アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

特別救済活動カスパルと共にキャラクターの人権を守れ!?

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

 このblogでは、アニメ、漫画、小説、ゲームのキャラクターに人権が認められるということを前提にしている。
 例えば、涼宮ハルヒの判決 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常においては、ハルヒが裁判を受ける権利(憲法37条)を享有しているからこそ、判決が下されるのであり、正義の戦隊と共謀罪 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常で、ゲキレンジャー共謀罪で逮捕されることを危惧したのは、ゲキレンジャーの人権擁護のためである。
 しかし、遺憾なことに、キャラクターに人権を認めようという考えは、余り一般的ではない。
空想法律読本

空想法律読本

 わずかに、「空想法律読本」が宇宙人を含めたキャラクターに人権を認めようとしている位である。

 ところが、世の中には素晴らしい団体がある。それが、


特別救済活動カスパル
http://www2u.biglobe.ne.jp/~caspar/
 という団体である。

この団体は、

基本的人権の尊重は最優先されるもので、これを侵害する法令はありません。
ですから、基本的人権を侵害するような、または、侵害する行いを促すような表現に、自由などないと考えています。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~caspar/20060330.htm

とあるように、人権を侵害する内容の作品を禁止し、罰則をもってこの禁止を担保する法律制定を求めている。
この「人権を侵害する」という意味がわかりにくいのだが、要するに、

絵で書かれていようと少女は少女であるから、基本的人権は尊重されるべきであり、基本的人権を侵害するようなものに表現の自由はありません
http://d.hatena.ne.jp/Maybe-na/20060408/1144505269様による要約

として、作品内でキャラクターの人権が侵害されるような内容の作品は違法だから、出版・販売を禁止し、作者に罰則を課せという主張である。

 当blogはカスパルの主張を支持する
キャラクターにも人権を認めるべきであり、これを蹂躙することは許されないのである。

 カスパルは、今のところ人権侵害がなされている作品として美少女ゲームしか挙げていない。きっと、会員の皆様が忙しいか、会員がみんなギャルゲヲタなのだろう。
 私は、多忙なカスパルのために、人権侵害がなされている作品を探した。これから、カスパルと共に、これらの作品の即時出版停止と、作者の名誉剥奪、出版社への罰則適用を求めて運動を繰り広げていく!

