ムダヅモ無き改革
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2.問題となる諸事例
3.肖像権
まず、各モデルとなった政治家の肖像権を侵害していないか。
肖像権とは、人からみだりに他人から写真をとられたり、とられた写真がみだりに世間に公表、利用されることのないよう対世的に主張しうる権利とされ、人格権の一内容をなすとされる*1。
さて、肖像権が、写真の無断撮影、公表の事案において議論が惹起されたという歴史的背景から、裁判所でも、写真の事案が多く争われている。しかし、本件は、写真ではなく、イラスト、漫画が問題となっている。このような、写真以外の形態による肖像権侵害の有無については、すでに判例がある。
林真須美被告人が、法廷画を勝手に掲載されたとしてフォーカス(新潮社)を訴えた事件では、まず、そもそも「イラスト」は肖像権を侵害するのかという点が問題となった。最高裁*2は、「人は、自己の容貌等を描写したイラスト画についても、これをみだりに公表されない人格的利益を有する」として、肖像権の問題が発生することを明言した。
しかし、イラスト画は、写真と違ってそのままを客観的に写すものではない。「イラスト画は、その描写に作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされる」*3。つまり、公表されたイラストを見て、人は、「モデルの人物はこのとおりの姿態だったんだな」とは思わず、あくまでも「作者の頭の中には、このような姿のモデル人物が思い描かれていたのだな」と思うに過ぎないのだから、イラスト画の肖像権侵害の程度は必然的に写真よりも低くなる。
そこで、最高裁判例は、イラスト画の肖像権侵害性は、このようなイラスト画の特質を踏まえてもなお「社会生活上受忍の限度を超え」るかにあるという。つまり、一定の範囲でイラスト画が公表されることはやむを得ないのであって、それがモデルの社会的地位、作画目的・態様等を考慮して、限度を超えるものであってはじめて違法となるのである。
最高裁は、林真須美被告人が法廷で身振りを交えて話しているシーンや関係人から資料を見せられるシーンのイラスト画は、社会生活上受忍の限度を超えないとして適法としたが、手錠・腰縄により身体拘束を受けている部分については、林被告人の名誉感情を侵害し、社会生活上受忍の限度を超えるとして適法とした。
4.名誉毀損