私家版 法律書の「読み方」マニュアル
企業法務における法律書の読み方について「マニュアル」というとおこがましいが、このように考えることもあり得るという内容を簡潔にまとめた*1。
1 メリハリをつける
法律書はいわば「無限」に出版されている。もちろん趣味で読むのであれば自由であるが、仕事のために読むのであれば、これらの多数の書籍を全部精読するなんてことは到底不可能である。そこで、メリハリをつけることが重要である。
2 知りたい情報がどこにあるかを知る
そのような観点からは、まず、知りたい情報がどこにあるかを把握することが重要である。私は買った本をザッと最初から最後まで速読し、それでどこにどんな有用な情報が入っているかを把握するという方法を採用しているが、目次だけを読んでもいいかもしれない。また、最近はLionBolt等が出現しており、このような技術の支援を受けることも可能である。
なお、知りたい情報がどこにあるかを知るということは、その精査の結果として「この本にはどこにも有用な情報がない」という結論が出ることもあるのかもしれまないし、ないのかもしれない*2。
3 問題意識を持って読む
メリハリをつけて読む上では、特定の問題意識を元に、その観点から知りたい情報を収集するために読むというのが最も合理的である。例えば、特定のリーガルリサーチが必要なので、その「答え」を知るために読むといったものである。
4 アウトプットにつなげる
そして、仕事で当該事項のリサーチが必要であれば、必然的に「法律相談回答」等という形でアウトプットが出来上がる。しかし、そうではない場合もあるだろう。そうではない場合でも、漫然と読むのではなく、例えば「小ネタ」つまり何らかの論文や発表等につなげるつもりで読むことが有益である。
5 「読み方」を議論するよりとにかく「読む」ことが重要
これまで、「読み方」について説明してきたが、読み方はそれぞれの人にとって、それぞれの「ベスト」があると思われる。あまり誰かがこう言ったからということに過度に影響されず、自分なりの読み方を確立するのが良いだろう。そして、最も重要なことであるが、読み方と良い本を読むことでは、圧倒的に後者が重要であり、とにかく良い本を「読む」ことが重要である*3。そして、量はどこかで質に転じる。多数の良書を読む中で自分なりの法律書の読み方が確立されるであろう。