アホヲタ元法学部生の日常

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三博士没後100周年記念企画「法学ガール」〜新司法試験商法平成23年過去問その2

公開買付けの理論と実務

公開買付けの理論と実務

三博士没後100周年記念企画「法学ガール」〜新司法試験商法平成23年過去問その1 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
から続く

1.テトラちゃん編―後編
「条文を見ると複雑に入り組んでいたのに、2つの複雑な条文をあわせると、複雑なものが綺麗に消えて、まるで落ち物パズルゲームのようなんですけど、これは何か理由があるんですか?」

「いいところに気づいたね。それはね…。」
 すべての制度には理由がある。その理由は、あまり説得的ではないもの*1もあるが、多くの場合は相当程度以上合理性があるものだ。


「その秘密は、平成17年改正前商法にある。」

旧商法290条1項*2 利益ノ配当ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ左ノ金額ヲ控除シタル額ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得
一  資本ノ額
二  資本準備金利益準備金ノ合計額
三  其ノ決算期ニ積立ツルコトヲ要スル利益準備金ノ額
四  其ノ他法務省令ニ定ムル額

「要するに、配当できるのは、会社のプラスの財産からマイナスの財産を差し引いた財産である純資産のうちから、資本金、準備金等、そして法務省令で定める額を差し引いた額だったんだ。これって、会社法のどこかに似た条文はないかな?」
「えっと、あ、会社法446条です!」

会社法446条1号  最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
イ 資産の額
ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
ハ 負債の額
ニ 資本金及び準備金の額の合計額
ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

「そのとおり。会社法も、法律レベルでは、商法の考え方である、『資産マイナス負債マイナス準備金等』という概念を承継した。ところが、会計制度との関係で、このようなやり方ではなく、『その他利益剰余金』と『その他資本剰余金』をベースに計算をしていくことになった*3。法律を作ってから変えるにはどうすればいいのかな?」

「えっと、法律を改正するってことですか?」
「どの機関で改正法をつくるの?」
「それは国会です。」
「でも、法律ができてから、施行まであまり間がない段階で、方針が変わったら?」
「それは、困りますね….」
 国会で法律を作るためには、色々な検討や根回しが必要だ。当然基本的な法令であればあるほど時間がかかる*4


「ここで、知恵の回る人が、会社法446条1号ホに目をつけた訳だ。なんて書いているかな?」
「『法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額』です。」
「そう、法務省令で会計基準の変化等にあわせて細かな事項については規定できることになっていた。この規定を利用して、会社法の法律の記載を、法務省令ですべて『削除』した上で、『その他利益剰余金』と『その他資本剰余金』をベースに計算することにした。落ち物ゲームのように綺麗に消えていくのは偶然ではない。必然なんだよ。」
「ふわわわわ。法律を省令で書き換えるなんてことをしてもいいんですか。」
「一部の学者からは強く批判を受けている*5けど、今のところは、これが有効・合法であることを前提に実務は動いてしまっているね。」
「これまでは、よく分からない条文があると、そこでいつまでも立ち止まっていました。どういう意味の規定なんだろう、どうしてこんな条文ができたんだろうと考えて。それで、いろんな本を読んだりして、それでもよく分からなくて、そんなことをしている間に時間だけが過ぎ去っていました。今日、先輩から説明をお聞きして、勉強した時に分からなかったことがやっとストンと落ちた気がします。」
「テトラちゃんのように、きちんと条文の趣旨を理解しようとする姿勢は大事だし、自分でまず調べようとする姿勢も大事だ。でも、ある程度調べて分からなかったら、先生や誰か他の人に聞くことも大事。自分でどこまで調べて、どういうことが分かって、それを前提に何が分からないか、このレベルまで落とし込んで質問をすれば、みんな適切なアドバイスをくれるはずだよ。」
「そうですね。今まではちょっと自分で調べようとし過ぎていたのかもしれません。」
他の人から得られる新たな観点から考えると、今まで分からなかったことが明瞭にわかってきたりすることがある。


