アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

速読はどうやればできるのか

 速読に関する迷信として

画像を頭に焼き付けないと速読できない?
本を開かなくとも内容がわかる?
十ケタの数字を一瞬で暗記できると速読できる??

 といったものがある。私が速読ができるといえるかは別として、少なくとも私の経験上こんなのは速読に関する迷信に過ぎない

 そこで、私の考える「どうすれば速読できるか」について、できるだけ具体的に示してみたい。


 ただ、その前に、私のスピードが速読といえるか分からないので、この点について明らかにしたい。大雑把に言うと、文庫本1冊30分、初見学術書1時間100ページ、既読学術書1冊1時間といった感じのスピードである。また、これまで、速読の本を読んだり、セミナーを受けたり、速読ソフトを使ったこともない
もうちょっと具体的に計ってみよう。

陰陽師―付喪神ノ巻 (文春文庫)

陰陽師―付喪神ノ巻 (文春文庫)

昨日読んだこの本は300p(1ページ500字)位なので15万字*1。これが30分で読めたので、分速5000字になる。
政治思想史 (有斐閣Sシリーズ)

政治思想史 (有斐閣Sシリーズ)

私があんまり知識を持たない政治思想史という分野の学術書(まあ、有斐閣Sシリーズだから多少は初心者向けの色合いがあります)。10分で35ページ。1ページ770字だから、分速2700字になる。
憲法 (現代法律学講座 5)

憲法 (現代法律学講座 5)

買ってはいたが、読んでなかった佐藤幸治憲法」をスピードを調べるために読んでみた。これは、既読ではないが、憲法の基本的な議論は知っているという意味で、既読学術書の例である。10分で60ページ。1ページ1000字なので、分速6000字になる。
まあ、分速5000字位であるから読書速度 分速一万文字達成者リスト | SP速読学院のように、分速一万字をメルクマールとされると、私は速読ではないのかもしれない。
ただ、http://www.imjapan.co.jp/general/g-tsushin.htmlによると、日本人の平均が400〜500字/分らしいので、その10倍前後であるから、まあ、速読といっていいのじゃないかと思う。
さて、これらの本をどうやって読んでいるのか、自分で分析してみた。

 まず、小説だが、これは味わって読んでいる。一字一字目で追って、内容を味わっている。ただ、古文の引用があるところは読んでない(ざっと目を通す感じ)。どうせ意味が分からない*2し、その次に必ず日本語の訳、ないし内容解説があるからである。
だからこそ、スピードがそんなに速くないのだろう。
とはいえ、平均の10倍というのは一字一字目で追う速さが速いことによるだろう。また、頭の中で音読もしていない*3。それから、ほとんど返り読みもしない。その結果が5000字なのだろう。

映画を早送りで見てもおもしろくないのと一緒ってことですよね。
そのため多くの速読に関する文献では小説の速読はすすめてないようです
引用元:http://nya.livedoor.biz/archives/50175698.html

こんなのが某スレッドでささやかれていたが、大嘘である。映画に例えると、映画を、普通に見る。ところが、時計がゆっくり進んでいるため、終わってみたら10分しか経っていなかったという感じである。普通に小説を味わうんだけど、時計を見ると30分しか経っていないということである。


 次に、既読学術書は、自分が思っていたより速かった。既読学術書は、一字一字目で追って読んでいるのではない。キーワードを探し、そのキーワードに関する自分の知識を脳内で検索し、本に自分の記憶した内容と同じことが書かれているかだけをチェックする。同じ内容ならそこは飛ばす。違う内容だとわかったらはじめて一字一字目で追う。
 例えば、p17の「憲法の種別」という話しでは、まず11行目の「成文憲法不文憲法」がキーワードである。そこで、自分の知識を引っ張り出してくる。「確か、日本みたいに憲法典があるのが成文憲法、イギリスみたいにそういうのがないのが不文憲法。ただし、イギリスは法律等という形で一応「成文」の憲法はあり、それが憲法典として存在していないだけ。」という知識を検索するわけである。あとは、この内容と同じこと言っているかどうかを確かめるだけ。どうも同じことを言っているらしいということで、この項目はスルーとあいなる。
 これに対し、アメリカ大統領選についての憲法変遷(p42)は初見であった。そこで、一字一句きちんと追って読み、きちんと理解した。このように「きちんと読むところ」と「スルーするところ」の濃淡をしっかりつけているので、既読学術書が最も速く読めるのだろう。


 最後に、初見学術書であるが、これはてこずった。なにしろ、全然内容が分からないものだから、きちんと一事一句追わないといけない。その上、内容も小説と比べれば飛躍的に難しい。

 プラトンにとっては、イデアと現実とは二元的に分離され、現実超越的なイデアこそ、「生成や消滅によってさまよわされない真の実在」であった。これにたいして、アリストテレスは理想をそのように現実超越的なものとはみない。それはむしろ現実に内在し、現実の変化を通じて実現されていくものであった。このことは、アリストテレスのいわゆる形相(eidos, form)と質料(hyle, matter)の関係のうちに示されている。
引用元:「政治思想史」小笠原弘親等著p30

 まあ、こんな感じである。そこで、場合によっては、戻り読みをしながら、理解していった。

まとめ
速読のコツは、まずは音読をせず、「一字一句目で追っていく」スピードを上げること。
次に、これまでの知識を使って速く読むこと。
とはいえ、一番は本好きになることであろう。好きであれば、自然にたくさん読むようになるし、読むスピードも上がってくる。

注:これは、「速読法」等について、本を読んだりセミナーを受けたことがない、一般人ronnorが「実際にどう読んでいるか」について書いたものにすぎません。別に、「画像を頭に焼き付けないと速読できない」「本を開かなくとも内容がわかる」「十ケタの数字を暗記すると速読できる」と言っている(?)特定のセミナーや本を批判するものではありません。速読には個人差が大きいことを当たり前ですが、申し述べさせていただきます。

*1:まあ「ゆくか」「ゆこう」で2行とかがあるので、実質10万字位だろう

*2:大学受験のときなにをやっていたのだろう...

*3:上記スレッドでささやかれていた話しで、唯一私が納得したものが、この音読禁止。