
- 作者: 近藤光男,石田眞得,釜田薫子,志谷匡史
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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金融商品取引法。これは、マジキチ条文の宝庫だ。例えば、「金融商品取引法施行令の5条を引いて下さい」と言われてすぐに引けるだろうか。普通は上から5番目、枝番があってもせいぜい6、7番目…のはずだった!?
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE321.html
お時間のある方は調べて頂きたいが、金融商品取引法施行令の5条は上から85番目の条文だ。
先生が「次の授業では金融商品取引法施行令1〜5条をやるから予習しておくように」と言い出した場合、「わずか5ヶ条だから楽勝」だと思った人は奈落の底に突き落とされるだろう。
また、金融商品取引法本体にも
第79条の44の5 基金と特定の会員との関係について議決をする場合には、その会員は、議決権を有しない。
等、ものすごい枝番が沢山ある。これは、旧証券取引法に金融先物取引法を融合する等を繰り返した結果だが、まさに「ツギハギにツギハギを繰り返した」感じである。
このような枝番枝番で極めて複雑になっているだけではない。「 定義」も複雑だ。
例えば「有価証券」。手形小切手法等で「紙の上に権利が乗っていて*1転々と流通できるようになっているもの」というイメージを持っていると、なぜ「みんなで金とか力とか出し合って儲ったら分け合おうぜ」といった組合みたいなものが「有価証券」に入るのか、「わけが わからないよ」状態だろう。
2.分かり易い本を探せ!
こんな難解な金融商品取引法については、改正を契機に多数の書籍が出ている。
最近コンメンタールが続々刊行され、細かい条文毎の議論は参照できるものが増えた*2が、そのような細かな議論に入る前提としての金融商品取引の基本的な仕組みと金融商品取引法の規制の概要を理解することは、学習者にとっても実務家にとっても不可欠である。
これまで、金商法を「正確かつ分かりやすく*3」説明する本を探して、多数の新刊を読み続けた。しかし、ほとんどの本が期待に反し難解で分かりにくい。どれとは言わないが、解釈・解説部分がほとんどなく「条文をコピペしただけじゃないか」と思ったものもあった。 このような悲惨な状況の中、私が50冊以上読んだ結果、独断と偏見で「従前のオススメの本」と「今年出たオススメの本」の2冊を選定したい*4。
まず、従来の本で比較的分かりやすいのは、黒沼悦郎先生の「金融商品取引法入門」*5である。

- 作者: 黒沼悦郎
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/02/25
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そんな中、今年になって、多分一番分かりやすい本が出た。近藤光男他「基礎から学べる 金融商品取引法」である。

- 作者: 近藤光男,石田眞得,釜田薫子,志谷匡史
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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- 作者: 近藤光男,石田眞得,釜田薫子,志谷匡史
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2010/03/20
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わずか200頁あまりの本だが、内容は工夫されている。
まず、本文と発展学習に分け、難しいことは発展学習に入れた。これが大正解で、本文だけを読めば、金融商品取引法の基本的な仕組みが分かる。一定程度学習が進んでいれば、「発展学習」を読めば、結構深い論点も勉強できる。
例えば、79頁以下の「発展学習」では、元引受人(例えばIPO時の(主)幹事証券会社を想起されたい)が有価証券届出書に虚偽記載があった場合にいかなる責任を負うかについて検討する。本書は単なる有価証券届出書に関する虚偽記載についての同法21条2項3号の免責要件(財務諸表関係は虚偽記載を知らなければ大丈夫)に触れるだけではなく、17条の「目論見書」に関する責任(財務諸表関係も相当の注意を尽くすべき)を関連させて論じており、実務的な観点からも優れている。
まとめ
「基礎からわかる金融商品取引法」は、本文と発展学習の構成で基礎から応用トピックスまでを200頁程でコンパクトに解説する。
会社法等を勉強して金融商品取引法に進もうという初学者の方にも、既に授業等で学ばれた中級者にもおすすめの本である。