「さて、問題に戻ろうか。今回剰余金の合計額は?」
「真実の財務諸表では、『その他資本剰余金』が0円、『その他利益剰余金』が5億円なので、計5億円です。」
「そうだね。じゃあ、今回の自己株式の取得は、法律上問題はないだろうか。」
「剰余金が5億円で、その他の調整が必要ないので、分配可能額は5億円です。でも、自己株式の取得額が25億円だから、分配可能額を超えています。」
「これは何条?」
「461条1項2号、です。」

(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない
(略)
三  第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得

「そう、自己株式取得の際にBに交付する金銭の価格が5億円を超えてはいけないのに25億円を交付した。これは、会社法461条1項3号に違反する違法なものだ。こう言ってあげればいいね。さて、これで設問[1]の前段は終わりかな?」
「終わりのような、気もしますけど..。」
「設問[1]をもう一度見返してみようか。」
「あっ、『取得の効力』でしたね。」
「そう、自己株式取得が有効か無効か、これを説明しなきゃいけないね。」
「でも、会社法461条違反や、160条4項違反等いろんな違反があるので、当然無効なんじゃないですか?」
「無効という結論自体は十分にありえる*6。でも、当然無効と言い切ることはできない。」
 これは会社法における典型的な問題意識だ。会社法多数のステークホルダー、利害関係人間の利益調整を目的としている。ある行為に瑕疵があっても、それを当然に無効としてしまうと、それを信じた人が害される可能性がある。そこで、一定範囲で瑕疵があっても有効とするべきではないのか? これが会社法の様々な「効力」の問題で共通に生じる問題意識なのだ。


「典型的には、本件とちょっと違うけれども、甲社が1万人の株主から自己株式を購入したといった場合。購入代金を甲社が払ってしまえば、株主はみんなそれをいろんな目的に使ってしまうだろう。その後で、『実は無効』と言われても困る。こういう問題意識から、本当に無効としていいかを考えればいい。例えば、突然無効だと言われたら、自己株式を譲渡した株主はどう思うかな?」
「それは、困ります。」
「でも、自己株式を譲渡した株主が悪意、つまり、瑕疵があることを知っていたら?」
「そういう悪意の株主は保護する必要はなさそうです。」
「そうだね。学説上も、自己株式取得の財源規制や手続方法に関する規制については、原則無効だけれども、違法な取得であることにつき相手方が善意であれば取引の安全が優先され有効といった考えがあるね。もちろん、反対説*7はあるけれどね。」
「わかりました。」
 問題意識さえ共有できていれば、後はそこからどう書くかは、各人の裁量に任せられている。結論はどっちでもいい、その過程が説得的でさえあれば。


「さて、[1]の後段だけど、何を答えればいいのかな。」
「法律関係、ですか? う〜ん。」
「基本的には、権利義務と考えればいい。甲はBにどういう権利を持ち、Bは甲にどういう権利を持つのかということだね。そもそも、前提として、今回のBとの関係は無効といっていいのかな?」
「Bは自ら160条4項の規定に反して議決権を行使しています。そこで、手続の瑕疵を自ら作っており、当該瑕疵につき悪意といえるので、保護に値せず無効、こういうことですか?」
「そうだね。そうすると、甲はBに何といえるのかな?」
「えっと、462条がありました。」

(剰余金の配当等に関する責任)
第四百六十二条  前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(委員会設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う
(略)

「これはどういう条文かな。」
「分配可能額規制に違反して会社から自己株式の譲渡代金等を得た株主が、それを返さないといけないといことです。」
「うん、そうだね。でも、甲がBに『払った25億円を返せ』といえるのは、この条文の場合だけかな?」
「えっと、『無効』だから、払った25億円を返せと言える。」
「それは何条かな。」
民法703条です。」

(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 民法703条は不当利得返還の規定。自己株式取得が無効で、法律上25億円を持つ理由がないBは、甲に対して25億円を返還しなければならない。


