している。本エントリは『Q&A 若手弁護士からの相談199問』宣伝のため、共著者のdtk先生と本書について語る座談会企画である。

 

なお、本書出版までの経緯につき  

ronnor.hatenablog.com

 

 dtk1970.hatenablog.com

 

 

を、刊行後につき

dtk1970.hatenablog.com

も参照されたい。

 

1 はじめに

ronnor:dtk先生、ついに出版されました。おめでとうございます!

dtk:出版まで来ましたねえ...(遠い目)。

ronnor:約1年前の正月に突然原稿をお送りしてしまい申し訳ございませんでした。

dtk:最初の章の原稿(第2編第1章の草稿)を読みながら気づいたことがいくつかあったので、コメントを付して返信したあたりから話が始まったわけで...。


ronnor:正月のゆっくりされたいであろう時期に、連日本書1章分の原稿のレビューをして頂き、感謝しています。

 

dtk:熱のこもった原稿の最初の読者になれたのは楽しかったですし、大兄のリアクションもよかったので、やり取り自体が大変楽しかったです。そして、そこからさらに内容が進化して、最終的にこのような本という形になったわけですが、その一連のプロセスに参加させていただいたのは有意義でした。

ronnor:最初は2022年12月の法務系アドベントカレンダーの記事として、これまで「#新人法務パーソンへ 」というハッシュタグを使ってTwitter上で呟いていた内容をまとめようと思ったという程度でしたが、dtk先生のレビューを踏まえて大幅にブラッシュアップされたので、京野先生に出版社との交渉等の骨を折って頂き、出版にこぎつけました。

dtk:原稿を確定させる前には、こちらの益体もないブログを全部遡って読むという作業をされ、眩暈を禁じ得ないというか、頼むからやめてくれというか...(苦笑)。

ronnor:元々リアルタイムで拝読していたので「あったあった」という感じで思い出しながら取り込ませて頂きました。法務に役立つ知恵の塊ですので、共著にすることを認めて頂いたことを契機に、書籍にして共有すべき貴重なノウハウを反映させて頂きました。

【ここで「定番遣取」*1が発生しており、詳細は省略します。】

 


2 コンセプト

dtk:「若手弁護士からの相談」シリーズの第3弾となっていますが、ronnorさん関与前の第1弾及びronnorさんが最初に関与された第2弾とは大分毛色が違いますね。

ronnor:そうですかね? ここはシリーズを通じてどのようなメッセージを打ち出すか、ということを結構真剣に考えています。要するに「若手弁護士が何を必要とするか」というと、まずは一般民事に従事する(ことがある)弁護士の方が多い訳です。そこで、京野先生が、まずは一般民事の悩みを解決する第1弾を出版されました。そして、一般民事以外だとやはり企業法務が多いので、第2弾から私も入らせて頂き、企業法務の悩みを解決することにした訳です。

 

dtk:なるほど。特定分野の悩みには前の2冊で対応済という前提で、キャリア、仕事のノウハウやコミュニケーションという、特定の法分野に属しない悩みを第3弾で解決する、ということですか。


ronnor:ご明察の通りです。実務で解決すべき悩ましい法律問題への回答の指針は第1弾及び第2弾でかなり詳細に参照すべき対象を明示して示したつもりですので、今回の第3弾は「法律問題以外の悩み全て」というコンセプトにしています。

 

3 対象読者

dtk:企業内の法務担当者、企業外の弁護士さん双方に役に立ちそうな内容が多いですね。

ronnor:第2編は、新人法務パーソン向けのアドバイスとして呟いた内容の発展や、dtk先生のブログの内容を大幅に盛り込んで、法務パーソンがどうすればより良く業務を進めていくのか、という内容を入れていますので、是非広く法務パーソンの皆様にもお手にとって頂きたいですね。

dtk:第1編と第3編は企業法務に特化せず、様々な弁護士のキャリアを説明していますね。

ronnor:私自身は一般民事について、からきし知見がないので、京野先生にお助け頂きました。

dtk:共著であることの強みが出ているところですね。

4 読み方

dtk:この本の読み方としては、最初から通読するか、それとも、必要に応じてつまみ読みするか、どちらが良いでしょうかね。

ronnor:最初にdtk先生にお送りした際は頭から読むコンセプトでドラフトをしていましたが、「若手弁護士からの相談」シリーズの第3弾となることを踏まえて、Q&Aとし、それぞれのQ単位で読んでも違和感がないようにブラッシュアップしました。そこで、頭から読んで頂いても、問題意識に合わせてQ単位で読んでいただいても大丈夫です。

