アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

法務パーソンがラブライブ!スーパースター!!を観るべき10の理由

法務アドベントカレンダー2021年「経営アニメ法友会」記事はラ!ス!!

 

 

さて、法務アドベントカレンダー2021年では、昨日経営アニメ法友会会長が法務に勧めるアニメ百選の第三弾を公開された。

 

kanegoonta.hatenablog.com

chikuwa-houmu.hatenablog.com

 

経営アニメ法友会については、昨年の法務アドベントカレンダー2020年で「設立宣言」をした、アニメの知見を法務実務に活かすことを希望する法務実務に従事する実務家によって構成される任意団体である。

 

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さて、昨年も、ニジガク(「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」)の布教をしていたので、同じように見えるかもしれないが、ラブライブ!スーパースター!!は、別の学校の別のユニットの物語である。経営アニメ法友会会員として、これをご紹介し、法務に活かせる知恵等についても私見を述べたい。年に10個も紹介されるちくわ会長と異なり、当方は年1個なので百選まで100年かかるが、ご容赦いただきたい。


アニメの内容は一言で言えば「学生アイドルがチームを作り、日本一決定戦(ラブライブ)に向けて頑張る」というものである(過剰な要約)。結ヶ丘女子高等学校のアイドルグループLiella!のメンバー達、澁谷かのん、唐可可、嵐千砂都、平安名すみれ及び葉月恋(順不同)の成長が綴られている。


1.「花形」と「お荷物」
どの会社にも花形部門とお荷物部門がある。法務が「お荷物」として、無能社員の左遷先になっている会社もあると聞いているが、とりあえずは「お荷物」までは行ってない会社もままあるだろう。ただ、流石に法務が「花形部門」かというと、そうでないことが多いのではないか。普通は「お金を稼ぐのに直接貢献する部門」が花形であり、バックオフィスでは「経営企画」くらいではなかろうか(偏見)。*1

 

 なお、同じラブライブ!シリーズの別の物語であるラブライブ!サンシャイン!!における合併の側面における「花形」と「お荷物」については既にブログ記事を執筆したところである。

ronnor.hatenablog.com

 そのような部門間の差別と葛藤を描くのが、ラブライブ!スーパースター!!である。花形である「音楽科」と、お荷物の「普通科」の間においては、厳然とした差が存在する。特に、音楽科出身の生徒会長葉月恋は、文化祭における音楽科中心主義を打ち出し、物議を醸した。
 主人公の澁谷かのんは、普通科在籍、しかも、音楽科は受験で落ちて普通科に入った、という立場である*2。法務パーソンが、自分は「花形」ではない、と悩んでいるのであれば、「お荷物部門」のかのんを主人公とする、ラブライブ!スーパースター!!は琴線に触れるとこころあるだろう。
 加えて、かのんの運命は、その政治力のなさによって翻弄される。ラブライブはオリジナル曲を歌うことが必要だ。かのんが楽曲作成を担当するが、歌詞が先か、楽曲が先かという「鶏卵問題」で、その「交渉力のなさ」がたたって、先にやらされることになった。
 法務がプロジェクトを行う場合でも、他の部門の方が交渉力が強く、実務では仕事を押し付けられたり、どちらが先でもいい仕事を先にやらされたりすることはありそうである。しかし、それでいいのだろうか。社内でも交渉力が弱い法務部は、「論理的な先後関係がある」等と指摘し、なるべくこのような「押し付け」回避するよう努めるべきである。



2.条件の明確化

 契約では、ある条件の成就をトリガーに金銭請求権その他の権利義務が発生、移転等することが多い。しかし、「ダメな契約」だと、その条件の部分が「フワフワ」している。


 ラブライブ!スーパースター!!では、かのん達のスクールアイドル活動が認められる条件が、「XXというフェスで一位を獲得したらスクールアイドル活動を認める」という、大変大雑把なものであった。フェスは、たまたまスケジュールがあった大物が「電撃参戦」する可能性がある。そのような「プロジェクトの背景になる実務的状況」を熟知している法務パーソンであれば、「要するに今参加者として見えているグループの中で1番上の順位になればいいのですね!」として、「XXXというフェスで参加するAAA、BBB、CCC・・・JJJの中で最も高い順位となる事」を条件とするべきだろう。実際には、前年度東京都代表のサニーパッションが急遽参加することになってしまった。これは、条件の明確化を怠ったことにより発生した問題と言える。

 

 このような「勝利」条件の明確化は法律家にとって重要である。ある弁護士の先生の被請求側案件(法外な請求を受けている案件)受任時に相談を受け、請求が一定期間止まった場合の「みなし成功報酬条項」を入れるようアドバイスしたところ、後でみなし成功となった旨お礼を言われたことがある*3