「そうだね。じゃあ、Bは甲になんといえるかな」
「えっと、Bですか?」
「そうだよ。Bの方も検討しないといけない。」
「えっと…。Bは甲に民法703条に基づき250万株を返せと言えます。」
「そうだね。この点から、もう1つ別の問題が生じるんだけど、分かるかな?」
「別の問題ですか? 25億円を払えといえる、250万株を返せといえる、これで終わりじゃないんですか?」
「ちょっと視点を変えてみようか。今回、250万株は返せる?」
「返せません。」
「どうして?」
「乙社に売ってしまったから。」
「そうだね。そうすると、Bは、甲から25億円を払えと言われた時には、何か言うんじゃないかな?」
「えっと…。あっ、同時履行の抗弁!」

(同時履行の抗弁)
第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

「さえてるね。Bとしては、株式が返ってくるまではお金を返さないというのだろうね。この主張は通るのだろうか。」
「う〜ん。なんか変な気がします。」
「いろんな議論があり得るけれど、1つは、同時履行の抗弁の趣旨から論じればいい。何だっけかな。」
「公平です。」
「うん。そこで、違法行為を知っていたBを保護しなくとも公平は保たれるという議論は1つの方法だ。」
「確かに、そういう趣旨からの議論は分かりやすいですね。」
 「結論は何でもいい」と言われた場合に、考える指針としては、条文の趣旨が1つの参考になる。いつも必ず趣旨から書けばいいという訳ではないが、趣旨がわかっていると、考え方のヒントとして使える。


「さて、[2]になるけれども、こちらは、自己株処分の方だね。自己株式の処分はあるものと一緒に会社法上規定されているんだけど、何かわかるかな。」
「新株発行、ですか?」
「そう。双方をまとめて募集株式の発行といっているね。さて、自己株式処分の効力を論じる前にやるのは?」
「手続きや内容に問題はないかを調べるってことですね。」
「そうそう、こういう検討をしないと、有効とも無効とも言えないからね。」
「800円の時価の株式を8割の640円で処分してしまうっていうのが、まず怪しいと思うんです。」
「いいポイントだね。第三者割り当てで有利発行にならない限界ってどの程度だっけ?」
「10%と聞きました。」
「そうだね。本来許容範囲内ではないかもしれないという議論はあるけれども、10%位のプレミアムならば、まあギリギリ許容できるかもしれないけども、それ以上であれば、きちんと説明して、株主総会の特別決議を得なさいというのが、第三者割当の基本だね。今回は自己株式処分だけど、ほぼ同じ話があてはまりそうだね。これは、何条の問題かな?」
「199条3項と201条1項です。」

(募集事項の決定)
第百九十九条  株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
(略)
2  前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3  第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
(略)
(公開会社における募集事項の決定の特則)
第二百一条  第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

「そうだね。199条3項、つまり、有利発行の時は、公開会社でも総会決議が必要だ。さて、本件の場合、決議は一応あるよね。その過程で何かきなくさいことはないかな。」


「企業秘密といって説明を拒んでいます。」
「そうだね。これは何条の問題かな?」
「314条です。」

(取締役等の説明義務)
第三百十四条  取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。

「企業秘密を理由に拒絶するというけど、会社法上どう考えられているの?」
「えっと、説明しなくていい例外があったはずです。」
「314条でいくとどれ?」
「『その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合』にあたると解されています。」
「そうだね。問題は、価格の算定根拠が企業秘密なのかだけど、どうなんだろうか?」
「企業秘密…う〜ん、難しいです。」
「こういうときは、314条の趣旨に戻ればいいんじゃない? なぜ企業秘密が説明をすると共同の利益が著しく害されるのかを考えると、例えば、『ケ●タッキーフライドチキンのスパイスを教えてくれ』とか『コ●・コーラの原液の作り方を教えてくれ』という質問に答えないといけないとすると、これは、他社がまねをして競争力を害し、結局株主のためにならない。だから、こういう株主のためにならないといえる場合なのかを考えればいい。」
「言わない理由はせいぜい、乙社がそれをよく思わないからですかね。」
「そういう理由だと、説明しないことが乙社の利益になっても、乙社以外の株主の共同の利益を害することにはならない、だから、説明義務はあると説明すればいいんじゃないかな。」
「なるほど、わかりました。」


