アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

独禁法務の実践知の「索引」を勝手に作る

 独禁法務の実践知の「索引」を勝手に作る

独禁法務の実践知 (LAWYERS’ KNOWLEDGE)

独禁法務の実践知 (LAWYERS’ KNOWLEDGE)

 

 

いわゆる「おじさんライン構文」が業務用チャットで流れてくるのを見ながら、コロナは世界を変えたなぁ、という感慨に浸っています(ご挨拶)。

 

さて、今回はBusiness Law Journal連載・連動企画です。一応私ronnor(ツイッターアカウント名@ahowota)は、「企業法務系ブロガー」という呼称で、Business Law Journal誌上で「辛口レビュー」を連載させて頂いております。

 

Business Law Journal2020年7月21日発売号(書店ではなく、公式サイトからの予約をしましょう!!)においては、長澤哲也『独禁法務の実践知』をご紹介しますが、今回はその索引を勝手に作る、Business Law Journalスピンオフ企画です。

 

 

www.businesslaw.jp

 

 

長澤哲也『独禁法務の実践知』はとても良い本である。

しかし、何が一番の不満かというと、索引機能が弱いことである。

ないなら自分で作ってしまえ」ということで、同書の「プラットフォーム」関係の内容をまとめてみた。なお【索引あり】とされている4箇所以外は、少なくとも「プラットフォーム」では索引で出てこない*1

 

なお、プラットフォームについて約1年前の情報をまとめたものとして「デジタルプラットフォーム・プラットフォーマー・デジタル市場のルール整備関係報告書等まとめ」を参照のこと*2

ronnor.hatenablog.com



1 凡例
・eコマース実態調査報告書(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/jan/190129_4houkokusyo.pdf)

・飲食店ポータルサイト実態調査報告書(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/mar/200318-2.pdf)
・個人情報取引優越ガイドライン(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191217_dpfgl_11.pdf)
・データ競争政策報告書(https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/170606data01.pdf)
・デジタルプラットフォーマー実態調査報告書(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/oct/191031b.pdf)
・電気通信事業ガイドライン(https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/denki_files/denkitushin190906.pdf)


2 共同購入との関係
共同購入は調達に関する競争者間での協調的取組との関係で問題となり得る他その方法として電子商取引サイト運営事業者(プラットフォーム)といった第三者を利用して行われる共同購入がその方法が例示されている(97頁)
・共通の企業間電子商取引プラットフォームを利用して供給者と購入者が個別交渉を行う場合には、その際に購入者間で購入条件に関する情報交換が行われる物でない限り、独禁法上問題とはならないとされる(98頁)

 

3 商品内容に関する競争者との協調的取り組み
・競合する複数のデジタルプラットフォーム事業者によるベンダーが遵守すべきルールの統一について平成25年相談事例集6が引かれている(108頁)

 

4 最恵国待遇条項(MFN条項)・均等待遇条項(パリティ条項)
・(取引先間の競争阻害の文脈で)プラットフォーム事業者が自らを通じて最終受容者に商品を販売する利用事業者に対して自社のプラットフォームでの価格や品揃えを他のプラットフォーム等を販売する場合と同等以上となるよう設定することを義務付けること等についてデジタルプラットフォーマー実態調査報告書第2部第4の3(1)等を引いて議論(135頁)【索引あり】
・(第三者に対する排他的拘束の文脈で)プラットフォーム事業者が、プラットフォームを通じて最終需要者に商品を販売する利用事業者に対し、自社のプラットフォームでの価格や品揃えを他のプラットフォーム等を通じて販売する場合と同等以上となるよう設定することを義務付けること等が最恵国待遇条項の類型に該当することについて公取委処理平成29年6月1日(電子商店街事業者拘束条件付取引被疑事件)を引いて説明(276頁) 【索引あり】
・(第三者に対する排他的拘束の文脈で)プラットフォームの最恵国待遇条項(MFN条項)義務付けが競争阻害効果を有することについて、デジタルプラットフォーマー実態調査報告書第2部第4の3(1)等を引いて議論(277頁)
・(第三者に対する排他的拘束の文脈で)プラットフォームが同等性条件を義務付けることで、当該プラットフォームで顧客に提供される様々な便益(情報等)につき他のプラットフォーム事業者や利用事業者自身がフリーライドすることを防止し得ることや、競争促進効果が認められるために考慮されるべき事項を電子商店街事業者拘束条件付取引被疑事件担当官解説を引いて議論(278頁)

 

5 取引先間の競争阻害
・コンテンツプロバイダによるプラットフォーム事業者への利用料金の指示について平成16年相談事例集事例3を引いて議論(149頁)
・取引先の選別・差別的取り扱いに関し、飲食店プラットフォームが恣意的にアルゴリズムを設定・運用することなどにより、特定の飲食店の店舗の評点を落とすことによって、当該飲食店をたの飲食店との競争上著しく不利にさせることも差別的取り扱いの問題となることを飲食店ポータルサイト実態調査報告書第4の3(3)を引いて論じる(183頁)

 