問題作品No.1

主人公の萩原栄は、どこにでもいる小●4年生

ひょんなことから、同級生で町でも指折りのお金持ちの息子の塙信一に誘われて、塙家に遊びに行くことに。

そこには学校の先輩でガキ大将の仙吉と、●2才の信一の姉の光子がいた。

学校ではガキ大将のはずの仙吉は、塙家の運転手の息子だったため、学校では意気地なしで女の子のような信一におもちゃにされていた。

栄は仙吉と一緒に、信一のおもちゃにされることに快感を味わうようになる。

信一の命令で犬になった栄は、信一の足を見て、「綺麗な人は、足の指の爪の格好まで綺麗にできている」と恍惚感に浸りながら、一生懸命5本の指の股をしゃぶった

ある日、光子にさそわれて、栄は真夜中に塙家にある「西洋館」に忍び込む。

やっと光子を見つけると、そこには、手足を縛られて、額に蝋燭を乗せて座っている仙吉がいた。

「何でもあたしの云う通りになるだろうね」という光子の言葉に、栄はうなづく。

手始めにと、光子は栄を縛り上げて燭台代わりにし、その後は栄は嬉々として光子の命令に服すようになった。

光子に「灰皿になれ」と言われれば、口を開けてタバコを入れてもらい、光子の命令に従って光子の聖水*1を飲んだりした。

問題作品No.2

分岐物鬼畜アドベンチャーの古典

強姦魔ルートはバッドエンド。

夫連れだが、左の目尻に黒子のある美しい女が、馬に乗って歩いているのを見て、女を犯そうとする。

男に「藪の中へ宝を埋めている」と言うと、男は間抜けにも、この作り話に乗って藪の中までついて来た。

そこで、男を組み伏せ、杉の木に縛る。

さて、女を犯そうとすると、女は「二人の男に恥を見せるのは死ぬより辛いので、生き残った男に連れ添いたい。」と言い出す。

卑怯なことをしたくないので、男の縄を解き、めいめい太刀を手に取り、決闘をすることになった。

男を倒し、振り返ると、女は逃げ去っていた。

女(真砂)ルートでは、強姦魔に犯される。

手篭めにあった後、夫を見ると、そこには、妻を蔑んだ冷たい光が宿っている。

自分は死ぬ覚悟だが、恥を見られた以上、夫を残すわけにはいかない。

妻は小刀を振り上げ、夫の胸に小刀をずぶりと刺し通した。

夫(武弘)ルートは、寝取られルート。

犯された妻に、強姦魔は「自分の妻になる気はないか?」と問う。

妻はうっとりと顔を擡げた。

まだあの時程美しい妻は見た事がない

妻は「どこへでも連れて行ってください」というのみならず、夫を指して「あの人を殺してください。私はあの人が生きていては、あなたと一緒にはいられません。」と叫びだした。

強姦魔は、この要求を断り、夫の縄を切って立ち去る。

夫は、妻の落とした小刀を見つけると、一突きに胸へ刺した。

問題作品No.3

*2趣向の違う2部でできている。

第一部はハーレム。

山賊の「俺」は、美しい女性を見つけると、さらって妻にしていた。

妻の数は7人。

おしとやか、世話焼き、おてんばといったよくあるタイプから、「ブサイクで足が不自由」といった奇抜なタイプまでそろっている。

7人とのハーレム生活の始まりだ。

第二部では打って変わって女王様の召使となる「俺」。

道で亭主連れの女を見かけた俺は、あまりも美しいので、その亭主を切り捨ててその女を連れ去ってしまう。

家につれて帰ると、その女は一番美形の妻を指して「あの女を切り殺してくれ」という。

拒絶する俺に、女は「亭主は殺せるのに女房を殺せないとは! おまえはそれでも私を女房にするつもりなのかえ!」と詰め寄る。

最後は、ブスで足が不自由な妻以外の6人全員を殺してしまう。

せっかく妻になったのに、女はわがままで、何をやっても文句を言う。ついには、都へ連れて行って気ままな生活をさせろというので、しょうがなく、都まで連れて行くことになる。

女は、俺に他の家に忍び込んで、その家人を殺して首を持ってくるように命じる。

首を持っていくと、女は「ほれ、ホッペタを食べてやりなさい、ああ、おいしい。姫君の喉も食べてやりましょう。目の玉もかじりましょう。すすってやりましょうね。ハイ、ペロペロ。アラ、おいしいね。もう、たまらなのよ、ねえ、ほら、ウンとかじりついてやれ」とカラカラ笑う

最後に山に帰った「俺」は、満開の桜の木の下で死ぬ。


問題作品No.4

田豊太郎は、エリート帝国大学法学部を主席で卒業し、官庁に入る。

上官から、当時はまだ珍しかった洋行を命じられ、ベルリンへ行き、法律を学ぶことになる。

三年もまじめに学問を修めている中で、豊太郎の悩みは深まる。上官は、自分に法律ができる機械になって欲しいだけではないか、母親は、自分を生きた辞書にしたかっただけではないか。

そんなある日、豊太郎は、すすり泣く●6才位の碧眼金髪、体のほっそりとした美少女を見かけ、思わず声をかけた。

少女は、父親が死んだが、家が貧乏なので葬式をするお金もなく、母親は、葬式代のために、自分を売春宿に売ろうとしていると言って泣く。

同情した豊太郎は少女を助け、少女との交際が始まる。

しかし、学業に励まず、少女との日々に溺れた豊太郎は免職される。

豊太郎は、天方伯爵の秘書をやっている相沢に、新聞記者の仕事をあっせんされ、なんとか少女との生活を続ける。

天方伯爵は、豊太郎と会い、翻訳の仕事を与えてくれる。相沢は、豊太郎が少女と惰性でつきあっているだけで、真の恋愛ではない。才能があるのだから、翻訳をして天方に認めてもらったらと忠告する。