「他にはあるかな?」
「えっと…。」
「さっき、Bの権利行使が問題となったよね。今回は似たような話はあるかな?」
「あっ、乙社が賛成したため、辛うじて3分の2を上まわっています。」
「そう、自己株式を譲り受ける乙社が賛成しなければ、否決されたかもしれない。これは何条の問題かな。」
会社法831条1項3号ですね。」

株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条  次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
(中略)
三  株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき

「そう、*8今回の決議が『著しく不当』と言えれば取消事由になる。これで問題点は出そろった。」
「結局、総会決議に取消し事由があるから、取り消されれば。」
「そうは簡単にいかない。募集株式の発行については、特則があるよね。」


「自己株式処分無効の訴えですか。」

(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
第八百二十八条  次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
(中略)
三  自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
(後略)

「そうだね。どうして、こんな訴えを設けたの?」
「えっと、取引安全、でしょうか?」
「具体的には?」
「今回の場合、乙は50万株を市場に売っています。だから、この50万株を買った人とかの取引安全でしょうか。」
「そうだね。だから、自己株式処分無効の訴えで無効とされるべき『無効事由』は厳格に考えるべきとされている。同じ募集株式の発行である新株発行についてだけど、最判昭和46年7月16日は、こういっている。」

株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。

「総会決議がそもそもなくても有効なんですね。」
「うん。だから、無効事由は制限されていて、基本的には、今回の問題があっても有効と解するのが妥当なんじゃないかな。」
「なるほど、確かにこの判例と整合的に考えるとそうなりますね。ところで、決議には瑕疵があるから、取消し訴訟を起こすと遡及的に無効になるんですよね。これとの関係はどうなりますか?」
「いいところに気がついたね。この点は、新株発行に関してだけど、総会決議無効確認請求係属中に新株を発行した場合には確認の利益を失う、つまり、どうせ新株発行が有効だから、前提問題である総会決議の効力は争う意味が無いというのが判例だね(最判昭和40年6月29日民集19巻4号1045頁)。総会決議取消しの訴え係属中にも同様だと考えれば、取消しもできないということになる。」
「それじゃあ、乙社は丸儲けじゃないですか。」
「この点は、甲社は、乙社に対して、不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任(会社法212条1項)を追及することになるんじゃないかな。」

(不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任)
第二百十二条  募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める額を支払う義務を負う。
一  取締役(委員会設置会社にあっては、取締役又は執行役)と通じて著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた場合 当該払込金額と当該募集株式の公正な価額との差額に相当する金額

「なるほど、会社法はうまくできていますね。」


「さて、[3]の責任だ。取得の話と、処分の話の2つを分けて考えよう。取得については、何が言えるの?」
「462条1項の問題があります。」

第四百六十二条  前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(委員会設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
(略)
二  前条第一項第三号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
(略)
2  前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。

「そうだね。財源規制違反の場合は自己株式を譲渡したBだけではなくて、業務を執行した人等、具体的にはCが責任を負うよね。で、本件では、Cは責任を負うのかな。」
「負うんじゃないです…か?」
「文末が疑問文になる時は、条文を引く。この癖をつけようね。」
「はい、あっ!」
「何が分かったの。」
「462条2項は『前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。』として過失の推定を定めています。」
「そうだね。取締役については、推定はあるけれども過失責任だ。今回過失はあるの?」
「問題文に『ない』と書いています。」
「そうだね。架空取引のせいで財源規制に違反しただけだからね。そうすると、他の責任は?」
「一部の株主から高く買いすぎたことでしょうか。」
「そうだね。160条2項3項違反のような法令違反になるような行為をしており、任務懈怠(423条)という主張ができるね。この主張だと、高く買ったというのはどう位置づけられるの。」
「損害…ですか?」
「そうだね。差額が損害だという主張になるんじゃないかな。他には…。」
「分からないです。」
「後は、465条1項3号の欠損填補責任があるね。これは、配当や自己株式の取得等を行なって会社財産を流出させ、結果的に欠損が生じた場合に、流出財産の返還を求められるというものだ。」