dtk:他のQへのクロスリファレンスが多いのもそういう意図を踏まえてのことですよね。

ronnor:出版社が違うのですが京野先生が『クロスリファレンス民事実務講義』を出されているので、京野先生と一緒にクロスリファレンスを頑張りました。


dtk:最初に自分が知りたいQから初めてそこからリファー先のQへと飛ぶ読み方もあり得ますね。

5 総括

dtk:アカウント名とはいえ、自分を示す名前がついた本を出すことができ、また、そこにこれまでのブログの内容も盛り込まれているということで、いまだに信じられない気がします。

ronnor:私にとっては3冊目ですが、是非4冊目、5冊目へとつなげていきたいですね!

dtk:本を書くのが好きだし、苦にならないということですね。


ronnor:まだ存在しない「私が読みたい本」を現実化させるプロセスは、今から楽しみです!

dtk:もし、こちらでお役に立てることがあれば遠慮なくどうぞ。

ronnor:ぜひよろしくお願いします!!

 

 

 

 

*1:お互いに相手のことを褒め合う現象について、経文緯武先生( @keibunibu )が名付けられたもの。

私家版 法律書の「読み方」マニュアル

私家版 法律書の「読み方」マニュアル

 

 


企業法務における法律書の読み方について「マニュアル」というとおこがましいが、このように考えることもあり得るという内容を簡潔にまとめた*1

 

1 メリハリをつける
 法律書はいわば「無限」に出版されている。もちろん趣味で読むのであれば自由であるが、仕事のために読むのであれば、これらの多数の書籍を全部精読するなんてことは到底不可能である。そこで、メリハリをつけることが重要である。

 

2 知りたい情報がどこにあるかを知る
 そのような観点からは、まず、知りたい情報がどこにあるかを把握することが重要である。私は買った本をザッと最初から最後まで速読し、それでどこにどんな有用な情報が入っているかを把握するという方法を採用しているが、目次だけを読んでもいいかもしれない。また、最近はLionBolt等が出現しており、このような技術の支援を受けることも可能である。
 なお、知りたい情報がどこにあるかを知るということは、その精査の結果として「この本にはどこにも有用な情報がない」という結論が出ることもあるのかもしれまないし、ないのかもしれない*2

 

3 問題意識を持って読む
 メリハリをつけて読む上では、特定の問題意識を元に、その観点から知りたい情報を収集するために読むというのが最も合理的である。例えば、特定のリーガルリサーチが必要なので、その「答え」を知るために読むといったものである。

 

4 アウトプットにつなげる
 そして、仕事で当該事項のリサーチが必要であれば、必然的に「法律相談回答」等という形でアウトプットが出来上がる。しかし、そうではない場合もあるだろう。そうではない場合でも、漫然と読むのではなく、例えば「小ネタ」つまり何らかの論文や発表等につなげるつもりで読むことが有益である。

 

5 「読み方」を議論するよりとにかく「読む」ことが重要
 これまで、「読み方」について説明してきたが、読み方はそれぞれの人にとって、それぞれの「ベスト」があると思われる。あまり誰かがこう言ったからということに過度に影響されず、自分なりの読み方を確立するのが良いだろう。そして、最も重要なことであるが、読み方と良い本を読むことでは、圧倒的に後者が重要であり、とにかく良い本を「読む」ことが重要である*3。そして、量はどこかで質に転じる。多数の良書を読む中で自分なりの法律書の読み方が確立されるであろう。

*1:なお、本エントリは、本エントリに「便乗」して他の方の法律書の「読み方」マニュアル記事が投稿されることを期待しての投稿である。

*2:ポリティカルコレクトネスに配慮した記載

*3:極端なことを言えば本を1冊も読まずに「最も効率的な本の読み方とは」を語ることと、何も考えず本を1万冊読むことでは、後者の方が遥かに有益である。

便乗の便乗 法務担当者の私が「若いの」と仕事をする際に考えていること

若手との仕事の仕方は興味を持つ人が多いテーマである。最近、2つの優れたエントリが公表された。

chikuwa-houmu.hatenablog.com

note.com

実際には、ちくわ先生の

・定番の書籍や官公庁のサイトを教えること

・書籍に載っていないノウハウを言語化して伝える

・「若いの」を観察する

と、けんおじさんの

山本五十六

・経験を語る(押し付けない)

