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主人公ナナミ(ティコは主人公ではない)の父は、「ヒカリクジラ」という幻の生物を探し求める。
これに対し、敵がヒカリクジラを我が物にしようと妨害してくる。
ナナミは、この冒険に同伴し、友達のシャチのティコと共に、ヒカリクジラを探す。
といった内容になるだろう。
この「七つの海のティコ」の中で、ティコは、子どもを産む。ティコ・ジュニアと名づけられたその子は、ナナミにあまりなつかない。それは、ティコとナナミがあまりにも仲良しだったので、自分の母親を取られたと感じたからであった。しかし、ティコは、仲間を助けるため、死んでしまう。
その後、ナナミとティコ・ジュニアは、仲直りし、ティコ・ジュニアは、その後ティコと呼ばれることになった。
感動的なエピソードではあるのですが、今、法律的な面から考えてみると、これは非常に怪しい。
ナナミは、「親と同一の名称を子につける」ということをしている。例えば、小泉純一郎首相の子供が孝太郎ではなく「純一郎」と命名されるようなものです。このような行為は法律上許されるのだろうか?
戸籍法50条にはこう書いてある。
第50条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。
なんだ。この要件を満たせばいいのか。じゃあ「ティコ」の子どもについて「ティコ」と名づけても戸籍法上の問題は生じないじゃないか。こう思われた方もいるかもしれない。
しかし、そうではない。
先例として、以下のようなものがある。
同一戸籍の者と同一の名をつけることはできない
(昭10・10・5民甲1169回答)
これは、親・兄弟といった、同一の戸籍に入っている人とは、同じ名前をつけていけないという先例である。
そもそも、名前というのは、「その人は誰か」を識別し、特定するための重要な要素です。それなのに、同一戸籍内に、同一名称の人がいればこの特定が困難です。例えば、小泉純一郎(敬称略)を、訴えた場合に、同一住所に、小泉純一郎という人が二人住んでいれば、誰が訴えられたか分からないという問題が生じます。そこで、このような先例がある*1。
ティコとティコ・ジュニアが同一戸籍かは、問題になりますが、まあ、同一戸籍に入っているとしましょう。すると、「ティコ」という名称は、同一戸籍の者との同一の名として、拒絶される。
とはいえ、ティコがいなくなったら、「七つの海のティコ」は終わってしまう。まだ、生きているヒカリクジラは見つかっていないのであり、「主人公死亡につき、終了」とか言えば、視聴者からクレームがつく。なんとか、ナナミを救えないか?
ここで、適切な先例があある。
・同一戸籍内にあつても、すでに婚姻等により除籍された者と同一の名をつけることは許される
(昭47・9・14民2・5536通達)
除籍というのは、死亡、婚姻、他の市町村への転籍等で、その戸籍から除かれることを言います。そして、既に死亡していたり、婚姻をしたりで、除籍された場合には、同じ名前をつけてもよい。実際、死んだ子供の後に生まれた子に、先に死んだ子の名前をつけたいといったニーズは存在するし、もう死亡等で除籍されている以上、特定不能の弊害はない。
そこで、本件においても、ティコが死亡除籍されていれば、同一の名をつけることが可能である。
まとめ
ティコ・ジュニアをティコと改名したことは、番組存続のためのご都合主義ではなく、
きちんと法律の裏付けのあるものだった!