(欠損が生じた場合の責任)
第四百六十五条  株式会社が次の各号に掲げる行為をした場合において、当該行為をした日の属する事業年度(その事業年度の直前の事業年度が最終事業年度でないときは、その事業年度の直前の事業年度)に係る計算書類につき第四百三十八条第二項の承認(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認)を受けた時における第四百六十一条第二項第三号、第四号及び第六号に掲げる額の合計額が同項第一号に掲げる額を超えるときは、当該各号に掲げる行為に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、連帯して、その超過額(当該超過額が当該各号に定める額を超える場合にあっては、当該各号に定める額)を支払う義務を負う。ただし、当該業務執行者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
(略)
三  第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得 当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
(略)

「じゃあ、本件では、30億円の欠損が出ているから、これでも責任を追及できますね。」
「この規定は、分配可能額を超えていなかったとしても適用されるんだよね。そうすると、これ、無過失責任でいいと思う?」
「確かに、それは変ですね。あ、465条1項柱書きで、『ただし、当該業務執行者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。』とあります。」
「そうだね。今回はどうだろうか。」
「160条2項3項違反という法令違反をしているから、注意を怠ったということでしょうか。」
「その解釈もあり得なくもないけど、欠損という結果と結び付いているかな? 損が出ているけれども、その当時の正しいと思われた財務諸表からは欠損には至らない、この事情からは、当時は欠損になると思っておらず、その意味の過失はないという議論もできるね。」
「分かりました。」


「そうしたら、最後は自社株の処分だ。」
「任務懈怠責任だけですかね。」
「基本的にはそうなるね。この場合には、説明義務違反の違法行為があったので、任務懈怠を認めていいんじゃないかな。乙の212条1項責任と連帯責任になるね。」
「ありがとうございます。すっきりしました。」
「そうだね。いろいろと練られている問題だから、これを使って、周辺の知識を確実にして、今後も、勉強を進めて行くといいと思うよ。」
「はい、ありがとうございました。」


「下校時刻です。」
過去問の検討に夢中になっているともうこんな時間だ。瑞谷女史が突然背後に現れ、下校時刻を告げた。
テトラちゃんに続いて図書室を退室し、建物を出ようとしたその瞬間。未知の力によって、建物に引き戻された。


2.ミルカさん編
公開買付けの定義?*9
不特定かつ多数の者に対し、公告により株券等の買付け等の申込み又は売付け等の申込みの勧誘を行い、取引所金融商品市場外で株券等の買付け等を行うこと…だ。突然法律の質問をするのが、ミルカさんの得意技だ。


「条文?」
金融商品取引法27条の2第6項。これは知っている。


本事案へのTOB規制適用の有無?
え? 全く想定していなかった。公開買付けは、他社の経営権を取るためのものではないのか?
「自社株だって公開買付けの問題が生じる。実際、自社株公開買付けのためだけの内閣府令さえ存在する。」

発行者による上場株券等の公開買付けの開示に関する内閣府
(平成六年九月十九日大蔵省令第九十五号)

「自社株公開買付けの条文は?」
どこだ? これか?

(発行者による上場株券等の公開買付け)
第二十七条の二十二の二  上場株券等の当該上場株券等の発行者による取引所金融商品市場外における買付け等(買付けその他の有償の譲受けをいう。以下この条及び次条において同じ。)のうち、次に掲げるものに該当するものについては、公開買付けによらなければならない。ただし、取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による買付け等については、この限りでない。
(略)

「そうね。普通の他社株公開買付けは何条?」
金融商品取引法27条の2だ。

(発行者以外の者による株券等の公開買付け)
第二十七条の二  その株券、新株予約権社債券その他の有価証券で政令で定めるもの(以下この章及び第二十七条の三十の十一(第四項を除く。)において「株券等」という。)について有価証券報告書を提出しなければならない発行者又は特定上場有価証券(流通状況がこれに準ずるものとして政令で定めるものを含み、株券等に限る。)の発行者の株券等につき、当該発行者以外の者が行う買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)であつて次のいずれかに該当するものは、公開買付けによらなければならない。(略)


