- 作者: 池田真朗
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
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これは、最初の法律科目として、債権法を学ぶ人用のテキストである。冒頭から、法律の学び方等のコラムが充実している。法律の論文の書き方等も分かり、「何をどう学べばいいか」という疑問に答えてくれる。
しかし、何よりも優れているのが、説明である。重要でないところはバサっと切ってある。内田説とかも捨て去られている。しかし、重要なところのうち「基本」の部分は、非常に丁寧に説明してある。
例えば、危険負担について。
まず、危険負担について、「危険負担とは、双務契約において債権発生の後に債務者の責めに帰すべからざる事由によって給付が不可能となった場合、その給付不能の危険をどちらの当事者が負担するかの問題」といった、分かったような分からないような説明はしない。具体例でもって説明してもらえる。
更に、多くの人は、危険負担をだいたい理解しているのだが、事例問題で、債務不履行なのに、危険負担にしたり、危険負担とすべきところを担保責任にするといったミスをしてしまっている(自戒を込めて)。これをなくすため、まずは、「危険負担はどこで出てくるのか」という項目を設け、どういう場合に使うかを説明する。
例えば、種類物債権(石油100ガロン)等では、原則として使われませんよね。とか、契約時にそもそも目的物がない(軽井沢の山荘が炎上していた)場合にも使われませんよね。とか、債務者の責任により不能になったら使えませんよね。等々
こうやって、「どこで危険負担を使うか」という、他の教科書が、「定義から適用範囲を自分で学んでくれ*1」に近い態度をとっていた部分を丁寧に解説してくださっているのだ。
初学者はもちろん、中級者も、驚きを持って学べる1冊である。
もちろん、「スタートライン」であり、債権法を極めるためには、もっと他の本を使わないといけない訳だが。
君たちは気付かぬままに原石の光り放ちて我を魅了す
池田先生*2の句である。原石の輝きがあるのか自体は不明だが、原石たることを信じて磨こう。
現状に満足したら、いつまでも原石のままだから。
まとめ
スタートライン債権法は、これまでの法律書の盲点をつく、非常に優れた本である。
いまの教科書がわかりにくい、教科書を読んでも論文が書けないと思った人は、
その教科書の行間を埋めるため、スタートライン債権法を読むことをお薦めする。