・「目的」を先に話す

で尽きているのですが、いくつか追加を。

 

1 「型」を覚えてもらう

 新人法務パーソンとしては、企業法務パーソンとしての最低限の素養ないしは「型」を覚えることが重要である。つまり、実務上は「原則としてはXとすべきだが、本件は様々な事情を考えてYとする」というように、「型」と乖離することもあるが、守破離の最初のステップとして「守」をできるようになることが重要である。Yをやっていてもそれが「型」を知った上での「型破り」なのか、「型」を知らない「型なし」なのかの相違は大きい。

 概ね、実務で頻繁に対応する類型の法律相談、契約対応、コンプラ対応等についてそれぞれ前提となる基本的な法律知識や標準的な業務プロセスについて理解し、基本的な対応で良い限り自分でできる、但し、それではうまくいかない場合に「違い」を認識して相談できるようにするということが「型」を覚えるの具体的な内容として挙げられるだろう。

 

2 「失敗」を語る(語りたいことではなく、聞きたいことを語る)

 結局、相談されなくなる理由は、自分が語りたいことを語ってしまい、若いのが知りたいことを語らないから、だと思われる。

 だからこそ、例えば、自分がいかに成功したか、という(多くの場合には、個別具体的事情が大きすぎて若いのが業務を遂行する上ではあまり役に立たない)成功譚や武勇伝を語るのではなく、(若いのが典型的な落とし穴にハマるのを回避するのに役に立つ)失敗を語るということが重要であろう。

 

3 「お節介」をしない

 それぞれの成長に必要な「タイミング」というのがある。例えば、「細かいところも教えてもらいたい場面」と「自分である程度の範囲を任せられてその裁量でやりたい場面」の双方があり、自分で頑張ってみたいタイミングで事細かく箸の上げ下ろしに至るまで指示をすれば、それは若いのとしては不愉快だろうし、逆に、細かいところを教えてもらいたいところで、「自由にやれ」と言われても戸惑ってしまうだろう。

 そういう意味では、過少介入も過剰介入もせず、適切な程度の介入をする、ということが大事である。もちろん、実際にどの程度の介入が適切か、というのは難しく、コミュニケーションを取ってそれを把握していかなければならない(ちくわ先生の「「若いの」を観察する」に相通じるところがある)が、いずれにせよ、「それは過少(過剰)介入ではないか」という観点を持ち、常に自分の後輩との接し方について自問自答することが重要である。

 

#杉原千畝プロジェクト 第5弾 ブラック事務所各論

#杉原千畝プロジェクト 第5弾 ブラック事務所各論

 

当サイトはブラック事務所の回避及び脱出を呼びかける #杉原千畝プロジェクト を2021年から続けており、これまで4つのエントリを書いている。

ronnor.hatenablog.com

ronnor.hatenablog.com

ronnor.hatenablog.com

ronnor.hatenablog.com

最近、二番手先生が「 ブラック法律事務所から逃げよう!! 」という素晴らしい記事を書かれている。当方でも啓発されて、少しブラック事務所について詳論したい。

 

onbensecond.com


まず、二番手先生のご指摘のとおり、ブラック事務所は以下の1つか複数の特徴を持つ。

パワハラ(暴力・暴言)が常態化する法律事務所
・労働条件や労働環境が過酷な法律事務所
・非弁提携、非弁事務員のいる法律事務所

以下では、そのことを前提に、少し各論的な話として、以下の5点を説明したい。
・セクションごとに違うことがある
・クライアントごとに違うことがある
・ボスのみが地雷ではなく、兄弁・姉弁が問題なことも
・ブラック後輩の面倒を見させられる場合
・非弁でなくても「事務員が多い」場合、弁護士に期待される役割によってはブラックなことがある


・セクションごとに違うことがある
 例えば、甲事務所のイソ弁や、元甲事務所イソに「甲事務所どう?」と聞くと、異口同音に「素晴らしいところだ」と言う、それは特に事務所に「犠牲の羊」を入れようとしている訳でもなさそうだ、こんな状況で甲事務所に入ると、「ブラック」なところで大変な目に合う、と言うのはあり得る。
 これは、事務所によっては「小規模事務所の集合体」のようなところがあり、違うセクション(多くはボス・パートナーが違う場合)だと、全くその労働環境が違っていると言う状況があり得るからです。
 そうすると、そのようなセクション制等の事務所に入る場合には「事務所がブラックか」ではなく「自分が入るセクションがブラックか」をきちんと確認する必要があり、例えば「このセクションに入るという意味の内定であれば、内定を受けない」というような対応になるだろう。

