- 作者: 畑健二郎
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/02/18
- メディア: コミック
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高校1年生のハヤテは、年齢を偽って自転車便のバイトをしていた。両親が無職で、お金があれば馬券とパチスロに消えていくから、自分でかせぐしかなかったのである。ところが、年末のある日、ハヤテは解雇を告げられる。親がやってきて、年齢を偽っていたことがバレたのだ。しかも、親が給料を受け取ってしまい、これをパチスロですってしまった。
どうやって年を越すんだ。絶望にうちひしがれるハヤテが見たのは、クリスマスプレゼントと書いている1枚の封筒。その中に入っていたのは、156,804,000円の借用書。博打ですった金をハヤテの臓器を売ることで返済することにしたのでした。
弱ったハヤテは、身代金を取ろうと、少女を誘拐しようとします。ところが、失敗。罪滅ぼしとばかりに、チンピラに誘拐された少女を救おうとするが、車にはねられて死亡...。したはずが、奇跡的に生き延びて、その少女に使える執事として活躍することに。
さて、この「ハヤテのごとく!」には明白な労働法違反が多数見受けられる。
- 解雇の正当性
まず、彼は16歳なのに、年齢を偽るという、経歴詐称をし、その結果解雇されている。学説においては、経歴詐称は労働関係に入る前(契約時)の問題だから、懲戒処分という、労働契約締結後の職場規律違反を問題とする処分の対象とはならない、要するに原則経歴を詐称により解雇できないという見解が有力である。もっとも、炭研精工事件のように、判例は、経歴詐称を理由とする懲戒解雇の可能性を認める。それは、学歴等は、労働者の提供する労働の性質・内容決定についての重要な要素であり、使用者がこれについて評価を誤らせ、企業秩序の維持に重大な影響を及ぼすからである。
仮に判例の考えを採用するとしても、問題は、この、数年の年齢詐称が、懲戒解雇の程度の重大なものかである。
安枝・西村「労働法」(有斐閣プリマ)によれば、懲戒処分が可能になるような経歴詐称は、その内容・程度において重大なものでなければならず、少なくともそれによって企業秩序に具体的な危険ないし重大な影響をもたらすものでなければ、懲戒権濫用法理が働くことになります。
ここで、「重大な影響」を考える上で重要な法律は労働基準法56条である。
第56条 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない
確かに、14歳なのに、18と偽る場合には、労働基準法56条の最低年齢を下回る。つまり、企業が違法行為を行うことになる以上、企業秩序への具体的危険はあるであろう。しかし、彼は15歳以上ですから、56条1項に違反しない。そう、労働可能なのである。そこで、具体的危険はなく、せいぜい始末書提出位しかできない。この解雇は無効である。
- 親への賃金支払い
更なる問題は、「親に給料を渡した」という点である。「親に給料を渡すのは当たり前だろう!」と、会社の人は言っていますが、大嘘である。
そもそも、親が借金返済、生活費、遊興費にあたるため使用者から前借金を受取り、未成年の子女を徒弟、女工として働かせる悪習があった。わが国では、使用者が賃金を未青年労働者に直接支払わずに、これを親に送金し、親がこれを勝手に費消することが少なくなかったのである。
そこで、労働基準法59条が規定された。
第59条 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。
勝手に親に渡すと、ハヤテの親みたいに、パチスロで使いこんで費消してしまうという親が、日本では伝統的にたくさんいたからこそ、59条が規定されているのです。
そこで、給料を親に渡すことは違法である!
まとめ
「どこに、子どもの給料をパチスロで使い込む親がいるか!」
一見、もっともらしい発言も、法律を知っていると、もっともらしくないことがわかる。
ハヤテは、ナギお嬢様の執事をしている暇があったら、法律を勉強すべきであろう。