3.コミュニケーションツールの使い分け

 現代の企業法務のコミュニケーションにおいては、(ビジネス)チャット、メール、電話、直接対面等の方法が利用される。2021年12月時点においては、法務部門がある規模の各社では、ワクチン接種率向上・日本の感染者急減と、オミクロン株のリスクを踏まえ、在宅(を認める体制)の継続か在宅縮小かについて難しい判断が迫られていると思われる。その中でどのようなコミュニケーションツールを利用するかは、まさに実務で重視されている点である。


 ラブライブ!スーパースター!!第6話では、千砂都とは普段はライン風のチャットでやり取りをしているかのんが、違和感を覚えて電話連絡を求め、電話での対応から「異変」を察知し、千砂都の元へと駆け寄る場面が描かれる。


 チャットは気軽にコミュニケーションができ、また、リアルタイムを求められないことから、「受け手」(多くは部下)側のストレスが少ない(フランクではないが、メールにもその性質がある)。反面、電話はリアルタイム性があるコミュニケーションであり、「受け手」の集中が削がれる等、デメリットがある。そこで、「電話禁止!」のような方向に動く向きもあるようである。しかし、例外的に電話のようなリアルタイム性のあるコミュニケーションを行うべき場合もある。特に、チャットであれば時間を置けるので、「繕う」ことができる。例えば、何か隠しているのではないか、本当は何か問題があるのではないか、そういう違和感がある場合に、チャットだけでは解決しないことも多い。電話で話し、「杞憂だった」ということが分かることもあれば、「いよいよおかしい」と分かることもある。


 もちろん、全員100%出社になれば、このようなコミュニケーションツールの使い分けの重要性は相対的に低下するものの、まだまだ全員100%出社に戻るまでは時間がかかりそうであり、また、会社や従業員によっては在宅のメリットを享受し続けたいという向きも少なくない。つまり、今後も引き続き重要性があるポイントである。

 

4.成果主義における「手段」の問題
 成果主義については、いろいろな批判があるところだが、人事評価に成果主義を取り入れると、「あの手この手」で、成果を上げた外観を作出する人がいる。

 例えば、合宿で誰がどのベッドで寝るのかについて、可可とすみれは指相撲の勝敗のみしか合意しておらず、達成方法に関するルールを何ら設定していない。その中で、指相撲の直前にキス(!?)をして、可可を動揺させ、その隙に勝利を収めるすみれは卑怯だが、その程度ならば「盤外戦術」として許容されるだろう。


実務においても、
・実質的に1契約だが付属文書がある場合にそれを別の案件とすることで、5案件をやったことにする
・「教えて下さい」と、同僚に肩代わりを頼むが、公式には自分の案件のままとする(成果の横取り)
・他人に引き継ぐ際に「実質終わったようなもの」として1案件を片付けたことにして評価を求めるが、実際は何もできていない(もしくは適当にやっていて引き継いだ人が途方に暮れる)
 等様々なトラブルがある。
 そもそも成果主義がどうか、というそもそも論はあるものの、仮に成果主義にするのであれば、評価者は、その達成方法について、キチンとルールを設定することで「ズルい」等の不満をできるだけ招かないようにすべきである。

 


5. 教育研修と安全配慮
 個を強くすることは、確かにチーム力の強化につながる。しかし、そのためには、チームで「守りながら」、徐々に強化していくことが現実的である。組織的に対応すればなんとかなるのに、自分一人で対応できるようになれ、と言って「海に突き落とす」というのはリスクが大きい。失敗すると安全配慮義務に違反する危険な行為だ。

 みんなと一緒であれば歌えるが、一人では歌えないかのんに対し、一人で小学校に行って歌うことを強要している。「結果オーライ」だが、これでかのんが歌えなくなったらどうするつもりなのか。ラブライブ!シリーズは巨大なプロジェクトである。安全配慮義務違反で巨額の賠償責任を負ってもしょうがないだろう。

 実務では、いくら「その人のため」と思っていても、レベルが高すぎるタスクをフォローなしに(一応千砂都達も駆けつけて固唾を飲んで見計らっていたが)一人でこなさせるといった「昭和」の教育研修手法は通用しない。「最近の若いものは」ではなく、それが各従業員がかけがえのない存在だということを前提とすれば、本来必要だった対応と考えて、安全配慮義務を尽くすべきである。

 


