- 作者: 櫻井敬子
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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1.サクハシが退屈って人、いませんか!?
サクハシ。言わずと知れた、櫻井敬子・橋本博之「行政法」のことである。
- 作者: 櫻井敬子,橋本博之
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2011/07/25
- メディア: 単行本
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しかし、サクハシは、「基本書」である。その目的は、司法試験レベルの事項を網羅的に解説するというものであり、別に内容の面白さで勝負している本ではない。その結果、どうしても「つまらない」「退屈」に感じる人が一定程度出てしまう。そういう場合にどうすればいいのか?
まず、基礎が分からないからつまらないのであれば、
- 作者: 藤田宙靖
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2006/11/10
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行政法の勉強法〜藤田「行政法入門」を読む - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
ただ、一応基礎は学んでいるのでサクハシの意味は分かるが、基本書の文体が眠気を誘う…こんな場合には、単に基礎を学べばいいのではない。どうすればいいのか?
2.櫻井先生! こんなにぶっちゃけていいんすか?
ここで、桜井先生の著書に「行政法のエッセンス」というのがある。これは、櫻井先生が教科書では書けない行政法の真髄(エッセンス)をまとめたものである。入門レベルの事項は大体記載されている*4ので、行政法の入門書としても十分使えるが、もう一つの使い方がある。
それは、桜井先生のぶっちゃけトークを楽しむということである*5。
雰囲気は、「プレップ労働法」や、「インタラクティブ憲法」、「会社法大要」に近い。
- 作者: 森戸英幸
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2011/03/15
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- 作者: 長谷部恭男
- 出版社/メーカー: 有斐閣
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- 作者: 龍田節
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2007/05/14
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抽象的に説明するよりも、具体的な「行政法のエッセンス」の内容を紹介することが、一番感じをつかみやすいだろう。
例えば、公法私法二元論*6を否定する見解に対しては、こう皮肉る。
ある行政法のテキスト*7のキャッチフレーズに「行政法とは何かを考える」というものがありました。そのテキストを書いた先生は通説に従って公法概念を否定していましたので、今にして思うと、行政法学者でありながら行政法とは何であるかということが分からなくなってしまっていたのかなあ、と推測されます。
櫻井敬子「行政法のエッセンス」23頁
裁判員制度に対しては、
実際のところ、一般人に「健全な常識」が本当にあるのかどうか定かではありません
櫻井敬子「行政法のエッセンス」49頁
と指摘する。
地方分権については、
地方は、長い間、国に「おんぶにだっこ」できていますから、突然自立しろとかいわれても、戸惑ってしまいます。自立するには大変な労力が伴いますし、自立してしまえばもう誰も助けてはくれません。リスクは全て自分が負うことになります。したがって、「地方分権」と言ってはみるものの、本音の部分では「自立したくない」という気持ちがあります。「今よりも権限と財源は欲しいけれども、これまでどおり国に面倒もみて欲しい」という、わがままな言い分が見え隠れしています。
と、地方に「甘えの構造」があるとバッサリだ。
こういう「櫻井節」が快調なのに加え、「許可と特許の相対化について、ラーメン屋の例で考える」*8といった面白い例を使った説明がされていたり、*9なぜ行政行為に公定力が認められるかについて、単に「取消訴訟の排他的管轄権」があるからという一般的な説明をするのではなく、「課税処分に公定力がないとしてみんなが納税を拒否したら?」といった、実質的な根拠を検討する*10等、入門書のレベルを超えてむしろアドバンストなことまでやっている。
本書を熟読することで、サクハシの櫻井先生が「本音」では何を考えているかを理解できる。その上でサクハシを読めば、やや無味乾燥チックなサクハシのあの文章も、「ここは簡単に書いてるけど、本音はここかぁ。」とか、「ここは橋本先生に押し切られた?」等と、今までよりも面白く読めるようになるのではないだろうか。
まとめ
サクハシがつまらないという場合には、2つの原因がある。基礎知識の問題と、叙述(共著の基本書であることによる限界)の問題だ。
対策として、もうサクハシは捨ててプラクティス行政法*11にするという方法もあり得るが、サクハシで新司法試験に挑戦するなら、この2つを解決する「鍵」は、「行政法のエッセンス」をサブテキストとすることである。本書を読めば、サクハシの理解に必要な入門レベルの知識を解説すると共に、「櫻井節」でサクハシの裏にある櫻井先生の行政法の考え方が理解できるようになるだろう。
*1:基本書としては薄いので記述の濃淡はあれど
*2:第3版では
*3:最近は入門書でいいものが結構出ている。
*4:救済法がちょっと薄く、メインは総論部分だが
*5:なお、わずじゃ218頁の本であり、情報量や論点の網羅性という意味では到底これだけで新司法試験に立ち向かえるものではない。あくまでも、サクハシのサブテキストと考えていただきたい。
*6:詳しく同書20頁に譲るが取り急ぎエマと公法私法二元論 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常を参照されたい。
*7:10年以上前とのことですが、どのテキストのことか、情報を緩募中です。
*8:本書102頁
*9:説明として成功しているかはともかく
*10:本書106頁
*11: