- 作者: おかゆまさき,とりしも
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2003/06
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ドクロちゃんは、エクスカリボルグ(撲殺バット)で桜くんを撲殺する。しかし、その直後桜くんを生き返らせる!はては、未来の世界では、不老不死の技術が開発済みである。
この世界では、どんな刑法秩序が形成されるのか?
そもそも、刑法には、罪刑法定主義の原則がある。
ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法律(この場合議会制定法)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則
というものである。要するに、法律で、これが悪いと前もって定めておかない限り、刑は科せられないというものである。
しかし、「悪いと定めればどんな刑罰を定めてもいい」わけではない。
たとえば、「1円盗むと死刑」なんていうのは犯罪に対する刑が重過ぎる。このような罪刑の均衡、つまり行った犯罪と、課せられる刑罰はバランスのとれたものではならないということを、罪刑法定主義は要求しているのだ。
第199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法は、殺人につき非常に重い刑を課している。これは、人の命が、かけがえのないものであるから、命を侵害したという犯罪に対し、非常に重い刑罰が課されるのである。
とすれば、死んでもすぐに生き返る「撲殺天使」ドクロちゃんの世界では、殺人は非常に軽い刑でなければならない。
殺人
第199条 人を殺した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、自ら被害者を生き返らせた場合には刑を免除する。
交通事故で、怪我をさせたという場合が、この程度の刑であり、まあ、この程度の刑罰が罪刑の均衡のためには不可欠であろう*1。
問題は、「撲殺天使ドクロちゃん」の世界で何が一番重い犯罪かである。
答えは天使の輪っかを奪う犯罪であろう。この輪っかがないと、天使は下痢ピーになってしまい、トイレに行く以外の治療法がない。殺人をしても、すぐに生き返らせることができるから、犯罪の程度は軽いが、これに対し治療できない下痢にするというのは、大変重い犯罪である。
輪状物体侵奪罪
第199条の2 天使の頭上にある輪状の物体を外した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
まとめ
「撲殺天使ドクロちゃん」の世界では、刑法が相当変わってしまう。
それは、罪刑法定主義が罪刑の均衡を要求するからである。