アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

エロゲ世界の家族〜義妹問題に寄せて

D.C.II ~ダ・カーポII~ 通常版

D.C.II ~ダ・カーポII~ 通常版

1.はじめに
 いわゆるエロゲの世界においては、義妹が攻略対象キャラであることが頻繁に存在する。現実世界に比べてエロゲの世界においてはどれだけ義妹が多いのか、そして、そのことがいかなる意味を持つのか考察してみた。

2.エロゲの義妹率
 http://www.k2.dion.ne.jp/~chitei/jitumai/sonota/jitugimaihikaku.htmlによると、2004年10月29日から2007年5月20日までの約2年半に発売されたエロゲのうち攻略可能な実妹が74人、攻略対象可能な義妹が78人となっている。
エロゲー販売数を毎年600本とし*1、攻略可能ヒロイン数を5人とすると、2年半に発売されたゲームの7500人の攻略対象キャラクター中、義妹が78人であるから、義妹率は1.04%である。1万人がいれば104人が義妹という状態である。
3.現実社会の義妹率
 まず、義妹の発生原因として多いのは、「親が離婚*2→子どもを持つ異性と再婚」というパターンと「兄弟の結婚」がありえるが、エロゲの主人公の平均年齢及び結婚可能年齢を考えると、後者のパターンはほぼ無視できるだろう。
 さて、前者の親の離婚パターンについて考える。まず、どれだけ親が離婚した子どもがいるのかというデータがなかなか発見できなかった*3。参考になるのがhttp://wp.cao.go.jp/zenbun/seikatsu/wp-pl95/wp-pl95bun-1-4-5z.htmlであり、片親世帯の割合が8.4%というものである。これをベースにすると、1万人の子どものうち840人は片親が離婚しているといってもそこまで大幅に実態からずれていないだろう*4
ここで、厚生労働省によると離婚の場合、母親が親権を持つのが約80%、父親が親権を持つのが20%である*5。そこで、672人が母親に引き取られ、残り168人が父親に引き取られている。問題は、この168人の父親が、子連れの母親(672人の母親)と結婚する割合である
 ここで、再婚率であるが、http://tantei.web.infoseek.co.jp/rikon/saikon.htmlによると男75%と高い。もっとも、これは子どもがいる場合といない場合の両方を含むので、実際より高めだと考えていただきたい
 厚生労働省:人口動態統計 年報 主要統計表(最新データ、年次推移)によると、再婚する男性が再婚女性と結婚する率が50%だから、37.5%になる。
 よって単純に計算すると、168人のうち59人の父親が再婚女性と再婚することになる。
 さて、再婚女性のうち子どもをつれているのが何人かという問題であるが、再婚女性が子どもの存否に関係なく同じ割合で再婚すると仮定する場合*6厚生労働省によると子どもがいる離婚の割合が59.6%でうち女性の80%が子どもの親権を得ていることからは、47.7%の再婚女性が子どもがいると仮定できるので、59人のうち、28人の父親が子連れの母親と再婚することになる。
 あとは、義妹率であるが、兄妹、兄弟、姉弟、姉妹の4つの可能性平等があり、ここで問題としているのは兄妹のパターンのみであるから、4分の1、即ち7人が義妹となる。

 前述のように、「再婚の男女が子どもの存否に関係なく同じ割合で再婚する」という仮定は実際と異なっており、現実は子どもがいる場合には再婚割合が下がる*7はずであり、この数値は実際よりも高い数値になっているはずである。それでも1万人中7人という割合である。

エロゲの世界では現実の15倍以上義妹がいるのである。

4.分析
 この結果を分析すると、エロゲの世界では離婚が非常に多いといえるだろう。離婚や死別等で片親がなくなることが非常に多い世界においては、義妹発生率も上がる。
 そして、このことは、エロゲの世界において性道徳が乱れている理由も合理的に説明できる。未成年の子は、両親の離婚により、強いストレスを感じる。そのストレスは、乳幼児期には赤ちゃん帰り、身体症状等として出ることが多いが、思春期等においては情緒不安定、不登校、犯罪、そして性非行に走ることが多いといわれる。そして、一方の親のみで監護する状態になった場合には、子ども監督を十全足らしめることが困難になり、仮に再婚しても、再婚相手の関係形成という大きな壁がある。もちろん、全ての離婚家庭が性非行等に走るというわけではないが、非行を生みやすい要因が存在するのである*8。これらに加えて、エロゲ世界では登場人物の親が海外にいる等として不在であることが多いことも指摘できる。

 エロゲの世界で近親相姦、レイプ、性的いじめ、小学生位にしか見えない女児が「自分は18歳以上だ」と思い込む等の異常事態が発生している理由は、このような家族状況が大きな要因といえよう。

まとめ
 義妹問題から見える「エロゲ世界の家族状況」は、エロゲ世界においてなぜ異常事態が発生しているかについて1つの説明を与える。
 現実世界でも離婚件数は増加の一途をたどっている。もちろん、離婚すること自体は悪いことでもなんでもないが、父母の両方が「子どもがどうすれば幸せになるか」を考えて行動しない離婚は子の成長に大きな影を投げかける。エロゲはこのような安易な離婚に対し、警告を発しているのである。

謝辞:本稿は、三軒茶屋様の妹と結婚する方法についての私的まとめ(仮) - 三軒茶屋 別館という記事にヒントを得たものです。ありがとうございました。

*1:げんしけんOfficialBook」p188より

*2:ないし死亡

*3:なお、第5表 親権を行わなければならない子の有無別離婚件数・構成割合及び親が離婚した未成年の子の数・率の年次推移のデータは「ある年に新たに発生した親が離婚した未成年の子の数」であり、少し違う

*4:死別、片親世帯の子ども数と他の世帯の子ども数の違いといったものを無視している

*5:ここでは死別は無視している

*6:この仮定は怪しいわけで、実際よりも多い数が出る

*7:http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz199801/b0028.htmlの男親の場合は4割以上が「機会があれば再婚したい」と考えているのに対し,女親では2割弱にとどまっており,男女で大きな差が見られる。という記述参照。

*8:この部分について本を探すと「もし、その子が、おとなしく、勉強もよくするいい子だったら、両親は安心して離婚してしまうかもしれないという不安があるとき、その子が非行をすることにより、両親やその家族に『この子をなんとかしなければ』という共通の目標を与えて結びつきを強めさせ、バラバラになることを防」少年非行研究会「女子非行」p164や「両親の離婚によって心理的にも物理的にも大きな被害を受ける未成年者が多い」野田愛子、前澤智恵子「ファミリー・カウンセリングQ&舞」p70、不和期間が短く、子どもが小さいケースであれば、離婚までの不和により「精神的に落ち着かず神経質になっていたが、離婚後に落ち着きを取り戻」すことがある。しかし、不和期間が短くとも「子どもがある程度大きくなり、離婚前後の母自身の生活が相当荒れた」場合や、「不和期間が長い場合には子どもの影響は大きい。」「不和期間中に子どもが非行化し始め」たりする。親自身子どもをまったく考慮の枠外に置いているわけではない。このことは、離婚を決意するまでの悩みにおいて子どもの問題の占める割合の高さからも理解できるが、実際問題として夫婦の問題に対処することにせいいっぱいで、子どもにじっくりと目をむける余裕はなく、またこの間、親の機能を代行してくれる機関も無い。家族<社会と法>第二号p58〜等の指摘がなされている。6/13追記