 

・クライアントごとに違うことがある
 案件にもよるし、イソ弁の方の経験年数等にもよるが、例えば「クライアント対応を丸投げ」する事務所がある。これは、イソ自身に一定の経験があり、また、対応中に疑義があればボスや兄弁・姉弁に自由に相談できる環境なのであれば、それだけで直ちにブラックとは言えない。
 しかし、例えば、クライアントが暴言を吐く、無理難題を押し付ける(夜に「今夜中にこれをしろ」と言い出す等)場合、そのような「ブラッククライアント」に対する対応を引き続きイソ弁に丸投げし、イソ弁を支援しないのであれば、それは事務所・ボスもまたブラックと言わざるを得ない。
 そして、このような状況は担当クライアントにもよるため、上記のセクションごとの違いと同様、事務所全体としてはブラックではないものの、そのクライアントの担当をしているイソ弁にとってだけブラックとなることがある。
 なお、(クレーマー対応等を想定すると)相手方が暴言を吐く等はあり得るところ、それが一定範囲に収まっている場合には、それだけを持って直ちにブラックとは言えない。但し、そのような対応を「丸投げ」して、ストレス等を全てイソ弁の方で処理させ、相談に乗ったり、場合によってはボス自ら相手方に注意する等をするといったケア・カバーがない場合には、ブラックの領域に達することはあるだろう。

 

・ボスのみが地雷ではなく、兄弁・姉弁が問題なことも
 ブラック事務所は典型的にはボスがブラックである。ただ、兄弁・姉弁の対応に問題があることがある。例えば、ボスが兄弁・姉弁に指導を頼んだところ、丸投げして何の指導もしてくれないとか、指導という名目で暴言等を吐くハラスメントをする、と言った場合である。
 特に、ボスとして、兄弁・姉弁の対応を監督せず、任せきりにした場合に、兄弁・姉弁に問題があると、ボスに改善を求めることができず、又は改善を求めても「双方で話し合え」と言われて改善しない等、問題が解決せず、むしろ重大な問題となりやすいと言える。

 

・ブラック後輩の面倒を見させられる場合
 逆に、兄弁・姉弁のポジションの場合、ブラック後輩の面倒を見させられる場合もある。もちろん、優秀な人であれば「自分が1年目の頃はここまでできたのに」等ということがあり得るが、これはブラック後輩の問題ではない。能力というよりは性格である。
 例えば、「嘘をついたり、他人を陥れる」ブラック後輩がいる。例えば、期日出廷は後輩に任せて依頼者への報告を自分でやるという場合、期日の経過は後輩の情報に依拠するしかない。その場合、後輩が事実と異なる説明をすれば、依頼者から怒られるのは「あなた」である。場合によっては、気に入らない「あなた」を陥れるため、それを意図的に行うこともあり得る。
 ブラック後輩が兄弁・姉弁に対してもっと酷いことをした話は知っているが、諸事情により、ここでは公開できない。

 

・非弁でなくても「事務員が多い」場合、弁護士に期待される役割によってはブラックなことがある
 事務員の役割と弁護士の監督の程度によっては、非弁という問題は生じ得るが、きちんと監督していれば、事務員が多いとしても、非弁にはならない。
 ただ、事務員が多い事務所で特に依頼者とのやり取りを事務員(コールセンター等)が行う場合、弁護士に期待される役割が何かによってブラックになることがある。
 例えば、依頼者とのやりとりについて、まずは事務員が行うが、依頼者のクレームが厳しく、事務員で対応しきれなくなると弁護士にエスカレーションするという仕組みの事務所であれば、まさに弁護士は「クレームになっている依頼者とのやり取りだけを集中的に行う」ということであり、これが辛いという人は多いだろう。
 もちろん、(非弁ではない前提で)「事務員が多いからブラックだ」、ということではないものの、その事務所で事務員がどのような役割を期待され、弁護士として自分がどのような役割を果たすことが期待されるかは事前に確認しておくべきだろう。

 

 

いずれにせよ、このような #杉原千畝プロジェクト の輪が広がることを心より歓迎したい!!