6 第三者に対する排他的拘束
・第三者に対する排他的拘束の、競争者に対する取引妨害として、ゲーム配信プラットフォーム事業者が、有力な一部のゲーム提供者に対し、競合するプラットフォームにゲームを提供しないことを要請し、当該要請に従わない場合には、当該ゲーム提供事業者が自社のプラットフォームを通じて提供するゲームのリンクをウェブサイトに掲載しないとすることは、当該ゲーム提供事業者の自由な意思決定を阻害し、取引先選択の自由を侵害するものであり、競争手段として不公正なものであって、競争者に対する取引妨害に該当するとした公取委命令平成23年6月9日(ゲームプラットフォーム事業者取引妨害事件)を引く(232頁)
・コンテンツプロバイダに追ってリンクを掲載されることが重要なポータルサイトにおいて要望するカテゴリへの掲載を不当に拒否したりサイトのツリー構造の最下層近辺に配置したりすること等が競争者と取引することによる不利益取り扱いの拘束手段となることについて、上記ゲームプラットフォーム事業者取引妨害事件電気通信事業ガイドラインII第4・3(1)①を引く(242頁)
・競争者と取引しないことによる有利取扱いの例として、プラットフォーム事業者が、自らのプラットフォームを利用するソフトウェアの開発メーカーに対し、特定のソフトウェアを自らのプラットフォームのみを通じて配信することを条件として、当該ソフトウェアの開発費用を一部負担したりその提供について支援を行なったりすることにつきゲームプラットフォーム事業者取引妨害事件平成29年相談事例集事例4を引いて説明(242-243頁)
・その場合の市場閉鎖効果について、取引機会の減少の十分性に関し平成29年相談事例集事例4を引いて説明(259-260頁)
・プラットフォーム事業における市場閉鎖効果について、理論的には顧客群との取引ごとに生じ得るが、プラットフォーム全体を一つの取引分野として、市場閉鎖効果を見ればよいというコラム(264-265頁)【索引あり】

 

7.競争者に対する取引拒絶等
・デジタルプタットフォーム事業者が自ら又はその関連会社と利用事業者間において手数料や表示の方法等を不公正に有利に取り扱う、検索アルゴリズムを恣意的に操作して、自ら又はその関連会社が販売する商品を上位に表示して有利に扱うなどの行為を行うことは、競合する利用事業者と消費者の間の取引を不当に妨害するものとして独禁法上問題となるおそれがあることをデジタルプラットフォマー実態調査報告書第2部第4の2(3)を引いて論じる(292頁)
・デジタルプタットフォーム事業者が利用事業者による販売によって得た顧客情報について、利用事業者に提供しないことにより、自らまたはその関連会社の販売を有利に進め、利用事業者の販売を不当に妨害する場合には、競争者に対する取引妨害等として、独禁法上問題となるおそれがあることをデジタルプラットフォマー実態調査報告書第2部第4の3(2)を引いて論じる(310頁)

 

8 有利な取引条件による顧客の獲得におけるプラットフォームの有利条件の判断
・プラットフォーム事業における有利条件の設定について、多面市場全体でのコスト割れ判断、不当に得た利益を原資とした有利条件の設定等について、平成12年相談事例集事例2や東京高決昭和50年4月30日(新聞発行業者不当廉売緊急停止命令事件)、業務提携報告書第6の3(3)等を引いて論じる(343-344頁)【索引あり】

 

9 顧客による合理的選択の阻害
・飲食店ポータルサイトが事実と異なる内容の口コミ投稿を削除等する条件として、自己のサイトの加盟店になることを義務付けることは、加盟店獲得競争の競争手段として不公正であり抱き合わせ販売等のうちの取引強制に該当するおそれがあることについて飲食店ポータルサイト実態調査報告書第4の3(4)を引いて論じている(358頁)

 

10 優越的地位の濫用
・(プラットフォームにおいては規約変更等で多数の相手方に同時に影響を与えられるところ)優越的地位の濫用の成否の判断においては、不利益を受け入れざるを得ない相手型の数が、考慮要素として重視されることをデジタルプラットフォマー実態調査報告書第2部第4の1(1)を引いて論じている(369頁)
・サービス提供事業者(デジタルプラットフォーム事業者)が消費者に対しサービス提供の対価として個人情報の提供を受ける場合に提供を受ける個人情報等の価値に対して相応でない品質のサービスを提供することが優越的地位の濫用として問題となり(個人情報取引優越ガイドライン5(1)、5(2))、不当な方法で消費者から個人情報等を取得したり利用することが正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるとされること(個人情報取引優越ガイドライン5(1)、5(2))が論じられる(371頁)

 

 

まとめ

長澤哲也『独禁法務の実践知』はとても良い本である。索引機能の弱さが不満なので、個人的に興味があるプラットフォーム(デジタル・プラットフォーム)関係について自分で索引を作ってしまったので共有したい。

興味を持たれた方は、是非Business Law Journal2020年7月21日発売号をご参照ください!

 

*1:なお「デジタル・プラットフォーム」で出てくるものがあるが、本来は「プラットフォーム ー デジタル」等として、「デ」で探さなくても見つかるような設計とすべきである。

*2:特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律の成立により、状況は大きく変わっていることは留意されたい。