アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

自己負担約5000円で数万円〜十数万円分多く義援金を送る方法〜ふるさと納税

  震災の被災者の方に心からお見舞い申し上げます。


地方税Q&A

地方税Q&A

注:本エントリは、ふるさと納税の上限額以上の募金をするべきではないというものではなく、また、ふるさと納税を唯一の募金方法としているのでもありません。あくまでも、せっかく納税するなら少しでも被災地の困っている自治体へという善意を実現する方法を紹介しているだけですので、ご理解頂きますようよろしくお願いします。

1.震災のため法律家ができることは?
  震災のために法律家*1が何ができるか。
 一つは、震災の後の法律問題に対する法律相談等であり、

阪神淡路大震災後の紛争処理は、多くの大阪弁護士会兵庫県弁護士会の会員がまじめに取り組みました。
ビジネス法務の部屋: 関西在住の弁護士の「つぶやき・・・・・」

と言われ、

Q&A災害時の法律実務ハンドブック

Q&A災害時の法律実務ハンドブック

等の本が出ている。


 ただ、それ以外に何か貢献はできないか? というのが、私の心にずっとあった。


あった!


2.ふるさと納税で最小の自己負担の寄付を!
  すでに、義援金キャンペーンが張られ、自分の払える限界まで義援金を払ってしまった人も多いだろう。すでに寄付できる分だけ寄付してしまい、例えば追加で数万円寄付するのはもうできないという方も多いのではないか。ここで、


条件付きだが、わずか5000円の自己負担で追加で数万円〜最大十数万円寄付をできる


方法がある。これが、ふるさと納税である。
  ふるさと納税とは、ざくっと言えば、例えば被災地の*2自治体に寄付をすると、一定限度額までは、「寄付金−5000円」の税金が安くなるという制度である。
「ふるさと」といっても、自分の出身地でなくともよい。日本の自治体であれば、自分で選べる。最近ではクレジットカード払いを認めるところも出てきている。
  ふるさと納税の一例を挙げると

給与収入700万円、住民税所得割額30万円、所得税*3税率10%の人が、(例えば被災地の) 自治体に4万円を寄付すると、
住民税で約3万1500円控除され税金が安くなる
所得税でも、約3800円控除され税金が安くなる*4
要するに、約3万5000円税金が安くなる、差し引き約5000円で4万円の寄付ができてしまった
日本女性税理士連盟編「新版地方税Q&A」57ページ参照

 等である。
 このように、自己負担が少なくても多く寄付ができる理由は、実質的には国と自分の居住地の税収がその分減るからである。  ふるさと納税の仕組みは、自分の住んでいるところ以外の自治体に住民税を納めてもよいではないかという発想であり、上限はあるが、その範囲なら、5000円の自己負担で、いわば自分の住民税を被災地の自治体に払えるのである。
  このような、いわば税金の支払先の変更であるから、自分が住民税を納めている自治体が震災の影響が強い場合は、あまり効果がないだろう。  自分が住民税を納めている自治体が、幸いにも震災の影響が少ない場合には、*5より支援が必要な被災地の自治体に(一種の)納税できるという制度である。


3.ふるさと納税の手続
 ふるさと納税手続の詳細は地方自治体によっても異なり得るがざっくり言えば、
納付→納付済証明書送付→確定申告
である。

納付方法は銀行振込等いろいろあるが、
Yahoo!ふるさと納税 - インターネットでふるさとに寄付しよう!
でクレジットカードで払うのが一番簡単だろう。

多くの自治体ではまず自治体ホームページ等を通じて申込書に記載の上、自治体からの支払番号を取得し、それをyahoo公金支払いサイトに入力してクレジットカード払いをすることになる。
被災の中心地以外の自治体に寄付するなら今でも大丈夫だろうが、中心地に寄付するのであれば、支払番号発行事務ができる余裕ができた頃に行うのがよいだろう
納付が確認されると納付済証明書が送付される。その後、確定申告で控除を申告することになる。