「違いは?」
えっと…。自社株公開買い付けの問題になるのは「上場」ってことか?
「上場株券等の定義は?」
えっと、あれ?ない??
「公開買付けの規定をいくら探してもないわ。金融商品取引法24条の6。」

(自己株券買付状況報告書の提出)
第二十四条の六  金融商品取引所に上場されている株券、流通状況が金融商品取引所に上場されている株券に準ずるものとして政令で定める株券その他政令で定める有価証券(以下この条、第二十七条の二十二の二から第二十七条の二十二の四まで及び第百六十七条において「上場株券等」という。)の発行者である会社は、会社法第百五十六条第一項 (同法第百六十五条第三項 の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による株主総会の決議又は取締役会の決議があつた場合には、内閣府令で定めるところにより、当該決議があつた株主総会又は取締役会(以下この項において「株主総会等」という。)の終結した日の属する月から同法第百五十六条第一項第三号 に掲げる期間の満了する日の属する月までの各月(以下この項において「報告月」という。)ごとに、当該株主総会等の決議に基づいて各報告月中に行つた自己の株式に係る上場株券等の買付けの状況(買付けを行わなかつた場合を含む。)に関する事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書を、各報告月の翌月十五日までに、内閣総理大臣に提出しなければならない。

「『金融商品取引所に上場されている株券、流通状況が金融商品取引所に上場されている株券に準ずるものとして政令で定める株券その他政令で定める有価証券』なんだけど、甲社は?」
上場…してます。

その株式をP証券取引所の新興企業向けの市場に上場している。

「昔の過去問では『マザーズ上場』と書いていたのが、最近は匿名にしているのは、問題文に出てくる企業が法律違反を繰り返すことについて、東証からクレームでもあったのかしら。そもそもマザーズ上場第1号は…おっと、誰か来たようね。*10
ちょ、ちょっと。死亡フラグ立てないで下さい。


「それはともあれ、甲社のアドバイザーなら、金融商品取引法上の公開買付け義務を検討する必要がある。種類株とか組織再編とかを除くと、会社法上自己の普通株式を取得できる3つの方法?」
えっと、一つが本問の特別決議による特定の者からの取得だ。
「条文?」
会社法156条1項、158条1項、160条1項

(株式の取得に関する事項の決定)
第百五十六条  株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一  取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二  株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三  株式を取得することができる期間
(略)
(株主に対する通知等)
第百五十八条  株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、前条第一項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
(略)
(特定の株主からの取得)
第百六十条  株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
(略)

「他は?」
えっと、全員に条件を通知して応じたものの株式を取得する場合?
「いわゆるミニ公開買付けね。条文?」
会社法156条1項、158条、159条

(株主に対する通知等)
第百五十八条  株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、前条第一項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
2  公開会社においては、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
(譲渡しの申込み)
第百五十九条  前条第一項の規定による通知を受けた株主は、その有する株式の譲渡しの申込みをしようとするときは、株式会社に対し、その申込みに係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)を明らかにしなければならない。
2  株式会社は、第百五十七条第一項第四号の期日において、前項の株主が申込みをした株式の譲受けを承諾したものとみなす。ただし、同項の株主が申込みをした株式の総数(以下この項において「申込総数」という。)が同条第一項第一号の数(以下この項において「取得総数」という。)を超えるときは、取得総数を申込総数で除して得た数に前項の株主が申込みをした株式の数を乗じて得た数(その数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)の株式の譲受けを承諾したものとみなす。

「最後は?」
市場取引等による取得。
「条文?」
会社法156条1項、165条。そうか、ここに公開買付けが含まれるのか

第百六十五条  第百五十七条から第百六十条までの規定は、株式会社が市場において行う取引又は証券取引法第二十七条の二第六項に規定する公開買付けの方法(以下この条において「市場取引等」という。)により当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。
2  取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得することを取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる。
3  前項の規定による定款の定めを設けた場合における第百五十六条第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第百六十五条第一項に規定する場合にあっては、株主総会又は取締役会)」とする。