6. フォロー方法
 同僚がミスをした時にフォローすることは一見良いことだが、残念ながら、逆に関係を悪化させることも多い。むしろ、一番身近にいて自分を助けてくれた人に対して怒りの感情をぶつけてくることが多いものである。
 可可が料理に失敗する等問題を起こし、すみれが好意で代わりに料理を作る等「尻拭い」をしてあげても、可可は感謝しない。これは実務でもよく見られることである。
 実務では、仕事の巻き取りや肩代わりでトラブルになることが多いが、責任の所在の明確化ができなくなることが一番の原因である。例えば、もともとAの責任だった仕事について、かわいそうだなと思ってBがやってあげたら、会議で期限に間に合わなかったことについてBが責任を追及される等。
 基本的には「裏」でやらず「表」でやるべきであろう。きちんと上司に「この人の仕事が滞っているので、この人のこの業務は私に移管する代わりに、今から始めることを前提に、期限を伸ばすよう上司の方で交渉して下さい」と言って、上司の責任と巻き取り元の責任を明確にする。また、その際に期限やクオリティについて巻き取り案件であることを前提に当初の予定を変更してもらうことも重要である。
 このような対応をしないで巻き取った方が悪い、とまでは言わないものの、巻き取りで「痛い目」にあった数多くの経験からすると、フォローの際の方法として留意が必要であろう。


7. 秘密保持
  先に秘密を打ち明け、後で秘密を守るよう依頼する葉月恋は情報管理の基本がなっていない。秘密に触れ得る管理区域(例えば自宅)への立入を許可するにあたりNDAへのサインを求め、サイン後初めて立入りを認め、秘密情報を提供すべきである。
 実務においては、残念ながら、NDAに「過去に開示した秘密情報も含む」と入れて対応せざるを得ない悲しい事例も存在することは否定できないが、やはり、「ベストプラクティス」としては、先にNDAを締結し、その後で秘密を開示すべきである。
 また、NDAを締結したとしても、最終的にその違反に対してどの程度の実効的な救済を受けられるかは疑問であり、NDAを締結しても出せない情報」ではないか、という観点での検討も重要である。

 


8.私的利用
 生徒会長なのに学校で百合サイトを見ていた恋。確かにマズいものの、それだけで退学処分にできるようなものではない。
 実務では、F社Z事業部事件(東京地判平成13年12月3日)、日経クイック情報事件(東京地判平成14年2月25日)、労働政策研究・研修機構事件(東京高判平成17年3月23日)等を踏まえれば、会社の通信機器等を私的に利用することが良いことにはならないものの、一定の私的利用がされることを前提に、(通常の通信内容等よりも保護が切り下げられるものの)一定のプライバシーの保護がなされる。しかも、他の従業員との平等の問題もあるので、(18禁ではない)百合サイトを見ている頻度や時間にもよるが、他の従業員と同程度の時間や頻度である限り、(注意はできても)懲戒等は懲戒権濫用の可能性がある。

 

 

9. リクルート
人をリクルートする際には、その人の琴線に触れる「殺し文句」が必要である。
センターになれないなら加入しないというすみれに対する、「センターを奪いにきなさい!」というのはかのんの殺し文句として最高であった。
実務では、そこまで「人をご指名でリクルートする」という場面は多くないかもしれないが、それでも、「エースに難しいプロジェクトチームに入ってもらう」等の場合は考えられるだろう。
そのような場合には、まず相手を熟知する必要がある。そもそもすみれにとって、かのんの「センターを奪いにきなさい!」が効いたのは、「ショービジネス」の世界の片鱗に触れながらも、うまくいかず、スカウトを待っている自分についてそれではいけないと思っていたすみれの葛藤をかのんが熟知していたから。
例えばその人がキャリアプランでほしかった経験ができる機会である等、うまく説明すれば、エースをリクルートすることもできるはず!

 

 

10「あなた自身の法務の知恵」との組み合わせを!
これらは、私がこれまで法務をやってきた経験を元にラブライブ!スーパースター!!を視聴して気づいたことをまとめたものに過ぎない。
きっとこの記事の読者の「あなた」も自分自身の経験があり、法務の知恵を蓄積していることだろう。
是非ラブライブ!スーパースター!!を視聴して、その「気付き」を #経営アニメ法友会 タグでツイートして頂きたい。それでもう、既にあなたは経営アニメ法友会の会員である!

 

 

 

 

 

 

*1:もちろん、法務も間接的に、会社が長期に渡ってお金を稼ぎ続けられるように、会社をサポートするのだが、なかなかその価値が正当に評価されない…。

*2:なぜ音楽科に落ちるようなかのんがスクールアイドルグループでセンターを張っているのか、についてはネタバレになるので、是非本編をごらんください。

*3:但し、実際に成功報酬をもらった後に請求が再開した場合にどうするか別途問題となり得る