  確定申告は大変とおっしゃる方もいるかもしれない。
  確定申告は極めて困難ではないが、確かに一定の手間はかかる。しかし、本エントリをご覧の方は既に地方自治体以外に寄付をした方も多いだろう。そのような方は確定申告をすれば、ふるさと納税でなくとも*6寄付金控除が適用される可能性がある。ざくっと言えば、寄付額−2000円に税率をかけた金額が所得税から控除される
例えば、日本赤十字社に100万2000円*7寄付した方の税率*8が10%なら、10万円分、20%なら20万円分税金が安くなる
 つまり、既に行った寄付について、確定申告をすることで、税金が控除されるのである。*9この金額は少なくない。確定申告するだけのメリットはあるだろう。
寄付金控除のために確定申告をするのであれば、普通の寄付金控除に加えふるさと納税の控除をしても手間はそう大きく変わらない
 しかも、例えば確定申告をして5000円分税金が安くなるなら、その5000円をふるさと納税に使うことで、例えば10万円分の寄付が追加でき、有効に被災地を支援できるのである*10


なお、寄付後、次の確定申告時(還付の場合は還付時)までは、控除分の金額も含め、キャッシュは自分の手元にはないことになるので、資金繰りがギリギリの方は「ご利用は計画的に」である。


4.上限額の試算
いくらまでであれば5000円の自己負担でふるさと納税ができるか。この 上限額の試算は簡単ではない。


まず、年収が変わらなければ給与明細記載の毎月の住民税額の120%がほぼ確実に上限内と言える*11


 次に、もう少し上の額でも上限内になる。具体的には、

・年間所得の30%以内
・(寄付額ー5000円)×(90%ー所得税率)<住民税所得割の10%
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/080430_2_kojin_bt9.html

の2つの条件を満たす額である。


 住民税は12等分して毎月の給料から差し引くから(特別徴収*12)住民税の所得割は給与明細の住民税の額の120%くらいと考えて大きな間違いはない*13
  そこで、例えば所得税率20%(所得695万円以下*14)の方が10万5000円をふるさと納税する場合、
10万円×70%*15である7万円が住民税所得割の10%を下回っていればよい*16
  給与明細の毎月の住民税の所得割額が6万円くらいであれば、上限内であり、5000円の自己負担で10万5000円を被災自治体に寄付できることになる*17。所得割の額がもう少しすくなければ、差額部分は全額税金が安くなるのではなく、30%分税金が安くなることになる*18
  所得によるが、数万円〜十数万円を5000円の自己負担で被災自治体に寄付できるのがふるさと納税なのだ。

ふるさと納税の注意点
・本エントリは税法の専門家によるものではありません。内容につき責任を負いかねますこと、あらかじめご了承下さい。なお、仮に誤りがあればすぐ直しますので、コメントいただきたく存じます。
・上記の額は目安であり、個々の事情によっては5000円以上の自己負担が発生する可能性もあります。
・自己負担以外の部分は実質的に「税金の納付自治体の変更」です。居住自治体への震災の影響が少ない場合には問題は少ないですが、居住自治体への震災の影響が甚大な場合は避けた方がよいでしょう。
・確定申告手続が必要ですが、既にした寄付についての寄付金控除と一緒に申告すれば申告の手間の差はそう大きくないでしょう。
・激震地ではまだふるさと納税の受付をできる状態ではないものと思われます。寄付の時期についても考慮しましょう。
・税金が還付され、ないし翌年の住民税が減額される形なので、寄付後キャッシュが返ってくるまでしばらくかかります。資金繰り的に無理ない範囲でふるさと納税をしましょう。

*1:の卵

*2:被災地でなくとも制度的には大丈夫ですが…

*3:限界

*4:具体的には翌年の住民税が減る

*5:支援の必要性が高くない居住自治体に変えて

*6:寄付先にもよるが

*7:2000円がついているのは、寄付金マイナス2000円に税率をかける計算式だから

*8:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

*9:税率と寄付額にもよるが

*10:なお、国税庁ホームページリニューアルのお知らせ|国税庁のとおり、所得税の寄付金控除はふるさと納税とあわせて所得の40%までという制限があるので、この点に留意が必要である。

*11:バッファがあるので均等割の問題もほとんどないだろう

*12:同人の同人による同人のための「確定申告マニュアル」〜のうぜい! - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照

*13:均等割額が特別に多い自治体は均等割も考慮すべきでしょうが…

*14:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

*15:90ー20=70

*16:この場合、明らかに所得の30%以内

*17:可能性が高い

*18:所得税率20%が前提なので、所得税で20%寄付金控除、住民税で10%の控除となる。