アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

学部生も学ぼう! 要件事実!

ケースブック 要件事実・事実認定

ケースブック 要件事実・事実認定

 民法には「あることがあったらこうなる(ある要件が充足されると、このような効果がある)」と書いている。例えば、民法555条は

第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

と規定しており、①財産権移転及び②その対価としての金銭支払いの合意があることで、売買契約に基づく代金請求等ができることがわかる。
 しかし、あることが証明されない、あることがあったかどうかわからない場合にどうなるかは民法典には書かれていないことが多い。

そこで、民法はそのまま民事訴訟では使えない。証明の概念を加えて、「あることがあると証明されたらこうなる」「あることがないと証明されたらこうなる」「あることがあるともないとも証明されなかったらこうなる」ということを、最終的には「当事者の公平」を考えて決めていかなければならない。このようにして作り上げた「裁判規範としての民法民事訴訟では使われているのである。


 本書は冒頭で要するに上記のような内容を述べた上で、「裁判規範としての民法」がいかに使われているか、このことを元に訴訟では当事者は何を主張し、何を立証すべきかということが具体的な30位のケースを元に語っている。

 学部生の中には要件事実なんて司法修習所入ってからでいいじゃん! とおっしゃられる方も多いだろう。しかし、ロースクールでも要件事実論はやりますし、要件事実がわかると民訴の理解も民法の理解も進む。例えば、「口頭弁論における被告の態度を分類して説明せよ。(旧司法試験昭和51年度民事訴訟法第一問)」といった問題は、要件事実を知ることでより良く分かる。そこで、学部生も読んでみると吉だろう。

まとめ
「ケースブック要件事実・事実認定」は、民法・民訴の理解を深める上で、(民法、民訴を一通り勉強した)学部生にこそおすすめの1冊である。