豊太郎の翻訳は天方に評価され、ロシアへ通訳として同行しないかと誘われる。

ロシアでも豊太郎はまめに少女に文を書くが、通訳としての才能を発揮した豊太郎は、天方の信頼を集める。

ベルリンに帰った豊太郎に、少女は妊娠していることを伝える。

2,3日後、天方伯爵は、豊太郎に一緒に日本に帰らないかという。

この誘いに乗らなければ、本国を失い、名誉を挽回するすべもなくす。

こう思った豊太郎は、「承りました。」と答える。

少女になんと説明しよう。天方と別れた後、豊太郎は錯乱動揺して、ベルリンの町を歩き回る。雪が豊太郎の肩に降り積もる。

やっと家に帰り着いた豊太郎は、そのまま倒れて寝込んでしまった。

相沢は、少女に、豊太郎が日本に帰ることを伝えると、少女は「豊太郎、おぬし、ここまで私を欺いたのか!」と叫び卒倒する。

少女はパラノイアという病気にかかり、赤ん坊のようになってしまう。

数週間後、体調が回復した豊太郎は、少女の母にわずかばかりの金を与えて、少女を置いて日本に帰った。


問題作品No.1は、上に要約した通り、女装美少年・やらないか・女王様と、様々な攻略キャラがいて、マゾ・足フェチ・女装美少年萌えを主な対象として、多様な趣味に答える一作である。主人公の栄や仙吉は、信一に指を舐めさせられ、光子にさんざん人権を蹂躙された上で最後には尿まで飲まされている。これらは、形式的には栄が「望んで」のことではあるが、性的自己決定ができない小●4年生が同意していてもこれは無効な同意である(刑法176条後段参照)のだから、人権が侵害されていることは否定できない。

問題作品No.2は、SchoolDays以上のスプラッタと、鬼畜、そして寝取られといったルート毎に異なる要素がつまっている作品。一人が殺され(ルートによっては自殺)、一人が強姦されているのだから、人権侵害は明白である。

関連作品No.3は、第一部が女性を盗んできて監禁して強姦をするエピソードであり、第二部は何十人も殺すエピソードであって、これを人権侵害以外の何者といえようか。

関連作品No.4は、ロリ・プニ*3好きで鬼畜な人向けであろうが、鬼畜が普通の鬼畜と違うので、異色の作と言える。若くして陵辱され、捨てられて精神病にかかる美少女の哀れさは、人権侵害のひどさを物語る。

まとめ
「作品内でキャラクターの人権が侵害されている作品は違憲だから、出版禁止にすべき」というカスパルの論理に従えば、
谷崎潤一郎の「少年」(問題作品1)
芥川龍之介の「藪の中」(問題作品2)、
坂口安吾の「桜の森の満開の下」(問題作品3)
森鴎外の「舞姫」(問題作品4)
は、出版を禁止すべき悪書
ということになる。
人権規定は平等(憲法14条参照)に適用されてはじめて人権を保障したといえる。
仮にカスパルが、美少女ゲーム内の人権侵害を糾弾しながら、これら文豪の作品内の人権侵害を糾弾しないのであれば、カスパルは「人権侵害防止」にかこつけて美少女ゲームという表現を弾圧しようとしているだけの、人権の敵に他ならない。
今後のカスパルの行動に注目である。

追記:
本エントリは、多分にˆê•”‚̓Ǐ‘l‚É•ù‚°‚éIu–{“Ç‚ÝHPvƒgƒrƒ‰ƒy[ƒW様に影響されたものです。このサイトは、一行読んで書く読書感想文も面白いのですが、特に‚ ‚¢‚¤‚¦‚¨‡‚É‚æ‚鍧Ø‚«‚í‚Ü‚è‚È‚¢“Ǐ‘ƒKƒCƒh@–ÚŽŸƒy[ƒWが秀逸です。
なお、本エントリが石原慎太郎太陽の季節」を取り上げない理由は、お察しください。

*1:Urine

*2:ツンデレシステムではないですが

*3:ハイティーンですが