アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

薄い雑誌の濃い内容

法学教室 2005年 10月号

法学教室 2005年 10月号

 法学教室301号の巻頭言が非常に面白かった。

  • 巻頭言「信ずる」

著者名:高橋宏志教授

重点講義 民事訴訟法〈上〉

重点講義 民事訴訟法〈上〉

念能力:具現化系
必殺技:重点講義(ニュー・テスト・ネグレクト)
 内容:新司法試験を無視して、具現化した重点講義をテキストに、「問題解決の手がかりと方法論」だけを教え、「自分の頭で考え、自分の言葉で語る」ことを要求すること。受講生は不満だが、それでも新司法試験に受かるのはなぜ!?
参考リンク:http://school5.2ch.net/test/read.cgi/shihou/1127614894/
あの高橋教授が

私にも15歳の時があったのだ

とおっしゃっている点がツボにはまった。
 巻頭言のテーマは、先生にも分からない、誰にも分からないことが存在することについてである。現在、大学は課題を事前に設定したり、シラバスで授業内容を開示したりしている。これは教育的には進化している。しかし、

すでに確実な真理・真実が発見されていて、それを学生に文字通り伝える

ということが、このような「進化」の前提になっていないか。こうピロシは問題提起される。その上で、大学はむしろよくわかっていないことこそ授業で語られる価値があるのであり、これでは、先生にも分からない、誰にも分からないことが存在することを知らないまま学生が卒業していくのではないかという危惧を表明している。そして、最後に、

教壇で語る私の発言には、多くの誤りがある。
(中略)
法律学では、ひっきょう、最後に頼ることが出きるのは自分の能力と感性だけである。そして、それがもっとも信じられないところに底知れぬ絶望と究極の希望がある、と。

 最後の結論は賛成であるが、途中の論理については、私は、微妙に違う考えを持っている。授業内容を事前に開示すること、課題を事前に設定すること、採点基準を明示すること。これは確かに「答えが1つ」の場合にはもっともやりやすい。
 しかし、「誰も分からないこと」を教える場合にもこのようなことは十分使えるのではないか。例えば、憲法9条をどう解釈すべきか。この点は現在論争が(再度? 再々度?)激しくなり、定説がなくなってきている。こういうことを教える際にも、「9条の解釈について授業しますよ、こういう本が出ていますから、予習してくださいね」と授業内容を事前開示したりできるだろう。「結論が出ていなくとも、現在の学説の到達点を知り、自分なりに一応の答えを見出すこと」等*1の課題を事前設定できるだろう。答案に書かせる場合でも、「まずは基礎知識の理解(9条の条文構造等)ができているかで何点。その上で、学説がどういう点についてどう対立しているかの理解で何点。最後に、自分なりにどう考えているかで何点」といった形で採点基準は出せるはずである。採点基準は「完全解」ではない。
 最後に頼れるのは自分だけ。これはまさにその通りであるが、だからといって、現在までの教育学の進化を批判するのは、お門違いなのではないか、こう考えた。

まとめ
301号は300号に比べ、各段に薄いが、形式的な薄さ*2にとらわれず、実質的な内容の濃さを見て雑誌を買うべきである。

関連:自衛隊違憲論者はツンデレ - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

追記:今月号の余りの薄さに回避しようかと考えていたところで、

H教授=長谷部恭男教授キタ━(゜∀゜)━(゜∀)━( )━(∀゜)━(゜∀゜)━!!!
日本社会のほとんどの人にとって向いてない本*1の解説キタ━(゜∀゜)━(゜∀)━( )━(∀゜)━(゜∀゜)━!!!

と、私にこの雑誌を買う決意をさせて下さった*3id:Raz様に感謝します。ありがとうございました。

*1:ほとんどの法律学の課題ってこれなんでは?

*2:どうも、300号の特集に力を入れすぎたこと、及び夏休みがあったようですが

*3:ハセビアンの義務ですね。