「株会社法165条により、公開買付けによる自己株式の取得の場合が規定されているけど、金融商品取引法27条の22の2が適用されるのは、この会社法165条の場合だけ?」

どうなんだろう? 会社法金融商品取引法の整合性を考えるとそうあるべきだが。
会社法金融商品取引法の規制の一部は似ているけど、細かいところは違う。金融商品取引法27条の22の2第1項は何て書いているの?」

(発行者による上場株券等の公開買付け)
第二十七条の二十二の二  上場株券等の当該上場株券等の発行者による取引所金融商品市場外における買付け等(買付けその他の有償の譲受けをいう。以下この条及び次条において同じ。)のうち、次に掲げるものに該当するものについては、公開買付けによらなければならない。ただし、取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による買付け等については、この限りでない。
一  会社法第百五十六条第一項 (同法第百六十五条第三項 の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による買付け等(同法第百六十条第一項 に規定する同法第百五十八条第一項 の規定による通知を行う場合を除く。)
二  上場株券等の発行者が外国会社である買付け等のうち、多数の者が当該買付け等に関する事項を知り得る状態に置かれる方法により行われる買付け等として政令で定めるもの

「話を分かりやすくするため、会社法の認める取得の3類型に、ニックネームをつけましょう。特別決議、ミニ公開買付け、市場取引等。金融商品取引法27条の22の2は何を言っているの?」
えっと、カッコ書きが多くて頭が混乱する。
「カッコ書きをまず取ってから理解すればいい。金融商品取引法27条の22の2第1項柱書本文のカッコ書きを取ると?

上場株券等の当該上場株券等の発行者による取引所金融商品市場外における買付け等のうち、次に掲げるものに該当するものについては、公開買付けによらなければならない。

大分分かりやすくなった。
「『公開買付けによらなければならない』とあるから、各号に該当する場合は、例えば株主と相対取引で買えない、公開買い付けをしないといけないってこと。ここで、ポイントは『市場における買付け等』とあるから…」
そっか、市場取引等については、公開買い付け義務はない
「そう。会社法165条の場合、市場取引が可能で公開買い付け義務はない。じゃあ、金融商品取引法27条の22の2第1項1号が公開買い付けにしないといけないとするのは何?」
えっと…。
「カッコ書きを取る」

会社法第百五十六条第一項 の規定による買付け等

あ、シンプルになった。 そうすると? 会社法156条に「株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得する」場合とあるから、組織再編等を除く普通の全ての取得につき公開買い付けが求められているのか?
「考察が深まったらカッコ書きを戻す。」

(同法第百六十条第一項 に規定する同法第百五十八条第一項 の規定による通知を行う場合を除く。)

「このカッコ書きで除かれるのは? 特別決議の場合? ミニ公開買い付けの場合?」
あれ? 会社法158条はミニ公開買付けだが、会社法160条1項は特別決議の場合だぞ?
「条文に戻る。会社法160条1項の条文は何て書いている?」

(特定の株主からの取得)
第百六十条  株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
(略)

そうか!
会社法160条1項は、158条の通知の送り先の限定を規定する。そうすると、金融商品取引法27条の22の2カッコ書きの『同法第百六十条第一項 に規定する同法第百五十八条第一項 の規定による通知』は、この160条、特別決議の場合のことを指す。単なる158条、ミニ公開買い付けはカッコ書きの関知するところではない。その帰結は?」
えっと、金融商品取引法27条の22の2第1項柱書は、第1号に該当する場合に公開買付け義務があると規定し、第1号カッコ書きは、公開買い付け義務から例外的に「除く」場合だから…。
「160条に基づく特別決議の場合は公開買い付けが不要、ミニ公開買い付けは公開買い付けが必要」
なるほど。
会社法金融商品取引法を総合すると、こういうことになる。公開会社で未上場というのは実務的にはあまりないから除く。」

