アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

一緒に読むと面白い「司法修習QUEST」と「わたしの修習時代」

司法修習QUEST~弁護士になるまでに (ウィングス・コミックス)

司法修習QUEST~弁護士になるまでに (ウィングス・コミックス)

1.あの「赤ネコ」先生の司法修習漫画登場!
本業が漫画家で、漫画7対弁護士3の割合で仕事をされ、「漫画のために弁護士になろう」と法学部に進学されたという*1、異色の弁護士、赤ネコ先生


その4コマ漫画、「修習QUEST」
4コマ修習 もくじ | 法律擬人化!〜赤ネコ式六法全書〜
は、(当初)主人公のミリオタ、修実遥ちゃんが、人質司法を脱するために戦車を使う等の意外性のある行動が、一部にカルト的人気を博していた*2


この「修習QUEST」がついに商業出版された。それが、赤ネコ法律事務所「司法修習QUEST〜弁護士になるまでに」である。これは買うしかないだろう。


2.修習を追体験しながら、ストーリーとしても読ませる
約150頁であるが、あまり薄いという感じはしない。
単なる4コマweb漫画の単なる再録ではなく、(4コマで使われたネタも収録されていますが)「霊能ネタ」で有名な新井司を主人公としたストーリー漫画として、書き下ろされたものである*3


内容は、なんとか就職にこぎつけた新井司が、新人弁護士として、パワハラ好きのボス弁御鳥翔子先生のところでこき使われるという設定の中で、実務修習から集合修習、そして選択修習までの思い出を語るという感じである。


 赤ネコ先生ご自身が、法科大学院出身*4の弁護士でいらっしゃることもあり、給費制末期の司法修習生の生活をビビッドに追体験できる。


また、真面目な話*5と、面白おかしい話*6ベストバランスでちりばめられており、物語そのものとして読ませる。



3.一緒に読むと面白い「わたしの修習時代」
私が密かに注目したのは、ボス弁の御鳥先生が、修習時代について

二年の間に 裁判所や検察庁に行って 色々な経験をさせてもらえるんだ
楽しかったなあ まさに青春って感じだったよ
赤ネコ法律事務所「司法修習QUEST」25頁

と、バラ色の青春として語っており、これに対し、「お歳がバレますよ」と、新井司が忠告しているところである。
修習は、2年、1年6ヶ月、1年4ヶ月、そしてついには1年へと期間が減らされており、どの修習期間なのかで、年代が分かるのである。



そして、一般に、昔に遡れば遡る程、修習時代は楽しい青春時代だと、バラ色に見る人が多い傾向が指摘できるだろう。



このことを裏付けるのが、東京弁護士会の会報「LIBRA」に連載されている「わたしの修習時代」である。


殺人や強姦という大事件が修習生に割り当てられ、被疑者や被害者を大部屋で調べた*7、とか、前期修習において、4 月には入所パーティーソフトボール大会、5 月には1泊での見学旅行、7 月にはいずみ祭(寮祭)とキャンプ等と公式行事も多く、クラス仲間同士の親睦や教官との親睦も深まっていった*8とか、修習生ワルツ*9といった思い出が語られている。




もちろん女子修習生に対する教官の女性差別発言問題等、まだ法曹界に女性が少なかった当時ならでは*10の問題はあったようだが*11概ね楽しい思い出という趣旨の記載に溢れている



これに対して、司法修習QUESTでは、就職問題期間の短さによって、特に集合修習が大変になっており、二回試験不合格者も増えていること任官・任検が狭き門となっていること貸与制への移行等の問題をも浮き彫りにしており、このような問題を抱えながらも、前向きに勉強する現代の司法修習生の姿を描いている。


 そもそも、「わたしの修習時代」に出てくるキーワードには、前期修習ボーナス等、今の修習生には存在しないものも多く出てくるし、即日起案夜の修習等も今ではかなり減ってしまった。


主にここ約10年の司法改革による司法修習生の変化を知る上で、「司法修習QUEST」と「わたしの修習時代」を併せて読むことは非常に有益だろう。


まとめ
赤ネコ法律事務所「司法修習QUEST」は、単品としても、司法修習の内容をリアリティをもって伝えると共に、真面目な話と面白い話が適度にブレンドされており、多くの人に読んでもらいたい本である。
また、司法修習が「バラ色の青春」だった頃の、「わたしの修習時代」と対比することで、司法改革を経て現代の修習生がどう変わったかを立体的に知ることもできる

謝辞
赤ネコ先生のブログに取り上げて頂きました。
警告文であり挑戦状でもある | 赤ネコ法律事務所・別館!
ありがとうございます。

そう。あそこはそうなんです。
「バラ色の青春」を語るベテラン弁護士。
 今の修習生をこんな過酷な状況に陥れた当事者でもあるはずのベテランの方々がバラ色の青春を語ることが、新人からどう見られるのか。

 というコメントを頂戴し、大変感謝しております。
 まだまだ「造詣の深い」には至っておりませんが、今後とも先生の「挑戦状」を楽しみにしております。

*1:弁護士列伝 - 学生が直撃インタビュー! | 弁護士ドットコム:<赤ネコ法律事務所 森田優子先生>

*2:第8話 人質司法 | 法律擬人化!〜赤ネコ式六法全書〜

*3:正確には、出版元の新書館のWeb漫画雑誌であるWingsに連載されたものを単行本としたもの。AHREF参照

*4:法政大学とのこと。

*5:例えば、同じ裁判体の前で同じ検察官がずっと訴訟を追行するのはいかがなものかという問題(60頁)や、裁判官が本人訴訟に弁護士をつけることを薦める場合、マジでつけた方がいいといった話(81頁)

*6:例えば、勉強会をする目的として、「万一間違っても自分一人ではないから」とのがあるといった話等(30頁)、就活の際特技欄に霊視と書く(118頁)等。

*7:http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_12/p48.pdf

*8:http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_09/p46.pdf

*9:http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_05/p34.pdf

*10:法曹界に男女差別が存在しないという趣旨ではない。

*11:http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2012_07/p40.pdf