アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

法律家に必要な常識を身につける本〜がんばれ新人くん!ー新しく法律事務員になられた方へー」

機動戦士ガンダムの常識 一年戦争編

機動戦士ガンダムの常識 一年戦争編

1.「常識」って具体的には何か?
「最近の修習生や若い弁護士は常識がない」「求めている修習生像『最低限の社会常識を備えていること』」「就活のため、常識力をつけよう」
等々と、「法律家としての常識がないといけない」という点では、衆目の一致するところであろう。しかし、「どこまでが分かっていないといけない常識なのか」という点はなかなか難しいところである。


その一部を垣間見させる本が、「事件類型別 弁護士実務ハンドブック」という点は、
事件類型別弁護士実務ハンドブック〜弁護士のレベル低下なんてあるわけない? - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

事件類型別 弁護士実務ハンドブック (東弁協叢書)

事件類型別 弁護士実務ハンドブック (東弁協叢書)

  • 作者: 松江頼篤,近藤健太,黒澤圭子,炭本正二
  • 出版社/メーカー: ぎょうせい
  • 発売日: 2011/04/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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で既に述べたが、これは、事件類型別の実務知識をつけることが主眼である。


2.法律事務員向け「新人君頑張る」
ここで、弁護士向けではないが、弁護士事務所の事務員向けの良い本を発見した。
法律事務員全国連絡会(法全連)という、法律事務員の親睦や経験交流を目的とした会が、「法律事務」という雑誌を刊行している。
HONET 法律事務員全国連絡会の総合サイト
この「法律事務」の別冊の「がんばれ新人くん!ー新しく法律事務員になられた方へー」は、100頁程の小冊子ながら、「法律事務所における最低限の常識を相当程度網羅している。


先輩事務員が、始めて事務員になる若者に、自分の苦労を元に知っておくべき事項をまとめている。

第一章 法律事務員ってな〜んだ?!
第二章 基本的な日常業務・一般事務
第三章 法律事務・基本編
第四章 裁判って?ー裁判の意味と裁判の種類ー
第五章 がんばれ新人くん!「物語編」〜初めての建物明け渡し〜

このような章立てである。確かに一部は「これは事務員さんだけに必要な知識だな」というのもあるが、大半が法律に携わる者として知っておきたい事項である。


例えば、内容証明郵便の書式を知らずに「40字×40字」のワードの標準書式で送付しようとして失笑されたり、秘書さんとボス弁が外出中、裁判所から電話が来て「裁判官の佐藤さんから電話です」とだけメモを作ったら、「何部?刑事?民事? 多分左陪席(主任)の方が掛けて下さってるんだと思うけど、名前だけじゃ分からないよ」と怒られたり*1といったことは、本書を読んでおけば回避できるだろう。


また、コラムが充実しており、「お客様から『こういうのはあなただから言えるんだけど…』とボス弁への苦情が入ったら」「役所に早く仕事をしてもらう『裏技』」「役所の引越しに注意(特に保全事件)」等の実務に役立つ内容が懇切丁寧に解説されている。
ベテラン事務員が若かりし日にした「非常識」な失敗(地下鉄で記録を読む等)についても赤裸々に書いており、コラムだけを読んでも勉強になる。



3.既に弁護士をされている方にも「新たな気づき」が
上記のような「法律家としての常識」の点に加え法律事務所の勤務弁護士の方や、それを目指されている方がこれを読んで感じるであろうことは、「縁の下の力持ちとしての事務員さん」ということである。弁護士が仕事に集中し、お客さんが気持ちよく相談できるよう、お膳立てをして下さっている。その事務局の苦労・努力はあまり弁護士には見えてこない。


しかし、そのきめ細かな配慮には驚愕すべきである。私は、ひょんなことから某事務所の新人秘書用研修マニュアルを拝読する機会があったが、これは「衝撃」であった。例えば、「顧問先の◯◯は、事業部毎に法務機能があるが、長いおつきあいなので会社名を名乗らず、最初から××事業部の△△ですと名乗る。これを『どこの△△様でしょうか?』と聞き返さないで、弁護士には『◯◯社××事業部の△△様からお電話がありました』と伝える」といった電話対応がスムーズに流れるようにするための細かな注意点があったり、お茶の温度を外気温等を踏まえてどう調整するかとか、弁護士毎の細かなプレファレンス*2といった細やかな気配りがあったり…という感じだ。
多分いろいろなトライアル・アンド・エラーを経ながら、長い間蓄積して改善した内容を元に研修しているのだと思われるが、このような秘書さん方のきめ細かな配意があってはじめて弁護士業務というものはうまく回ることができるのだなぁと思った次第である*3
本書でも、ここまで細かな内容はないものの、大ベテラン事務員の方の「むしろ、法律事務所全体を見渡せるベテランになってから、受付、電話、コピーの難しさを感じる」といったコラム等、既に弁護士をされている方も「事務員さんのありがたさを感じる」記載も多い。

まとめ
法律事務別冊の「がんばれ新人くん!ー新しく法律事務員になられた方へー」は、修習生や新人弁護士が法律家としての常識を確認するという目的で使う上で有用である。
また、新人弁護士でなくとも、法律事務員さんが実はものすごい配慮や努力をして下さっているというのを知る上で有用である。


なお、法全連のサイトで「法律事務 」についての情報を調べると、
HONET 法律事務員全国連絡会の総合サイト
準備中のサイトに飛ばされてしまう。昔はT法律事務所の事務員さん宛にFAXして購読申し込みをしていたようだが、今は担当者の方が変わっていてもおかしくないので、連絡先をここに掲載することは控えておく。
なお、法律事務の別冊ではない通常号の内容については
http://hou.cocolog-nifty.com/hou/2007/10/post_8676.html
が参考になる。

*1:け、決して、実話なんかじゃ、な、ないんだからねっ!!!?

*2:A先生には朝一番に温かいブラックコーヒー、B先生は資料は全部A5版がいいので、雑誌をコピーする時は見開きを81パーセント縮小する、C先生はロースクール時代の癖で四面割付裏表印刷が好き…。

*3:まあ、企業でいうと、実は営業が華やかで、かつ、営業のおかげで企業が儲けているように見えるけれども、きめ細やかなバックオフィス部門のサポートによってその利益が実現するというのはよくあることですよね。