方法 上場企業 閉鎖会社
特別決議
ミニ公開買付け ×(金融商品取引法27条の22の2)
市場取引等 ×(非上場)

 綺麗な表になった。


「甲社では、特別決議を無理やりやっている。でも、著しく不公正な決議を避けようとしてBに議決権を行使させない場合、特別決議は成立しない。安全にやろうとすると、特別決議による取得は困難ね。そんな時、普通決議でできるミニ公開買い付けをしたらってアドバイスしたら?」
弁護…過誤です…。


会社法だけを見ていては企業法務ローヤーとしての適切なアドバイスはできない。金融商品取引法をはじめとする関連法規の知識が必要。」
あの細かい条文を読み解く力が必要…なのか。
金融商品取引法は毎年のように改正があり、追い付くのも大変。そこで、金融商品取引法の専門家と共同受任するのは良い方法。でも、どんな事件類型に関して裏に金融商品取引法の問題が含まれているか程度は理解していないと…。」
落とし穴にはまる。
「そう。この程度の金融商品取引法についての勉強は、金融商品取引法の専門家以外も必要になってくる。」
司法試験で問われる七法+選択科目。これだけでも大変なのに、更に金融商品取引法をはじめとする沢山の法律が自分を待っている。司法試験合格は決して勉強の終わりではなく、一生続く勉強の始まり。ミルカさんを見ていて、そう実感した*11




目次
梅謙次郎博士、ボアソナード博士、穂積八束博士の没後100周年となる2010〜2012年を記念し、新司法試験の過去問を小説で解説する企画です。


法学ガールのコンセプト
商法ガール、始めます


平成23年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成23年商法過去問解説その1
平成23年商法過去問解説その2


平成22年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成22年商法過去問解説その1
平成22年商法過去問解説その2


平成21年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成21年商法過去問解説その1
平成21年商法過去問解説その2


平成20年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成20年商法過去問解説その1
平成20年商法過去問解説その2


平成19年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成19年商法過去問解説その1
平成19年商法過去問解説その2



平成18年民事系過去問【pdf直リン注意】
平成18年商法過去問解説その1
平成18年商法過去問解説その2


ご参考
バベル先生が憲法18〜23年を小説で解説された「憲法ガール」、傑作です
http://d.hatena.ne.jp/tower-of-babel/20130101/1324891852

*1:例えば会計参与制度なんかは「いままで対立してきた税理士会公認会計士協会がやろうといっている以上、やらざるを得ない」といったすごく政治的理由で導入された。

*2:実は旧商法293条の5が近い等等の議論はありますが、シンプルに説明しています。

*3:江頭憲治郎「株式会社法」619頁では「最近の会計基準の改訂により評価・換算差額等控除項目が複雑となった」と説明される

*4:反対が金融商品取引法等。「超技術的な問題については政治家のセンセイ方は良く分からないから、『ハーモナイゼーション』とか『金融の円滑化』とか誰もが反対できないようなキーワードをもってくれば、細かな条文は何も読まずに賛成してくれる」とか言っている人もいるようだ。

*5:まあ、稲葉先生の「会社法の解明」を例示しましょう。

*6:最判昭和43年9月5日民集22巻9号1846頁は質権の事案だが、「株式会社が自己株式を質権の目的として受けることは商法二一〇条の禁ずるところであつて、該規定に違反してなされた質権の設定は無効であると解すべく、ただその設定は同条が例外として許容する場合などにおいて有効たるにとどまるのである。」と判示している。

*7:例えば、461条1項柱書の「その効力を生ずる日」を強調して、有効、つまり効力が生じることを法律は前提としていると論じる等。

*8:乙が「特別の利害関係を有する者」と言えることは争いはなさそうなので、

*9:以下、特に長島・大野・常松法律事務所「公開買付けの理論と実務」346頁以下を参考にした。

*10:リキッドオーディオ」又は「ニューディール」でググるといいことがあるかも?

*11:なお、難解な金融商品取引法に入門しよう!〜分かりやすい入門書は? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照